「ラグビーが楽しい」を体にしみこませる
奈良県天理市で活動するやまのべラグビー教室は、リーグワン2023のMVP立川理道(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)の出身スクールとして有名ですが、設立は1971年という歴史あるスクールです。現在は関西大学Aリーグの公式戦も開催される親里競技場(天理市)がメインの練習場。毎週日曜日の午前中、幼稚園から中学生、お母さんのタグラグビー(ママタグ)が活動。最近は小学4年生から6年生までが土曜日にも練習しています。どんなスクールなのか、2002年から指導に携わる総合コーチの森山恭二さんに話しを聞きました。(2024年2月取材)
コーチが強制してやらせるのではなく
子どもが経験の中で気づく大切さ
村上 森山さんのラグビーキャリアを教えてください。
森山 4歳からやまのべラグビー教室に入ってラグビーを始めました。そのころから天理高校ラグビー部に憧れていまして、白のジャージの10番として花園で優勝できるように一生懸命でした。4歳上に兄(敬太さん、天理大学→サントリー)がいて、兄は10番をつけて全国優勝しました。兄を目標に天理中学、天理高校でもラグビー部に入ったのですが、高校1年生のときに大病を患い、ラグビーができなくなってしまいました。
村上 やまのべラグビー教室にかかわるようになったきっかけは何ですか。
森山 長男が小学校に上がる直前になって、やまのべに入部しました。そのとき私は32歳で指導員として関わることになりました。
村上 森山さんが子どもころと今とで指導方針に変化はありますか。
森山 やまのべラグビー教室は櫛引英吉先生(元天理大学ラグビー部監督)が1971年に作られました。そのときの方針を大切に引き継いでいます。ただ、私が子どものころは今よりもアバウトで生徒数も少なく、パスやキックの基本スキルを練習する以外は紅白試合をすることが多かったですね。ラグビーを楽しむという基本方針は変わりませんが、今のほうがスキルの練習が多くなりました。
村上 ラグビーを楽しむという指導方針をもう少し聞かせてください。
森山 将来もラグビーを続けてもらうことを大事にしています。指導上で特に大切にしているのは、型にとらわれないラグビーです。私が若いころ、試合中に斜め後ろに走る子がいました。「いらんことするな、まっすぐ走れ」と指導してしまった。すると、櫛引先生に言われました。「その子は斜めに下がりながら、どう走ればいいか考えている。その芽を摘むような、型にはめる指導はダメだ。子どもがいろいろ経験しいく中で、まっすぐ走ったほうがいいと気づく時がある。それをコーチが強制するな」ということでした。現在も子どもの個性に合わせてラグビーを楽しむという指導をしています。怒鳴りつけたり、きつい指導をすることはありません。コーチも楽しみ、子どもを誉め、ミスをしても励ますようにしています。
村上 指導員のなかに保護者は多いですか。
森山 コーチ陣は各学年に一人は経験者に入ってもらっていますが、最近は保護者の方も多くなってきて、みなさんラグビーの虜(とりこ)になっていますよ。
村上 立川直道さん、理道さんの兄弟、八ツ橋修身さん(天理大学ラグビー部コーチ)ほか、卒業生はそうそうたるメンバーです。良い選手が育つ秘訣はありますか。
森山 小学生の間にラグビーが楽しい、好きだ、日曜日が楽しみ、という感覚を体にしみこませるということでしょうか。立川理道選手も小さいころは土いじりばかりしていたと聞いています。それが楽しければ無理強いはしないことが大事ですね。
村上 そんな卒業生が応援に来てくれることはありますか。
森山 ヒーローズカップの前に井上大介が指導にきてくれましたし、大会中は立川理道が応援に来てくれましたよ。
ヒーローズカップ決勝大会出場で
子どもたちの表情、プレーが変わった
村上 2023年度のヒーローズカップでは決勝トーナメントに進出されました。楽しい指導でそこまで行くのはなぜですか。
森山 今回の6年年はやまのべラグビー教室としては珍しい学年でした。奈良建コーチが、幼稚園から持ち上がった学年で子どものころから勝ちにどん欲でした。
村上 そこは、やまのべラグビー教室として止めることはしないのですね。
