【インタビュー】第112回▼グリーンベルトラグビースクール

「楽しいが一番」から始めよう!
熊本県玉名市で活動するグリーンベルトラグビースクール(GBRS)は、2005年に開校されました。インタビューに答えてくださったのは、チームの創設者の一人である仲山延男さん(56歳)です。仲山さんは玉名高校、福岡教育大学、熊本県の教員団でもプレーし、愛知国体、熊本国体に出場しています。GBRS校長であり岡本外科医院院長の岡本真哉さんは、玉名高校ラグビー部を創設した同期。ラグビーを愛する仲間とともに地域にラグビーを根付かせようと奮闘しています。玉名市には、GBRS、玉名市立玉名中学校、県立玉名高校附属中学、専修大学熊本玉名高校の4チームがあります。GBRSはどんな活動をしているのでしょうか。お話を伺いました。(取材:2023年4月)


菊池川の河川敷の愛称がチーム名に。
月の会費は500円で運営

村上 仲山さんのラグビーキャリアから教えてください。
仲山 私は熊本県立玉名高等学校ラグビー部の創部メンバーです。入学後はサッカー部に所属していたのですが、怪我をして1カ月ほど休んでいる時期がありました。たまたま同じクラスにラグビーをやりたいという友人が多くて、彼らと遊んでいるうちにラグビーをすることになりました。1年生は愛好会、2年生で同好会になり、3年生で正式に部として認められました。

村上 ラグビーをやろうという仲間が多かった理由はありますか。
仲山 当時はラグビーが人気のスポーツでした。早明戦、日本選手権は6万人の大観衆を集めていました。玉名はラグビー不毛の地で、玉高ラグビー部は初めてのラグビーチームでした。

村上 グリーンベルトラグビースクール(GBRS)は、1995年に創部された玉名中学ラグビー部と深いつながりがあるそうですね。
仲山 玉名中学は現在勤務している玉名高校附属中学とは別の学校ですが、隣接しています。私は教諭として玉名中学で8年間教鞭をとりました。そこでラグビー部の監督も務めていたのですが、異動になるときに保護者の皆さんから「この地域に小学生からラグビーができるチームを作ってほしい」と言われました。それで、玉名中学を異動になった2年後にGBRSを立ち上げました。スタッフは玉名中学ラグビー部の保護者の皆さんでした。

村上 仲山先生が指導もなさったのですね。
仲山 最初はラグビー部の監督をしていなかったので、日曜日はGBRSの活動に参加し、玉名中学に異動で戻ったあとはラグビー部の指導を優先しました。GBRSについては、しばらくメインコーチを務めた後コーチ陣へのアドバイス、サポートをするほうになりました。昨年からは玉名中学の卒業生が自分の子どもを連れてGBRSに戻ってくるようになり、いま15人いる指導者のほとんどが玉名中学OBです。現在私は、玉名中学と2020年に創部した玉名高校附属中学の両方のラグビー部を指導しています。

村上 GBRSは何人の子どもたちで始めたのですか。
仲山 最初は20名くらいです。スタッフも少なかったし、日曜に来る子が5人のときもありました。続ける意味について考える時期もありましたね。以前は県内の大会もなく、佐賀県の大会に参加していました。現在のGBRSは、幼児から小学6年生まで50名ほどで活動しており、県内での交流も盛んになりました。

村上 月の会費が500円というのは安いですね。
仲山 開校した時は月に1,000円の会費で運営していたのですが、無料の時期もありました。特にコロナ禍は活動が継続的にできず、大会もなかったので運営に必要な費用だけあればいいという考え方でした。しかし、昨年からは指導者も増え、継続して活動できるように組織を整えているところです。

村上 チーム名は、なぜグリーンベルトなのですか。
仲山 我々が練習している菊池川の河川敷の愛称にちなんでいます。我々が使っているグラウンドは100m×60mの広さにラグビーのポールが立っています。上流に100m×40mのグラウンドがあり、橋をはさんで、さらに上流に100m以上のグラスグラウンドがあります。30年前に保護者の皆さんがラグビーのゴールポストを立ててくださり、現在では市民からラグビー場と認識されているようです。


