【インタビュー】第95回▶加古川ラグビースクール(兵庫県)

目指すのは、ラグビーを通した『人創り』

兵庫県の加古川ラグビースクールは、1998年、社会人クラブである「悠々クラブ」のメンバーが中心になって創設されました。現在は、毎週土曜、日曜の午前中に加古川の河川敷などで活動しています。現在の生徒数は、107名。創設当時から人として成長できる指導、活動が貫かれています。運営は事務局と保護者会が密に連携をとって進められていて、アットホームな雰囲気のスクールです。交流戦なども積極的に行い、みんなで試合を楽しむ一方、兵庫県の大会ではたびたび好成績を残しています。今回は、2013年から指導に携わり、現在はスクールの校長を務める福原健司さん(64歳)にお話をうかがいました。


すべては子どもたちのために
指導者も保護者も意見を出し合う


村上 福原さんのラグビーとの出会いから教えてください。
福原 私は大阪の交野中学(現・交野市立第一中学校)でラグビーに出会いました。1年生のころ、私は柔道部員だったのですが、小学校からの親友たちはみんなラグビー部でした。お兄さんがラグビーをしている弟たちだったんですよ。1年生の冬休みに仲の良かった友達から「ランパスに付き合え」と誘われて、一緒にやっていたら勝手に柔道部に退部届、ラグビー部に入部届を出されていました(笑)。こうしてラグビー人生が始まったわけです。

村上 無理やりですね(笑)。
福原 入部するからには一生懸命やろうと思ったのですが、僕は勉強が苦手で、父はラグビーなんてしたらよけいに勉強ができなくなると反対していました。だから、ユニフォームやスパイクも買ってもらえなかったんです。そんな事情を仲間に話したら、お兄さんの使っていたジャージやスパイクを持ってきてくれて、一式そろえてくれました。みんなのサポートのおかげでラグビーができたのです。そのとき「一人はみんなのために、みんなは一人のために」というラグビー精神を教えてもらった気がします。

村上 練習は厳しかったですか。
福原 僕はそのころ太っていて走るのが苦手でした。最初はついていけなかったのですが、だんだん体が絞れて、足も速くなって、楽しくなっていきました。ポジションは、フッカー、フランカーで、プロップもやりましたね。高校は公立でラグビー部が強かった淀川工業高校(現・淀川工科高校)に進学しました。のちに日体大、トヨタ自動車で活躍するウイングの辻悦朗が小学校からずっと友達で中学、高校は一緒でした。

村上 辻さんと言えば、大型ウイングで日本代表(キャップ6)でも活躍されましたね。
福原 辻は中学3年生まで部活には入っていなかったのですが、体が大きくて足も速いので、僕が無理やりラグビー部に引っ張り込みました。

村上 福原さんは、その後ラグビーは続けたのですか。
福原 高校卒業後、自衛隊に入り姫路駐屯地のチームでラグビーを続けました。自衛隊の後輩で大阪の茨田高校ラグビー部で清宮克幸さん(現・日本ラグビー協会副会長)と同期だった村田浩章君(現・加古川RS監督)がいまして、彼の子どもが加古川ラグビースクールに入り、数年後に村田君からコーチをしませんか、という話をいただきました。

村上 2013年から携わられたようですが、加古川RSはどんなチームだと感じましたか。
福原 加古川RSの子どもたちは楽しそうだと思いました。ラグビーを経験していなかったお父さんたちも子どもたちと一緒にラグビーを楽しみ、コーチングのスキルを磨いている。ラグビー以外でもバーベキューや運動会をするなど、雰囲気の良いスクールだと思いました。指導者や保護者がいろんな意見を言い合えるし、すべては子どもたちのためにという確たる考えもある。芯があって風通しの良いスクールだと感じました。


心熱く、笑顔の絶えない、
居心地のいいスクールでありたい

村上 指導方針についても聞かせてください。
福原 子どもたちに伝えたいのは、チームのために、仲間のために自分に何ができるかを考えるということ。そのためには力をつけないといけません。では自分を磨くために何をするのか。それを幼児だろうと、小学6年生だろうと、それぞれの年代でわかる範囲で教えています。練習メニューは各学年のコーチに任せていますが、その練習はなんのためにしているのかを明確にし、常に人としてどうあるべきかということも、しっかり教えるようにしています。

