【インタビュー】第101回▶横浜ラグビースクール(神奈川県)

日常すべての瞬間で「7つの誓い」に恥じない行動をする
横浜ラグビースクールは生徒数約600名を誇り、東京の世田谷区ラグビースクールと並ぶ日本最大のラグビースクールです。創設は1970年。県下最初のラグビー少年団「神奈川県ラグビースクール」としてスタートしました。このスクールが大切にするのが「7つの誓い」です。1:正しくプレーする。2:協力一致。3:自己を犠牲にする。4:苦しみに耐え抜く。5:勇猛果敢。6:ベストを尽くす。7:任務を果たす。全国制覇の経験もあり、有名OBも多いスクールですが、大切にするのは豊かな人間性を育むことです。どんなスクールなのか、井上史彦校長(67歳)にお話を伺いました。


ラグビーワールドカップ横浜開催の影響で
生徒が徐々に増え、大会後はさらに増加

村上 ラグビーに出会ったのはいつですか。
井上 中学1年生(山手学院)から始めて、高校までラグビー部でした。全寮制の学校だったのですが、中学1年生で入寮したときに同じ部屋の先輩がラグビー部で強制的に入部しました。それでも、みんなで一つになって戦うラグビーが好きになり、やめられなくなりました。大学ではアメリカンフットボール部に入ったのですが、卒業後は入社した商社のラグビー部に入り、商社が集う「商社リーグ」で仕事をしながら6年ほどプレーしました。

村上 横浜ラグビースクール(RS)には、いつから関わっているのですか。
井上 息子の幼稚園の友達のお父さんから、「一緒に行きませんか?
と誘われて、息子が横浜RSに入ることになりました。そこから私も指導員として関わるようになりました。30年ほど前の話ですが、当時の生徒数は100名に満たないくらいの規模でした。

村上 創部当初は「神奈川県ラグビースクール」という名前だったのですね。
井上 他にもチームができてきたので、1982年に横浜RSと改称したようです。

村上 現在、約600名という生徒数はどのように増えたのですか。
井上 特別に何かをしたというわけではありません。ただ、小さな子どもたちにラグビーをやってほしいと思って、幼稚園には宣伝に行きました。あとは口コミなどで自然に増えていきました。2019年のラグビーワールドカップ以降は大きく増えています。横浜がメインの会場になったこともあって、大会前から徐々に増えていました。

村上 練習グラウンドは保土ケ谷公園ラグビー場を利用されているようですね。
井上 そうです。使い始めた頃は土のグラウンドだったのですが、国体が神奈川で行われたとき(1998年)に芝生になり、2007年以降は人工芝になっています。

村上 600名をどのように分けて練習しているのですか。
井上 各学年に分かれて練習していますが、600人が一つのグラウンドで練習するのは大変なので、別のグラウンドを借りて実施することもあります。

村上 「7つの誓い」というのは、いつからあるのですか。
井上 創設時の指導者の皆さんが作ってくださったものです。いまも練習前に唱和してから練習をスタートさせ、試合の前にも気持ちを一つにするために唱和しています。普段の練習でも、ことあるごとに生徒にも指導員にも7つの誓いを基本にしてやっていこうという話はしています。

村上 他にはどんなことに気を付けて指導されていますか。
井上 当然のことですが、指導者によるハラスメント、暴力はいっさい許しません。子どもたちには、ラグビーだけではなく、一人の社会人として通用する人に育ってほしいと願っています。

村上 保護者の皆さんはどんな形でサポートされていますか。
井上 練習を見守るのが基本です。父母会のようなものは作らず、あくまでも保護者として参加していただいています。例外は中学3年生で、最終学年だけは保護者会を作り、生徒に付き添って合宿、地方大会に参加していただいています。子どもたちの集大成を親御さんに見てもらいたいからです。ただ、保護者としての役割は何もないのですが、指導者として参加してもらえないかという募集はしています。

村上 指導者が約150名ということですが、保護者の方が多いのですか。
井上 3分の1くらいだと思います。保護者の方で指導員になっていただける方には、日本ラグビー協会のスタートコーチの資格をとっていただくようにしています。資格を取りスクール所定の研修会に参加するまで正指導員にはなれません。


指導者は全員がスタートコーチの資格取得
今後は地域に密着したラグビースクールに

村上 ラグビーを通して、体力の向上と豊かな人間性の育成を図るという方針とのことですが、トップチームは大会で好成績をあげていますね。両立する秘訣はありますか。
井上 強化をしているのは中学部です。幼児から小学6年生までは強化というより普及面を重視しています。たくさんの仲間を作ってほしいので、試合の時は全員がプレーするようにしています。

村上 チームとしてターゲットにしている大会はありますか。
井上 小学3年生から6年生までは秋に県下の大会がありますから、それを目標にしています。中学生については、太陽生命カップで日本一になることです。そのためにきつい練習にも取り組んでいます。小学6年生については、神奈川県のファイナルカップと、全国大会であるヒーローズカップでの優勝を目標にしています。しかし、全員が試合に出る方針は変わりません。

村上 小学校6年生で辞めて、中学部に上がらない子はいますか。
井上 ほとんど全員が中学に上がります。通っている中学で部活に入る子もいますが、部活の先生と話してスクールにも来る子がいます。いったん横浜RSに入ったらほとんどの生徒はラグビーを辞めません。だから、600名になっちゃうんです(笑)。中学部だけで150名で、一学年50名ほどいますので。

