【インタビュー】第77回▶南京都ラグビースクール(京都府)

京都で二番目に誕生したスクールからは次々にトップ選手が生まれる
京都にはたくさんのラグビースクールがありますが、中でも二番目の歴史を誇るのが京都の宇治市を中心に活動する南京都ラグビースクールです。京都大学宇治黄檗グラウンド、ユニチカ宇治グラウンドで練習し、「自立」、「公正」、「忍耐」、「協調」の精神を順守し、明るく伸びやかなチーム作りをしいます。今年のトップリーグを最後に引退した北川俊澄さん(トヨタ自動車→日野レッドドルフィンズ)、現役日本代表の松田力也選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)ほか、多数のトップ選手も輩出しています。どんなチームなのか、辻井幸三校長(73歳)にお話を伺いました。


赤いユニフォームはウェールズ代表から
子どもたちに自由に走り回ってほしいという願い

村上 辻井さんはいつラグビーに出会ったのですか。
辻井 私は京都市立弥栄中学でラグビーを始めました。この中学の卒業生にはスクールウォーズで有名になった男「弥栄(ヤサカ)の清吾(シンゴ)」がいます(笑)。私が入学した当時、京都教育大学を卒業された新任の体育の先生が一人寂しく校庭でラグビーボールを蹴っていました。興味を覚えてラグビーを始めました。府立の洛東高校でもラグビーを続けて、スタンドオフ、フルバックでプレーしました。その後は京阪電鉄に就職してラグビーからは離れました。

村上 南京都ラグビースクール(RS)にはいつから関わられたのですか。
辻井 息子(啓介)は昭和49年生まれなのですが、小学1年生になるときに入りまして、その時から関わるようになりました。


村上 1975年に京都で二番目のRSとして立ち上げられたようですが、設立の経緯はご存じですか。
辻井 ユニチカのラグビー部のOBの方が立ち上げられたそうです。初代校長がユニチカの役員で宇治の工場長もされていて、京都大学ラグビー部OBでもあったということで、京都大学の宇治黄檗グラウンドをお借りして練習していたそうです。

村上 ユニフォームはなぜ赤なのですか。
辻井 諸先輩方に聞きますと、ウェールズ代表の黄金時代がありましたね。あんなふうに子どもたちが走り回ってくれたらという願いで作ったそうです。

村上 なるほど、1975年と言えばウェールズ代表が来日した年ですね。現在、幼児から小学6年生まで約100人の生徒数のようですが、増減はありますか。
辻井 息子が小学4年か5年生のときが、マックスで140人くらいまで行きました。私が校長になって今年で丸10年になりますが、その頃は生徒数が60名くらいまで減っていました。そこから知り合いの喫茶店などにポスターを貼らせてもらうなど告知活動をし、保護者の皆さんに口コミなどで、やっと戻ってきたという感じですね。

村上 指導方針について、聞かせてください。
辻井 私もそろそろ後進に道を譲らなくてはいけないと思い。一昨年から運営委員会を立ち上げまして、練習後にミーティングをして、チーム理念と指導方針を確立していきました。

村上 理念は「前進」で、勝利は二の次で、試合は全員出場とのことですね。
辻井 入ってくる保護者の方には「うちのスクールは、勝利は二の次で、小学生のうちは楽しくグラウンドにやってきて、他校の生徒と交流することを大切にしています」と説明しています。

村上 教育方針では、キッズファーストで、怒らずに指導などがありますね。
辻井 全員出場は息子がお世話になっている頃からの方針でした。「怒らずに指導」は、コーチに言っている面もあります。南京都RSのローカルルールがあり、自分の子どもの学年のコーチは極力させないようにしています。我が子には、つい罵声を浴びせてしまいがちです。それはRSのグラウンドに好ましくない光景なので、極力その学年のコーチから外れてもらっています。


サンゴリアス東京の尾崎兄弟も卒業
オリジナルのハカ(ウォークライ)もあり

村上 「自立」、「公正」、「忍耐」、「協調」の精神を順守するというのは、創部当初からの考えなのですか。
辻井 毎年、生徒募集の案内状を作りますが、その中には必ず書いています。創部以来、諸先輩方が書いていただいた内容を継続して周知しています。

村上 それを意識づけるために何か取り組んでいますか。
辻井 練習は学年単位でやっていますが、小学6年生にはリーダーの経験もしてほしいので、6年生の当番が前に出てきて、練習開始前に「グラウンドに対して礼」、「これから練習を始めます」など声をかけてやっています。また、みんなでグラウンドを軽く走って全員で円になって準備体操をします。その号令役も6年生にさせています。

村上 卒業生には、松田力也選手、北川俊澄さん、吉田朋生さんら日本代表やトップリーガーがたくさんいますね。
辻井 いろいろな場でよく言われるのですが、「のびしろたっぷりに次のステップに送っています」と言葉を濁しています(笑)。松田力也は小学3年生の頃から「この子は違う」という動きをしていましたね。逆に北川俊澄君はユニークな走り方で、本人には悪いのですが、まさか日本代表まで行くとは思わなかったです。卒業してから成長されましたよね。

村上 のびのびとラグビーをしているからでしょうね。そんな卒業生が顔を出してくれることはありますか。
辻井 シーズンオフには必ず顔を出してくれますよ。サントリーサンゴリアスの尾崎晟也、泰雅の兄弟も。彼らのお父さんがユニチカのラグビー部のGMをしながら、現在、小学6年生のコーチをしてくださっています。そのおかげで、ユニチカさんの人工芝グラウンドをお借りしています。