森山 実は議論になりました。勝とうとすれば練習が厳しくなります。やまのべは一部のうまい子だけがラグビーを楽しむ場所ではない、全員でラグビーを楽しむ場所だという前提があります。奈良コーチに私から伝えたのは、「ラグビーを辞めたいと思わないことを大切にしよう」ということです。私は総合コーチですが、子どもたちを見ていると、奈良コーチはじめ、コーチ陣との信頼関係がしっかりしている。きつい練習になっても、コーチが愛情たっぷりに励ましていました。6年生は15人いましたが、一人も辞めたいと思った子はいないと思います。やまのべらしいスタイルで強くなってくれました。そのあたり、奈良コーチどうですか?(と、同席に奈良さんに振る)。
奈良 最初から強さを求めていたわけではなく、負けると悔しがる子どもたちが多かったので、その気持ちを大事にしたかったのです。私の息子が通っているラグビーアカデミーのコーチに教えていただいた言葉に「コーチは指導者ではない。COACHというブランドロゴがそうであるように、コーチは馬車であって、選手が行きたい場所に導いてあげる存在」があります。この教えを胸に子どもたちの気持ちを尊重しました。5年生のころ、ヒーローズカップまでの道のりを具体的に説明し、子どもたちと一緒に本気で目指すことになりました。そしてたどり着いた場所が横浜の日産スタジアム(ラグビーワールドカップ2019のメイン競技場)でした。全員があの場所に立ち、勝って嬉しい、負けて悔しいという経験をして意識が変わりました。大会後の試合では、一人一人が自分たちのやってきたことに誇りを持ち、表情も、動きも、まったく違いました。
村上 決勝大会は強いチームばかりです。そこで戦った自信は大きいですね。
奈良 優勝した豊田ラグビースクールさんとは練習試合もして、強いことは知っていましたが、関東の相模原ラグビースクールも強いと聞いていて、大丈夫かな?と思っていたら、意外に戦えて、後半逆転したときはスタジアムの雰囲気が変わりました。おそらく勝てないだろうと言われていたチームが逆転した。あの瞬間のことは忘れられません。
天理には子どもから大人まで
生涯ラグビーを楽しめる環境がある
村上 7月、8月は通常の練習はしていないのですね。
森山 夏は暑いので水泳などほかのスポーツを推奨しています。一昨年あたりからはグラウンド(親里競技場)は開放して、小さな子どもたちは芝生の上で遊び、上の学年は、軽い練習をすることもあります。また普段は基本的には親里競技場で練習しますが、使えないときは、天理大学(人工芝)、天理高校(人工芝)、天理中学(土)のグラウンドをお借りすることもあります。やまのべが所属する天理ラグビークラブは、ジュニアからシニアまでラグビーを楽しんでおり、各学校も含めてひとつのファミリーになっています。天理市には前栽(せんざい)ラグビースクールがあり、こちらもファミリーの一員です。
村上 長いコーチ生活でラグビーによって成長した子どものエピソードなどありますか。
森山 私が受け持った子で、人の話を聞かない、他の子に話しているときも邪魔をする、当然プレーも全然ダメという子がいました。この子はダメな子だと決めつけていました。しかし、根気強く教えているうちに、話も聞くようになり、練習も頑張るようになって、6年生の終わりには主力選手になりました。子どもには無限の可能性があると気づかされた出来事でした。
村上 年間のスケジュールの中で子どもたちが目標にしているのはどの大会ですか。
森山 今年の6年生は特別でいろいろな大会に出場しましたが、例年は、奈良県のミニラグビーカーニバル(11月23日)がメインです。3月に花園ラグビー場で関西地方のスクールが集まって交流する卒業記念試合には参加しますが、普段あまり遠出はしません。親里競技場で練習しているので、芝生の上でやりたいと来てくれるチームが多いですね。
村上 ラグビーというスポーツが子どもたちに与える影響についてはどう感じますか。
森山 練習が始まる前に、みんなで声を出します。「一人はみんなのために、みんなは一人のために」。嫌なこと、辛いことでもみんなのために立ち向かう責任感や人を思いやる心を育むためです。幼いときは意味が理解できていないのですが、学年が上がるにつれて言葉の意味を理解しだします。今年のヒーローズカップに出場した6年生で、センスは抜群ですが体が小さく怖がりでタックルに入れない子がいました。ところが決勝大会の試合で走ってくる大きな子に対して激しくタックルしました。仲間のために見事なタックルをした。嫌なこと、辛いことから逃げませんでした。みんなのために頑張る責任感が身に付いたことに、大変嬉しく感動しました。
