【インタビュー】第88回▶世田谷区ラグビースクール(東京都)

目指すは、ラグビー好き輩出数世界一のラグビースクール
日本でもっとも大きなラグビースクールと言えるでしょう。生徒数は幼児から中学生まで約600名。設立は1983年。日本初の女子ラグビーチーム「世田谷レディース」を発足させ、中学生は全国大会出場6回、小学生はヒーローズカップ優勝2回とたしかな足跡を残してきました。主な練習場所は二子玉川緑地運動場で、人口が多い地域ということもあって、生徒数は右肩上がりに増え続けています。この大人数をどのように分け、効率よく練習しているのでしょう。スクールの代表を務める小林久峰さん(56歳)にお話を聞きました。


勝つための練習はするが、
それは過程であり目標ではない

村上 小林さんは、いつからラグビーを始めたのですか。
小林 私は富山県の砺波高校でラグビーを始めました。中学生の時は陸上部で短距離をやっていたのですが、体ががっしりしていたので周囲から「ラグビーをやればいいんじゃない?」と言われていました。高校に入学したとき、教室で担任の先生が入ってくるのを待っていたら、ラグビー部の顧問の先生が、ガラッと扉を開けて入ってきて、教室を見回したと思ったら、体格のいい生徒をつまみ出しました(笑)。それで「お前たち、ラグビーやらねえか」と(笑)。僕はその気だったので、「やります」と答えました。卒業後は、東京大学ラグビー部、大学院時代は学士ラガー倶楽部、就職した味の素株式会社でラグビーを続けました。

村上 世田谷区ラグビースクールとはいつから関わり始めたのですか。
小林 いま大学生の長男(侃生・つよき)が幼児のとき、子どもにラグビーをやらせたら父親の私が面倒をみるようになるだろうと妻が考え、近所にあった世田谷区RSを見つけてきました。それが2004年だったと思います。当時は生徒数もまだ少なく、幼児の練習を手伝うようになりました。その後生徒数は毎年増え続けました。2013年度で300名くらいになっていましたね。今も増え続けています。

村上 どんな保護者の方が多いのですか。
小林 ラグビーが好きで、子どもに将来ラグビーで活躍してもらいたいという人、またラグビーの持つ教育的側面に期待されている方も多いと思います。ラグビー経験の無い親の方も、2015年、2019年のラグビーワールドカップ見ていらっしゃっていますね。

村上 現在、600名の生徒をどのように分けて練習しているのですか。
小林 以前は、小学生は同じ時間帯にグラウンドの場所を分け合って、中学生は別の公園で練習して、小学生の練習が終わるころに全面を使って練習していましたね。コロナ禍の去年と今年は人数制限が設けられたので、時間を分け、場所を変えて行っています。カテゴリーは、「幼児」、小学生の「低学年」、「中学年」、「高学年」、「中学」、「レディース」と6つあり、各カテゴリーにヘッドコーチがいます。人数制限がなくなりましたので、また一緒にしようと思っています。カテゴリーで別々にやっていると、カテゴリー間の連携が無くなってしまうので、なるべく一緒にやっていきたいと思います。

村上 世田谷区RSの特徴的な練習はありますか。
小林 人数は多いので、普段の練習の中で試合形式ができますね。一方で人数が多いゆえの課題として、待っている子が出やすいのですが、練習メニューなど各カテゴリーで工夫しています。

村上 増えている生徒数は、受け入れ続けるのですか。
小林 来るものは拒まずの方針です。コロナの関係で体験の受付をできないことがあって止まっていましたが、リーグワンが開幕し、日本代表が活躍すると増えると思います。これまで使用してなかったグラウンドも探して活動場所は広げていきたいと思っています。

村上 コーチも123名と多いですね。保護者の方が多いのですか。
小林 保護者からコーチになる人がほとんどですが、コーチと保護者の立場は明確に分けていて、コーチになる人はチームに正式に入会し、日本ラグビー協会のスタートコーチの資格をとってもらうようにしています。自分の子どもが卒業しても残っている方が3分の1くらいいます。ラグビー経験がなくても、よく勉強し、レフリーの資格を取る方もいらっしゃいますね。

村上 コーチの皆さんにはどんなことを伝えていますか。
小林 まずコーチの役割は、子どもたちそれぞれが力いっぱい楽しんでラグビーができる環境を用意してあげること。それから、勝利を目指すのは大事なことですが、それは過程であり、あくまでも目標は、子どもたちの人間性を育み、社会性、自立性、主体性といった生きていくために必要な力を身に着けてもらうことだということです。