村上 南京都RS独自のイベントなどありますか。
辻井 現在、春に15回、秋に15回の練習があるのですが、春1回、秋1回は保護者の皆さんにもグラウンドに入っていただいて、子どもたちと一緒にラグビーボールでのリレーや、タッチラグビーなどボールを追いかけてもらうようにしています。家に帰って親子でラグビー談義をしてもらうきっかけにしてほしいのです。子どもたちがどんな練習をしているかも感じてほしいですからね。

村上 オリジナルのハカ(ウォークライ)があるそうですね。
辻井 ニュージーランド出身で龍谷大学でもプレーした、へミーフォフォア・ウォーレンさん(愛称ジョジョ)が、私の近所に住んでいるのですが、南京都RSオリジナルのハカを作ってくれました。コロナ禍でここ2年は夏合宿ができていませんが、例年は夏合宿で6年生にハカを覚えてもらって、卒業のときにはグラウンドで皆さんに披露することになっています。

村上 よく交流するRSはありますか。
辻井 近くにある城陽RSさんとは頻繁に練習試合をしていますね。京都にはたくさんRSがあるのですが、固定の練習グラウンドがあるチームが少ないんです。奈良のRSとも交流がありますが、土のグラウンドでやっているチームも多く、ユニチカさんの人工芝のグラウンドを見て喜んだり、驚いたり。そんな表情を見ると嬉しくなります。

村上 辻井さんがずっとRSの指導を続けるのはなぜですか。
辻井 もう30年くらいお世話になっていますね。私は定年後も週3日は仕事をしています。土日は仕事を入れないようにお願いして、RSに来ています。私も息子もトップレベルの選手にはなれなかったので、子どもたちに夢を託しているところもありますし、私はもうすぐ74歳ですが、病院にも行かずに健康体でいられるのはラグビーのおかげだと思っています。わずかでも恩返しができればと続けています。また、南京都RSを卒業して高校生、大学生になった子が、電車の中で私を見つけてあいさつに来てくれたりすると嬉しい気分になりますよ。

村上 2024年で50周年になりますね。今後の目標はありますか。
辻井 運営委員の方々にお願いして、どんな内容にするか企画してもらっています。目標はこれまでの継続ですね。何度も言いますが、勝利は二の次、三の次で、これからも、みんなでラグビーを楽しんでいければと思います。



ラグビーキッズ
ラグビースクールネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート

1、ラグビースクールの名前

 南京都ラグビースクール

2、ユニフォーム
 (ジャージ:赤、 パンツ:白、ストッキング:赤)
 ウェールズをイメージ

3、代表者名
 辻井 幸三

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 〒611-0011 宇治市五ケ庄一番割63-4

 TEL0774-32-9872 入校希望&問い合わせ先

5、活動場所・練習場所
 A)ユニチカ宇治グランド(人工芝)
 B)京都大学宇治グランド(天然芝)

6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール
 毎週日曜日 午前9時~11時  (3月~6月 15回、9月~12月 15回) 

7、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 年間12,000円  秋季から8,000円
  ※スポーツ保険料・協会登録費込み  入会費不要
   ジャージ・パンツ・ストッキング・ヘッドキャップは各自購入

8、生徒人数 100人(幼児~小6年)
 女子生徒7人  
 外国人 現在2人 過去にはニュージランド人も

9、コーチ人数、氏名、経歴等
 30名、氏名は控えさせていただきます。
 京都:伏見工業、花園高校他OB
 大阪:啓光学園、島本高校、茨田高校他OB

10、特徴・他のスクールとの違い

 勝利は二の次、試合は全員出場

11、歴史
 1975年創立 ユニチカラグビー部OBが発起
 ※2024年で50周年

12、OB・輩出トップリーガー
 北川 俊澄(日野)、吉田 朋生(元 東芝)、松田 力也(パナ)、高島 忍(キャノン)
 尾﨑 晟也(サントリー)、尾崎 大雅(サントリー)、浅岡 兄(近鉄)、浅岡 弟(トヨタ)
 市来・小西(元 神戸製鋼)

13、指導方針・教育方針
 キッズファースト。プレーヤーが折り合いをつける。
 怒らずに指導。コーチも勉強。
 基本は大事に、色々なスキルにチャレンジさせる。
 計画、観察、質問、フィードバック。

14、合宿・場所・期間・参加年齢等
 夏季合宿(8月上旬)石川県能美市 
 23日 小学1年~6年(50名位)

15、校歌
 校歌はありませんが、ニュージランド人コーチ(ジョジョ氏)作のオリジナルハカあり。

16、ラグビー以外の行事
 恒例ではないが、ハイキング実施

17、他の習い事との掛け持ちは
 可能。人数は把握していない。

18、保護者の活動への参加・サポート
 春・秋に各1回、親子交流でラグビーのボールを追いかけてもらっている。
 また、希望者に限りコーチのヘルプ(グランド内の練習時)をしてもらっている。

19、どんなスクールを目指すか
 まずは現状維持。

20、生徒にどんな大人になって欲しいか
 自から考え行動する。

21、プレースタイル
 決まったスタイルはなし、その学年に合わせて確立。

22、交流する他のラグビースクール
 近隣スクール(城陽・伏見・京都ほか)

23、交流するラグビー団体
 ユニチカラグビー部・京都大学ラグビー部

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