【インタビュー】第97回▶兵庫県ラグビースクール(兵庫県)

必ずしも勝利を求めない。ののしらない。無理をさせない。
兵庫県ラグビースクールは、1968年に設立されました。ラグビーを愛するお医者さんたちが、子どもたちの健全育成を目的に始めたそうです。そんな歴史もあって、今も子どもたちの健康管理、安全には気を配っています。現在、幼児から中学生まで300名以上の生徒が在籍し、原則として日曜日の午前中に六甲アイランドの芝生広場や神戸製鋼の灘浜グラウンド、小野浜グラウンドを使用しています。コベルコ神戸スティーラーズの日和佐篤選手、李承信選手などトップレベルの選手も多数輩出するスクールの特色について、昨年まで指導部長で現在はチームの総務を務める兵庫寛之さん(62歳)にお話を伺いました。


指導の根幹には選手の「安全」がある
日々の健康管理手帳で体調チェック


村上 兵庫さんのラグビーキャリアを聞かせてください。
兵庫 豊中市の豊中第一中学でラグビーを始めました。府立池田高校でも続けて、大学時代はクラブチーム、社会人になって商社リーグでプレーしました。仕事が忙しくてしばらく離れましたが、息子が幼稚園のころに妻のママ友から兵庫県ラグビースクールのことを教えてもらいました。24年ほど前の話ですが、当時の兵庫県RSは、六甲アイランドのワールドファイティングブルのグラウンドで練習していました。天然芝の綺麗なグラウンドで、息子より私の方がそのグラウンドに立ちたいと思って先に指導員として入り、同時に息子も入れました。

村上 兵庫さんはなぜラグビーを始めたのですか。
兵庫 テレビドラマの影響です。スクールウォーズではなく、夏木陽介さんの「青春とはなんだ」です。丈の長いパンツで、ウェストのところを紐で縛っていた時代ですよ。ウールのストッキングです(笑)。ラグビーは痛かったし、傷が膿んだりして、大変なことも多かったですけど、茶色い革のボールを昼休みにみんなで磨いたりするのは楽しかったですね。

村上 兵庫県RSに指導員として入られたころは、どれくらいの規模だったのですか。
兵庫 六甲アイランドにはマンションがたくさんあって子どもが多かったんです。グラウンドもいいし、人気があって、200名くらいの生徒がいました。現在は幼児から中学生まで300名を超えています。

村上 現在はいろいろなグラウンドで練習しているようですね。
兵庫 ワールドのグラウンドはなくなりました。六甲アイランドの中に広い芝生広場があって、そこは我々が芝生の管理なども行っています。ただ、ラグビーのグラウンドではないので、小野浜の土のグラウンドを月に2回借りています。中学生は主に神戸製鋼の灘浜グラウンドのサブグラウンドを使わせていただいています。コベルコ神戸スティーラーズのチームディレクター福本正幸さんも兵庫県RSの指導員なんですよ。

村上 基本的な指導方針について聞かせてください。
兵庫 みんながラグビーを好きになり、末永く付き合える友達を作り、ずっとラグビーを好きでいてほしいということが根本です。そのために何をするかという意味では、ドクターの皆さんが始めたスクールということもあり、根幹に置いているのは「安全」です。毎年、シーズンの初めには健康診断をします。また、週に一度の練習前に提出してもらう「健康管理手帳」があり、それを提出してコーチが確認してから練習を始めるようにしています。コロナ禍になる前からずっと行っています。

村上 その手帳ではどんな健康チェックをするのですか。
兵庫 熱はありませんか? 昨夜はよく眠れましたか? 朝ごはんは食べましたか? やる気がありますか? と、そんなことの設問があり、親が署名をしたものを毎週提出してもらうのです。

村上 心身ともにラグビーをできる状態かを確認する問診票ですね。
兵庫 そうです。出欠確認も兼ねています。練習に入る前にそれを確認します。班の分け方は、幼児と、小学1年生から6年生までの各学年、そして中学部ですね。もう一つ、タグラグビー班もあります。8歳以下はタグラグビーをすることになっていますが、それがなかった時代からタグ班を作っていました。女の子が多いのですが、小学3年生以上でもタグをやりたい子もいますので分けています。兵庫県RSのタグ班からは、オリンピアンも出ました(※弘津悠、東京オリンピック女子7人制代表メンバー)。タグはサントリーカップにも出場しています。


小学校のころから凄かった李承信
指導は基礎を徹底。のびしろを残す


村上 指導方針に「必ずしも勝利を求めない。ののしらない。無理をさせない。限られた時間でどこまでやれるか挑戦する。入学した生徒は中学卒業まで在籍を目指す」などがありますね。これは昔からあるのですか。
兵庫 創立当初からの考えです。兵庫県RSの特色は最初に「必ずしも勝利を求めない」という言葉が入っていることだと思います。校長も指導部も「勝て」とは言わない。勝つほうが楽しいので勝つために練習するのですが、熱くなりすぎるコーチがいるときは、指導部のほうで抑えるように助言し、ミーティングで話し合っています。

村上 中学までラグビーを続ける子の割合はどの程度ですか。
兵庫 8割から9割の生徒は中学校でも続けてくれます。兵庫県は私立以外の中学にはラグビー部がありません。今は学校では別の部活に入りながら、兵庫県RSでラグビーを続ける子も多いですね。中学班は3学年で約60名います。またほとんどの生徒は卒業後、高校でもラグビーを続けてくれています。花園を目指していわゆる強豪校に進学する生徒も増えてきました。

