【インタビュー】第68回▶福井ジュニアラグビースクール(福井県)

ラグビーを通して子どもたちの自己肯定感を高める
第68回のラグネットは福井県の嶺北地域で活動する福井ジュニアラグビースクールをご紹介します。2014年に結成されたばかりのチームですが、福井県小学生タグラグビー大会は3連覇中で、サントリーカップ北陸大会では2年連続で3位など実績を積み上げています。タグラグビー、タッチラグビー、ミニラグビー、セブンズとさまざまなラグビーも体験しています。どんなスクールなのか、創設者であり、代表を務める武曽一昭さん(45歳)にお話を聞きました。


知力・体力ともに全国トップクラスの福井県
そんな子どもたちにラグビーはもってこい!


村上 武曽さんのラグビーとの出会いから聞かせてください。
武曽 私は宮城県仙台市の出身です。小学3年生で長町小学校ラグビー同好会に入り、中学は仙台ラグビースクールでプレーし、利府高等学校でもラグビー部で3年生の時はキャプテンをしました。卒業後にいったんラグビーから離れたのですが、宮城県で一番強かった「RC85」というクラブチームに誘っていただいて10年ほどプレーしました。そこで素晴らしい人たちに出会って、ラグビーってやっぱりいいなと思いました。その後、仕事の都合で福井に来ることになったのですが、福井にはラグビーをする環境がまったくなかったんです。自分に子どもができたとき、ラグビーができる環境があったらいいと思ってラグビースクールを立ち上げることにしました。

村上 お子さんにラグビーをやらせたい理由は何ですか。
武曽 「何がそんなにラグビーが楽しいの」とよく質問されるのですが、精神的に辛いときでもグラウンドに出ると気持ちが晴れたし、ラグビー仲間の絆は深い。子どもが成長期に経験するには良いスポーツだと思っています。また、福井の子どもたちは、知力、体力ともに全国トップクラスです。そういう子たちにラグビーはもってこいだとも思いました。

村上 どのようにして子どもたちを集めたのですか。
武曽 地元の情報誌などメディアを使いました。あと、チラシを作って周辺の小学校に8,000枚くらい手配りしました。チラシはあまり効果がなく、最初は3人来てくれたらありがたいというスタートでした。

村上 武曽さんのお子さんはラグビースクールに入ったのですか。
武曽 入りました。いま、長男(博利)は中学3年、次男(凌大)は小学4年でラグビーを続けています。

村上 福井ジュニアRSは中学部もあるのですか。
武曽 小学6年生までです。福井には中学生がプレーする場がなく、中学生になると石川県の石川ジュニアラグビースクールに行きます。長男も中学1年から石川に通っています。県外の高校でも続けると話していて、そこまでのめりこむと思っていなかったので、親としては戸惑っています(苦笑)。

村上 スクールの指導方針は武曽さんが考えられたのですね。
武曽 そうです。僕自身、いろんな指導者に教えてもらったなかで、良くなかったと思うことは子どもたちにはさせないし、変なクセがつくような形ばかりの指導はしないように、自由にやらせています。

村上 自己肯定感を高めることを大切にされているようですが、なぜですか。
武曽 日本の子どもたちは自己肯定感が低いという数字がありますよね。親が褒めて育てないからです。だから、子どもたちを否定せず、子どもたちの考え方を尊重するように心がけて指導しています。また、福井ジュニアRSの母体が、パパHANDSというNPO法人なのですが、パパHANDSは、お父さんの子育てを支援する団体です。お父さんの愛情がふくらむことで「ぼく、生まれてきてよかった」と、子どもたち一人一人が思えるようになることを願っての活動です。僕はここの副代表もしています。


ラグビーに限らず
スポーツが好きな子を育てたい


村上 タグ、タッチ、ミニ、セブンズと、さまざまなラグビーを取り入れられているようですね。
武曽 最初のきっかけとして、ラグビーはハードルが高かったんです。ラグビーに馴染みのない県ですから、まずはタグで人数を集めようと思いました。ハードルを下げて、タグ、タッチを最初にやり、ラグビーワールドカップの2015年、2019年のあとに、ラグビーをしたいという子が入ってきて、ようやくミニラグビーをやって行こうという流れになっています。

村上 このあたりの地域はどんなスポーツが盛んですか。
武曽 野球、サッカーです。野球では、オリックスバファローズの吉田正尚選手、福岡ソフトバンクホークスの栗原陵矢選手も福井市の出身です。