村上 ラグビー教室としての今後の目標はありますか。
森山 ラグビーが楽しい、ラグビーを続けたいと思ってもらう、その一点です。一番嬉しいことは、卒業してラグビーを続けて自分の子どもを連れて帰ってきてくれることです。天理にはそんな環境が整っています。新規部員も募集中です。ホームページを見て一度見学に来ていただけたらと思います。
ラグビースクールインタビューアンケート
ラグビースクールインタビューアンケート
1、ラグビースクールの名前
やまのべラグビー教室
2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
シンボル:ベアー(天理ラグビークラブのシンボル)
ユニフォーム:赤白の横縞
3、代表者名
室長:櫛引英吉
4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
事務局長:立川悟
連絡先:〒632-0034 天理市丹波市町61-9
E-mail:yamanobe_rugby_k2@yahoo.co.jp
携帯電話:090-3674-5852
5、活動場所・練習場所
親里競技場(天理市)
6、練習場所は天然芝、人工芝、土等
天然芝
7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
活動時間
幼稚園~3年:毎週日曜日の午前
4年~6年:毎週土曜日と日曜日の午前
ジュニアタグ&ママタグ:毎週日曜日の午前
スケジュール
奈良県ミニラグビーカーニバル(11月23日)をメインの大会と考えている
天然芝のグランドを活用して、年に数度、交流試合を開催する
(シーズン制をとっており、7月と8月は平常の練習はせず、「グランド開放」として、無理なく、自由参加の活動を行っている。)
8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
入会費:なし
年会費:一人8,000円(二人目より3,000円)
ホームグランド維持管理協力金:一家庭年間4,000円
9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
生徒数:104名(内7名が女子)
ジュニアタグ(女子):15名
ママタグ:16名
(イギリス人コーチ一名在籍)
10、コーチ人数、指名、経歴等
コーチ:35名(保護者コーチを含む)
11、モットー・大事にしている事・理念
ラグビーができる楽しみを子ども達に味わってもらい、そして将来も見据えた視点から、勝敗を越えて、ラグビーフットボールの精神を伝承することを目的とする。
12、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
一人ひとり、みんなが「主役」
13、歴史・活動実績
創設:1971年4月
14、OB・輩出トップリーガー
日本代表経験者
八ッ橋修身(元神戸製鋼、天理大学コーチ)
鷲谷正直(7人制、元トヨタ自動車)
立川理道、井上大介(以上スピアーズ)
OB
松隈孝照(天理高校前監督)
松村径(山梨学院大学コーチ)
比見広一(天理大学コーチ)
高野彬夫(スピアーズ・アシスタントコーチ)
立川直道(シャークス)
松本仁志(シャトルズ)
王子拓也(元レッドハリケーンズ、天理高校監督)
久保直人(シャトルズ)
島根一磨(ワイルドナイツ)
15、指導方針・教育方針
ラグビーを楽しむ。そのために:
ラグビーは遊び、楽しむもの。ラグビーは子どもを育てるもの。目指すのは勝つためのラグビーではない。
子ども一人ひとりに心を向けて、その個性を尊重し、楽しく、型にとらわれすぎない人を生かす「人間ラグビー」を目指す。
ケガをしない・相手にも怪我をさせないことが、楽しみの入口。
子どもがラグビーを楽しめるために、基本技の修得と敏捷性の開発に重きを置く。そして試合・試合形式の練習によって応用力の向上を目指す。勝ちにこだわるようなプレーや練習(特別な筋力アップ・当たり・長距離走など)には重きを置かない。
ラグビーは本能のスポーツ。「当たる」ことは発散することで、楽しいことであることを感じてもらう。
