【インタビュー】第91回▶京都北ラグビースクール(京都府)

京都一、スクール生と指導陣と保護者の皆さんが仲の良いチームを目指して
京都には数多くのラグビースクールがありますが、1979年に創立された京都北ラグビースクールも伝統あるチームのひとつで、42年の歴史を刻んできました。幼児から小学6年生まで約90人の生徒、約50人のコーチが日曜日の午前中、京都市左京区にある京都精華大学グラウンドで活動しています。京都市の中でも主に左京区、北区の子どもたちが通っています。チームを作ったのは、京都でかつて活躍した社会人クラブ「なおかつクラブ」の面々で、その中心だったのが元日本代表PR中村直人さんの父・中村直勝さんでした。さて、現在はどんな指導方針で活動されているのでしょう。総監督の前田純一さん(59歳)にお話を伺いました。


コーチは子どもたちの可能性を決めつけない
試合の機会を平等に与え、成長を待つ


村上 前田さんのラグビー歴から教えていただけますか。
前田 私は京都府立洛北高校ラグビー部の出身です。入学と同時に同級生、先輩に強引に誘われて始めました。実は小学2、3年生のとき、母の勧めでラグビースクール(RS)に入ったことがあったのですが、日曜日の午前中に行くのが嫌でやめてしまったんです。卒業後は、クラブチームの「なおかつクラブ」でプレーしました。なおかつクラブは、関西社会人リーグに所属していましたが、私が29歳のときに全敗し入替戦にも負けて解散することになりました。しばらくラグビーから離れましたが、40歳になって、なおかつクラブのメンバーが作った「京都ダディーズ」というチームでプレーするようになりました。

村上 京都北RSの立ち上げの経緯はご存じですか。
前田 もともとは洛北高校のOBの皆さんが、将来、洛北高校でプレーしてくれることを願ってスクールを立ち上げたと聞いています。私が高校生の頃ですね。

村上 前田さんが関わったのはいつからですか。
前田 私には3人の息子がいるのですが、現在、33歳になった長男(健太郎)が3歳の時に連れて行きました。次男は途中で少年野球に行きましたが、またラグビーに戻りました。三男も入りました。3人とも最終的に同志社大学ラグビー部でプレーしました。

村上 息子さんが入った当時の生徒数はどれくらいでしたか。
前田 70名くらいいたと記憶しています。

村上 1980年代後半はテレビドラマのスクール☆ウォーズでラグビー人口が増えていた頃ですね。
前田 そうなんです。しかし、その後生徒数が減り、単独でチームが作れずに合同チームで試合をするような状況でした。他のスクールと合併したほうがいいのではないか、という話も出ていたほどです。それが、2015年のラグビーワールドカップで一気に増え、約90名になって、各学年が単独で試合できるようになりました。生徒が増えるとその保護者の方々の口コミでさらに増えるという相乗効果が生まれました。

村上 グラウンドでは、どんな指導方針で生徒に接していますか。
前田 ラグビーの基本を大切にしています。小学生は体格の小さな子も大きな子もいて、これから成長していく段階ですから、コーチが子どもたちの可能性を決めつけないようにして、試合の機会も平等に与え、成長を待つことにしています。チームの雰囲気はとても温かく、他の習い事や塾など何らかの理由で休む子がいたとしても、皆が温かく迎え入れる雰囲気があります。

村上 特に目標にしている大会はありますか。
前田 これまで人数が少なかったので、大会にもあまり出ませんでしたし、今も身近な京都の大会を大切にしています。先日、西京極総合運動公園(京都市右京区)の補助競技場を借りることができたので、いつもお世話になっている京都ラグビースクール、亀岡ラグビースクールなどに声をかけて、北スクールカップという大会を初めて開催しました。良いグラウンドが一面借りられるときには、できるだけ近隣のスクールと一緒にラグビーを楽しみたいと思っています。


ラグビー好きで卒業してほしい
続けていれば、必ず良いことがある

村上 京都精華大学のグラウンドで練習しているのは何か縁があったのですか。
前田 精華大学の先生と交流のあった指導員がいて、お借りすることができました。以降、長らく借りています。ホームグラウンドがあるというのは幸せなことです。

村上 コーチ陣はどんな方々ですか。
前田 我々のスクールは、ラグビー未経験者の保護者の方がいらっしゃっても、Tシャツを渡してみんなでグラウンドに入って子どもたちを見守るようにしています。現在、50名のコーチが登録していて分担して指導にあたっています。元トップリーガーもいますよ。小学4年生のヘッドコーチをしているのが、同志社大学からクボタスピアーズに行った加藤仁也、6年生のコーチには森岡恵二(元サントリーサンゴリアス)などがいます。

