【インタビュー】第93回▶金沢ラグビースクール(石川県)

ラグビーを通して、人間性と社会性の基礎を養う
金沢ラグビースクールは、1970年に創設され、2021年で52年目を迎えました。2020年に人工芝化された石川県金沢市営球技場を中心に、月に2~3回、日曜の午前中に活動しています。指導上、大切にされているのはラグビーのコアバリュー「品位、情熱、結束、規律、尊重」。指導スタッフも子どもたちの発達段階に応じて、安全で丁寧な指導を心掛けています。ユニフォームは貸し出され、保護者に負担をかけないように当番制などもいっさいなし。スタッフの皆さんはどのような思いでこのスクールを運営されているのか。島津健一校長(66歳)にお話を聞きました。


練習の最初は縦のつながりを大切に全員で
その後はカテゴリーに分けて基本の徹底

村上 島津さんのラグビーとの出会いから教えてください。
島津 私は石川県輪島市の出身です。子どもの頃は楕円球には縁がありませんでした。学校では生物クラブで、運動部の経験がありません。それが進学した群馬大学教育学部でラグビーに出会いました。一学年上の長常持先輩に「面白いから」と誘われて入部したのですが、1年生の夏合宿では大変な思いをしましたね(笑)。当時の群馬大学は、工学部と教育学部で作ったチームと、医学部チームがありまして、工学部にいた4年の真木先輩我々のチームのキャプテンでした。真木さんは卒業後、東京三洋(現・埼玉ワイルドナイツ)のラグビー部でもプレーされました。そこで真木さんが出会ったノフォムリ・タウモエフォラウさん(元日本代表WTB)が合宿に来てくださったこともあります。

村上 金沢ラグビースクール(RS)に関わることになったのはいつからですか。
島津 小学校の教員として地元の金沢に帰ってきました。松陵クラブ(現・金沢松陵レッドイーグルス)でプレーすることになるのですが、そこで出会った(故)柳橋 潔氏から勧められて、1978年からRSの指導にも携わるようになりました。松陵クラブは金沢松陵工業高校の卒業生が作ったクラブで、日体大のフランカーとして日本選手権(1979年1月15日)で新日鉄釜石と戦った(故)新川敏明氏(金沢松陵工業高校勤務)と一緒にプレーしました。

村上 1970年に創部されたときの経緯はご存じですか。
島津 初代校長の金沢市助役の中川さん、県協会理事長の伊藤さん(第二代校長)、金沢大学ラグビー部のOBが中心になってラグビー普及の為に立ち上げたそうです。当初は金沢大学附属小中学校のグラウンドを使っていたのですが、すぐに市営球技場で活動するようになったようです。

村上 グラウンドが人工芝化されたそうですね。
島津 昨年4月に稼働期間を増やすために人工芝化されたのですが、コロナ禍でオープニングゲームができていなくて、2022年の3月20日にオール早稲田と石川県選抜との試合を企画しています。

村上 ラグビー憲章にあるコアバリュー「品位・情熱・結束・規律・尊重」を大切に指導していらっしゃるということですね。
島津 かみ砕いて子どもたちに伝えていく必要がありますが、まず、コーチ陣が共通理解して、コーチングで具体化して、どう子どもに声掛けしていくかが大事です。まだまだ、道半ばだと思っています。

村上 コーチ自身が品位を持ち、情熱を持って指導しなくてはいけないということですね。
島津 そういうことですね。いま、52名の生徒に対して、20名のコーチ陣なのです。毎回全員のコーチが揃うわけではありませんが、できるだけたくさんの目で子どもを見てあげたいと思っています。

村上 練習はどんなメニューなのですか。
島津 基本を大切にしていますが、最初の20分は全体で練習します。グループ分けして、6年生がリーダーになって体操、ストレッチ、パス回しなどですね。そのあとカテゴリー別に分けて2時間ほどやります。カテゴリーは、「幼児」(8名)、「小学1,2年生」(14名)、「3,4年生」(21名)、「5,6年生」(9名)で、計52名です。

村上 現在、小学2年生まではタグラグビー、3年生からミニラグビーになりますが、3年生以上でもタグラグビーをしている生徒もいるようですね。
島津 全国タグ大会石川県予選などタグラグビー大会にも参加しています。金沢RSは52名中男子が36名、女子が16名で、タグラグビーに専念したいという子もいます。なので、3年生以上はタグとミニの2つに分けて指導しています。