ラグビーを楽しむためにも、感謝の心を育む。(当たり前を喜ぶ心を育てる)
自主性を育むために:
コーチは子どもを誉めて育てる。
コーチは子どもの不完全さを受け入れる。
コーチや子どもに不十分な点があれば、それは「伸びしろ」と考える。
16、ラグビー以外の行事
タケノコ狩り(3月、4月)
焼肉大会(11月)
ホームグランド大掃除(12月)
イライラしない子育て講座(保護者対象)
17、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
可能
18、保護者の活動への参加・サポート
練習後の楽しい「あめ玉」配布(毎練習後)
年会費等の徴収補佐(年に一度)
ホームグランドの清掃&草抜き(年に一、二度)
(いずれも任意)
19、スクールを目指すか(将来像)
やまのべラグビー教室の出身者が保護者として子どもを連れて、またコーチとして帰ってきたい教室を目指す。
20、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
「当たり前を喜ぶ心」を育む。(仲間がいる、対戦相手がいる、グランドがある、生きている…)
ラグビーの精神「一人はみんなのために、みんなは一人のために(英語とは違う意味)」や「ノーサイドの精神」を学びつつ、「人を思いやる心、自分も大切にする心」を育む。
ラグビーには楽しいことだけでなく、痛みや苦しみもある。それを仲間と一緒に乗り越える経験を積み、たとえ自分にとって不都合なことも、ポジティブに受け止め、前に進む力と心を養っていく。全ての出来事、全ての出会いには意味がある。
この学びと経験が、その後の人生を豊にし、そして主体的に自分の人生を生きるための、人生行路の薬味となることを願う。
「心」に楽しく陽気な、感謝があふれて「身・技」が育って欲しい。
21、プレースタイル
目指すのは人間ラグビー
心のおもむくままにプレーする方が自由で楽しい。
楽しむためにも出来る限り「立ってプレー」する。
前へ横へ、そして後ろに走ることもやまのべではありです。
一人ひとりが個性を生かし、自主的に動き、それが失敗と成功を繰り返し、一つとなって生きたチームを作る。
22、交流する他のラグビースクール
前栽少年ラグビースクール
花園ラグビースクール
岡山ラグビースクール
西宮ラグビー少年団 他
23、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
天理ラグビークラブ
天理大学、天理高校、天理中学校
24、自由欄(付け加える事があれば)
やまのべラグビー教室は、天理ラグビークラブに所属しています。
同クラブには、現在、ミニラグビーチームから大学生チーム、社会人チーム、シニアチームなどが所属しています。
大正14年、中山正善氏によって天理にラグビーの種が蒔かれました。
天理ラグビーの創始者中山正善氏が望まれたのは
「健康であることに感謝し、陽気ぐらしを楽しむ」です。
やまのべラグビー教室もこの思いを大切に活動しています。
保護者へのアンケート
1、このスクールを選んだ理由
のびのびと体を動かせられる環境だったため。
2、このスクールの良い点
1人1人の個性を大切にしてくれるところ。
3、スクールに改善して欲しい所
特になし
4、お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか
仲間の事を思いやることができるようになりました。
5、お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか
ラグビーが何より大好きになりました。
6、スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けて欲しいですか
親として強制はしませんが、本人はずっとラグビーと歩む人生を思い描いています。
7、ご自身もラグビーをしていましたか
小学生時代にしていました。
8、ご自身もラグビーが好きになりましたか
選手として、人としての子どもの成長を感じることが出来、ラグビーにハマりました。
9、どんな大人になって欲しいですか
たくさんの仲間に囲まれて、好きなことをひたむきに、何事も諦めず
毎日が楽しいと思える人生を送って欲しいです。
10、スクールに入れてよかったですか
もちろんです。やまのべラグビー教室には、感謝しかありません。