広いグラウンドで人が育つ。
すべての子どもたちに試合の機会を

村上 「楽しいが一番」というモットーは、創設時に決めたのですか。
仲山 平尾誠二さん(故人。元ラグビー日本代表選手、監督)がおっしゃっていたことです。平尾さんの大ファンで本も読みましたし、玉名のホテルで平尾さんの講演会に参加したこともあります。僕も中学ラグビー部の監督時代、指導者が型にはめる教え方に疑問を感じていて、共感しました。見ている人も、やっている人も楽しんでほしい。「楽しいが一番から始めよう」というフレーズで生徒募集をしました。

村上 他の大きなRSに比べると、スクール生が少ないにもかかわらず、卒業生が大学、社会人で多数活躍していますね。何か要因がありますか。
仲山 グラウンドの力は大きいと思います。玉名中学のラグビー部は、放課後はグリーンベルトに移動して練習します。広い場所でのびのび練習すると子どもたちは成長します。その中にポテンシャルの高い子が入ってくると、正海智大(玉名中学→東福岡高校→同志社大学、高校日本代表、U20日本代表)や西山大樹(玉名中学→流経柏高校→流経大学、U20日本代表)のようにU20日本代表に入るような選手が出てきます。GBRSと玉名中学は同じような環境です。GBRSの卒業生はほとんど玉名中学でプレーしてきました。広いグラウンドは人を育てると思いますね。

村上 指導上で心掛けていることはありますか。
仲山 細かく教え過ぎないようにしています。それぞれの子が判断をしてプレーするように促しています。それと楽しませることです。

村上 試合の勝敗についてはどうですか。
仲山 小学生については特に勝敗は重視しません。私はヒーローズカップのようなチャンピオンシップの全国大会には疑問を持っています。たとえば、中学生の全国大会(太陽生命カップ)ができて、中学のレベルは上がりました。しかし、勝とうとするとブレイクダウンが激しくならざるをえません。それが中学生に必要なのかという気がしています。それよりもっとボールをつないで、走ってということが大事なのではないかと思う部分もあります。

村上 これまでラグビーの指導をされてきて、印象的なことはありますか。
仲山 どんな子も、それぞれの能力に合わせた個別の指導をして、それを認めてあげると着実に伸びていきます。中学1年生の時、ものすごく反応スピードの遅い子がいました。でも、とにかく真面目でした。彼の成長にあった指導をしているうちに、中学3年生では熊本選抜に選ばれ、高校、大学ではキャプテンになりました。

村上 子どもの可能性を指導者が決めつけてはいけないということですね。
仲山 私はエディー・ジョーンズさんのコーチングセミナーを何度も受講していますが、彼から学んで最も大切にしているのは、「選手の持っている能力を最大限引き出すのが良いコーチだ」ということです。

村上 子どもたちにラグビーからどんなことを学んでほしいですか。
仲山 ラグビーの楽しさはもちろんですが、自分のことしか考えない人が増えている世の中で、ラグビーは自分が痛い思いをしてもチームのためにプレーするというところがある。そんな精神的な部分も伝えていきたいですね。

村上 玉名市には4チームしかないそうですね。
仲山 そのほか、放課後ラグビー教室を毎週水曜日にやっています。GBRSに入っていなくても、放課後ラグビースクールだけに来る子もいます。毎回40名くらいですね。私はラグビーを愛していますし、自分の子どももラグビーで育ててもらったと思っています。地域を大事にしたいと思ったときに、ラグビーで玉名を盛り上げたいという気持ちが出てきました。GBRSを立ち上げるときに、河川敷(グリーンベルト)に1000人集める目標を宣言しました。玉名市ラグビー協会を立ち上げ、毎年、2月11日に県内のすべての小学生と中学生が集まって交流大会を開催しています。700名くらい集まるようになりましたが、さらにラグビーのすそ野を広げていきたいと思います。

村上 GBRSの今後の目標を聞かせてください。
仲山 子どもたちは、試合に勝ちたいだろうし、強くなりたい、上手になりたいという思いを持っています。それと同じくらい、チームメイトが大事にされるクラブでありたい。メンバーを絞ってチームを作らないと勝てないようなら勝たなくてもいい。練習に参加している子どもたちには、同じように試合の機会は与えたいと思っています。「楽しいが一番」を大切にしていきたいですね。



ラグビースクールインタビューアンケート

1、ラグビースクールの名前
 グリーンベルトラグビースクール(GBRS)

2、代表者名
 岡本真哉(スクール校長:岡本外科医院)

3、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 玉名グリーンベルトラグビースクール事務局(坂本祐資まで)
 TEL:0968―72-2973

