【インタビュー】第90回▶札幌ラグビースクール(北海道)

札幌に根差し、地域の教育力を担うスクールを目指して
1981年、札幌有惑のメンバーにより創立され、2021年で開校40周年を迎えました。練習は毎日曜日の午前中が基本で、夏シーズンは屋外で、冬シーズンは体育館で練習し、雪中ラグビーも楽しんでいます。「生徒心得十カ条」は次のような言葉が並びます。「自分の健康管理は自分でしっかり行う」、「感謝の気持ちを持つ」、「ルールを守る」、「挨拶を大きな声で行う」、「常に大きな声を出す」、「気持ちを切り替える」、「自分の用具、チームの用具を大切にする」、「目的を持って練習する」、「試合相手、レフリーを尊敬する」、「仲間を大切にする」。どんなスクールなのか、副校長の山本清和さん(59歳)にお話を聞きました。


子どもたちをゲームやスマホから解放、
外で体を動かす楽しさを知ってほしい

村上 山本さんがラグビーに関わったきっかけを教えてください。
山本 進学した札幌旭丘高校は地元なので顔見知りの先輩が多く、ラグビー部の先輩が「ラグビーやらないか」と誘ってくれて始めました。学習院大学入学後は、東京の学生生活を満喫しようと思って最初の1カ月くらいは遊んでいたのですが、すぐに飽きてしまって、6月にラグビー部に入りました。就職先は富士重工(スバル)で、栃木県の宇都宮にある製作所に配属になりました。そこに栃木の社会人リーグに所属するラグビー部があって、5、6年プレーしました。

村上 いつ北海道に戻ったのですか。
山本 父の経営する会社を継ぐために30歳を過ぎて地元に戻りました。2000年に長男(秀洸)が生まれて、小学1年生になるときにラグビースクールに入れることにしました(2007年)。高校の先輩から北海道バーバリアンズに誘われたのですが、北海道BBは土曜日に練習しています。うちの会社が土曜日は仕事なので、日曜日に活動する札幌少年ラグビースクール(RS)に通うこになりました。そこで、コーチの方から「お父さんも経験者なら一緒にやりましょう」と声をかけてもらいました。

村上 そのとき、札幌少年RSは何名くらいいたのですか。
山本 40名くらいですね。真面目にラグビーに取り組んでいる印象でした。2015年のラグビーワールドカップの日本代表の活躍で生徒数が増え、2019年でまた増えて、現在は約90名です。

村上 指導上で大事にしていることはどんなことですか。
山本 怪我をしないように安全第一に考えています。幼児から中学生までいますので、学年によって違いはありますが、まずはラグビーを楽しんでもらうことを大切にしています。また、コロナ禍で子どもたちが自宅にいる時間が多くなり、暇があればゲームをし、スマホをいじっている。そういうものからできるだけ離れ、外で体を動かす楽しさを知ってほしいと思っています。バーチャルではなく、リアルな痛さ、辛さ、苦しさを、身をもってわかってほしいのです。ラグビーはヒューマン・スキルが上がります。相手の立場に立って考えられるようになるし、痛みを分かり合えるようになると思います。

村上 スクールの方針として、「勝利至上主義ではないが、出場する大会では常に優勝を目指し、真摯に取り組む」とありますね。
山本 子どもは競うのが好きで、相手に勝ちたいという気持ちを持っています。参加するのであれば勝とう、優勝を目指そうと言っています。それが自然だと思います。

村上 生徒の成長を実感したエピソードはありますか。
山本 どのスクールも同じだと思いますが、練習の中にひとつくらいは肉体的に辛い練習があります。体力があって先にゴールした子が、遅い子を励まし応援する。そんな仲間意識が生まれるところを見ると成長を感じます。また、コーチが言おうとしていることを子どもたち同士が話しているときもあり、自ら考えてプレーしているところです。

村上 たとえば、どんなことですか。
山本 いまはコーチが試合中には声を出さないようにして、ハーフタイムだけ話をするのですが、パワーあるチームに劣勢になっているとき、タックルは一人で行かずに2人で入るようにアドバイスしようとしたら、子ども同士で、「2人で入ろう」と話していることがありますね。もっと先のことを話していることもあります。


ラグビーは甘いスポーツではない
大切なのはそれをみんなで乗り越えること

村上 山本さんが指導を続けるモチベーションは何ですか。
山本 私は娘が3人、息子が1人で、長い間、PTAの役員をしていました。札幌市PTA協議会の会長、日本PTA全国協議会の副会長、理事なども務めました。学校の先生や、教育関係者の話を聞いていると、最近は地域の教育力が落ちているといいます。ラグビーに限らず、スポーツ少年団の一つの役割として、地域の教育力を担うということがある。私も含めて指導に携わっている人たちは子どもが好きだし、健やかな成長を願っています。将来、日本の社会を背負って立つような自立した大人に成長してもらうための手助けをしたいと思っています。

