【インタビュー】第73回▶庄原タグラグビー教室スポーツ少年団 庄原ワイルドボアーズ

とにかく、気持ちの良いプレーをしよう!
広島県庄原市で活動する「庄原タグラグビー教室スポーツ少年団 庄原ワイルドボアーズ」は、タグラグビーに限定した小学生のラグビースクールです。練習は毎週火曜、金曜の18:30~20:30まで。春からさまざまな交流大会、招待大会などに参加して腕を磨いています。チームができたきっかけは、2011年に庄原市立東小学校の体育の授業でタグラグビーが取り入れられたことでした。さまざまな要因が重なった発祥エピソード、そして活動内容について創設者でもある岸源己監督(42歳)に伺いました。


小学校の授業から始まった少年団が
サントリーカップ全国大会へ


村上 岸さんのラグビーとの出会いから聞かせてください。
 庄原格致高校の2年生からラグビー部に入りました。中学では柔道部だったのですが、一学年上の先輩が庄原格致高校ラグビー部に入り、県の強化選手にも選ばれていたのです。高校入学時に誘われたのですが僕は柔道を続けました。庄原は広島県の北部で、柔道の強い子は広島市に行きます。でも、僕は家族に引き留められて地元に残りました。北部の柔道大会で優勝して本大会に行ったら、強い選手がたくさんいて、すぐに負けました。その時に中学の先輩から「格致高校にいるならラグビー部に入ったほうがいいのではないか
と勧められたのです。

村上 ポジションはどこだったのですか。
岸 僕はめちゃくちゃ太っていたのでプロップです(笑)。でも、走り込んだら半年で痩せてロックになりました。卒業後は格致高校OBチームの県北クラブでプレーしました。

村上 庄原タグラグビースポーツ少年団ができた経緯を教えていただけますか。
 私の娘が庄原市立東小学校の4年生のときのことです。この小学校では毎年、保護者と子どもが一緒にいろんなレクリエーションをするイベントがあるのですが、保護者会で今年は何をしようか話しあったとき、僕がタグラグビーを提案しました。僕は高校を卒業したばかりの頃、関西ラグビー協会の広島でのタグラグビーの普及活動を手伝ったことがあります。だから子どもたちへの教え方もわかっていました。すると、娘のクラスの担任の先生が僕のラグビー部の先輩の奥様で、その時の校長も格致高校ラグビー部OBという偶然が重なりました。

村上 それは盛り上がりますね。
 非常に盛り上がりました。まずは僕が4年生の体育の授業でタグラグビーを教えました。実は僕はバレーボールのスポーツ少年団のコーチもしていたのですが、そこにいた6年生たちが教室の窓からタグラグビーの授業を見て興味を持ったようで、「岸コーチが教えているスポーツを6年生にも教えてほしい
と言い出しました。それで6年生にも教えることになって、「12月にサントリーカップという大会があるんだけど、出る?」と聞いたら、32名の6年生の中で29名が手を挙げました。3チームを編成して県大会に行きました。それから6年間、特色ある学校づくりの一環として、2017年までサントリーカップに挑戦しました。

村上 それでチームができたのですね。
 実は当時、県北クラブも格致高校ラグビー部も廃部になり、庄原市からラグビーがなくなっていました。休眠状態だった庄原市ラグビー協会を僕が引き継ぎ、2013年から課外活動としてタグラグビー教室を継続して開催しました。毎回30名くらい来てくれました。2014年に日本スポーツ少年団に登録し、「庄原タグラグビー教室スポーツ少年団」が発足しました。「庄原ワイルドボアーズ」としてサントリーカップに出場し、2015年には広島県大会で初優勝。2018年は中国ブロック大会を突破してサントリーカップ決勝大会に進出し、「石塚賞」を受賞しました。

村上 どうやって、そんなに強くなったのですか。
 子どもたちが教えてくれました。4、5年生のチームが2015年の県大会で東小学校の6年生チームを倒して優勝したことがあります。そのとき、6年生は他のスポーツ少年団の練習であまりタグの練習ができませんでした。その間、4、5年生の子らはずっとラグビーボールを触っていました。そこが違った。しかし、その4、5年生は中国ブロックの試合で、岡山県のチームに11-0で完敗しました。すると、子どもたちが「お前が悪いんじゃ」と人のせいにしはじめました。「それじゃだめだ。6年生で勝てばいい。本当に勝ちたいか
と聞いたら、勝ちたいと言いました。そこから走り込みを多くしたら、走り負けず、最後までスタミナが持つようになりました。そのときに考えたメニューをずっと継続しています。


自分たちで考えるのが一番強い
「タグノート」に気付いたことを書く子どもたち


村上 全員の運動能力が高いわけではないと思いますが、みんな活躍できるのでしょうか。
 もちろん、足が速い子は目立ちます。でも、ラグビーはボールの前はオフサイドですから、後ろからのフォローがないと前に進めません。そのことを子どもたちには常々話しています。ボールを持っている子に後ろは見えませんから、とにかく声をかけようと言っています。足が遅くてあきらめている子がいると、そうじゃなくて、フォローしていれば必ずボールがもらえるからと話しています。

