【インタビュー】第99回▶玄海ジュニアラグビークラブ(福岡県)

ふかふかの天然芝で、ラグビーを続けたくなる子どもたち
玄海ジュニアラグビークラブは元日本代表WTB福岡堅樹さんの出身クラブとして広く知られています。サニックススポーツ振興財団の協力により、1997年8月に設立されました。その理念は地域社会に根差したものです。「郷土の恵まれた自然環境及びラグビーというスポーツを通して青少年の健全育成を図るとともに、地域社会のスポーツ文化の発展に寄与する」。練習場所はサニックス玄海グラウンドのふかふかの天然芝。毎週日曜日の午前中に活動しています。明るく楽しくがモットーで、基礎体力を養いながら強い体を持つ子どもの育成を目指しています。事務局の樺島祐介さん(60歳)にお話を伺いました。


安全第一、試合は全員参加
外野は口出ししない方針を貫く

村上 樺島さんのラグビーキャリアを教えていただけますか。
樺島 福岡教育大学でラグビーを始めました。大学で保健体育の教員免許を取得し、卒業後は5年間ほど国家公務員をしていました。その後転職して宗像市役所で働くことになり、玄海ジュニアラグビークラブに子どもを連れて行くことになったわけです。

村上 なぜ玄海ジュニアに連れて行こうと思ったのですか。
樺島 私は社会人でもクラブチームでラグビーを続けていたのですが、35歳のころに怪我をしてラグビーを辞めようと思ったところで、玄海ジュニアの生徒募集のチラシを見たのです。まだチームは発足したばかりの頃です。グラウンドに見学に行ってみたら、サニックス玄海グラウンドの深い芝の上で子どもたちが走り回っている。これは怪我もしないだろうと思って小学3年の長男と保育園の次男を入れました。1999年でした。

村上 なぜ、このクラブは設立されたのですか。
樺島 設立された1997年当時、サニックスラグビー部の井上登喜男監督が福岡高校出身で、高校の先輩の宇治川福男さんに「今度ラグビー部のグラウンドを作るのだけど、地域にも開放したいのでジュニアのクラブを作りませんか?」と打診したそうです。

村上 樺島さんは関わり始めた頃に印象的なことはありましたか。
樺島 福岡堅樹が低学年のクラスにいました。ケンキの学年は比較的人数が多くて、明治大学からNTTドコモレッドハリケーンズに進んだ大椙慎也、ケンキと一緒に福岡高校で花園に出場した谷山俊平(青山学院大学)らがいて、特にこの3人は体が小さかったけど、自由奔放に走り回って活躍していました。

村上 チームの指導理念はどんなものですか。
樺島 我々が関わり始めた頃から、安全第一で挨拶ができるように育て、試合は全員参加、外野が口出ししないという方針でした。のちに大学、社会人で活躍する中靏兄弟(憲章、隆彰)もクラブにいたのですが、中鶴の兄が中学に上がるとき(2003年)、やっと中学の単独チームができました。以降は、小学校時代ではラグビーを好きになってもらって中学でも続けてもらうようにして、中学になったら何事にもチャレンジしていこうという方針で指導していました。

村上 たくさん名選手を輩出されていますね。
樺島 クラブがある地域は福岡高校がある学区で、学区内のほとんどの公立高校にラグビー部がありましたので、15年くらい前までは公立高校志望が多かったですね。ある学年は10人中6人が福岡高校に合格しましたので、学習塾に行くよりも玄海ジュニアに入った方がいいのではないかという話が広まったくらいです。前会長の宇治川さんは「ラグビーで高校を選ぶな」と言う人でしたね。

村上 現在はいろんな高校に進学されているようですね。
樺島 10年くらい前から県内外の強豪高校の方が練習を見に来るようになって、声をかけて下さるようになりましたね。


小学3、4年生にも輝ける場を
大盛況のむなかたキッズセブンを主管

村上 生徒数も増えているようですね。
樺島 現在、生徒数が230名くらいになりました。2015年のラグビーワールドカップまでは150人くらいだったのですが、南アフリカに勝ったあとに突然増え、2019年大会でも増えました。いまでは一つのグラウンドで練習ができなくなってしまって、カテゴリー別に時間帯を区切って練習するようになっています。