村上 みんな、高校でもラグビーは続けていますか。
井上 他のスポーツなどに行く子もいますが、3分の2以上の生徒は高校でもラグビーを続けています。

村上 日本代表の齋藤直人選手、早大の佐藤健次選手など卒業生で有名になった選手も多いですね。長らく指導に携わっていて、大きく成長した選手の印象的なエピソードなどありますか。
井上 小学校から中学でも伸びますが、中学から高校で大きく伸びる子もいて、千差万別です。誰かひとりのエピソードを上げるのは難しいのですが、名前をあげていただいた佐藤健次は中学で大きく成長しましたね。彼は小学校の時は高崎RSにいて、親御さんの転勤でたまたま横浜RSに来ました。人間的にも素晴らしく、素直だったことが大きな成長につながったと思いますね。

村上 ラグビーというスポーツが子どもたちを成長させる要因はどんなところだと思いますか。
井上 仲間意識でしょうか。ワンチームになろうという思いが強くなるスポーツだと思います。仲間内でケンカをしたとしても、次の日には仲直りして同じ目標に向かう。そこは素晴らしいと思います。お互いにサポートしないとやっていけないスポーツですから。

村上 無口だった子がよく話すようになったような例はありますか。
井上 内気だった子が学年のキャプテンになったことがあります。これは同期の子どもたちが考えて決めました。内気な子だから大丈夫かなと思って見ていたのですが、任せたことによって一変しました。自分の意見も言うし、人の意見も聞けるし、全体のことを把握できる。子どもたちのほうが先見の明がありました(笑)。子どもは何かのきっかけで怖いくらいに変わりますね。

村上 ラグビー以外のイベントも多いようですが、盛り上がるイベントはどんなものがありますか。
井上 幼児クラスで7月にスイカ割りをします。これは保護者の方も交えて、大いに盛り上がります。これを目当てに横浜RSに入っている人もいるらしいです(笑)。

村上 「日本のラグビー発祥地 横浜 記念碑」が設置されている山下町公園で、横浜市内のラグビースクールと、山下町町内会の有志による合同清掃を行っているようですね。
井上 4つのスクール合同で行っていますが、持ち回りで4か月に一度回ってきます。

村上 今後、どんなスクールにしていきたいですか。
井上 これまで通り、子どもたちの安全を最優先に考え、人と人のつながりを大切にしたいです。この春、NPO法人化しましたので、地域と密着したスクールにしていきたいですね。保土ケ谷公園を使用させていただいているので、公園の清掃をしたり、公園のイベントに参加するということから始めていきたいです。



ラグビースクールインタビューアンケート

1、ラグビースクールの名前
 横浜ラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等


3、代表者

 校長 井上史彦

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 横浜ラグビーススクールHPより、お願いしています。
 https://yokohamars.jp/
 事務所:神奈川県横浜市西区西平沼町1-14 
 ライオンズマンション平沼橋102号室

5、活動場所・練習場所
 神奈川県立保土ヶ谷公園ラグビー場
 http://www.kanagawa-park.or.jp/hodogaya/rugby.html
 ほか。

6、練習場所は天然芝、人工芝、土等
 人工芝

7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 毎週土曜日,日曜日、祝祭日 9:00〜12:00位まで。

8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 年会費 幼 児 17,000円
     1年生2年生 18,000円
     3年生4年生 24,000円
     5年生 25,000円
     6年生 27,000円
     中学生 34,000円
 身につけるウェア,ヘッドキャップ、シューズは各自で購入
 用具は年会費よりスクールが購入

9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 生徒数:約600名 (女子 約60名) 
 外国の方も受け入れ問題ありません。

10、コーチ人数、指名、経歴等
 コーチ:約150名
 小学生〜社会人までの競技経験者から、未経験者まで。
 基本的に全員が、スタートコーチ資格を取得

11、モットー・大事にしている事・理念
 創立時の指導者たちが定めた「7つの誓い」を、今も
 毎週の練習開始時や試合に臨む際、選手と指導員で、大きな声で唱和しています。
  『7つの誓い』
   1、正しくプレーする。
   2、協力一致。
   3、自己を犠牲にする。
   4、苦しみに耐え抜く。
   5、勇猛果敢。
   6、ベストを尽くす。
   7、任務を果たす。

 ラグビーだけでなく、日常全ての瞬間で、この「7つの誓い」に恥じない
 横浜ラグビースクールのメンバーであり続けたいという願いも込めて。

 
12、歴史・活動実績
 1970年4月 「神奈川県ラグビースクール」として創立
 県内スクールの増加に伴い、1982年「横浜ラグビースクール」に改称
 全国大会:中学生、小学6年ともに、全国優勝実績あり。

 
13、指導方針・教育方針
 ラグビーを通じて、体力の向上と豊かな人間性の育成を図ると共に、スポーツの楽しさと厳しさを学び、生徒たちが次代を担う立派な人間として成長してゆくことを目的として、活動しています。

14、合宿・場所・期間・参加年齢等
 夏休みに、小学3年生から中学生まで、3泊4日の菅平合宿
 ※コロナ禍の中では、開催地の分散、時期の調整等で対応
 
15、ラグビー以外の行事
 4月 お花見会
 6月 バーベキュー大会
 7月 スイカ割り

16、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 掛け持ちは問題無し。子供達の多彩な経験は、積極的に推奨中。

17、保護者の活動への参加・サポート
 撮影に趣味のある方に、活動記録カメラマンを各学年数人委嘱

18、交流する他のラグビースクール
 神奈川県内全スクール、東京、埼玉、群馬、栃木等の関東各地,及び関西のスクール2011年の東北大震災以降、釜石や北上のスクールを毎年夏に訪問しラグビー交流と同時に、震災学習を現地で実施


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