【インタビュー】第64回▶伏見ラグビーフットボールクラブ(京都府)

みんなが自転車でやってくる、地域のためのラグビースクール

第64回のラグネットは、京都市伏見区を中心に活動する伏見ラグビーフットボールクラブをご紹介します。代表を務めるのは、坪井一剛さん(47歳)。伏見工業高校ラグビー部が2度目の全国制覇(1992年度)をしたときのキャプテンで、同志社大学、NTT関西でプレーしました。坪井さんが中心になってNPO法人京都伏見クラブが設立されたのが、2011年、伏見ラグビーフットボールクラブもスタートしました。その特徴は、試合の多さと、地域密着のクラブ運営です。小学生の部があるのに、中学からクラブに加入する選手が多数います。それはなぜなのでしょう? 独自の運営について坪井さんに話を聞きました。


子どもたちは試合をしたがっている
だから原則、毎週末試合を組む


村上 坪井さんはいつからラグビーを始めたのですか。
坪井 京都の下鴨中学です。ラグビー部の顧問の先生に誘ってもらいました。ラグビーをすると、みんなに「すごい」と言ってもらえたのが嬉しかったです。僕の両親は共稼ぎで、転校も多く、中学生になって初めてラグビー部のようなコミュニティに参加しました。みんなに認めてもらいたくて、タックルして、ほめられると、もっと頑張る。それが僕の原動力でした。

村上 2011年にNPO法人京都伏見クラブを立ち上げられましたね。きっかけを教えていただけますか。
坪井 伏見工業高校ラグビー部を全国レベルのチームに育てた山口良治監督の下で日本一になったキャプテンが、平尾誠二さんと僕だったということで、OB会の中で何かをしないといけないという責任は感じていました。30歳を過ぎたころ、山口先生と、当時のOB会長の大八木淳史さん、ラグビー部の高崎利明監督と食事をする機会がありました。その時に、伏見工業高校という名前が学校の統合で無くなるので、名前を残すために何か考えてくれないかという相談がありました。時間をいただいて考えた計画が、ラグビースクールを作ること、平日も練習する中学部を設立し、NPO法人化することなどでした。

村上 それを伏見工業高校ラグビー部50周年のときにスタートさせたということですね。
坪井 ホームページには「伏見工業高校ラグビー部50年を機に、積み重ねた伝統と高い技術を地域に開放する事業を始める」とあります。これを大義名分にNPO法人京都伏見クラブがスタートしました。


村上 ラグビースクールは、3歳から小学生、中学生まで女子も含めて約160名いるようですね。
坪井 最初の8年はミニ部門だけでした。ジュニア部門(中学生)を作って4年目、ガールズを作って3年目、タグ部門(幼児、小学1、2年生)を作って1年目です。人数はここ数年で増えてきました。

村上 試合をたくさんするのが特徴のようですね。
坪井 子どもたちに「何をしたい?」と聞くと、「試合がしたい」と言います。ラグビーは経験を積んでいるチームが先を行くスポーツだと思います。特に中学部においては毎週試合をしています。平日(月、木、金)の3回の練習は試合でできなかったことを練習します。もちろん塾などで来ない子もいますが、それもOK。ガールズの平日練習は自由参加にしています。

村上 すべて対外試合ですか。
坪井 そうです。ブッキングが大変なのですが、京都、大阪、三重、滋賀、奈良の各スクールと連携しています。岡山、静岡と交流することもあります。中学の部活と試合をすることもありますし、京都工学院の人工芝グラウンドを使わせてもらっているからこそできることですね。


地域課題とラグビースクールを結びつけ、
中学生が地域を助ける側に回る


村上 地域貢献についてはどんな活動をしていますか。
坪井 使用しているグラウンドの剪定(せんてい)、清掃、防災訓練への参加、地域のグラウンドの清掃、地域見守り隊への参加などです。もともと中学部の設立には高いハードルがありました。月、木、金のグラウンドを確保するため、地域の小学校、中学校の校長先生、自治会と連携をとり、共働きで中学生の子どもを見守れないという地域課題とラグビースクールを結びつけました。平日の夜、誰が中学生を見守るのか、ということです。それを私たちがやりましょう。有り余るエネルギーをラグビーで発散してもらいましょうということです。ただし、中学生を集めてラグビーが上手くなるだけでは足りません。人材を地域にお返しするために清掃活動などしていますし、いま準備しているのが、中学生が助ける側に回ることで、災害時に炊き出しを出す側に回り、テントを運び、椅子を並べる。地域に貢献できる人材を育てようとしています。

村上 すると、ジュニア部門には地元の中学生が多いということですか。
坪井 中学でプレーする場がない選手の受け皿ではなく、地域のためのラグビースクールです。部員のほとんどが中学からラグビーを始めますし、自転車で練習に来ます。うちの小学生部門の子たちは、近隣の中学に進学してラグビー部に入ります。醍醐地域の子は中学になるとラグビーを始めるという文化を作りたいのです。

村上 それでも伏見クラブは全国中学生大会に進みましたよね。
坪井 そうなんです。経験者がほとんどいないのに、すごい子たちです。ラグビースタイルは、伏見工業高校のように、スペースにボールを運ぶ、小さくても戦えるスタイルです。

