【インタビュー】第67回▶上郷ラグビースクール(長野県)

勝つことが目標であるが、目的ではない。楽しいラグビーと仲間づくりを目指そう!
ラグネット第67回は、長野県飯田市で活動する上郷(かみさと)ラグビースクールをご紹介します。長野県の中でラグビーが盛んな地域の飯田市で、1982年、小学3年生から6年生まで10人の子どもたちで設立され、現在までに400人以上の卒業生がいるそうです。NECグリーンロケッツの細田佳也選手、リコーブラックラムズ、釜石シーウェイブスで活躍した星野将利選手など、多数のトップ選手も輩出しています。目指すのはスポーツを好きになるということ。どんな活動をしているのか、スクールを率いる河合圭校長(46歳)にお話を伺いました。


みんなで人生の土台作りをする
次のステップアップのために


村上 河合さんがラグビーに出会ったのはいつですか。
河合 私が小学3年生のときに上郷ラグビースクール(RS)ができました。私はスポーツが好きだったのですが、当時のスポーツ少年団は小学4年生から始まるところが多く、3年生から始められるのがラグビーでした。第一期生として最初から入ったわけです。

村上 設立の経緯はご存じですか。
河合 上郷町在住で南信州新聞の有名な記者だった篠田靱彦さんが、ラグビーが大好きで始められました。私が小学4年生の頃にテレビドラマ「スクール☆ウォーズ」が始まり、人数が増えました。最初の頃は連戦連敗でしたが、6年生の時は負けたことがないくらい強くなりました。小学6年生のときは篠田先生に試合で県外に連れて行ってもらうなど、本当に良い経験をさせてもらいました。私の同世代には血気盛んな連中が大勢いました。ラグビーに出会わなかったら、どうなっていたか分かりません。そういう子たちを篠田先生はラグビーを通して立ち直らせてくれました。そういう人間が携わっているのが現在の上郷RSなんです。

村上 長野県には当時、ほかにRSはあったのですか。
河合 当時は県内に4か5校だったと思います。1978年、長野県の「やまびこ国体」が開催されたとき、ラグビーは飯田市で行われました。だからラグビーが盛んではない長野県のなかで、飯田市だけは盛んになりました。私もスクール卒業後は、飯田高校でラグビー班に入りました。大学卒業後は就職で飯田市に戻り、恩返しの気持ちもあって篠田先生のお手伝いをすることになりました。先生は亡くなられたのですが、私は6年ほど前から校長を務めています。

村上 現在の生徒は約80名とのことですが、増えるきっかけはありましたか。
河合 スクール☆ウォーズで30名くらいになり、その後、40~50名くらいの時代が長かったのですが、2015年、2019年のラグビーワールドカップでまた増えました。飯田市はラグビーが盛んだと言いましたが、飯田市と下伊那郡からなる南信州地域で3つのラグビースクールがあります。飯田高校、飯田OIDE長姫高校、下伊那農業高校のラグビー部のOBも多く、ラグビー文化がある地域です。

村上 指導方針を教えてください。
河合 モットーは、「勝つことが目標であるが目的ではない。楽しいラグビーと仲間づくりを目指そう!」です。篠田校長から受け継いでいるものです。そして、人生の土台を作りましょうということも大切にしています。次のステージでラグビーをやる、やらないに関係なく、上郷RSで頑張ってきたことに誇りを持って、ステップアップしてほしいということです。いまコーチが30名くらいいますが、そんな思いを持って取り組んでいます。


ラグビーをやって良かったと思える
少年時代を過ごさせてあげたい



村上 OB、保護者のサポートもあるようですね。
河合 うちはOB組織が充実していまして、5年ごとに周年行事を開催しているのですが、物心両面でサポートしていただいています。本当に幸せなスクールだと思います。保護者会も組織だったものを作っており、最上級生の保護者のみなさんに中心になってもらって、さまざまな行事を運営していただいています。おかげでコーチは指導に専念できています。

村上 卒業生がトップレベルのチームで活躍されていますが、そういった選手との交流はあるのですか。
河合 周年行事などでメッセージをいただいたりしています。去年はコロナ禍で6年生の卒業旅行、卒業試合ができませんでした。細田佳也選手、宮島裕之選手(NECグリーンロケッツ)、片桐康策選手(豊田自動織機)、吉沢文洋選手(ヤマハ発動機ジュビロ)、ら現役トップリーガーの皆さんに連絡してメッセージをもらい、所属チームのグッズを送ってもらって6年生を送り出すことができました。

村上 練習場所のひとつになっている上郷小学校のグラウンドはずっと使用しているのですか。
河合 私が小学3年生のころからですね。現在は隣の高森町の天白グラウンド(天然芝)をメインに使用しています。南信州クラブというNPO法人が芝生の管理などされているのですが、私たちも草刈りなどお手伝いしています。

村上 南信州クラブというのは、ラグビーがメインのNPOなのですか。
河合 そうです。飯田市の3つのラグビースクールが一緒になって、中学生の南信州ジュニアというチームがあるのですが、これを運営しています。上郷RSもその傘下に入っています。天白グラウンドは冬の間使えないので、その時は上郷小学校で練習しています。