村上 子どもたちがターゲットにしている大会はありますか。
樺島 小学5、6年生は11月の福岡県大会です。中学生も県大会ですね。このほか、宗像市が小学3、4年生の大会を開催しています。実はこの3、4年という学年は大会が少ない学年だったんです。18年前に始めて毎年行っています。大会名は「むなかたキッズセブンラグビー大会」。山口県も含めて、九州各県から約1,000人が集います。グローバアリーナに一泊し、それを玄海ジュニアが主管クラブとして運営しています。子どもたちも手伝いますよ。宗像オールドパイレーツという年配の方のチームも手伝ってくれます。

村上 宗像サニックスブルースが活動を休止したことは影響がありますか。
樺島 サニックス玄海グラウンドは、(株)サニックスの社員研修所内の施設で、グラウンドが残るのか不安でしたが、今後も使わせていただけるようです。

村上 今後、どんなクラブにしていきたいですか。
樺島 ラグビーを将来にわたって続ける子どもを育てるのが創部当初からの目標です。それはこれからも変わりません。クラブができた頃、厳しいスクールでは小学校高学年や中学は、土曜、日曜の午前午後ずっと練習して燃えつきてしまっていました。高校で続けない子もいたようです。それが我々の耳にも届いていたので、ラグビーはきつくて痛いスポーツだからこそ楽しくやろうということに主眼を置いてコーチの意識を統一しています。

村上 今年卒業する中学3年の25名はラグビーを続けるのですか。
樺島 公立高校、私学、いろんな道に進む予定ですが、ほとんど続けるようです。

村上 続けさせるコツはありますか。
樺島 普段の練習や練習試合でMVPを選ぶなど、褒めるようにしています。厳しい言葉や、卑下するような言葉は使わないということを徹底しています。我々事務局が練習中にピッチ内をウロウロしているのは、それを確認するためです。練習でミスが多発したら、叱りたくなりますが、コーチ陣だけでその練習をやってみるようにしています。すると大人もミスをします。ほら、コーチだってミスするじゃないか、難しいんだから、生徒を叱れないよね、ということになります。おかげでみんなラグビーを続けてくれます。

村上 長らく指導されていて、ラグビーというスポーツが子どもに与える良い影響はどんなところだと思いますか。
樺島 小学校の低学年の子の変化はあきらかです。子どもたちは、学校でも家庭でも、(当たり前ですが)人を叩いちゃいけない、体当たりをしてはいけない、洋服を汚しちゃいけない、雨の日に外で遊んではいけない、いろいろなことをダメだと言われ続けていますよね。ところが、週一回のラグビーだけは何をしてもいい。最初は服を汚さないよう、濡れないようにやっていた子どもたちが、雨の日になると率先して濡れて、泥だらけになっている。玄海ジュニアに入ってきた子に現れる変化は、まずそこです。親御さんによく言われるのは、引っ込み思案だったのが、学校でも嫌なことを率先してやるようになったということです。

村上 ラグビースクールに関わって良かったことはありますか。
樺島 妻と話したのですが、子どもがラグビーをしてくれたおかげで行楽シーズンにお金がかからなかったということです(笑)。ゴールデンウィークはテーマパークに連れて行くこともなく、合宿に行けばいいのですから。ラグビー用品も最初は買いましたが、その後はお金がかかりません。成長期ですぐに大きくなってサイズが合わなくなるので、チームで開催するバザーで、ほぼ新品のスパイク、ジャージが並びます。

村上 そのほか、玄海ジュニアの良いところはありますか。
樺島 高校、大学、社会人のOB・OG達がよく来てくれます。ケンキも来ました。中鶴隆彰とケンキが来たときには、どっちの足が速いか、ちょっと競争してもらいました。その時は中靏が勝ちましたけどね。それから、宗像サニックスブルースの外国人選手のお子さんも入っていて、インターナショナルスクールみたいな雰囲気もあります。楽しいですよ。いまも毎週のように1人、2人と新しい生徒が来ています。一度ぜひ見学にいらしてください。