村上 札幌少年RSは、2022年度から「少年」を外すことにしたそうですね。
山本 最近は女子選手も多いし、10年以上前から議論になっていたことです。しかし、法律関係者の意見では少年法というのは男子を指すのではないという話があって、どうしようかと迷っていたのですが、一般的な感覚として少年、少女という言い方を使いますから、性別を区分する名称は変えようということになりました。

村上 札幌ならではの活動はありますか。
山本 2月に雪中ラグビー大会を開催することもあります。ラインは赤い絵具やスプレーなどで引きます。雪の上でやると走りにくいので、足の速さ遅さが関係なくなります。タックルされなくても転びますから、面白いですよ。意外にハードなんですよ。

村上 社会人の試合も行われる月寒ラグビー場でも練習されるのですね。
山本 月寒は月に一度くらいで、江別市の野幌運動公園や、大学のグラウンドをお借りすることもあります。我々は決まったグラウンドは持っていないので、いろんな場所で練習しています。今後、札幌市で運動公園を作る計画があるようなので、そこを使わせていただけたらいいなと思っています。

村上 生徒数はさらに増やしたいですか。
山本 増やしたいのですが、スタッフが足りないのが現状です。以前はラグビー経験者の保護者の方が多くて、そのままコーチになっていただくことが多かったのですが、最近は、子どもがラグビーをやりたいと言ったから入ってくる人がほとんどです。ラグビー経験者が少なく、すぐにコーチになってくださる保護者が少ないのです。中には、未経験者でもコーチ資格を取るお母さんもいますが、スタッフも増やしていきたいですね。

村上 体作りの部分もしっかりやっていらっしゃるようですね。
山本 ラグビーは甘いスポーツではありません。コンタクトプレーは痛いし、楽しくて面白いだけのスポーツではない。生徒募集をするときには、辛いことも痛いこともあるけど、それをみんなで乗り越えていきましょう、という誘い方をしています。それでも、卒業後に高校でもラグビーを続けてくれる子が多い。人数の少ない高校でもラグビー部に入り、合同チームで中心的な役割をする子もいます。

村上
 それは嬉しいですね。厳しいスポーツだということを強調される理由はありますか。
山本 実は僕が高校1年生の11月に、1年上の先輩が試合中に亡くなる事故がありました。悲惨な事故を目の当たりにして、人をラグビーに誘っていいのか、自分のやっていることはいいことなのかと、40年以上自問自答しています。ラグビーをしていると大きな怪我をすることもある。それを十分に分かった上で、そういう目に子どもをあわせないように意識しながら指導しています。だから、しっかり鍛えなければいけないし、体を丈夫にして、辛いことも乗り越えてもらいたいのです。

村上 今後の目標を聞かせてください。
山本 日本のラグビーは2019年のRWCで人気が出ましたが、札幌市内で札幌少年ラグビースクールの存在をどれだけ知ってもらっているかといえば、認知度が高いとは言えません。まずは札幌市民に対して認知度を高めたいです。同時にラグビーを広めていきたいです。そして、横浜ラグビースクールや、芦屋ラグビースクールのように、全国の子どもたちから憧れられるような、スクールになりたいし、なっていってもらいたいと願っています。



ラグビーキッズ
ラグビースクールネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート

1、ラグビースクールの名前
 札幌ラグビースクール(2022年度シーズンから「少年」を外す予定です)

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等

3、代表者名
 校長 横山良伸

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 事務局 菅原 均(体験申し込み等はスクールホームページにて随時)

5、活動場所・練習場所
 月寒ラグビー場(札幌市)、野幌総合運動公園ラグビー場(江別市)

6、練習場所は天然芝、人工芝、土等
 天然芝

7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 毎週日曜日9時~12時を基本とし、試合スケジュール等によっては土曜日活動もあり。
 夏シーズン(4月下旬~11月上旬):屋外活動
 冬シーズン(11月中旬~4月中旬):公共施設の体育館活動または雪中練習

8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 入会金無し・年会費17,000円+傷害保険料等(合宿遠征費等は別途)
 練習ジャージ、短パン、ソックスの指定あり。ヘッドキャップ、スパイクは各自手配。

9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 生徒75名、うち女子選手7名、外国人等も順次体験対応します。