村上 ラグビーを続ける子が多い中でコベルコ神戸スティーラーズに兵庫県RS出身の日和佐篤選手、李承信選手がいるのは子どもたちにとって嬉しいことでしょうね。
兵庫 承信が神戸に入ってくれたのは特に大きいと思います。2人だけではなく、トヨタヴェルブリッツのWTB高橋汰地も日本代表に選ばれましたし、ブレイブルーパスで藤野佑磨、帝京大学で奥野翔太、早稲田大学で宮尾昌典が活躍しています。ときどき顔を出してくれるので、子どもたちはトップレベルのラグビー選手を身近に感じていると思います。

村上
 トップレベルの選手を作る指導法はあるのですか。
兵庫 それは考えていません。基礎スキルをしっかり身につけ、のびしろを残して卒業してもらってもいいと思っています。

村上 ラックを作らない究極の継続ラグビーというプレースタイルも伝統的なものですか。
兵庫 7、8年前ですね。グラウンドを広く使って、モール、ラックの機会を減らして継続するラグビーをしようと決めたのは。

村上 これまで指導してきて印象的だった子はいましたか。
兵庫 私が指導していた学年で、走れないし、すぐに休憩する子がいました。以前は小学6年生の九州遠征があって、福岡のラグビースクールと交流試合をしていたのですが、そこでトライをしてから目覚めて、報徳学園高校に行ってキャプテンをして関西学院大学でもプレーした子がいました。どこでラグビーを好きになって目覚めるかどうか分からないですよね。これが指導者として面白いところでもあります。李承信(り・すんしん)のように小さなころからすごく上手い子もいますしね。

村上 李選手はいつ頃からすごかったですか。
兵庫 小学3、4年生のころから抜群に上手くて、真面目でリーダーシップもある。中学のときのキックの飛距離や、プレースキックの正確性もまったく違っていて、将来すごい選手になると思いました。

村上 スクールとしての今後の目標はありますか。
兵庫 試合結果などの目標はありません。ラグビーが好きな子どもが多くいる状況を作っていきたいですね。ある程度の怪我は仕方ない面もありますが、事故が起きないように気を配って、ラグビー好きな子どもを増やしたいです。兵庫県RSは、たくさんの子どもたちと楽しく活動できます。どんな体力でもレベルでも楽しめるように環境を整えていますので、楽しいですよ。ホームページから申し込んでいただいて、まずは見学に来ていただければと思います。



ラグビースクールインタビューアンケート


1、ラグビースクールの名前

 兵庫県ラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
 牛 赤白

3、代表者
 山本 邦之

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 653-0032 神戸市東灘区向洋町中7-2-1-5-1305  兵庫県ラグビースクール 岩見 憲二

5、活動場所・練習場所
 練習場所は天然芝、人工芝、土等
 神戸市内、六甲アイランド芝生広場(天然芝)、神戸製鋼灘浜グランド(人工芝)、小野浜グランド()

6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 毎週日曜日 9時から11時半
 入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 入会費 1000円・会費 14000

7、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 250(中学生を含む) 女子選手も多数います。 神戸という土地柄で外国人の生徒もいる学年もあります。

8、コーチ人数、指名、経歴等
 80人程度在籍しています。(神戸製鋼ラグビー部OB、ワールドラグビー部OBなど、もちろん普通のラガーマン、ラグビー未経験コーチもいます.)

9、モットー・大事にしている事・理念
 生徒にはもちろん保護者にも、ラグビーの楽しさ・面白さを理解してラグビーを好きになってもらう。
 そして、好きになったラグビーを永く続けてもらう。(底辺拡大)

10、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 神戸市全域から、生徒が集まっている。異なる学校で地域も違う友達作りが出来る。

11、歴史・活動実績
 1968年に設立された伝統あるスクールです。設立当時、青少年の体位の低さを感じラグビーをしているドクタークラブの力強いバックアップと、兵庫県ラグビー協会からラグビーの底辺拡大と子供の健全な育成を目的に要請され設立されたスクールで

12、OB・輩出トップリーガー
 日和佐 篤 (兵庫県RS→報徳学園→法大→サントリ→神戸製鋼)
 李 承信 (兵庫県RS→大阪朝鮮高→神戸製鋼)

13、指導方針・教育方針
 必ずしも勝利を求めない。
 ののしらない。無理をさせない。
 限られた時間でどこまでやれるか挑戦する。
 入学した生徒は中学卒業まで在籍を目指す。
 みんなでラグビーを楽しみ、ラグビーを通じていい友達をたくさん作る。
 ゲームを通じて、仲間で協力することを学ぶ。

14、合宿・場所・期間・参加年齢等
 場所:兎和野高原野外センター
 期間:8月 23日 
 小学1年生から参加できます。

15、校歌等
 あります。

16、ラグビー以外の行事
 他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 保護者の活動への参加・サポート

17、クラブハウスあれば
 メインの練習場として、神戸市の六甲アイランド芝生広場

18、どんなスクールを目指すか(将来像)
 ラグビーという教育のモチーフを活かした生徒の人間形成を目指したい。
  ―地域の教育機関との提携、交流を通すことによる相乗効果―

19、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 スクールの活動を通してたくさんの思い出があり、いろいろなことを考えることがあったと思います。ラグビーを頑張った経験は、きっと今後の人生でも支えてくれると思います。人とのつながりを大切に、ラグビーがその糧になることを期待しています。

20、プレースタイル
 “No Ruck Rugby”究極の継続ラグビー
 プレーしているメンバーはもとより、見ている者も楽しめるラグビー

21、交流する他のラグビースクール
 芦屋ラグビースクール、

22、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 兵庫県ラグビー協会、神戸製鋼ラグビー部



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