ラグビースクールインタビューアンケート

1、ラグビースクールの名前
 玄海ジュニアラグビークラブ

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
 あり

3、代表者
 会長;平川博康

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 事務局携帯;080-8118-3232 担当;橘
 事務局アドレス;genkai_genki97@yahoo.co.jp
 クラブHPアドレス https://gjrc1997.net

5、活動場所・練習場所
 サニックス玄海グラウンド…天然芝(ラグビー場)
 いせきんぐ宗像…天然芝(芝生公園) 
 グローバルアリーナ…天然芝、人工芝、土

6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 5・6年・中学 … 土・日の9:0012:00
 幼・1234年 … 日曜の9:0012:00

7、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 年会費 幼・12年…12,000/年 3年以上…15,000/年 ※兄弟姉妹3人目から無料
 入会時に上下白ジャージ代、スパイク、ヘッドキャップ

8、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 クラブ生総数…230人(幼~中3
 女子選手…各学年に2人~4人
 外国人対応…何とかしています

9、コーチ人数、指名、経歴等
 各学年に610人 中学(13)20

10、モットー・大事にしている事・理念
 〇安全第一 〇あいさつができる子に 〇全員参加 〇自分で考える

11、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 〇小学生「基本スキルの習得」「ギリギリのプレーは教えない」
 〇中学「チャレンジ」

12、歴史・活動実績
 1997年創部
 〇小学6年生…県大会優勝経験なし
 〇中学…新人戦(福岡県)では優勝経験1回。
 ※毎年、オール福岡には複数人を送り込むが、チームはベスト4止まりが続く

13、OB・輩出トップリーガー
 〇中靏憲章(福岡高-筑波大-九電)〇中靏隆彰(西南学院高-早稲田大-サントリー)〇福岡堅樹(福岡高-筑波大-パナソニック-引退)〇箸本龍雅(東福岡高-明治大-サントリー)
 山口楓斗(東海大福岡高-同志社大-ヤマハ)

14、指導方針・教育方針
 とにかく褒める

15、合宿・場所・期間・参加年齢等
 〇春合宿(小16年…4月第1土日 玄海少年自然の家)
 〇6年合宿(7月最終金土日 熊本県小国町)
 〇中学強化合宿(GW グローバルアリーナほか)
 〇中学新チーム合宿(8/15前後の34日 熊本県小国町)

16、校歌等
 なし

17、ラグビー以外の行事
 納会餅つき&不用品バザー(ラグビー用品に限る 12月末)
 釣川クリーンアップ作戦(地元の川の清掃活動)

18、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 クラブ側は中学部活の掛け持ちを推奨しているが、NGを出す中学校が存在する。
 中学生の半数以上は掛け持ち(陸上競技、サッカー、バスケットボール、柔道)
 小学生の半分は平日に学習塾、水泳、ピアノ、ダンス

19、保護者の活動への参加・サポート
 ラグビー経験の有無にかかわらず、ほとんどの親がボランティアコーチとして参画
クラブハウスあれば
 サニックス敷地内にプレハブのクラブハウスあり(サニックスのご厚意)
どんなスクールを目指すか(将来像)
 OBが集うクラブ。そのためには、年老いた当時のコーチがグラウンドに居なければならない。
生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 
20、プレースタイル
 〇小学以下…基本に忠実(ギリギリのプレーは教えない)
 〇中学…チャレンジ(一か八か、苦し紛れのプレーではなく、練習に裏付けされたプレーにチャレンジ)

21、交流する他のラグビースクール
 定期戦…かしいYR、帆柱YR、〇不定期戦…ぎんなんLR
 〇宗像市主催の小学34年大会「むなかたキッズセブン(小学34年大会)」を主管
 ※12月第1土・日に九州山口から1,000人以上の34年が集う交流会。

22、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 宗像サニックスブルース、玄海オールドパイレーツ(オーバー40)、宗像市役所文化スポーツ課


自由欄(付け加える事があれば)
 7人制の学年が20人を、9人制の学年が25人を超えると、チーム運営はやりにくい。





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