【インタビュー】第92回▶みなとラグビースクール(東京都)

ラグビーを通じて、次代を担う健全な子供たちを育成する。
みなとラグビースクール(MRS)は、2010年に開校し、秩父宮ラグビー場のすぐ近くにある「港区立青山小学校」の人工芝校庭をホームグラウンドとして活動しています。運営理念は、『ラグビーを通じて、国際性豊かな地域社会の活動拠点となり、次代を担える健全な子供たちを育成する』。2012年にはNPO法人となり、普及育成(スクール、毎日曜の午前中)、強化養成(アカデミー、火・木曜日の夜)の2軸で運営されています。現在は約360人の子どもたちがラグビーを楽しむ大きなスクールになりました。港区ラグビー協会、MRSの会長であり、港区議会議員でもある黒崎祐一さん(45歳)にお話を伺いました。


ラグビーを楽しむ。どんな時もきまりを守る。
みんなの為に頑張る。最後まであきらめない。


村上 黒崎さんはいつからラグビーを始めたのですか。
黒崎 父がラグビー経験者で明大中野中学に入ってラグビーをしなさいということで、なかば強制的に始めました。実は小学3年生のときに東京ラグビースクールに入っていたことがあるのですが、1年でスクールが無くなってしまって、それからラグビーからは離れていました。

村上 中学で本格的にはじめたラグビーは楽しかったですか。
黒崎 同級生に「湘南の風」の若旦那がいました。僕と彼は体格が大きくてチームを引っ張る存在でしたね。僕の身長体重は165㎝、70㎏くらいでした。僕は中学、高校ではストイックで、他の部員にしたら面倒くさいヤツだったと思います(笑)。明治大学に進んで早明戦に出場し、国立競技場に立つんだと意気込んでいて、中学、高校ともにキャプテンを務めましたが、「炭酸飲料は飲むな!」とか先生みたいなことばかり言っていましたね。

村上 早明戦にも出て、大学選手権でも優勝して、その夢は実現したわけですね。ラグビーに打ち込んだことで、ご自身の人格形成に何か影響はありましたか。
黒崎 僕はラグビーをしなかったら、ワルガキのまま大人になっていて、今の様な大人になっていなかった気がします(笑)。両親には何不自由なく育ててもらったこともあって、わがままでした。それがラグビーをしたおかげで、仲間の大切さ、生きていくために必要なことを学び、まっとうな道を歩くことができたと思います。

村上 みなとラグビースクール(MRS)を立ち上げたいきさつを聞かせてください。
黒崎 2009年に日本で20歳以下の世界大会であるジュニア・ワールド・チャンピオンシップが開催されました。その時期は港区の小学校の校庭が人工芝に代わるタイミングでした。青山小学校も人工芝に変わったのですが、そこにU20オーストラリア代表の選手がレガシープログラムで訪れ、子供たちにラグビーを教えてくれました。その選手たちの振る舞いが青山小学校の先生方に非常に良い印象を残したそうです。そこでラグビースクールを作る話が出てきたのです。当時、僕は明治大学のコーチの任期が終ったところで、日本ラグビー協会の普及委員をしていたこともあって、やってみないかと話がありました。

村上 最初のチーム作りは苦労されたのではないですか。
黒崎 当時勤務していたメタルワンという会社が、会社の設立などを仕事としてやっていた経緯もあって、そういった手続きに詳しい人に手伝ってもらい、明治のコーチ時代のネットワークでコーチ陣を集めました。皆さんに支えていただきました。ポスターを貼るなどして集めた30
ほどの生徒でのスタートでした。山手線内で唯一のラグビースクール(RS)という好立地と、人工芝の環境で選んでくれた保護者の方が多かったです。口コミでその年に100名くらいまで増えました(2013年に、文京区に文京RSが開校)。

村上 活動方針に、「ラグビーを楽しむ」「どんな時もきまりを守る」「みんなの為に頑張る」「最後まであきらめない」という4つの柱がありますね。ここにはどんな思いが込められていますか。
黒崎 4つの活動方針は、ラグビーという言葉を抜けば、社会生活でも必要な要素です。それを、ラグビーを通じて教えたいのです。いま85名のコーチがいますが、この4つの方針をラグビーの練習にどう結び付けるかが難しいところです。MRSは、元日本代表の斉藤祐也が理事長を務め、コーチ陣のトップですが、コーチングディレクターを置いて横串を刺し、練習メニューを引き出すアイディアをサポートする体制にして連携しています。


東京サントリーサンゴリアスと連携協定を結び、
全カテゴリーが一緒になった地域の活動拠点を目指す

村上 ヒーローズカップには出場していないのですね。
黒崎 はい。ヒーローズカップはチャンピオンシップですが、関東の大会はいまでもフレンドリーマッチという位置づけです。子どもたちが来週も練習に来たいと思えるような環境を作ろうということを大切にしています。大人のエゴや価値観を押し付けることをせず、高校、大学につながるような受け皿になれたらという思いを守り続けています。試合には全員出場することを大事にしていますし、限られた人だけ出場するような濃淡をつけないようにしています。現場のコーチとも常にそこを確認しながら運営していますので、それを理解してくださるコーチが残っています。