今年から6年生全員がリーダー
それがチームの主体性を育てる


村上 金沢RS独自の取り組みはありますか。
島津 「明るく、元気に、素直に」がチームのモットーです。子どもたちに主体的に動いてもらいたくて、今年は少しやり方を変えています。これまでチームのキャプテンは、指導者が6年生と話し合って決めていましたが、今年の6年生(男子2名、女子4名)はキャプテンを決めずに、6人が主体になって運営していく体制にしています。例年、すべてキャプテンに任せる雰囲気があり、その良さもあるのですが、今年は6人がリーダーです。みんなの前で交代しながら話しますし、みんなでチームの運営を進めていく感覚になっていますね。これは下級生にもいい影響を与えていて、練習後にみんなに感想を話してもらう時間があるのですが、下級生もよく話すようになりました。

村上 子どもたちが楽しみにしている行事などありますか。
島津 例年、夏は白山登山をして山小屋で宿泊していたのですが、コロナ禍で山小屋に宿泊するのが難しくなりました。その代わりに、白山ろく少年自然の家で自然体験活動をしました。今年の冬は3年生以上で金沢市キゴ山で宿泊体験する企画をしています。こうした活動をして自然に親しみ、選手間の横のつながりを強くしたいと思っています。ラグビーだけではなく、人間性と社会性の基礎を養いたいのです。

村上 卒業後はラグビーを続けてくれていますか。
島津 金沢市には中学でラグビーをする環境が少なく、金沢RSを卒業しても続けてくれる子が少ないのが現状です。過去にいた生徒で、お父さんを亡くして家庭環境的になかなか明るい将来像が描きにくい子がいました。卒業式のときに、一人ひとりが感想を言う機会があったのですが、「中学ではバレーボール部に入りますが、高校ではラグビーをします」と言ってくれました。ラグビーに出会ったことで希望を持つことができ、目標を持って生きて行くという気持ちを伝えてくれて嬉しかったです。

村上 練習のユニフォームは貸し出すそうですね。
島津 かつては購入してもらっていたのですが、できるだけ保護者に負担をかけたくないということがあります。身長140㎝、150㎝、160㎝の3種類の大きさを用意していて、卒業時に返却してもらっています。ストッキングはおそろいのものを購入してもらい、短パン、ヘッドキャップは自由にご自分に合ったものを着用してもらえたらと思っています。

村上 生徒はどのようにして集めているのですか。
島津 口コミが多いのですが、ポスターを貼り、チラシも配布しました。金沢市のスポーツ事業団で短期ラグビー教室を実施しており、そこにチラシを持って行ったりもしました。そこで経験したお子さんが続けたいということで兄弟・姉弟で金沢RSに入ってきた例もあります。

村上 目標の大会はありますか。
島津 保護者の方々からは、「もっと勝てるチームになってください。負けばかりだと、子どものモチベーションが上がりません」と言われることもあります。しかし、基本的に月2回から3回の練習です。指導があって子どもたちの成長があるので、これからも指導方法や内容などを子どもたちに応じながら高めていきたいと考えます。

村上 島津さんは、なぜ、子どもたちにラグビーをしてもらいたいのですか。
島津 ラグビーはチームの人数の多さが、とても良いと思っています。大人のラグビーであれば両チーム合わせて30名で戦う。大人数で戦うなかに小さな社会がある。「品位、情熱、結束、規律、尊重
がラグビーというスポーツに込められた願いだと思っていますので、ここは大事にして伝えていきたいです。



ラグビーキッズ
ラグビースクールネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート

1、ラグビースクールの名前

 金沢ラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等

ラグビースクール校旗・ユニフォーム3種(赤・青)(オレンジ・黒)(赤・黒)・エンブレム(イヌワシ)

3、代表者名

  校長 島津 健一

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問い合わせ先

 問い合わせ先:川原 慎玄 921-8832 石川県野々市市藤平田1-334

 TEL:090-7049-9921 E-mail:kawahara.s@space lan.ne.jp

5、活動場所・練習場所

 金沢市営球技場を中心に活動

6、練習場所は天然芝、人工芝、土等

 人工芝G


7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等(別紙参照 )

 9:00~12:00  

 ・「共通」

  ストレッチ・体幹トレーニング・ランニング・パススキル(ハンドリング)   等

 ・「タグ」

  1対1・2対2・3対3のショートゲーム形式、ランニングスキル

 ・「ミニ」

  タックル・コンタクトプレー(モール・ラック)、ラインアウト、ゲーム形式、ランニングスキル

 ・練習メニュー(タイムスケジュール)の共有化 


8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの

 入会費なし・会費(年間12,000円、兄弟姉妹2人目からは半額)


