【インタビュー】第96回▶調布多摩川Lions(東京都)

できないことができた喜びを大切に
2022年1月に生まれたばかりのラグビースクールです。本拠地は東京都調布市。土曜、日曜、祝祭日の朝7時から8時半まで、多摩川河川敷に子どもたちの楽し気な声が響きます。現在の生徒数は30名前後で、練習は自由参加。早朝にもかかわらず、保護者と一緒に子どもたちがやってきます。大学時代にオーストラリア留学経験のある金子巧コーチが子どもたちを集めて指導したのが始まりで、現在は、元日本代表フッカー藤田剛さん(61歳)が校長を務めています。藤田さんと言えば、大阪工大高(現・常翔学園)、明治大学、日新製鋼などで活躍し、日本代表32キャップを持つ名選手です。どんなラグビースクールなのか、藤田校長にお話を伺いました。


ラグビーを楽しむことがベースも
基本的な身のこなしは教え込む


村上 調布多摩川Lionsを立ち上げた経緯を教えてください。
藤田 もともとは金子巧コーチが経営しているお寿司屋さんとイタリアレストランのお客さんから、「子どもにラグビーを教えてもらえませんか?
と依頼があったことが始まりです。金子さんは大学時代にオーストラリアでラグビーをして、明治安田生命でも続けました。私も調布に住んでいるので相談を受け、2021年の夏くらいからラグビースクールを立ち上げようということになりました。有志で練習を始め、グラウンドを探していたところ、多摩川の河川敷が早朝なら借りられることが分かって、20名くらいの生徒でスタートしました。

村上 藤田さんはラグビースクールに関わるのは初めてですか。
藤田 港区のみなとラグビースクールが立ち上げられたときに顧問をしていましたし、2019年のラグビーワールドカップが開催されたのを機に2017年に設立された調布ラグビークラブでも顧問をしています。Lionsのほうは、金子コーチに加えて、サントリーサンゴリアスでプレーされた竹本隼太郎さんにコーチ陣に加わっていただいています。幼児から中学生までを受け入れています。

村上 ホームページなどはこれから立ち上げられるようですが、生徒は増えているのですよね。
藤田 口コミでだんだん増えてきて、30名くらいになりました。最初は、幼児と小学生は一緒にやっていたのですが、今は分けてできるようになっていますね。

村上 どんな練習なのですか。
藤田 実戦的ですよ。最初はタッチフットが中心で、少しタックルも入れてみるなど、いろいろ工夫した練習で子どもたちも楽しそうにやっていました。竹本コーチが来てくれてからは、サントリーの練習方法も取り入れて、見ていて面白いです。僕は校長なのですが、これは名ばかりで遠くから眺めています。子どもたちは僕が日本代表だったとか、そんなことは知りませんからね。

村上 実戦的というのは、どんなことですか。
藤田 基礎的なことです。パス、キック、コンタクトの仕方や、寝転んでボールをダウンボールすることなどです。僕はコーチが基本的なことを忘れているのではないかと思うときに、少しアドバイスしています。

村上 たとえば、どんなアドバイスですか。
藤田 まっすぐ突っ立っているだけで、ボールがキャッチできるのか? 少し前傾してみたら? 前傾すると視野が広がるだろう?とそんな基本的なことです。我々のスクールのモットーは、ラグビーを楽しむこと、そして、できないことができた喜びを大切にするということです。

村上 藤田さんはいつからラグビーを始めたのですか。
藤田 大阪の菫中学で始めました。最初は卓球部に入ったんですよ。ところが、基本的な練習が多すぎてすぐに辞めて帰宅部になりました。暇な時間を過ごしていたら小学校からの友達が「ラグビー面白いぞ。お前の性格にぴったりやぞ」と声をかけてくれました。中学1年生でしたが、身長170㎝で横にも大きかったので、ラグビー部に入部したらすぐにプロップになりましたね。

村上 当時の中学生はスクラムを押し合っていましたよね。
藤田 ガチガチで押し合いしていました。大宮中学というところと試合をしたとき、僕はフッカーで出場したのですが、スクラムを押しまくって相手のフッカーの子を泣かしたことがあります(笑)。

村上 なぜ大阪工大高に進学されたのですか。
藤田 菫中学からは近大付属高校に行く生徒が多かったのですが、その頃は、ラグビー部が坊主頭にしていて、それが嫌だったのと、中学の先生に勧められたからです。高校2年生の時に大阪工大高として初めて全国制覇するメンバーになりました。3年生では高校日本代表にも選ばれて、大阪工大高に行って良かったです。


子どもたちが楽しそうにラグビーをする
それを黙って見ているのが面白い


村上 今のラグビースクールの子どもたちを見てどんなことを感じますか。
藤田 うまいよね。この子たちが中学に入ると、ラグビー部がない学校の場合はいろんな部活に入ると思います。そのあと、高校でまたラグビーをやってくれるかどうか。そのまま続ければぜったいに上手くなる、天才肌の子もいますよ。

村上 ラグビースクールではどんなことが大切だと思いますか。
藤田 大阪には中学のラグビー部が多くて、僕らのころは怖い先生がたくさんいましたね。ラグビースクールでもそんなイメージでやっているところもあると聞きます。それは人気がないですよね。僕は子どもたちが楽しそうにやっているのを、黙ってじっと見ているのが面白いです。子どもはのびのびやらせなければ伸びないですよ。