奈良県天理市で活動するやまのべラグビー教室は、リーグワン2023のMVP立川理道(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)の出身スクールとして有名ですが、設立は1971年という歴史あるスクールです。現在は関西大学Aリーグの公式戦も開催される親里競技場(天理市)がメインの練習場。毎週日曜日の午前中、幼稚園から中学生、お母さんのタグラグビー(ママタグ)が活動。最近は小学4年生から6年生までが土曜日にも練習しています。どんなスクールなのか、2002年から指導に携わる総合コーチの森山恭二さんに話しを聞きました。(2024年2月取材)
コーチが強制してやらせるのではなく
子どもが経験の中で気づく大切さ
村上 森山さんのラグビーキャリアを教えてください。
森山 4歳からやまのべラグビー教室に入ってラグビーを始めました。そのころから天理高校ラグビー部に憧れていまして、白のジャージの10番として花園で優勝できるように一生懸命でした。4歳上に兄(敬太さん、天理大学→サントリー)がいて、兄は10番をつけて全国優勝しました。兄を目標に天理中学、天理高校でもラグビー部に入ったのですが、高校1年生のときに大病を患い、ラグビーができなくなってしまいました。
村上 やまのべラグビー教室にかかわるようになったきっかけは何ですか。
森山 長男が小学校に上がる直前になって、やまのべに入部しました。そのとき私は32歳で指導員として関わることになりました。
村上 森山さんが子どもころと今とで指導方針に変化はありますか。
森山 やまのべラグビー教室は櫛引英吉先生(元天理大学ラグビー部監督)が1971年に作られました。そのときの方針を大切に引き継いでいます。ただ、私が子どものころは今よりもアバウトで生徒数も少なく、パスやキックの基本スキルを練習する以外は紅白試合をすることが多かったですね。ラグビーを楽しむという基本方針は変わりませんが、今のほうがスキルの練習が多くなりました。
村上 ラグビーを楽しむという指導方針をもう少し聞かせてください。
森山 将来もラグビーを続けてもらうことを大事にしています。指導上で特に大切にしているのは、型にとらわれないラグビーです。私が若いころ、試合中に斜め後ろに走る子がいました。「いらんことするな、まっすぐ走れ」と指導してしまった。すると、櫛引先生に言われました。「その子は斜めに下がりながら、どう走ればいいか考えている。その芽を摘むような、型にはめる指導はダメだ。子どもがいろいろ経験しいく中で、まっすぐ走ったほうがいいと気づく時がある。それをコーチが強制するな」ということでした。現在も子どもの個性に合わせてラグビーを楽しむという指導をしています。怒鳴りつけたり、きつい指導をすることはありません。コーチも楽しみ、子どもを誉め、ミスをしても励ますようにしています。
村上 指導員のなかに保護者は多いですか。
森山 コーチ陣は各学年に一人は経験者に入ってもらっていますが、最近は保護者の方も多くなってきて、みなさんラグビーの虜(とりこ)になっていますよ。
村上 立川直道さん、理道さんの兄弟、八ツ橋修身さん(天理大学ラグビー部コーチ)ほか、卒業生はそうそうたるメンバーです。良い選手が育つ秘訣はありますか。
森山 小学生の間にラグビーが楽しい、好きだ、日曜日が楽しみ、という感覚を体にしみこませるということでしょうか。立川理道選手も小さいころは土いじりばかりしていたと聞いています。それが楽しければ無理強いはしないことが大事ですね。
村上 そんな卒業生が応援に来てくれることはありますか。
森山 ヒーローズカップの前に井上大介が指導にきてくれましたし、大会中は立川理道が応援に来てくれましたよ。
ヒーローズカップ決勝大会出場で
子どもたちの表情、プレーが変わった
村上 2023年度のヒーローズカップでは決勝トーナメントに進出されました。楽しい指導でそこまで行くのはなぜですか。
森山 今回の6年年はやまのべラグビー教室としては珍しい学年でした。奈良建コーチが、幼稚園から持ち上がった学年で子どものころから勝ちにどん欲でした。
村上 そこは、やまのべラグビー教室として止めることはしないのですね。