9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等

 全体:49人・女子構成比:約30%・現在の所外国人は在籍していない

10、コーチ人数、指名、経歴等

 20名、ラグビー経験者もいるが、保護者から指導者になったcoachが多数


11、モットー・大切にしている事・理念

 安全・安心を基本に、発達段階を見据え、「明るく・元気・素直」をモットーにラグビーを通して人間性と社会性の基礎を養う。


12、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い

 全員試合出場は原則とし、U8のタグラグビーだけでなく、U10・U12のタグラグビー希望者にも対応。

13、歴史・活動実績

 1970年(昭和45.4開校)今年度52年目を迎える。

14、OB・輩出トップリーガー

 OB現在県内高校指導者2名、元サニックストップリーガー1名

15、指導方針・教育方針

 安全性の確保を最優先に、適切・適確なコーチングに努め、勝利至上主義に陥らないようにする。

 タグ・ミニの活動スタイルを継続していきたい。スクールより保護者に活動に対する案内を渡し理解・協力を願う。例えばコンタクトプレーに対する取り組みは大会を見据え、段階的な指導スケジュールを組み、自信を持って参加させたい。

 基本的に発達段階別に低学年(園児を含む)・中学年・高学年の指導体制で行うが、全体練習を前半部分で行う事により、teamとしての結束を高める。

16、合宿・場所・期間・参加年齢等

 特に位置付けなし

17、ラグビー以外の行事

 夏フェスタ・冬フェスタ

18、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか

 可能である。 (現在5名:回答があったもののみ。例スイミング・ソフトテニス・陸上・習字)

19、保護者の活動への参加・サポート

 夏フェスタ・冬フェスタへの参加・サポート有

20、んなスクールを目指すか(将来像)

 基本的には、個々のスクール生に、練習やゲームを通してラグビーボールを持って走る・パスする等グランドでの基本的な練習や各カテゴリーごとの試合、さらに白山登山や冬のフェスティバルなど自然体験活動などを通して、強さ・たくましさ・優しさといった人間形成の基礎につなげたい。

 さらに今後のスクールの持続可能な運営を行っていくうえでも多くの子ども達にラグビーボールに触れる機会を持つ、事業団主催の短期ラグビー教室にスクールとして協力・支援したいと考える。

21、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)

 自立した人間性と社会性豊かな大人を目指す。

22、プレースタイル

 柔軟なプレースタイル

23、交流する他のラグビースクール

 県内のRS

24、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)

 金沢市ラグビー協会・白山市立広陽小学校

25、自由欄(付け加える事があれば)

 ラグビーが本来持っている、コアバリュー「品位・情熱・結束・規律・尊重」を大切に、指導を行う。



保護者アンケート

1、このスクールを選んだ理由
 正直、他のラグビースクールも見学に行きましたが、スクールの保護者の雰囲気、そして何より子どもが「金沢ラグビースクールに入りたい」と迷わず答えました。子どもの選択を尊重し、その選択は正しかったと思っております。

2、このスクールの良い点
 子ども同士、子ども達とコーチ、子どもと保護者の関係が温かみのあるものでとても良いと思います。

3、スクールに改善してほしい所
 スクールで何を目指すのか、子ども達にどのようになってほしいかにもよりますが、試合(大会)には、それに向けた準備(トレーニング)をしっかり行った方が良いかと思います。勝ち負けにこだわる訳では全くありませんが、勝つことで得られる経験は、子ども達に達成感や次への意欲に繋がるものであると思います。対して試合に負け続ける状態は、子ども達のあきらめる気持ちへの助長となりかねず私個人としては、若干懸念をしております。

4、お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか
 下の子については、もともと意欲的に物事に取り組む事ができる小ですが、スクールに入り、継続的にラグビーに取り組む事ができるうれしさを感じている様子です。
 上の子については、陸上のプラスアルファとしてラグビースクールに参加させましたが、今ではラグビースクールも意欲的に参加しようという気持ちが感じられるようになっております。

5、お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか
 土日のいずれかがラグビースクールに携わっているので、子ども達もいい意味でスクールありきの休日を考えるようになりました。

6、スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けてほしいですか
 間違いなく続けさせます。親個人としては、花園を目指せるような選手に成長してほしいという願望があります。その為の選択肢として何がベストなのか、今後考えて行きたいと思っております。

7、ご自身もラグビーをしていましたか
 ラグビー経験者です。センターとフランカーをしておりました。

8、どんな大人になってほしいですか
 ラグビーに限らず、困難に逃げずに立ち向かう事ができる人間になってほしいと思います。ラグビーのタックルではありませんが、倒れてもすぐに起き上がり、向かってくる相手(困難)にまたタックルできるメンタルを持って欲しいです。

9、スクールに入れてよかったですか
 間違いなく良かったです。スクールでの学校では経験できない事は、子ども達にとって成長の糧になっていると感じております。


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