村上 藤田さんはラグビースクールの経験はなく、日本代表になりましたね。
藤田 選手の育つ環境はいろいろで、大学からラグビーを始めて日本代表になる人もいれば、子どものころからラグビーをしている選手もいる。中学、高校の厳しすぎる指導者のもとで嫌になってしまった選手もいるでしょう。僕も順風満帆ではなく、高校ではフッカーで高校日本代表に選ばれたのですが、大学1年生の時、フルバックをやらされたことがあります。

村上 明治大学は北島忠治監督がお元気なころですね。
藤田 練習試合でバックスに負傷者が出たので僕は水を持ってグラウンドに入ったんです。そうしたらおやじ(北島監督)が、おい、藤田、フルバックに入れ!と言うんです(笑)。そんなこともあって、いったん退部しようかと思って実家に帰ったことがあります。

村上 では、どこでやる気になったのですか。
藤田 日本代表合宿に参加したときですね。実家に帰った直後に日本代表の合宿に召集されて、参加しました。でも、フッカーとしてはなかなか出番が回って来なかったんです。するとウイングの選手に負傷者が多く出て、「誰かできるやつはいないか?」と言われた。僕は経験もないのに手を上げました。なんでもいいから試合に出たかったんです。試合に出てみると、今の日本ラグビー協会の森重隆会長が対面でした。向こうが3回ボールを持ったのを全部止めて、トライをしたら株が上がりました。もっと上手くなりたいし、上に行きたいと意識が変わって、19歳で日本代表入りできました。

村上 ご自身が経験した国際試合など、若い選手に経験させてあげていという気持ちもありますか。
藤田 ありますね。ラグビースクールでも遠征に行かせてあげたいです。まずは関西に行きたいですね。いろんな経験をさせてあげたくて、年配のチームの方と一緒に練習することもあります。

村上 ラグビーをすると子どもたちはどんなふうに変わっていきますか。
藤田 何事に対しても逃げなくなるというのが一番大きいと思います。あとはコミュニケーション能力でしょうね。分からないことが多いから、それをコーチに質問する。そうやってコミュニケーション能力が高くなると、さらに面白くなっていくでしょうね。

村上 スクールはこれからさらに大きくしていきたいですか。
藤田 まずは60名くらいにしたいですね。調布はリトルリーグが盛んなので、多くの子どもたちが野球をします。でも、野球よりラグビーに向いている子は多いですよ。野球を見に行って、「この子、いいお尻してるな
とか思いますし(笑)。まだ口コミで増やしている段階ですが、今のところはそれでよいと思っています。グラウンド確保も課題なので、企業や学校にお願いしているところです。



ラグビースクールインタビュー アンケート
 
1、 ラグビースクールの名前
 調布多摩川Lions

2、 代表者名
 藤田剛校長

3、 住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 182-0024
 東京都調布市布田1-50-1マートルコート調布3-1F
 Barry's担当金子巧

4、 活動場所・練習場所
 調布市 多摩川河川敷

5、 練習場所は天然芝、人工芝、土等
 河川敷(芝と土)


6、 活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 土日祝祭日:朝7:00〜8:30
 祝祭日を除く月曜日・水曜日:16:30〜18:00

7、 入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 入会費:お一人三千円
 月謝:家族単位千円

8、 生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 人数全員で30名前後 女性2名 外国人対応可能

9、 コーチ人数、指名、経歴等
 コーチ人数10名、代表者藤田剛校長・竹本隼太郎コーチ

10、 モットー・大事にしている事・理念
 ラグビーを楽しむ・できないことができた喜び

11、 特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 試合を中心に活動、試合慣れ、常に実戦

12、 歴史・活動実績
 1年目の若いチームです

13、 指導方針・教育方針
 ラグビーで大事な正しい努力をする。
 承認・傾聴・尊敬を選手、父兄、コーチが相互に心掛ける

14、 他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 可能です。練習参加は時間がある時でOK、参加したい時だけ参加できる環境。

15、 保護者の活動への参加・サポート
 家族単位での登録なのでご家族全員でいらっしゃっても月謝は変わらないので一緒にラグビーを勉強できます。

16、 クラブハウスあれば
 イタリアンレストラン Barry's

17、 どんなスクールを目指すか(将来像)
 地域で支える未就学から不惑ラグビーまで自由に参加できるラグビークラブ

18、 生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 子供達、後輩達に寄り添える大人

19、 プレースタイル
 ゲーム主体です

20、 交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 エリスクラブ

21、 自由欄(付け加える事があれば)
 日本ではまだ少ない
 未就学〜シニアまでみんながラグビーを楽しめて地域でラグビーと子供を支えるクラブを作りたいです。



保護者へのアンケート

1、 このスクールを選んだ理由
 ラグビーを楽しみながらレベルアップを図りたいため。

2、 このスクールの良い点
 年齢に関係なくラグビーを楽しめること。

3、 スクールに改善して欲しい所
 特にありません。

4、 お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか
 もっとラグビーが上手くなりたいという気持ちが芽生えた。

5、 お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか
 ほぼ毎日自主練をするようになった。

6、 スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けて欲しいですか
 続けて欲しいです。本人も続けると言っています。

7、 ご自身もラグビーをしていましたか
 していません。


8、 ご自身もラグビーが好きになりましたか
 好きになりました。

9、 どんな大人になって欲しいですか
 品位、情熱、結束、規律、尊重を兼ね備えた大人になって欲しいです。

10、 スクールに入れてよかったですか
 良かったです。大人になっても、次の子ども達にラグビーの楽しさを伝え、人間形成の一端を担ってほしいと思います。


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