自分で判断し、行動する力を養うため、
練習中から考える習慣をつける


村上 ヒーローズカップで過去2回優勝していると、子どもたちの目標はそこになるのでしょうね。
小林 高学年の子たちはそうですね。ただ、世田谷区RSの特徴として、6年生になると中学受験のためにしばらく休む子が学年で半分くらいいます。残っている子はヒーローズカップで勝つために頑張っています。

村上 受験する子はそのまま辞めてしまうのですか。
小林 中学入試が終わった2〜3月には戻ってきます。卒業後、慶應、久我山、早実、本郷などの私立中学校に行く子は進学先の中学校でラグビーを続けます。そのほか、世田谷区の千歳中学をはじめ、それぞれが住んでいる地元の中学で続ける子もいます。中学にラグビー部がなく他の部活に所属し、ラグビーは世田谷区RSで続ける子も多いですね。うちの中学部は杉並少年RSとの合同チームとして活動しており、その他にも中学部の無い都内のRSなどから入ってくる生徒も多いです。現在、中学3学年合わせて114
在籍しています。

村上 中学生も多いですね。日本初の女子チームである「世田谷レディース」はどうなっていますか。
小林 女子ラグビーも盛んになりたくさんの女子チームができて、トップレベルでプレーする選手は移籍していきました。最近はこれまでラグビーをやってみたかったけど機会がなかったという初心者や、お母さんなど、幅広い年代が集ってラグビーを楽しんでいます。他の女子チームに所属しながら、そこの練習がないときは世田谷に来る選手もいますし、代表経験のあるようなOGも良く練習に参加してくれています。

村上 卒業して大学や社会人で活躍する選手が書ききれないほどいますが、顔を出してくれる卒業生も多いですか。
小林 中学生の指導にはよく来てくれていましたね。特に平野航輝君(トヨタ自動車ヴェルブリッツ2019年退団)はよく来てくれていました。コロナ以降はそのような機会も少なくなったのが残念です。

村上 指導をしていて、どんな時に子どもたちの成長を感じますか。
小林 試合中の子どもたちのプレーのひらめきには驚かされることが多いですね。その他にもいろいろあるのですが、単純な話、街で会ったときに生徒が挨拶してくれるのが嬉しいです。成長したというのとは違うかもしれませんが、挨拶については、しっかりできるように指導していますし、こちらが顔を忘れてしまっているような大人になっていても挨拶してくれると嬉しいですよね。

村上 小林さんが指導を続けるモチベーションは何ですか。
小林 子どもたちが成長していく様子を見ているのが一番楽しいです。同時に自分自身の勉強にもなります。人と接し、コーチングすることの学びが大きいです。

村上 アンケートの教育観のところで、「仲間を信じ、大切にする。自分で判断し、行動する。自分の可能性を信じ、挑戦する」とあります。判断力を養うような練習はあるのですか。
小林 私としては、できるだけ入れてもらうように各コーチには伝えています。まだ教え込もうとするコーチが多いのですが、そうではなく、自分でやらせてみて考える、選ぶということを促すようにコーチには伝えています。

村上 ラグビーというスポーツは、子どもたちにどんな影響を与えると感じますか。
小林 主体性が養われますよね。いざというときに自分で判断ができるし、仲間との強いつながりができますよね。それをベースにした社会性が身につくのもラグビーの特性だと思います。

村上 最後に世田谷区ラグビースクールとしての目標を聞かせてください。
小林 大きな目標でいえば、ラグビー好き輩出数世界一のラグビースクールです。具体的に言えば、どんなレベルであっても、中学、高校、その先もラグビーを続けてもらうこと。もし続けていなくても、ラグビーが好きで観戦したり、応援したりしてくれる子をたくさん増やしたいです。



ラグビーキッズ
ラグビースクールネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート

1、ラグビースクールの名前
 世田谷区ラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
 グリーン、鷺草

3、代表者
 小林久峰

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先 :
 お問い合わせフォーム - 世田谷区ラグビースクール (srfs.jp)

5、活動場所・練習場所
 二子玉川緑地運動場

6、練習場所は天然芝、人工芝、土等
 天然芝

7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 日曜日午前中が基本
 2021年度年間予定表 - 世田谷区ラグビースクール (srfs.jp)