森山 実は議論になりました。勝とうとすれば練習が厳しくなります。やまのべは一部のうまい子だけがラグビーを楽しむ場所ではない、全員でラグビーを楽しむ場所だという前提があります。奈良コーチに私から伝えたのは、「ラグビーを辞めたいと思わないことを大切にしよう」ということです。私は総合コーチですが、子どもたちを見ていると、奈良コーチはじめ、コーチ陣との信頼関係がしっかりしている。きつい練習になっても、コーチが愛情たっぷりに励ましていました。6年生は15人いましたが、一人も辞めたいと思った子はいないと思います。やまのべらしいスタイルで強くなってくれました。そのあたり、奈良コーチどうですか?(と、同席に奈良さんに振る)。
奈良 最初から強さを求めていたわけではなく、負けると悔しがる子どもたちが多かったので、その気持ちを大事にしたかったのです。私の息子が通っているラグビーアカデミーのコーチに教えていただいた言葉に「コーチは指導者ではない。COACHというブランドロゴがそうであるように、コーチは馬車であって、選手が行きたい場所に導いてあげる存在」があります。この教えを胸に子どもたちの気持ちを尊重しました。5年生のころ、ヒーローズカップまでの道のりを具体的に説明し、子どもたちと一緒に本気で目指すことになりました。そしてたどり着いた場所が横浜の日産スタジアム(ラグビーワールドカップ2019のメイン競技場)でした。全員があの場所に立ち、勝って嬉しい、負けて悔しいという経験をして意識が変わりました。大会後の試合では、一人一人が自分たちのやってきたことに誇りを持ち、表情も、動きも、まったく違いました。
村上 決勝大会は強いチームばかりです。そこで戦った自信は大きいですね。
奈良 優勝した豊田ラグビースクールさんとは練習試合もして、強いことは知っていましたが、関東の相模原ラグビースクールも強いと聞いていて、大丈夫かな?と思っていたら、意外に戦えて、後半逆転したときはスタジアムの雰囲気が変わりました。おそらく勝てないだろうと言われていたチームが逆転した。あの瞬間のことは忘れられません。
天理には子どもから大人まで
生涯ラグビーを楽しめる環境がある
村上 7月、8月は通常の練習はしていないのですね。
森山 夏は暑いので水泳などほかのスポーツを推奨しています。一昨年あたりからはグラウンド(親里競技場)は開放して、小さな子どもたちは芝生の上で遊び、上の学年は、軽い練習をすることもあります。また普段は基本的には親里競技場で練習しますが、使えないときは、天理大学(人工芝)、天理高校(人工芝)、天理中学(土)のグラウンドをお借りすることもあります。やまのべが所属する天理ラグビークラブは、ジュニアからシニアまでラグビーを楽しんでおり、各学校も含めてひとつのファミリーになっています。天理市には前栽(せんざい)ラグビースクールがあり、こちらもファミリーの一員です。
村上 長いコーチ生活でラグビーによって成長した子どものエピソードなどありますか。
森山 私が受け持った子で、人の話を聞かない、他の子に話しているときも邪魔をする、当然プレーも全然ダメという子がいました。この子はダメな子だと決めつけていました。しかし、根気強く教えているうちに、話も聞くようになり、練習も頑張るようになって、6年生の終わりには主力選手になりました。子どもには無限の可能性があると気づかされた出来事でした。
村上 年間のスケジュールの中で子どもたちが目標にしているのはどの大会ですか。
森山 今年の6年生は特別でいろいろな大会に出場しましたが、例年は、奈良県のミニラグビーカーニバル(11月23日)がメインです。3月に花園ラグビー場で関西地方のスクールが集まって交流する卒業記念試合には参加しますが、普段あまり遠出はしません。親里競技場で練習しているので、芝生の上でやりたいと来てくれるチームが多いですね。
村上 ラグビーというスポーツが子どもたちに与える影響についてはどう感じますか。
森山 練習が始まる前に、みんなで声を出します。「一人はみんなのために、みんなは一人のために」。嫌なこと、辛いことでもみんなのために立ち向かう責任感や人を思いやる心を育むためです。幼いときは意味が理解できていないのですが、学年が上がるにつれて言葉の意味を理解しだします。今年のヒーローズカップに出場した6年生で、センスは抜群ですが体が小さく怖がりでタックルに入れない子がいました。ところが決勝大会の試合で走ってくる大きな子に対して激しくタックルしました。仲間のために見事なタックルをした。嫌なこと、辛いことから逃げませんでした。みんなのために頑張る責任感が身に付いたことに、大変嬉しく感動しました。
