第8回▶ラグラン・チュウオウキッズ RUGRUN-CHUOKIDS

子どもたちのポテンシャルを引き出す総合型スポーツスクール
第8回のデミネットは、2022年4月、東京都中央区に誕生したアカデミー「RUGRUN-CHUOKIDSをご紹介します。運営するのは一般社団法人中央区ラグビーフットボール協会。毎週水曜日の夕方、中央小学校の校庭で行われています。コーチを務めるのは元7人制日本代表の正海智大さん(しょうかい・ともひろ、33歳)です。正海さんといえば、東福岡高校で全国制覇の一員となり、同志社大学、九州電力キューデンヴォルテクスで活躍した俊足バックスでした。その正海さんが、なぜ東京でこのアカデミーに関わるようになったのか。RUGRUN-CHUOKIDSとは、どんな指導をしているのか。正海さんに、基本的なところから伺いました。


RUGRUN-CHUOKIDSは、
子どもたちの可能性を広げる存在でありたい

村上 まずは正海さんの近況から教えてください。
正海 九州電力にいた2019年に現役引退しました。福岡在住でしたので、週末には東福岡高校でコーチをしていました。2年ほどで九州電力を退社し、ENEOS(エネオス)に転職して東京に来ることになりました。2年間、高校生にラグビーを教えていたので、その経験が東京でも生かせないかと思っていたときに中央区ラグビー協会の方にお会いして、考え方が一致してこのアカデミー開設に至りました。

村上 ENEOS(エネオス)への転職はラグビーとは関係がないのですか。
正海 ラグビーとは別です。キャリアのステップアップとしての転職でした。現在は電気とガスを売る管理業務をしています。

村上 子どもたちにラグビーを教えたいという気持ちはあったのですか。
正海 まだ東福岡のスタッフではあるので、競合する高校の指導はできません。しかし、強い高校に入るためにどういったスキルが必要かというのは東福岡の高校生たちを見ていて分かりました。そこに行き着くまでに必要な力を身に着けるのは、小、中学生がターゲットになると思いました。

村上 RUGRUN-CHUOKIDSという名前ですが、RUGRUNというのは、ラグビーとランニングをかけあわせたものなのですね。
正海 ラグビースクール、ラグビーアカデミーと言うと少し違います。走るということも重点的にやるスクールだからです。子どもたちが将来、全員ラグビーをするとは限りません。これからいろいろなスポーツに携わっていくなかで、走ることはどのスポーツにも共通するものです。RUGRUN-CHUOKIDSは、子どもたちの可能性を広げる存在でありたいので、走ることに重点を置いています。

村上 開校するにあたって、どのように子どもたちを集め、いまは何名くらいいるのですか。
正海 現在、小学1年生から4年生まで13名います。中央区ラグビー協会が開催しているタグラグビー教室などで声をかけて集まった小学生たちです。水曜日の夜に小学校の校庭で行っていますが、練習は70分程度です。

村上 どんな練習なのですか。
正海 最初の20分から30分は走り方のコツや、短距離走を重点的にやって、そのあとにボールを使って、一対一の抜き合いなどしています。チームで何かをするのではなく、少人数でできることを重点的に行います。練習は段階的に変えていこうと思っていますので、いまは走る楽しさや、基本的なところを習慣として根付かせようとしています。

村上 参加している子どもたちは、週末はラグビースクールに通っているのですか。
正海 いえ、通っている子はほとんどいません。どちらかといえば、ここを入り口にして各地のラグビースクールに入ってくれればと考えています。

村上 高校でトップレベルのラグビーをするため、子どものころにどんなことをしておけばいいですか。
正海 僕は声を出すことだと思っています。ラグビーは大人数のスポーツですから、コミュニケーションスキルは大事です。かつ状況判断が多いので頭も使います。声を出すということは何かしら考えているということで、ラグビーだけではなく、スポーツが上手くなるためには声を出すことは大事です。その意識づけをさせるように取り組んでいます。

村上
 ここまでの数回でも子どもたちに変化はありますか。
正海 驚くほど子どもたちの成長が早いです。素直さは小学生ならではなのかもしれません。ここで考える力を身に着け、それが習慣となって、子どもたちの選択肢が広がっていってほしいと思っています。


仕事とラグビーを両立できるのが、
一番かっこいい


村上 高校生の指導を通して学んだことでもありますか。
正海 僕は高校生などに指導するとき、将来のキャリアを考えることは大事だと話しています。東福岡で教えているときだけではなく、いろいろな場所で感じることでもあります。

村上 同志社大学から九州電力に入社されたときも、ラグビーと仕事の両立ということは考えていたのですね。
正海 仕事とラグビーを両立できるのが、一番かっこいいと思っていました。もっとも影響を受けたのは、三洋電機ワイルドナイツ(現・パナソニックワイルドナイツ)の監督を務められた宮本勝文さんです。僕が大学4年生のとき、宮本さんが同志社大学ラグビー部の監督に就任されて、仕事を全力でこなしながら監督業をされていて、こういう人ってかっこいいと思いました。