村上 アンケートの「どんなスクールを目指すか、というところで、「ラグビーに限らず、トップアスリートを輩出すること」と書かれていますね。
武曽 卒業生でラグビー部のある高校(若狭東)に進学する子もようやく出てきましたが、他のスポーツでも、ホッケーで中学の全国大会に出る子もいますし、トップレベルで野球を続けている子もいます。うちは週一回の練習なので、他のスポーツと掛け持ちでやっている子も多いからです。ラグビーに限らず、スポーツが好きな子を育てていきたいです。

村上 どんな大人になってほしいか、という質問では、「人前で自分の意見をキチンと言える人」と答えていますね。
武曽 練習中、できるだけ子どもたちに話しをさせるようにしています。試合後は、必ず一人一人がコメントします。最初は発言できなくても、何度もやっていると話せるようになっていきますね。

村上 ここまでスクールを運営されてきて印象的な出来事はありますか。
武曽 最初に印象的だったのは、福井の子たちは、きちっと両手でボールをキャッチできるということです。最近の子は、公園でボール遊びができなかったりして、球技が苦手だったり、普通にかけっこができないということがあると思います。しかし、福井の子は普通に走れるし、普通にボールをキャッチできる。身体能力は高いし、理解力も高いです。

村上 今後の目標を聞かせてください。
武曽 福井の子たちの持っているものを伸ばして、一番の景色を見せてあげたいです。大人になればなるほど、一番になる経験をするのは難しくなります。福井の子たちは全国でもトップレベルの体力があるし、頑張れば一番になれると思います。その景色を見せてあげたいですね。そして、ラグビーだけでなく、人間的に幅の広い子になってくれたらと、そこを目指してやっています。

村上 スクール生は随時募集中ですか。
武曽 募集はしているのですが、実は深刻な指導者不足なんです。コンスタントに30名の子どもが練習に来て、未就学児から小学6年生まで年齢層も幅広いです。現状は手いっぱいです。ということで、指導者の方も募集しています。お父さんの参加率は高くなって、未経験でもラグビーのスタートコーチの資格をとってくれる方もいますし、お父さんたちもコーチになりやすい雰囲気作りをしています。体験、見学はいつでも受け付けています。

村上 会費が安いですよね(年会費:1,500円)。これまで取材した中で一番安いです。
武曽 僕は小学校のとき野球がやりたかったのですが、経済的に裕福な家庭ではなかったので、グローブ、バット、ユニフォームを買うのが大変で、ラグビーをやりました。ラグビーは家計に優しいというか、お金のかからないスポーツだと実感しています。それに、お金をかけなくてもスポーツができる環境はあったほうがいい。NPO法人の予算で道具などは揃えています。福井ジュニアRSが、子どもたちにとって何かのとっかかりになればいいと思っています。



ラグビーキッズ
ラグビーネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート


1、ラグビースクールの名前
 福井ジュニアラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等


3、代表者
 武曽 一昭(むそう かずあき)

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 福井県福井市高柳3-1114090-6277-7349

5、活動場所・練習場所
 福井市内芝生広場(下馬中央公園、日野川浄化センター)

6、練習場所は天然芝、人工芝、土等
 天然芝

7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 週一回毎週日曜日9301145、子どもたちの意思にて出場できる大会に参加

8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 年度会費1,500円、チームTシャツ2,000円、遠征費のみ別途負担

9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 34人(うち女子4人、未就学児4人)

10、コーチ人数、指名、経歴等
 8人(半数は未経験者も含むお父さんコーチ)

11、モットー・大事にしている事・理念
 スポーツを楽しむこと

12、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 試合や大会以外は出欠を取らずに自由参加。月謝もなく、当番などもないので保護者の負担が少ない

13、歴史・活動実績
 2014年に結成、2016年に協会登録。福井県小学生タグラグビー大会3連覇中。サントリーカップ北陸大会2年連続3位。

14、OB・輩出トップリーガー
 今年度、結成時の生徒が、ラグビー推薦にて高校進学。今後の活躍に期待。

15、指導方針・教育方針
 ラグビー競技を通して子どもたちの自己肯定感を高め、自考力をつける支援を行う

16、ラグビー以外の行事
 春、秋にBBQなど

17、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 掛け持ち可。野球やサッカーとの掛け持ちの子もいる

18、保護者の活動への参加・サポート
 できる人ができることをしています。W杯後は積極的に参加する保護者が増えました

19、どんなスクールを目指すか(将来像)
 北陸№1チーム。ラグビーに限らず、トップアスリートを輩出すること

20、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 人前で自分の意見をきちんと言える人

21、プレースタイル
 自由

22、交流する他のラグビースクール
 福井県内、石川県内のスクール





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