村上 長らく指導されていて、印象的なエピソードはありますか。
河合 保護者や子どもたちによく話すエピソードがあります。私が20歳代の後半で6年生チームのコーチをしているとき、印象に残る子がいました。ボールを持つと後ろに走って行ってしまったり、タックルから逃げたり、なかなか上手くなりませんでした。6年生のある試合のとき、そんな姿を見て不甲斐なくなったお父さんがグラウンドに入ってきて「お前は、ラグビーをやる資格がない」と言ってグラウンドから連れ出したんです。私も出て行ってお父さんと言い合いになりました。お父さんには理解していただいてその後もラグビーを続けました。3カ月後の試合でのことです。その子がボールを持ってタッチライン際を走ったんです。すると、お父さんもタッチラインの外で一緒に走り始めました。そして、そのままトライしたんです。お父さんも、周りの保護者も泣いていました。成長が見られて本当に嬉しかったです。その子は高校でもラグビーを続けて立派な青年になりました。

村上 何があったんでしょうね。
河合 お父さんが入ってきたことなど、何かきっかけがあったと思いますが、我々が何かをしたのではなく、彼自身が自分で変わったことが大事です。この話は、よく遠征のバスの中などでするのですが、いまできなくても、3カ月後、1年後、もしかしたら3年後かもしれないけど、必ずできるようになる。だからラグビーを続けようねと話しています。

村上 仕事の休みを使って指導を続けるモチベーションは何ですか。
河合 子どもたちの成長を見て自分たちも成長できるんです。よく会社の部下に言うのですが、地域に貢献するとか、誰かのために何かをできるというのは、やりたくてもできないことだし、何か見つけてほしいということです。それは若い指導者にも話しています。

村上 今後の目標を聞かせてください。
河合 みんなが成長できる場所になっていきたいです。一生ラグビーを続けてもらうのが一番嬉しいのですが、ラグビーをやってよかったと思える小学生時代を過ごさせてあげたい。私の経験上も、何か頑張ったものがあると、次も頑張れるということがあります。子どもたち、親御さんたち、指導者も頑張ることができる環境を作っていきたいです。そして、さまざまな活動を通じて地域社会、長野県のラグビーの発展に寄与できればと思っています。

村上 スクール生の募集は随時行われているのですか。
河合 見学・体験は、常時受け付けています。毎回、誰かしら体験に来てくれていますよ。担当のスタッフも準備していますし、初心者でも楽しくできるような形で進めています。ホームページに連絡先がありますので、ご連絡いただければと思います。



ラグビーキッズ
ラグビーネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート

1、ラグビースクールの名前
 上郷(かみさと)ラグビースクール


2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等

 黄黒の段柄ジャージ Aチーム 黒ジャージ


3、代表者(校長)

 河合 圭(かわい けい)

4、連絡先(事務局)
 林 信哉 090-4674-6060

5、活動場所・練習場所
 天白グラウンド(天然芝) 上郷小学校グラウンド(土)

6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 通常練習 毎週土曜日14001700
 5月GW合宿 6月遠征試合 7月菅平合宿 8月9月10月遠征試合 11月上郷杯大会 2月卒業旅行 3月卒業式 
 

7、年会費
 6000円 保護者会費3000
 

8、生徒数
 合計80名(男子70名 女子10名)
 

9、コーチ人数
 30

10、モットー・大事にしている事
 勝つことが目標ではあるが、目的ではない。楽しいラグビーと仲間造りを目指そう。

11、特徴
 OB指導者が多い(15名)

12、歴史・活動実績
 創立39年 400名以上の卒業生を輩出

13、OB・輩出トップリーガー
 今井 通(元セコム) 筒井 敏光(元豊田自動織機) 星野 将利(元リコー)
 細田 佳也(NEC 元日本代表) 片桐 康策(元豊田自動織機)
 吉沢 文洋(ヤマハ) 村澤 大洋(元マツダ) 宮島 裕之(NEC)

14、合宿・場所・期間・参加年齢等
 菅平合宿 7月下旬 23日 小1以上

15、校歌
 野底おろし

16、ラグビー以外の行事
 焼肉大会 親子ゲーム大会

17、他の習い事との掛け持ち
 可能、 半数以上

18、どんなスクールを目指すか(将来像)
 人生の土台作りの場所
 スクールOBがいつでも戻れる場所
 保護者がスクール生と成長する場所
 コーチが成長する場所
 地域に貢献できる組織

19、生徒にどんな大人になって欲しいか
 人生の壁を乗り越える

20、プレースタイル
 低く 速く 強く
 接近・展開

21、交流する他のラグビースクール
 堺RS 桐生RS 横浜RS 関RS 長野県各RS

22、交流するラグビー団体
 飯田高校 飯田OIDE長姫高校 下伊那農業高校 



保護者アンケート

1、このスクールを選んだ理由
 上郷に引っ越してきて、先輩に誘われたため。

2、スクールに改善して欲しい所
 人数が多くなったこともあり、まとまりができるように工夫してほしい。

3、お子さんの変化・スクールに入って生活に変化がありましたか?
 二人ともラグビー中心の生活になり、体が強くなり、病気・怪我にも強くなった。また、W杯日本大会があったこともあり、ラグビーをプレイも観戦も大好きになった。

4、スクールを卒業してもラグビーを続けますか・続けて欲しいですか?
 本人達も続けるつもりでいますし、どんな形でも大人になってもプレイできていると良いと思います。

5、ご自身もラグビーをしていますか。
 未経験であり、野球やバスケットボールをしていましたが、今は一緒にやっています。

6、ご自身もラグビーが好きになりましたか?
 大好きになりました。(家族全員)

7、どんな大人になって欲しいですか?
 周りのことを気遣えて、言いたいことを言い合える仲間を作れるような大人になってほしい。

8、スクールに入れてよかったですか?
 入って良かったです。



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