村上 試合には全選手を出す方針ですか。
福原 交流戦を多く組み、すべての子どもたちが試合を経験できるようにしています。また、播磨地域の6スクールでウェストジュニアリーグを立ち上げ、年2回のリーグ戦を行って、できるだけ多くの生徒に成功体験をしてもらいたいと思っています。コーチが勝ちにこだわりすぎていると感じたときは、コーチミーティングをして原点に立ち返るようにしています。

村上 勝ちにこだわらないと言いながら、戦績は良いですね。
福原 チームのために、仲間のために、自分はどうすべきなのかを理解すると、コロナ禍であっても自主的にトレーニングをするということにつながります。そして、みんなで集まった時にはすぐに全体練習ができる。そんな意識作りが好成績につながっていると思います。それは学校での生活、社会での生活にも役に立つことだと思います。

村上 今回の取材のためのアンケートに、チームの活動としてボランティアラグビー教室を行っていると書かれていますね。
福原 コーチが幼稚園や保育園に出かけて、無料でラグビー教室を行っています。いまはコロナ禍でできていませんが、それをきっかけに加古川RSに来てくれるお子さんもいます。

村上 ラグビーを始めたことで、前向きな変化があったお子さんはいますか。
福原 小学3年生のとき、お父さんに連れられてきた子がいます。真面目で大人しい子だったのですが、お父さんは「性格を変えたい」とおっしゃっていました。何事にも積極的になって、人とのかかわりを持ってほしいということです。ラグビーをしていると、人とかかわらないといけないし、自分もアピールしないといけないので、だんだん積極的になってプレーも活力あふれるものになりました。人に優しくて、甘えん坊の性格は変わっていませんが、たくましく成長しましたね。

村上 加古川RSは小学生までですね。
福原 中学生は、明石ジュニアラグビークラブと加古川RSが一緒になって、明石加古川ラグビークラブを作っています。多くの卒業生がここで続けています。

村上
 ラグビー以外のいろんなイベントがあるようですが、何が一番盛り上がりますか。
福原 それぞれ盛り上がるのですが、一番盛り上がるのは、卒業するときの6年生とお母さんのミニラグビーかもしれないです。ガチンコ勝負なので周囲も盛り上がりますよ。

村上 指導していて一番の喜びはどんなことですか。
福原 人のために、仲間のためにという思いで、常日頃、コーチングスタッフは指導しています。僕が小学4年生で担当した代の子たちにも、そうして教えていたのですが、上手い子たちが、うまくできない子に意地悪をするというような時期がありました。それを見ていて泣きたいくらい悔しかったです。ずっと言い続けてきたことが伝わっていないと思ったからです。でも、名指しで注意するのではなく、毎回、練習が終わると、人のためにするということはどういうことか、僕なりに話をしました。その後、ひとつ上の学年と試合形式の練習をしたときに、いままで意地悪をしていた子が、されていた子をかばい、助け、励ましているのを見たとき、言い続けてきて本当に良かったと思いました。泣きましたね。

村上 今後、どんなスクールにしていきたいですか。
福原 加古川RSの伝統ともいえる風通しの良さを継続し、心熱く笑顔の絶えない居心地の良いスクールでありたいです。また、子どもたちには自分を好きになってほしい。そうすれば必ず人を好きになれる。誰かのために自分ができるようになった喜びを感じて成長してもらいたい。人としてどれだけ成長できるかということをモットーに、これからもスクールを運営していきたいです。



ラグビーキッズ
ラグビースクールインタビュー


1、ラグビースクールの名前
 加古川ラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
 
 


3、代表者
 福原 健司

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 ホームページから  https://kakogawars.com
 フェイスブックから https://www.facebook.com/krugbyschool/

5、練習場所は天然芝、人工芝、土等
 加古川河川敷(平坦な雑草地)、日岡グラウンド(人工芝)、小野グラウンド(天然芝)等

6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 毎週土日 9:00~12:00 夏季はサマータイム制度あり
 交流戦随時主催、招待交流戦にも随時参加