10、コーチ人数、指名、経歴等
 コーチ21名、うち14JRFUコーチ有資格者
 うち関東協会BREF1名、北海道協会CREF7

11、モットー・大事にしている事・理念
 スクール活動の間や個人練習を課すことで、スマホやゲーム機から子どもたちを解
 放してあげることが大切だと思っている。さらに、当スクール独自の「生徒心得十カ条」があり、それを遵守するよう指導している。
 ・自分の健康管理は自分でしっかり行う
 ・感謝の気持ちを持つ
 ・ルールを守る
 ・挨拶を大きな声で行う
 ・常に大きな声を出す
 ・気持ちを切り替える
 ・自分の用具、チームの用具を大切にする
 ・目的を持って練習する
 ・試合相手、レフリーを尊敬する
 ・仲間を大切にする

12、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 現在、専用の練習場所が無く、恵まれた環境ではないが、その分生徒は順応性が高く、逞しく育っている。また、勝利至上主義ではないが、出場する大会では常に優勝を目指し、普段から真摯にラグビーに取り組む姿勢を大切にしている。勝利の喜びや負けた悔しさ、仲間との友情など心を揺さぶる経験を重ね、喜怒哀楽といった人間らしい感情を健全に育んでいる。

13、歴史・活動実績
 1981年札幌有惑クラブのメンバーにより創立。今年で開校40周年になります

14、OB・輩出トップリーガー
 静岡ブルーレヴズ 舟橋諒将
 大東文化大学 野口大貴、流通経済大学 如澤海流、立命館大学 唐崎彬嵩

15、指導方針・教育方針
 幼児、小・中学生に対してラグビーフットボールの練習と試合を通して、体力、
 気力を養う。さらに団体の中で友好心を育て、個人を尊重できる子どもを育成する。

16、合宿・場所・期間・参加年齢等
 コロナ前までは、毎年7月下旬に小学中学年以上が12日の合宿、低学年以下は
 2日間の日帰り合宿

17、ラグビー以外の行事
 4月に入校式、11月に夏期シーズンの納会としてビアホールでジンギスカン、3月に中学3年生の卒業式と年度の終了式を実施している。
 また、年によって異なるが、ちびっこ相撲大会やリレーマラソン大会に出場したり、歩くスキーに挑戦したりしている。

18、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 不明ですが、中学生の大半は部活動と掛け持ちです。

19、保護者の活動への参加・サポート
 各カテゴリーの練習サポート、各種イベントサポート、スクールの会計係等

20、どんなスクールを目指すか(将来像)
 全国的に名の通った強豪スクールに憧れるが、先ずは地元札幌で広く認知され、地域から愛されるとともに、子どもたちにとって大切な居場所にもなれるスクールを目指したい。

21、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 難しいことや困難なことでも覚悟を持って挑戦できる大人になってほしい。

22、プレースタイル
 グランドを広く使い、パスを繋いでいくランニングラグビー

23、交流する他のラグビースクール
 札幌支部に所属する5スクール(山の手、北海道BBJr.、江別、千歳、札幌)とは、シーズンを通して、こぐまリーグという交流戦を行っている。

24、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 当スクールは総合型地域スポーツクラブ(公社)札幌オールカマースポーツ倶楽部に所属し、同じく傘下の札幌有惑クラブとは創立以来の交流がある。

25、自由欄(付け加える事があれば)
 この度、6回目の挑戦でヒーローズカップ北海道大会を制して決勝大会に出場することになりました。決勝大会では、雪国のハンディを打ち破り、優勝目指して頑張ります。



保護者へのアンケート

1、このスクールを選んだ理由
 子供たち同士で失敗したり、上手くいった時に励ましたり、喜ぶ雰囲気がよかったから。

2、このスクールの良い点
 子供たちへの指導が行き渡っているところ


3、お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか
 チームでの達成、喜びを体感でき、仲間との協調性を持てるようになってきた。

4、お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか
 一家で参加し、家族の一体感、ラグビーが共通の楽しみとなりました。

5、スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けて欲しいですか
 本人次第ですが、続けて欲しいと思っています。

6、ご自身もラグビーをしていましたか
 高校・大学とラグビーしていました。

7、ご自身もラグビーが好きになりましたか
 しばらくラグビーから離れていましたが、子供が始めたことでラグビーの面白さを再認識し、さらに好きになりました。

8、どんな大人になって欲しいですか
 仲間を大事にする大人になって欲しい

9、スクールに入れてよかったですか
 よかったです。子供(大人も)の成長に有意義な時間を過ごせています。


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