4、活動場所・練習場所
 菊池川河川敷(通称:グリーンベルト)

5、練習場所は天然芝、人工芝、土等
 天然芝+雑草 グラスグランド

6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 毎週日曜日 9:00~12:00

7、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 入会費
 会費 500円/月
 未就学~2年生(タグラグビー) スクールTシャツ
 3年生~6年生(ミニラグビー) スクールTシャツ、スパイク、ソックス、短パン
 ヘッドキャップ、ジャージ(個人ユニフォーム)

8、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 部員40名(うち女子4名)

9、コーチ人数、指名、経歴等
 15名

10、モットー・大事にしている事・理念
 「楽しいが一番」
 低学年:仲間と仲良く運動することを楽しもう
 中学年:仲間と協力して一生懸命プレーすることを楽しもう
 高学年:仲間と一緒に努力して上手くなることを楽しもう

11、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 全員が出場して勝利を目指すが、勝敗よりも個人個人が精一杯プレーして、ラグビーを楽しむことを大切にしている。

12、歴史・活動実績
 2005年開校

13、OB・輩出トップリーガー
 創部1995年の玉名中学ラグビー部と、2005年開校のGBRSは密接につながっています。玉名からの輩出で紹介させてください。
 徳永亮(熊西・帝京大学初優勝メンバー・元リコー)
 本村旨崇(熊西・関東学院大学・栗田工業)
 南翔悟(佐賀工業・関東学院大・元ヤクルト)
 正海智大(東福岡優勝メンバー高校ジャパン・同志社大学U20代表・元九州電力)
 金本航(東福岡・同志社大・元ホンダ)
 西浦洋祐(荒尾高校・立命館大・ドコモ)
 本村光章(大分舞鶴・法政大・元九電)
 清原祥(荒尾高校・東洋大・ヤマハ)
 西山大樹(流経柏・流経大U20代表)
 上杉太郎(熊西・帝京大4年大学選手権優勝メンバー)
 上嶋友也(東福岡優勝メンバー)

14、指導方針・教育方針
 ラグビーが好きになり、ラグビーを通してスポーツが好きになり、ずっとラグビーを通して人生を楽しむことができ、しっかり社会貢献できる人に育てていきたい。

15、合宿・場所・期間・参加年齢等
 以前は阿蘇合宿を行っていたが、現在はやっていない。

16、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 把握はしていませんが、たくさんいると思います。

17、クラブハウスあれば
 クラブハウスではありませんが、岡本外科医院のリハビリ室は会議室になります。

18、どんなスクールを目指すか(将来像)
 スクールや玉名中、地元の中学を卒業していった子どもたちが、いつの日か帰ってきて、このクラブでコーチやスタッフとして関わってくれる。循環型クラブ

19、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 自分の育った地域に愛情を持ち、家族とともに自分を育ててくれた人たちに感謝の気持ちを持ち、いつの日か社会に貢献できる人になってほしい。

20、プレースタイル
 ハンドリングラグビー、ランニングラグビー

21、交流する他のラグビースクール
 以前は佐賀県の大会に参加していました。現在は熊本県内のチームで交流大会や練習試合を楽しんでいます。

22、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 過去3年間は大畑大介さん、大西将太郎さんがきてくれました。また、トップリーグでプレーする選手や各大学に進学している選手も、帰省した時に来てくれます。

23、自由欄(付け加える事があれば)
 玉名ではスクールの活動のほか、放課後ラグビー教室を毎週水曜日に開催しています。

24、Facebookアドレス
 玉名グリーンベルトラグビースクール | Facebook



保護者へのアンケート

1、このスクールを選んだ理由
 子供たちが楽しそうに河川敷を走り回る姿を見て

2、このスクールの良い点
 恵まれた練習環境、地元の中学生、高校生、との関わりがある
 地域密着型

3、お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか
 体力がついた、友達が増えた

4、お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか
 物心ついたときから、スクールに遊びに来ていたので、
 グリーンベルトは生活の一部になっています

5、スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けて欲しいですか
続けてほしい

6、ご自身もラグビーをしていましたか
 していません

7、ご自身もラグビーが好きになりましたか
 好きになりました

8、どんな大人になって欲しいですか
 One for all all for one の精神で、他人のために動ける大人になってほしい

9、スクールに入れてよかったですか
 よかったです





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