【インタビュー】第7回▶GLOCAL RUGBY SCHOOL

オンラインによる、グローバルとローカルと仲間を大切にする学校
プロラグビー選手の山田章仁さんが代表を務めるグローバルラグビースクール(GRS)のヴィジョンには、次のように書かれています。【グローバルな視点で物事を捉え、 勉学に励み、スポーツに励む。そんなスクール生活を経験し、成長し、その中でローカルの大切さに気づき、仲間の存在を大切にする。努力を続けられる身体的、精神的な強さでみんなの将来は豊かになります。(中略)価値観の違う学生と切磋琢磨することで新しい自分に出会う瞬間を探してほしいと思っています。GRSを通して今までの学生生活に少しだけ変化を加え、 楽しい仲間たちとみんなで一緒に自分のレベルアップに取り組みましょう!】。山田さんにさらに詳しくお話を聞いてみましょう。


現役選手の鮮度の良い、今の感覚
それを子どもたちに伝えたい

村上 グローカルラグビースクールとは、どんなスクールなのですか。また、なぜ立ち上げたのですか。
山田 GRSはグローバル(国際的)な視点で 物事を捉えつつ、ローカル(地方)の地域や 仲間を大切にするラガーマンのための学校です。ヴィジョンに書いた通りではあるのですが、現役選手の多くが地元に帰ってラグビーを教えることがありますよね。でも、子どもたちが聞きたいことを聞けないことも多いと思うんです。人数も多いですから。そこで、子どもたちに、現役選手の鮮度の良い、今の感覚を伝えたいと考えました。コロナ禍で、始めようという気持ちがより強くなりました。オンラインなのでどの場所にいても伝えることができます。将来「ラグビーをやっていて良かった」と言える人生にするための、オンラインラグビースクールにしていきたいと思います。

村上 会費は、月5,000円ということですね。具体的にはどんなことを学べるのか教えていただきたいのですが、ホームページを拝見するといくつかのコンテンツがありますね。「スキル動画見放題」というのはどんなものですか。
山田 見本の動画は、僕がパスのスキルについて説明しています。WTBは、予想しないタイミングでボールが来ることがあります。そんなときは、いつでも手を出せるように腕を振っておいたほうがキャッチしやすいのです。また、走るスペースも見る必要があるので、ずっとパスをする選手を見ることはできません。そのために周辺視野を鍛えて、いつパスが出るか感じながら走ることが大切です。そんなことを実演しながら見せています。僕だけではなく、キック、タックル、スクラムなど、いろんなスキルを現役選手の感覚で伝えようと思います。この動画は会員になると見ることができます。

村上 「ラグビー英語配信」もありますね。例となる動画は、「What time are we starting tomorrow? 明日何時から?」です。こういう現場で必要な英語も良いですね。
山田 グローバルに生きていくためには英語が大事です。僕は年の離れた姉がいまして、「何をするにしても英語は大事だよ」と言われて育ったので、子どもの頃から英語の勉強はしていました。グローバルな世界で活躍できる人間になりたい。それが大学に進学するときの思いでもありました。英語でコミュニケーションを取れるようになってからは、仲間が地球規模で広がり、ラグビーを通して世界で活躍するチャンスに恵まれました。日本代表でも英語が母国語の選手には英語で話しかけるようにしました。すると、リアクションが良いのです。これはプレーに良い影響がありました。この動画を見るだけで英語が話せるようになるわけではありませんが、興味を持つきっかけになればと思っています。


子どもたちから送られてきた動画を見て
言葉で、文字で細かくアドバイス


村上 「成長記録」というコンテンツがあり、ここはインスタグラムに選手たちが動画を送ってきて、それを見てアドバイスするわけですね。
山田 そうです。たとえば、パスが上手くいかなかったプレーの映像が送られてきて、「僕はどうすればよかったのですか?」とか、タックルの動画が送られてきて、「この形でいいですか?」と質問が来る。それに動画でアドバイスすることもあるし、テキストでメッセージを送ることもあります。いまのところ会員が集まってコミュニケーションを直接とる場はありませんが、他の選手の動画を見て、全国の仲間のことも知ってほしいですね。

村上 「オンラインでの1:1直接指導
は、どんな形で指導するのですか。
山田 ラグビーの技術的なことに限らず、進路相談などさまざまな相談に応じます。これは、別料金になるのですが、カレンダーの枠を決めて、日時の予約をしてもらって、その時間に対応する形です。

村上 オフラインのイベントもあるのですか。
山田 浦安でのラグビークリニック、また遠征先でのクリニックなど、今後、いろいろと考えていきたいと思っています。

村上 GRSのルールもありますね。「メンバーの意志を尊重する」と、「営業行為の禁止」です。
山田 GRSの参加には、お互いの信頼関係が欠かせません。嘘や偽りのない、本心からのディスカッションがGRSの醍醐味なのですが、そこにはデリケートな話もあると思います。公にしたくない内容の場合もあるでしょう。それを、外部で言いふらさないでおきましょう、ということです。営業行為の禁止については、GRSは学校であり、お互いが切磋琢磨する場所です。営業やその他一切の商材をこのコミュニティで販売・紹介することは禁止です。

村上 グローバルとローカル。山田さん自身がローカルの大切さに気付いたのはどんなときですか。
山田 日本代表になっていなくても、トップ選手はみんな地元のヒーローなんです。これは現役の選手にも伝えたいことです。子どもの頃から地元に支えられて大きくなって、僕の場合は北九州から東京に出て、世界でもまれた。それも地元のラグビー仲間、コーチがいてくれたからできたことです。「グローカル
という言葉には、そういう意味も込めています。

村上 最後にあらためて、子どもたちにメッセージをお願いします。
山田 GRSを通して今までの生活に少しだけ変化を加え、 楽しい仲間たちとみんなで一緒に自分のレベルアップに取り組んでほしいのです。一人でも多くのメンバーがひとつでも多くのレベルを上げられるように、みんなで頑張っていきましょう。このGRSの中から、世界で活躍できる人が出てくるのを心の底から願っています。


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