村上 カテゴリーはどのように分けて練習していますか。
前田 基本的には各学年で分けていますが、練習内容によっては、5、6年生、3、4年生でやることもあります。上の学年は下の学年を引っ張り上げてほしいですからね。

村上 スクールによって、自分のお子さんの学年は受け持たないようにしているところがありますが、京都北RSはどうなのですか。
前田 うちは基本的に息子さんの学年を見てもらっています。僕も保護者コーチからスタートしましたが、自分の子にきつく当たるのはやめるようにお話はしています。なぜ、そうするのかといえば、家に帰って、お父さん、お母さん、お子さんで、きょうの練習について語り合うなど、コミュニケーションをとってほしいからです。

村上 モットーはありますか。
前田 「京都一、スクール生と指導陣と保護者の皆さんが仲の良いチーム」を目指そうということをスローガンに掲げています。大人の雰囲気の悪さは子どもたちに伝わります。それでは子どもたちも純粋にラグビーに打ち込めません。

村上 ラグビーは子どもたちにどんな影響を与えますか。
前田 仲間同士の連帯感は確実に強くなりますし、私の3人の息子も仲間を大事にしています。スクール生で印象的な子もいました。どんくさい子で、タックルコースからわざと外れるような子で、なよなよしていました。それがスクールを卒業後、下鴨中学、洛北高校でラグビー部に入部して頑張り、体も大きくなりました。僕は洛北OBでもあるので、卒部式に行ったのですが、後輩たちが彼のことを「先輩の努力は真似できません」と言っている。彼自身のスピーチも堂々として立派でした。その後、後輩たちの試合を応援に来ていた彼とお母さんに会いました。大学は医学部を目指し、ラグビーも続けるという。お母さんは、「この子がこんなに逞しくなったのは北RSのおかげです」と泣きながら話してくださった。

村上 スクールにいた頃はずっとなよなよしていたんですよね。
前田 そうなんです。でも、これがラグビースクールの価値だと思います。目立たないけど、ラグビーをして良かったという子がいる。ラグビーを続けていけば、高校、大学、どこで成長するか分からない。続けていけば、きっと良いことがあると話します。だから、スクールはラグビーを好きで卒業してほしい。好きで終わると次につながります。

村上 卒業生でトップリーガーになった選手もいるようですね。
前田 中村直人(同志社大→サントリー)は日本代表になりましたし、キヤノンイーグルスでプレーした植松宗之(31歳)、現役の山本雄貴(23歳)がいます。2人とも子どもの頃はまさかトップリーガーになるとは思いませんでした。中学、高校で努力したのです。努力のかたまりみたいな子たちです。

村上 前田さんが指導を続けるモチベーションは何ですか。
前田 今は総監督という立場ですが、各学年担当のコーチとして子どもたちと一緒に汗を流したとき、今から思うととても良い経験をしました。だから、今のコーチの皆さんにも、感動したり、怒ったり、泣いたり、子どもとの深いつながりを作ってほしいのです。何十年も続く間柄になってほしい。それをサポートしたいなと思います。それに、行かへんかったら、ヒマですから(笑)。



ラグビーキッズ
ラグビースクールネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート

1、ラグビースクールの名前
 京都北ラグビースクール

2、代表者
 今井陽一

3、活動場所・練習場所
 京都精華大学グランド他

4、練習場所は天然芝、人工芝、土等
 土のグランドが大半

5、活動時間
 毎週1回(日曜日、9時30分~11時30分)が基本

6、入会費、会費など
 入会金\1,000、年会費\10,000、(保護者会費\1,000)
 ジャージ、スパイク、ストッキング、ヘッドキャップ等は個人負担(約10,000)
 チームTシャツ等は無料提供

7、生徒人数など
 スクール生・約90名(内女子選手・約9名)
 外国人対応など(現在1名在籍、大歓迎です)

8、コーチ人数等
 約50名が登録(常時グランドへは30名前後)
 元トップリーガーから未経験者まで多種多様
 各学年にヘッドコーチを指名し、複数人で指導
 スクールOB、保護者コーチ、その他意欲あるコーチを受け入れています。

9、モットー・理念・大事にしている事
 ラグビーを始めるきっかけの場所として、ラグビーを「好き」になり長く続けてくれる事を望む。その為にも周りの大人を含めての雰囲気作りが大切だと考えます。当スクールでは、「京都一、スクール生と指導陣と保護者の皆さんが仲の良いチーム」を目指し、運営を心掛けています。
 ラグビーを通じて、頑張る事の尊さや仲間を大切にする事を身に着けて欲しい。