村上 ラグビー教室としての今後の目標はありますか。
森山 ラグビーが楽しい、ラグビーを続けたいと思ってもらう、その一点です。一番嬉しいことは、卒業してラグビーを続けて自分の子どもを連れて帰ってきてくれることです。天理にはそんな環境が整っています。新規部員も募集中です。ホームページを見て一度見学に来ていただけたらと思います。
ラグビースクールインタビューアンケート
ラグビースクールインタビューアンケート
1、ラグビースクールの名前
やまのべラグビー教室
2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
シンボル:ベアー(天理ラグビークラブのシンボル)
ユニフォーム:赤白の横縞
3、代表者名
室長:櫛引英吉
4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
事務局長:立川悟
連絡先:〒632-0034 天理市丹波市町61-9
E-mail:yamanobe_rugby_k2@yahoo.co.jp
携帯電話:090-3674-5852
5、活動場所・練習場所
親里競技場(天理市)
6、練習場所は天然芝、人工芝、土等
天然芝
7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
活動時間
幼稚園~3年:毎週日曜日の午前
4年~6年:毎週土曜日と日曜日の午前
ジュニアタグ&ママタグ:毎週日曜日の午前
スケジュール
奈良県ミニラグビーカーニバル(11月23日)をメインの大会と考えている
天然芝のグランドを活用して、年に数度、交流試合を開催する
(シーズン制をとっており、7月と8月は平常の練習はせず、「グランド開放」として、無理なく、自由参加の活動を行っている。)
8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
入会費:なし
年会費:一人8,000円(二人目より3,000円)
ホームグランド維持管理協力金:一家庭年間4,000円
9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
生徒数:104名(内7名が女子)
ジュニアタグ(女子):15名
ママタグ:16名
(イギリス人コーチ一名在籍)
10、コーチ人数、指名、経歴等
コーチ:35名(保護者コーチを含む)
11、モットー・大事にしている事・理念
ラグビーができる楽しみを子ども達に味わってもらい、そして将来も見据えた視点から、勝敗を越えて、ラグビーフットボールの精神を伝承することを目的とする。
12、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
一人ひとり、みんなが「主役」
13、歴史・活動実績
創設:1971年4月
14、OB・輩出トップリーガー
日本代表経験者
八ッ橋修身(元神戸製鋼、天理大学コーチ)
鷲谷正直(7人制、元トヨタ自動車)
立川理道、井上大介(以上スピアーズ)
OB
松隈孝照(天理高校前監督)
松村径(山梨学院大学コーチ)
比見広一(天理大学コーチ)
高野彬夫(スピアーズ・アシスタントコーチ)
立川直道(シャークス)
松本仁志(シャトルズ)
王子拓也(元レッドハリケーンズ、天理高校監督)
久保直人(シャトルズ)
島根一磨(ワイルドナイツ)
15、指導方針・教育方針
ラグビーを楽しむ。そのために:
ラグビーは遊び、楽しむもの。ラグビーは子どもを育てるもの。目指すのは勝つためのラグビーではない。
子ども一人ひとりに心を向けて、その個性を尊重し、楽しく、型にとらわれすぎない人を生かす「人間ラグビー」を目指す。
ケガをしない・相手にも怪我をさせないことが、楽しみの入口。
子どもがラグビーを楽しめるために、基本技の修得と敏捷性の開発に重きを置く。そして試合・試合形式の練習によって応用力の向上を目指す。勝ちにこだわるようなプレーや練習(特別な筋力アップ・当たり・長距離走など)には重きを置かない。
ラグビーは本能のスポーツ。「当たる」ことは発散することで、楽しいことであることを感じてもらう。
ラグビーを楽しむためにも、感謝の心を育む。(当たり前を喜ぶ心を育てる)