村上 2012年にはアカデミーを設立されていますね。
黒崎 アカデミーでは心技体、ラグビーを学ぶ姿勢を大事にしています。チーム活動はスクールで日曜日、個人のスキルアップはアカデミーで火曜、木曜と完全に分けました。そうすることでコーチも迷いがなくなります。ここはMRSの大きな特徴だと思います。スクールはいつでも参加していいし、休んでもいい。しかし、アカデミーは年間84回、欠席するときは連絡も密にしましょうということにしています。

村上 印象的な子どものエピソードはありますか。
黒崎 いま高校のラグビー部で活躍している卒業生がいますが、いわゆる不良だったんですよ。𠮟りつけることもありましたが、その子がうちのアカデミーでラグビーにのめりこみ、目標を持ち、高校で頑張り、大学に進むことになりました。ラグビーというのは、人間形成の一翼を担うことができるスポーツなのだと改めて感じました。

村上 卒業後にラグビーを続ける子は多いのですか。
黒崎 ラグビー部のない高校に進学する子もいますので、土曜日に15歳以上の子がプレーできる青山ラグビークラブを作りました。15歳以下は、アカデミーが強化養成で、スクールが普及育成です。青山ラグビークラブは普及育成がメインですが、2022年1月から始まるジャパンラグビーリーグワンでは、各チームにアカデミーが必要になってきます。選手やコーチの奪い合いをしても意味がないので、在京のチームはネットワークを構築して、それぞれが役割分担し、質の高いアカデミーを作るべきです。それをMRSが先例として作り、標準化していきたい思いがあります。

村上 黒崎さんは、MRSの会長、港区ラグビー協会の会長、関東ラグビー協会の女子委員会の委員長などたくさんの役職があります。どんなモチベーションで奮闘されているのですか。
黒崎 僕は、全年齢の普及育成と強化養成が両方ある拠点を地区ごとに作りたいと思っています。一週間まるまる全カテゴリーができるような場所を行政で整理すれば、指導者も優秀な人が来るし、関わりたい人がみんなそこに集まることができます。スポーツ行政というか、政治的な視野も持っていなければいけないし、自分の政策としてやりたいことでもあるのです。

村上 MRSについては、どんな未来を描いていますか。
黒崎 持続可能な体制にしていきたいですね。僕もいつまで携われるか分かりません。リーグワンができることをきっかけに、東京サントリーサンゴリアスと連携協定を結び、アカデミー事業のみならず、スクールとクラブを一緒にして地域の活動拠点に位置づける方向で話を進めています。サンゴリアスの下部組織として、報酬も得られるようにして、みなさんに参加してもらいたいです。最終的にサンゴリアスが、アリーナなりスタジアムを作ったときに、すべてのものがそこに入れば、サンゴリアスのRSとして持続可能な体制になります。いま、その準備をしているところです。




ラグビーキッズ
ラグビースクールネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート

1、ラグビースクールの名前
 みなとラグビースクール(NPO法人みなとラグビースクール)

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等


3、代表者
 会長:黒﨑祐一

 理事長:齊藤祐也

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 住所:〒107-0052東京都港区赤坂1-4-14葵町アネックス2F
 連絡先:03-5549-1717/info@mrs.jpn.com
 事務局長:平浩二


5、活動場所・練習場所
 港区立青山小学校、港区立青南小学校

6、練習場所は天然芝、人工芝、土等
 人工芝

7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 スクール:毎週日曜日午前中(第一日曜日を除く)
 アカデミー:火、木曜日18302030(年間84回)

8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 入会金:3,000円、年会費15,000円、指定ジャージあり

9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 生徒数:360/女子50/外国人:20

10、コーチ人数、指名、経歴等
 コーチ人数:100

11、モットー・大事にしている事・理念
 『ラグビーを通じて、国際性豊かな地域社会の活動拠点となり、次代を担える健全な子供たちを育成する』

12、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 秩父宮ラグビー場に一番近いラグビースクール
 普及育成(スクール)、強化養成(アカデミー)の2軸で活動

13、歴史・活動実績
 2010年スクール設立、2012年アカデミー設立

14、指導方針・教育方針
 (1)ラグビーを楽しむ。
  ラグビーを通して一所懸命になることを知り、努力して得る成果を楽しむこと
 (2)どんな時もきまりを守る。
  ラグビーのルールを守ることだけではなく、MRSの活動方針及び決められたルールを守ること
 (3)みんなの為に頑張る。
  自身のことだけを考えるのではなく、友達・仲間を大事にし行動すること
 (4)最後まであきらめない。
  勝負に負けたとしても最後まで力を抜かずに、全力で取り組むこと

15、合宿・場所・期間・参加年齢等
 菅平(ゾンタック)7月下旬、小学生、中学生

16、保護者の活動への参加・サポート
 アシスタントコーチとして参加可能

17、どんなスクールを目指すか(将来像)
 来週もラグビーをしたいと思うような環境づくり

18、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 4つの活動方針を理解する大人

19、プレースタイル
 enjoy

20、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 一般社団法人港区ラグビーフットボール協会、東京サントリーサンゴリアス

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