8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 入会費なし、年会費12,000円
 ラグビージャージ、ラグビーパンツ、ストッキング、ヘッドキャップ、タグ(低学年以下)、歯科作製マウスピース推奨

9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 生徒約600名(女子比率約5%)外国人は各学年に1名程度

10、コーチ人数、指名、経歴等
 コーチ人数123
 うちラグビー経験者約7割。JRFUコーチ資格者56

11、モットー・大事にしている事・理念
 世田谷区ラグビーフットボール協会 初代会長 北島 忠治
 -少年よ 輝ける眼差しを持て-
  「少年たちには、誰でも、何かしら天与の資質が授かっているものである。私は、誰もがその資質に適した、個性豊かな、自信に満ちた、少年ラガーになれるように育てたい。」

12、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い 
 圧倒的な生徒数(日本最大規模)。幼児からレディースまで幅広い年代と多様性

13、歴史・活動実績 
 1983年4月設立
 世田谷レディースは日本初の女子ラグビーチーム
 中学生:全国大会出場6回
 小学生:ヒーローズカップ全国優勝2回、秩父宮のフレンドリーマッチ出場4回

14、OB・輩出トップリーガー
 大越元気、石原慎太郎(東京サントリーサンゴリアス)、丹治辰碩(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、滑川剛人(トヨタヴェルブリッツ)、小木曽晃大(三菱重工相模原ダイナボアーズ)、濱田岳(俳優)、若旦那(湘南乃風)
 以上、トップリーグ、有名人。
 以下、大学生(各リーグの上位カテゴリー所属。ウエブ掲載有無はお任せします)
 小柳圭輝、清水竜成、岡本大輝、細矢聖樹、守屋大誠(早稲田大学)、葛西拓斗、永友利玖、小林瑛人、大越勇気、青木大輔、春日悠平(明治大学)、菅涼介、茗荷康平、齋藤学、後藤克徳、今野勇久、五藤隆嗣、松岡勇樹、山田和歩、良塚元基、上野知和、大野嵩明、岡広将、矢部耀司、吉田統胡、田沼英哲(慶應大学)、湯浅宏太(帝京大学)、松島聡(筑波大学)、二木翔太郎、天羽秀太(立教大学)、大村知意、田口公暉(青山学院大学)、竹谷渓太郎(中央大学)、中村一歩(流通経済大学)、廣瀬和哉(日本大学)、平野雄紀(専修大学)、藤倉大介(大東文化大学)、宇山大成(天理大学)、山室諒太、河岸歩希(同志社大学)、菱田一風樹(立命館大学)前川吏六(関西学院大学)

15、指導方針・教育方針
 (1)一人一人の能力に応じた指導を行う。
 (2)明るく、元気に、のびのびした活動を展開する。
 (3)ラグビーを通じて、社会参加の能力や自立的な生活を送るための基礎的な力を育む。
 (4)子供たちの人権を尊重し、安全に配慮して、活動・指導する。
 (5)子供たちの健全育成に貢献する。

16、合宿・場所・期間・参加年齢等
 菅平合宿(小学生中学年以上、3泊4日)、川場村合宿(小学生、1泊2日)

17、ラグビー以外の行事
 夏の練習でのかき氷。
 今年については、小学生は菅平合宿の代わりに近隣で宿泊し、スイカ割り、花火大会を行いました。

18、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 多くの生徒が掛け持ちしています(サッカー、レスリング、水泳 他)。小学生~中学生はラグビーだけでなく沢山のスポーツや文化的活動に触れるべきだと考えます。

19、保護者の活動への参加・サポート
 幼児・低学年では一部の保護者に練習のサポートをお願いしています。

20、どんなスクールを目指すか(将来像)
 ラグビー好き輩出数世界一のラグビースクール

21、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 仲間を信じ、大切にする。
 自分で判断し、行動する。
 自分の可能性を信じ、挑戦する。

22、プレースタイル
 【小学生】子どもらしくパスでグラウンドいっぱいに展開してスピードで勝負するランニングラグビー
 【中学生】基本プレーをしっかり身につけ、個人の特徴を活かすラグビー。苦しいことにも楽しんでチャレンジ

23、交流する他のラグビースクール
 東京都内、関東圏のラグビースクール
 中学部は杉並少年ラグビースクールとの合同チームとして活動

24、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 聖ドミニコ学園・リコーブラックラムズ東京



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