自主性を育むために:
コーチは子どもを誉めて育てる。
コーチは子どもの不完全さを受け入れる。
コーチや子どもに不十分な点があれば、それは「伸びしろ」と考える。
16、ラグビー以外の行事
タケノコ狩り(3月、4月)
焼肉大会(11月)
ホームグランド大掃除(12月)
イライラしない子育て講座(保護者対象)
17、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
可能
18、保護者の活動への参加・サポート
練習後の楽しい「あめ玉」配布(毎練習後)
年会費等の徴収補佐(年に一度)
ホームグランドの清掃&草抜き(年に一、二度)
(いずれも任意)
19、スクールを目指すか(将来像)
やまのべラグビー教室の出身者が保護者として子どもを連れて、またコーチとして帰ってきたい教室を目指す。
20、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
「当たり前を喜ぶ心」を育む。(仲間がいる、対戦相手がいる、グランドがある、生きている…)
ラグビーの精神「一人はみんなのために、みんなは一人のために(英語とは違う意味)」や「ノーサイドの精神」を学びつつ、「人を思いやる心、自分も大切にする心」を育む。
ラグビーには楽しいことだけでなく、痛みや苦しみもある。それを仲間と一緒に乗り越える経験を積み、たとえ自分にとって不都合なことも、ポジティブに受け止め、前に進む力と心を養っていく。全ての出来事、全ての出会いには意味がある。
この学びと経験が、その後の人生を豊にし、そして主体的に自分の人生を生きるための、人生行路の薬味となることを願う。
「心」に楽しく陽気な、感謝があふれて「身・技」が育って欲しい。
21、プレースタイル
目指すのは人間ラグビー
心のおもむくままにプレーする方が自由で楽しい。
楽しむためにも出来る限り「立ってプレー」する。
前へ横へ、そして後ろに走ることもやまのべではありです。
一人ひとりが個性を生かし、自主的に動き、それが失敗と成功を繰り返し、一つとなって生きたチームを作る。
22、交流する他のラグビースクール
前栽少年ラグビースクール
花園ラグビースクール
岡山ラグビースクール
西宮ラグビー少年団 他
23、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
天理ラグビークラブ
天理大学、天理高校、天理中学校
24、自由欄(付け加える事があれば)
やまのべラグビー教室は、天理ラグビークラブに所属しています。
同クラブには、現在、ミニラグビーチームから大学生チーム、社会人チーム、シニアチームなどが所属しています。
大正14年、中山正善氏によって天理にラグビーの種が蒔かれました。
天理ラグビーの創始者中山正善氏が望まれたのは
「健康であることに感謝し、陽気ぐらしを楽しむ」です。
やまのべラグビー教室もこの思いを大切に活動しています。
保護者へのアンケート
1、このスクールを選んだ理由
のびのびと体を動かせられる環境だったため。
2、このスクールの良い点
1人1人の個性を大切にしてくれるところ。
3、スクールに改善して欲しい所
特になし
4、お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか
仲間の事を思いやることができるようになりました。
5、お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか
ラグビーが何より大好きになりました。
6、スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けて欲しいですか
親として強制はしませんが、本人はずっとラグビーと歩む人生を思い描いています。
7、ご自身もラグビーをしていましたか
小学生時代にしていました。
8、ご自身もラグビーが好きになりましたか
選手として、人としての子どもの成長を感じることが出来、ラグビーにハマりました。
9、どんな大人になって欲しいですか
たくさんの仲間に囲まれて、好きなことをひたむきに、何事も諦めず
毎日が楽しいと思える人生を送って欲しいです。
10、スクールに入れてよかったですか
もちろんです。やまのべラグビー教室には、感謝しかありません。