村上 消極的な子が積極的になった例はありますか。
 入ってきたときは、体力もなくて、ついていけなかった子がコツコツ努力してすごいプレーヤーになる例は多いですよ。タグラグビーはコンタクトがないので、ランとパス、コンビネーションにつきます。火曜と金曜は、パスのタイミングと、どうやって数的優位を作るかを落とし込みます。コンタクトな好きな子は週末に女子が県北ガールズアカデミー、男子は県北ラグビーアカデミーでタックルしていますね。

村上 庄原市ならではのイベントはありますか。
 毎年、夏に他の地域からチームを呼んで「庄原錬成大会」を開催しています。昨年と今年はコロナ禍で中止になりましたが、タグラグビーの大会が少ないので、そういう機会を作ろうとしています。

村上 長らく指導されていて、どんなチームが強くなるかという傾向はありますか。
 全国大会に出場した子たちは、自分たちでプランを立ててプレーしていました。自分たちで考えるのが一番強いです。ベンチからコーチがいろいろ言っても駄目なんです。そういう意味では、今年の子たちは似ています。自主的に「タグノート」というのを作って、どんなサインプレーが成功し、成功しなかったか、もっと外に走ったほうがいいなど、気づいたことをいろいろ書いていますよ。4、5年生である程度基礎的なスキルを覚えたら、6年生では、コンビネーションと意思統一がどれだけできているかで強くなるかどうか決まりますから、話し合いをさせるようにしています。今年の子たちは自分で考える力があるし、サントリーカップをぜひ開催していただきたいのですけどね。

村上 今後はどんな目標を持っていますか。
 ほそぼそとでもチームを継続していくことと、タグラグビーからラグビーの普及に貢献できたらと思います。ラグビーはちょっと怖いと思っていても、タグはやりたいという子たちがいます。そんな子たちが活躍できる場も作ってあげたいし、ラグビーも普及したいです。生徒はいつでも募集中です。Facebookで問い合わせ先など確認していただければと思います。見学は自由ですし、1か月無料で体験もできますので、ぜひご参加ください。

村上 岸さんが、ずっと指導を続けているのはなぜですか。
 子どもたちの成長を見られるからです。親は自分の子の成長しか見られませんが、他の子の成長が見られることに、ものすごくワクワクするのです。小学1年生、2年生で入ってきた子には、「お前らは原石だぞ。磨くのは自分だぞ。コーチじゃない、自分で磨くんだぞ」と言っています。




ラグビーキッズ
ラグビースクールネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート

1、 ラグビースクールの名前
 「庄原タグラグビー教室スポーツ少年団 庄原ワイルドボアーズ」

2、 シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
 シンボルは、庄原の野生の猪



3、 代表者名
 監督 岸 源己(きし もとき)


4、 住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 〒727-0025広島県庄原市市町1404番地
 080-5617-5407
 監督 岸 源己

5、 活動場所・練習場所
 活動場所:庄原市、広島県内、中国、四国、関西地方のタグラグビーの大会
 練習場所:庄原スポーツ広場(芝生)
 雨天時または、冬期(12月~3月)は、庄原市総合体育館

6、 練習場所は天然芝、人工芝、土等
 庄原スポーツ広場:天然芝

7、 活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 毎週火曜日、金曜日の1830分~2030
 4月…兵庫県太子交流大会
 5月…岡山高島練習会
 7月…兵庫県太子交流大会
 8月…庄原錬成大会
 9月…四国招待大会
 10月…岡山高島練習会
 12月…サントリーカップ広島県大会
 1月…サントリーカップ中国大会(勝ち上がれば)
 2月…サントリーカップ決勝大会(勝ち上がれば)
 兵庫県太子交流大会
 3月…岡山ドーム大会
 その他、県内スクール、高校生との交流会

8、 入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 入団費:1,500(初月会費と年間スポーツ保険料含む)
 会費:月額1,000
 用具費用:タグとタグベルト代900円 ユニフォーム代2,300円、その他、ソックス、短パンは、黒色を各自で購入。

9、 生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 小学生15人(内女子7人外国人の方も、日本語対応ですけど…。welcomeです!

10、 コーチ人数、指名、経歴等
 監督:岸 源己(庄原格致高校ラグビー部→県北クラブ ポジション:ロック)
 コーチ:梶田紀文(三次工業高校ラグビー部→三次工業OBクラブ ポジション:スタンドオフ)
 加藤貴史(庄原格致高校ラグビー部→広島県立大学ラグビー部 ポジション:プロップ)
 計3人

11、 モットー・大事にしている事・理念
 「我ら庄原の猪の如く。
 意思あるところに道は開ける。
 恐れれば、道はなし。
 走れ志士達!
 まだ見ぬ高みへ
 前進あるのみ」

12、 特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 タグラグビーをメインとして活動中、週末には、県北ラグビーアカデミー、県北ガールズアカデミーと連携して、コンタクトラグビーにも少しずつ挑戦しています。