村上 RUGRUN-CHUOKIDSは、今後、どんな展開を描いていますか。
正海 中央区ラグビー協会とともに考えていくことではありますが、規模をもっと大きくして40名程度のスクールにしたいです。僕がやりたいことはキャリアと結びつけることです。中央区エリアは中学受験をする子どもたちが多く、小学5、6年生でスポーツを辞めてしまう子が多くなっています。その課題解決をしたいという思いが僕にも協会にもあります。学力の高い学校などと連携して、学業とスポーツの両立をしながら中学に進んでラグビーをしていくというような仕組みを作れないかと思っています。

村上 具体的にどんな連携を考えていますか。
正海 僕が考えているだけですが、スポーツを続けながら入試を経験した中学生たちと対話の機会を設ける。アカデミー生に対しての入学説明会をしてもらう。その代わり、我々もラグビーの指導に伺う。そんなギブ・アンド・テイクができないかと考えています。

村上 ラグビーというスポーツは、子どもたちにどんな良い影響を与えると思いますか。
正海 適応能力とコミュニケーション能力が醸成されると考えています。これは将来のキャリアにもつながることです。適応能力について言えば、ラグビーはルールがよく変わるので、いろいろな知識をアップデートしないといけない。コミュニケーション能力で言えば、団体スポーツでもっとも人数の多いスポーツであり、相応なコミュニケーションが必要だということが論理的に示されている。この2つがラグビーの魅力だと考えています。

村上 いま、小学生と接して主体性の面はどうですか。
正海 いろいろなことに興味を持っていますね。一人一人個性があり、ここは想像以上でした。でも、それを大人が押さえ付けてはいけないと思います。RUGRUNは強制的な教えは何もありませんので、一人一人の個性を伸ばす仕組みが作れていると思いますし、守っていきたいことです。

村上 仕事をしながらも、ラグビーの普及に取り組むのはなぜですか。
正海 東福岡高校を見ている中で、言われたことをする能力が高い子が年々増えていると感じていました。一方で、主体性、適応能力、コミュニケーション能力といった、そもそもラグビーで必要なスキルが落ちていると感じるところがあって、自分が何ができるかなと思ったとき、自分が若い子たちを育成したい、ということが1点目。もうひとつ、僕は大学時代に決められたことを押し付けられていたという思いがあって、僕が教えられる範囲では主体性や適応能力の指導を受けさせたあげたいので、こういう活動をしています。

村上 生徒募集のチラシには、「ウォーミングアップがとにかく多彩で楽しい」、「大好きな鬼ごっこは頭脳戦」、「ひとりひとりの個性をチェック」、「ラグビーボールエクササイズ」とあります。
正海 はい、ひとりひとりの個性をチェックというところでは、コーチ陣がそれぞれの子の性格を書き留めて理解し、個性に合わせたアプローチを心掛けています。

村上 参加の申し込みは随時受け付けていますか。
正海 はい。いつでも受け付けています。中央区ラグビー協会に問い合わせて、ぜひご参加いただければ。



ラグビーアカデミーインタビューアンケート

1、ラグビースクールの名前
 RUGRUN-CHUOKIDS

2、代表者名
 坂田光司

3、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 一般社団法人中央区ラグビーフットボール協会 担当 八所和己 yatokoro@crfu.jp

4、活動場所・練習場所
 中央小学校(東京都中央区)

5、練習場所は天然芝、人工芝、土等
 タータン

6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 水曜日18時10分~19時20分(年間33回以上実施)

7、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 運動ができる服装とランニングシューズ等※会費等については担当者へ問合せ

8、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 13名(1年生~4年生)女子1名。※2022年5月時点

9、コーチ人数、指名、経歴等
 正海智大、高校・U20・7人制日本代表

10、モットー・大事にしている事・理念
 チラシ参照

11、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 RUNにフォーカスした指導(チラシ参照)

12、歴史・活動実績
 協会の活動は2014年~。
 体育の授業やタグラグビー体験会、不定期のラグビーイベント(桜まつり、日本橋・京橋まつり)。

13、指導方針・教育方針
 ラグビーを通して総合的な身体能力を向上させる

14、合宿・場所・期間・参加年齢等
 現状なし(将来的に実施可能性有)

15、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 平日の1時間半のみなので、掛け持ちは可能だと思います。

16、保護者の活動への参加・サポート
 自由に見学していただいております、またSNSで連携を取っています。

17、どんなスクールを目指すか(将来像)
 ラグビーだけにフォーカスするのではなく、個人個人の運動能力、特にランニングメソッドにフォーカスします。その過程でラグビーというコンテンツを導入しながら運動能力を延ばし、ラグビーの魅力を実感してもらう。

18、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 社会で活躍する人材。コミュニケーション能力の高い人材

19、プレースタイル
 個と集団の両方をバランスよく

20、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 協会としてはクボタスピアーズ船橋・東京ベイ

21、自由欄(付け加える事があれば)
 ラグビースクールではないということ。
 今までにないラグビー×ランニングというアプローチスタイル。
 参加者はラグビーをやっていない子が多い。
 ラグビー選手を育てるのではなく、ラグビーがいかにトータルスポーツなのか?ということを認知してもらうような働きかけをしていきたいと考えております。

Instagramアドレス→https://instagram.com/rugrun_2022?igshid=NjY2NjE5MzQ=





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