7、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 1年を前期後期に分けて年2回、会費5,000/期+用具代500/
 兄姉が既に在籍している弟妹の会費は半額となり、2,500/+用具代500/期になります

8、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 生徒数107名(内 女子選手7名) 
 これまで外国人選手在籍はありませんが、今後入部希望があった場合、拒む理由はありません

9、コーチ人数、氏名、経歴等
 68名(お父さんコーチ在籍多数)

10、モットー・大事にしている事・理念
 ・自分自身を大切に、仲間を大切に、何事に対しても感謝の気持を忘れない
 ・自分からあいさつのできる子になろう
 ・ラグビーを、河川敷を、共に戦う仲間を、大好きになってほしい

11、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 播磨地域の6スクールで、勝敗は気にせず全員試合に出場し成功体験をさせてあげる為に、ウェストジュニアリーグを作りリーグ戦(年2回)を行っています

12、歴史・活動実績
 ・ラグビー体験会(随時)
 ・幼稚園、保育園、小学校でのボランティアラグビー教室(随時)
 ・加古川市内でジャパンタッチ協会主催のタッチラグビー大会(夏)
 ・加古川ラグビーカーニバル(3月)(スクール生、近隣の中高校生、OB、社会人クラブチームなどが集い、タッチラグビーや親子試合、卒業試合など、みんなでラグビーを楽しむ1日)

 ・兵庫県ラグビースクール大会 優勝/2回・準優勝/3回・3/3
 ・第1回ヒーローズカップ出場 4

13、OB・輩出トップリーガー
 高部大志(静岡ブルーレヴズ)、福士萌起(日野レッドドルフィンズ/セブンズ日本代表)
 下村怜央(セコムラガッツ)

14、指導方針・教育方針
 ・練習では失敗を恐れずに、今の自分の限界を越える為に全力で取り組む
 ・試合でも失敗を恐れずに、練習で取り組んだことにどんどん挑戦する

15、合宿・場所・期間・参加年齢等
 加古川市立少年自然の家に宿泊し、翌日、日岡グラウンドで交流試合を実施
 毎年7月末・幼児から小学6年生まで基本的に全員参加

16、ラグビー以外の行事
 スクール運動会、クリスマス会など(コロナ禍以降実施できていません)

17、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 把握していませんが、掛け持ちも子どもの当然の権利と思いますので、何ら問題ありません

18、保護者の活動への参加・サポート
 保護者がラグビー好きになる事が多くお父さんコーチが多いです
 レディースチーム(タッチラグビー)もあります


19、どんなスクールを目指すか(将来像)
 子どもたちにとって、またその子どもたちを取り巻く人々にとって、心熱く笑顔の絶えない居心
地のいいスクールでありたい

20、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 心に熱き思いを持ち、他を思いやれる愛情溢れる人になってほしい

21、交流する他のラグビースクール
 兵庫県内のほとんどのスクールと交流があります
 近隣府県のスクール交流戦に参加させていただくこともあります

22、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 コベルコ神戸スティーラーズの皆さんが、年に数回、ふれあいと指導に来てくださいます



保護者へのアンケート

1、このスクールを選んだ理由
 体験に行った時に熱心な指導をされるコーチの方々に惹かれて決めました

2、このスクールの良い点
 一人一人を大切に指導して下さり、雰囲気が良い

3、スクールに改善して欲しい所
 特に無いです

4、お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか
 何事にも今まで以上に努力するようになりました

5、お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか
 子供はラグビーの為に自主的にトレーニングをするようになり、家族もラグビー観戦をするようになりました

6、スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けて欲しいですか
 続けて欲しいです

7、ご自身もラグビーをしていましたか
 経験なしです

8、ご自身もラグビーが好きになりましたか
 大好きになりました!

9、どんな大人になって欲しいですか
 自ら考えて動ける思いやりのある大人

10、スクールに入れてよかったですか
 良かったです!!素敵な仲間に出逢えたことに感謝しています

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