君ならできる

「それぞれの思いがあふれ出す時間だった。喜びも、悲しみも、その全てを思い出の引き出しへそっとしまってほしい。きっとその記憶は君たちの宝物になるから」。大会実行委員長の川嶋信彦の言葉が夕空に響いた。さっきまで下を向いていた子どもたちが顔を上げた。周りの仲間を見つめ、うれしそうに笑った。

3月1、2日、神奈川県立スポーツセンター(藤沢市)にて行われた三菱重工第15回神奈川県ミニラグビーファイナルカップ。春を思わせる陽気の中、県下の20チームに加えて東北の2(北上、福島県選抜)チームが参加し、熱戦を繰り広げた。




各地域でこの時期、6年生を送り出す“最後”の大会が開かれる。ファイナルカップもその名の通りラグビースクール生としての最後の勇姿を残すこと、そして中学、高校へと進む中でラグビーを続けてほしいとの関係者の思いが詰まった大会だ。

多くのスクール生をかかえるチームは、卒業する6年生全員を試合させた。選手数の少ないスクールは合同チームを編成して試合に臨んだ。「やりきるんだ」「出し切ろう」。試合前の円陣から聞こえてくる子どもたちの掛け声、そして表情はヒーローズカップとは違ったものを感じた。

この仲間たちと一緒に戦える最後の試合。ケンカしたり、ふざけあったり、一緒に泣いたり…。たくさんの時間をともにしたことだろう。見守るコーチやスタッフ、そして親たちもそれは同じだ。すべての人がたくさんの思い出をかみしめながら試合を見つめていた。



ヒーローズカップ相模原大会でぶつかった鎌倉ラグビースクールと相模原ラグビースクールが再戦し、互いの意地とプライドをぶつけあった。決勝大会に進めなかった藤沢ラグビースクールがファイナルカップを制し、神奈川の頂点に立った。それぞれのチームが確かな成長をみせた。




「大きくなったなあ」。楕円球を追いかける我が子の姿にあちこちで感慨深げな声が漏れる。心も体も、ラグビーを通して成長した子どもたちはため息が出るほどカッコよかった。去年そして今年の2年間、ヒーローズカップに関わってまだ浅い私でもそう感じたのだから、ずっと見守ってきた人々にとってこの瞬間はたまらなくうれしいことだろう。




「ありがとう、ありがとう…」。試合を終えた後の円陣からはコーチたちの涙ぐんだ声が聞こえてくる。子どもたちのまっすぐな瞳の前で難しい言葉はいらない。抱きしめ、頭をゴシゴシとなで、また抱きしめる。それだけで思いは伝わる。



まもなく新しい季節が始まる。楕円球を追いかけるものも、そうでないものも、ラグビーでつくったたくさんの思い出を胸に前へと進んでほしい。不安な時、辛い時、苦しい時、思い出の引き出しを開けて頑張った自分を愛で、支えてくれた仲間たちの存在を確かめてほしい。



心配はいらない。ラグビーやってきたんだろ?
「オレなら」できるよ、きっと。










PhotoReco https://www.photoreco.com/rkids
認証キー 2334-2789-3478-nqvw 








フォーカスオン
20件

関連記事