10、特徴・全員出場など他のスクールとの違い
 「勝つ」事も大切ですが、成長する機会を平等に与えたい。その為、試合の出場機会等も練習を休まず前向きなスクール生には、なるべく均等になるよう考えています。基本は試合には全員出場です。
 子供達は他の習い事や塾など、ラグビーだけに集中出来ない事や、不安定な時期もあろうかと思います。例えば、しばらく何等か理由で休んでいたとしても、皆が温かく迎え入れる雰囲気があります。
 幼児から入部出来ます。現在、10名程の幼児が在籍しています。まだまだラグビーを理解出来る年頃ではありませんが、皆楽しく練習に参加しています。

11、歴史・活動実績
 創立1979年、42年目を迎える京都では歴史のあるスクールで、京都市北部(左京区・北区)の子供達を中心に活動をしています。スクール生が減少し、なかなか試合の組めない時期もありましたが、ここ数年は部員数も増え、切磋琢磨しながら諸大会へ参加しています。

12、OB・輩出トップリーガー
 中村 直人(同志社大~元サントリー、元日本代表)
 植松 宗之(立命館大~元キャノンイーグルス)
 山本 雄貴(同志社大~現キャノンイーグルス) その他
 

13、指導方針・教育方針
 スター選手や選抜選手の養成所でない事を念頭に、スクール生の良し悪しを決めつけない。機会があれば子供達は劇的に成長する。機会は平等に。
 中学進学以降、ラグビーを継続する時に必要な「基本」を身に付けてもらう。
 挨拶を含め、ラグビーをするにおいて周りの方々に対する感謝する気持ちを持って欲しい。
 自己を高めながら、自己中心ではなく仲間を思いやる気持ちを育んで欲しい。

14、合宿について
 夏季合宿(7月末~8月初)。滋賀県マキノ高原にて二泊三日
 参加学年は基本3年生から

15、ラグビー以外の行事
 BBQ,忘年会(共にコロナ禍の為開催していませんが)
 コーチ(ミーティング、親睦会)を年複数回

16、習い事との掛け持ちは可能か、他
 可能です。
 高い比率でなんらかの事と掛け持ちをしているんではないでしょうか。
 特に高学年になると、受験の為練習に来られない、また退会の生徒も毎年複数人出て来ます。

17、保護者の活動への参加
 保護者会にて合宿などのサポートをして頂いています。
 ラグビー経験の有無に限らず、なるべく保護者コーチとしてグランドに立って頂いています。

18、どんなスクールを目指すか(将来像)
 現在においてもスクールの卒業生が自身の子供が出来、多くがコーチ等として関っています。若い卒業生もグランドへ時間が有れば顔を出してくれています。ラグビーの上達だけではなく、長くここで育んだ人間関係が続けばと思います。
 京都市北部エリアだけではなく、「京都一、スクール生と指導陣と保護者の皆さんが仲の良いチーム
を継続して目指して行きたいと思います。

19、どんな大人になって欲しいか
 仲間を思いやり、どんな状況下でも協力しあえる人間

20、プレースタイル
 基本に忠実に、最後まで諦めない

21、交流する他のラグビースクール
 市内下スクールとは常に交流を持つようにしています。

22、交流するラグビー団体、学校
 グランドをお借りしている関係で、洛北高校・北稜高校・嘉楽中学ほか



保護者へのアンケート

1、このスクールを選んだ理由
 アットホームな雰囲気に惹かれました。

2、このスクールの良い点
 初心者でも温かく迎えてくれること、わかりやすく指導してくれること、ラグビーが大好きになれること

3、スクールに改善して欲しい所
 ありません!

4、お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか
 ラグビーが大好きになり一生懸命取り組むことを覚えました、また試合で負けて本気で悔しい気持ち、もっと努力する姿勢を身に付けました。

5、お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか
 仲間を大事にする気持ちが芽生えました。

6、スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けて欲しいですか
 一生続けてほしいです!!

7、ご自身もラグビーをしていましたか
 残念ながら未経験者でした、、、(在籍校が強豪と言われるところばかりだったので始められませんでした、、、)

8、ご自身もラグビーが好きになりましたか
 元々好きでしたが、さらに大好きになりました。

9、どんな大人になって欲しいですか
 仲間を思いやれる立派なラガーマンになって欲しいです。

10、スクールに入れてよかったですか
 良かったです、ご指導いただけるコーチの皆様には本当に感謝いたしております!


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