村上
現在、金治さんは、株式会社ティーガイアの代表取締役社長を務めていらっしゃいます。組織のリーダーとして、ラグビーの経験は役に立っていますか。
金治
大学のラグビー部ではキャプテンをしていました。人数はまったく違いますけど、チームをまとめるということでは共通しています。仕事の基本は、ハードなことを規律正しくやるということだと思っています。それはラグビーと同じですよ。
村上
ラグビーのキャプテンは、すべてを自分で判断していかなくてはいけませんね。
金治
試合の組み立てもそうですし、我々の頃は練習メニューもキャプテンを中心に考えていました。監督に相談はしますけれどね。
村上
リーダーとして部下に接するときに心掛けていることはありますか。
金治
私は口が悪いので、きついことを言ってしまったときは、フォローするように努力をしているつもりです。
村上
部下に、ラグビーについて語られることはありますか。
金治
コンプライアンス(企業などが、法令や規則をよく守ること)の話をするときに、ラグビーを例に出して話すことはありますね。ハードにやらなくてはいけないけど、ルールは守らなくてはいけない。と。
村上
もう少し具体的には。
金治
2015年のラグビーワールドカップを観戦しましたが、日本代表が南アフリカ戦に勝った試合も良かったのですが、サモア戦勝利もすごく良い試合だと思っています。サモア代表は反則が多かったのですが、日本代表は激しいタックルがするけど、規律正しく戦い、反則数が少なかった。事前にレフリーの判定の傾向を分析するなど、対策を徹底していたようです。このあたりは、企業経営にも通じるところがあります。経営者は、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチのように、コンプライアンスの最新情報をわかりやすく社員に伝え、体が覚え込むまで徹底的に指導することが大切だということです。しかし、コンプライアンスのせいにして攻めの姿勢を忘れると、激しいプレーができなくなったサモアのようになってしまいます。激しいタックルを続けたジャパンのような積極的な経営も忘れてはいけない。つまり、コンプライアンスを守りながら、攻めることはできるということなんです。
村上
改めて、ラグビーという競技の魅力は。
金治
ラグビーは紳士のする野蛮なスポーツと言われます。まず紳士でなければいけない。しかし、荒々しくプレーする。荒々しさと自己規律が併存しているのが、ラグビーの魅力であり、本質だと思います。また、ラグビーは一部のスター選手だけがボールに触るのではなく、全員がボールに触れますよね。そのなかで、自分を犠牲してもチームを勝たせるという考え方がある。個人プレーと組織プレーのミックスもラグビーの魅力だと思います。
村上
ラグビーを一緒にプレーすると生涯の友達ができるという人も多いですね。
金治
味方同士があんなに密着するスポーツもないでしょう(笑)。だから卒業しても、ずっと友達でいられるのではないですか。もっと言えば、ラグビーをやっていたと聞くだけで距離が縮まる。ラグビーは競技人口が少ないからかもしれませんが、ラグビーをやっていたならわかるでしょう?という感覚がありますよね。
村上
大学時代にニュージーランドに旅行されたときも、良い思い出があるようですね。
金治
大学4年生の時に、ニュージーランドに遊びに行きました。ファームステイをしたら、そのホストファミリーの人がテニスの有名な選手だった。それで、オールブラックスの選手を知っているという。すぐに電話してくれて、当時のオールブラックスのキャプテンだったアンディ・ダルトンが、近くまで来てくれた。他にも2人のオールブラックスに会わせてもらいましたが、自分のオールブラックス時代の写真にサインをしてくれました。僕は、ただ、ラグビーを大学でプレーしたことがある日本人、それだけなのに。また、オークランドのメイン競技場であるイーデンパークに行った時も、スタッフの方に、「日本から来ました。ラグビーをしていました」と言ったら、試合をしていないのに、中の芝生のところまで案内してくれたんです。ここがラグビーの良いところだと実感しました。
村上
それはビジネスの世界でもあることですか。
金治
ビジネスの世界でもラグビーは特別だというところはあります。良い意味で特殊なスポーツですね。ラグビーをしていたのなら、俺のことをわかってくれるのではないかと思ってしまうところがある。相手のことも分かったような気になるんです。最近、特にそう感じます。
村上
ご自身の夢、目標を聞かせてください。
金治
社長を任されているうちは、今の仕事に集中したいと思います。日本で売られている携帯電話の十数パーセントは、ティーガイアを通じて売られています。携帯販売代理店として、1位の座を確保しながら新しいことにもチャレンジしたい。スマホの周辺は大きな産業ですから、その中でティーガイアにできることを仕掛けていきたいと思っています。
村上
最後にラグビーをしている、あるいはこれからラグビーを始める子供たちへのメッセージをお願いします。
金治
ラグビーというのは、本当に荒々しいスポーツで怪我をすることもありますが、一方で、規律正しく、自分をコントロールしないとできないスポーツです。私も社会人になってから、ラグビーで学んだ激しさと規律を最大限に生かして、社会人生活を行ってきました。みなさんも、ぜひラグビーを始めてほしいし、すでにプレーしている人は続けてください。ラグビーをしていたことが、超一流の社会人になることにつながると、私は信じています。ぜひ、頑張って続けていただきたいと思います。
金治伸隆様
株式会社ティーガイア 代表取締役社長。1983年京都大学法学部卒業後、住友商事株式会社入社。 中東・アジア向け自動車輸出担当後、主に国内外の情報産業分野の事業開発を担当。 その間、サウジアラビア ジェッダでの自動車販売店勤務、米国ベンチャー投資会社社長などを歴任。2014年に携帯電話販売最大手の株式会社ティーガイア入社後、コーポレート戦略本部長、スマートライフ事業本部長を経て、2017年同社社長に就任。現在に至る。ラグビー歴は神戸高校、京都大学、住友商事、ジェッダRFC。