13、 歴史・活動実績
 2011年に、庄原市立東小学校の体育の授業で、タグラグビーが取り入れられ、外部講師として、岸が派遣され、この年に、6年生30人が、サントリーカップ広島県大会に挑戦したことがきっかけで、庄原市立東小学校は、特色ある学校づくりの一環として、2017年まで全国大会出場を目標に、サントリーカップに挑戦しました。
2013年には、体育の授業だけではなく、放課後の課外活動として、タグラグビーをしたいと声が上がり、休眠状態であった庄原市ラグビーフットボール協会を引き継ぎ、年間を通して、タグラグビー教室を開催。32名の児童が集まって、毎週の練習を開始しました。
 2014年からは、庄原市体育協会の助言もあって、日本スポーツ少年団に登録し、「庄原タグラグビー教室スポーツ少年団」を発足しました。

 同年に 、当教室に通った庄原市立東小学校の6年生チームが、サントリーカップ広島県大会で初優勝。
 翌年には、庄原タグラグビー教室スポーツ少年団「庄原ワイルドボアーズ」が、初優勝。
 以降、7年連続で、広島県大会を優勝しています。
 2017年は、中国大会3
 2018年は、中国ブロック大会を突破して、初のサントリーカップ決勝大会に出場して、「石塚賞」を受賞しました。

14、  OB・輩出トップリーガー
 排出トップリーガーは、まだいません。

15、 指導方針・教育方針
 やっぱり『楽しんでやるのが一番』『とにかく気持ちの良いプレーをしよう』と言ってやってます。このプレーはここまでなら反則じゃない、とか、そういうこともあるんでしょうが、『そんなことは考えないようにしよう』『自分のプレーをやろう』と言い続けてやってます。
 ラグビーもタグラグビーの後方がオンサイドのスポーツなので、ボールキャリアの背中に目はないから、後ろから絶対に声を掛けないけん。自分の位置と、どう放ってほしいかを仲間に伝えんとボールはつながらん、どんなに口下手な人間でも仲間に声を掛けないけん――そういうスポーツだと子ども達に伝えています。
 また、自分の力が、チームの仲間に見えるように、全力を出そうって言うてます。
 タグラグビーを通じて、協調性を育み、体力の向上し、子供たちの成長の一助となることを期待しています。

16、 合宿・場所・期間・参加年齢等
 合宿はしていません。

17、 ラグビー以外の行事
 毎年、夏にバーベキューをしていますが、この2年は、コロナ禍で実施していません。
 また、3月には、6年生を送る会をしています。

18、 他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 掛け持ちは、可能です。
 チーム発足当日から、野球、サッカー、バレーボール、柔道、剣道、水泳と、様々なスポーツと掛け持ちしながら、教室に通ってくれています。

19、 保護者の活動への参加・サポート
 他県への遠征や、サントリーカップ等の大会には、配車をしてもらっています。

20、 どんなスクールを目指すか(将来像)
 タグラグビーをきっかけに、ラグビーに発展してくれて、中学生、高校生になって地元のクラブチームができるくらいまで普及出来たらと思っています。

21、 生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)

 自分がやりたい事を見つけ、目標を持ち、それに向かって情熱を持って取り組める人間になってもらいたい。

22、 プレースタイル
 全力のアタック。全力のディフェンス。


23、 交流する他のラグビースクール
 岡山高島グリーンボンバーズ
 兵庫県太子サンシャインの皆さんとは、頻繁に交流しています。

 安芸府中ラグビースクール
 五日市ラグビースクールの皆さんは、毎回の庄原錬成大会には、タグラグビーで、交流してくださいます。


24、 交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 広島ドルフィンズ
 広島ジュニアラグビースクール
 崇徳高校ラグビー部
 安芸南高校ラグビー部
 広島ラガール



保護者へのアンケート回答

1、このスクールを選んだ理由
 長女が小学生の時、学校でタグラグビーに出会い、それを見ていた次女は興味を持ち参加。
 上が卒業後、現在の三女は、迷いもなく入団しています。

2、このスクールの良い点
 庄原の他校との子供たちとも仲良くプレーする事ができ、何より、男子女子関係なくこの
 タグラグビーを楽しむことができる。

3、スクールに改善して欲しいところ

 特にはないです。

4.お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか

 体力向上はもちろんのこと、責任感や使命感。そして、向上心というものをもつようになりました。

5、お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか

 家族の共通の話題が増えました。家族で楽しんでいます。

6、スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けてほしいですか
 中学生になると部活が始まります。親としてはそちらも頑張ってほしいですが、ラグビーに触れる場がある限りは可能な限りは続けてほしいと思います。

7、ご自身もラグビーをしていましたか

 いいえ、全く未知の世界でした。

8、ご自身もラグビーが好きになりましたか
 はい、もちろんです。

9、どんな大人になってほしいですか
 色々な困難にもぶつかる事があると思います。そんな時に踏ん張って自分を信じて乗り越えていってほしいです。そして、困難にぶつかっている人にも、手を差し伸べれる大人になってほしいです。

10、スクールに入れてよかったですか

 はい、よかったです。子供は楽しいばかりではないでしょうけど、きっと、最後には楽しかったと言うことでしょう。

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