村上 目標にしている大会はありますか。
坪井 中学部は太陽生命カップ、小学生の部はヒーローズカップです。タグラグビーについては、目標がなくて困っていますね。目標になる大会の大切さを感じています。ガールズは、個別のチームの大会がないので、太陽生命カップも京都府スクール選抜という形なんですよね。個人として選ばれることが目標です。

村上 伏見クラブに集まってくる子どもたちにとって、伏見工業高校というブランドは魅力があるのでしょうか。
坪井 それはないですね。逆に京都工学院に行かされるのではないかと距離を置く人もいます。しかし、それはまったくありません。保護者の皆さんに全国の高校の進路ガイダンスもしています。現在、新田(愛媛県)、岡谷工業(長野県)、高知中央、倉敷(岡山県)ほか、いろんな高校に進学しています。京都工学院に行くかどうかは子どもの選択です。

村上 伏見クラブならではのレクリエーションなどありますか。
坪井 毎月一度、まとめて誕生日会をするのですが、そのとき、かならずポン・デ・リング(ドーナツ)を食べるんです。大人になって、うちひしがれたときに、ポン・デ・リングを見ると涙がポロッと出るように(笑)。乾杯みたいに「ドーナーツ!」と言ってポン・デ・リングを食べて、演芸大会をします。演芸部長はキャプテンより権力が上だと伝えています(笑)。

村上 教育的な話をすることは多いのですか。
坪井 それが話していることの8割ですね。もちろん、基本的なラグビーのスキルは教えますが、それよりも親が求めているのはちゃんとした子になるということです。クラブ内のルールはたくさんあります。たとえば、中学部に関しては、休むときは必ず自分で監督かコーチに電話をすることにしています。休むこと自体に制限はありません。勉強、生徒会など理由をきちんと連絡するということです。また、練習で休憩のとき水を飲むのは必ず1年生から。3年生には、しんどいとき、ほしいものが目の前に出てきたときに我慢できるようなシチュエーションを作っています。挨拶や道具をそろえることなどは当然厳しく指導します。社会に出て役立つようなことを伝えようとしています。

村上 教育的な部分を大事にするチームは多いですが、ここまで地域に密着したラグビースクールは、あまり聞かないですね。
坪井 活動している京都の醍醐地域には、小学校が10校、中学校が4校あります。ここで新入部員の募集をかけていますので、練習のときはずらっと自転車が並びます。

村上 伏見ラグビーフットボールクラブと名付けられているということは、将来、シニアも作るということでしょうか。
坪井 ラグビースクールから始めましたが、この先は高校生部門、シニアチームまで作り、生涯ラグビーを楽しめるクラブにするのが目標です。



ラグビーキッズ
ラグビーネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート


1、ラグビースクールの名前
 伏見ラグビーフットボールクラブ

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等

3、代表者
 坪井一剛(ツボイカズタカ)

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 京都市右京区西京極佃田町16-18
 090-2599-7243 
 tsuboi@npo-fushimiclub.jp
 www.npo-fushimiclub.jp

5、活動場所・練習場所
 石田仮設グランド(〒601-1436京都府京都市伏見区石田西ノ坪)
 小栗栖宮山小グランド(〒601-1461京都府京都市伏見区小栗栖宮山1−1)
 むかちゅうセンター(〒612-8141京都府京都市伏見区向島二ノ丸町151−28)
 京都工学院高校グランド(〒612-0884京都府京都市伏見区深草西出山町23)
 練習場所は天然芝、人工芝、土等
 土・人口芝(工学院G)
 

6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 タグ部門 (土曜日午前中)
 ミニ部門 (平日1回、週末1回)
 ジュニア部門(平日3回、週末1~2回)
 ガールズジュニア部門(平日3回(自由参加)、週末1~2回)
 

7、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 各部門違うため ホームページをご確認ください。

8、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 タグ部門約40名
 ミニ部門約60名
 ジュニア部門約50名
 ガールズジュニア部門約15名
 コーチ人数、指名、経歴等
 コーチ人数総勢約15名
 

9、モットー・大事にしている事・理念
 ホームページより抜粋
  私どもは現在、多くの有志の協力により、ラグビーチームを開校しております。
  青少年を取り巻く環境は、陰湿ないじめや引きこもり、犯罪の低年齢化など様々な問題を抱えています。その多くが、少年期での生活環境が原因のひとつだと私たちは考えています。私たちがそうであったように、青少年の育成において、スポーツの担う役割は非常に大きく、身体的な発達や技術の向上だけでない、精神面の育成においてもとても大切なものだと感じております。
  大人と子供との接点を増やす機会を大人たちが自ら作り出し、地域へのスポーツを通じた社会貢献を目指したラグビーチームの運営を2010年4 月にスタートする事となりました。
  ラグビーというスポーツは、「One For All All For One」という言葉に象徴されるように、犠牲的精神を柱としたチームスポーツです。他人を思いやる優しさや、自己犠牲が、美徳とされない風潮となりつつある現代社会において、私たちはラグビーというスポーツを通じて、心の優しいたくさんの友達とめぐり合い、同じグランドで泥んこになって、笑顔いっぱいの毎日を送ってもらいたいと願います。
 オリンピック公式競技への参加、また京都市公立小学校でのタグラグビーの授業での指導開始など、ラグビーを取り巻く環境も追い風になってきました。その追い風を受けて多くの方々のご支援と温かい思いやりの集まりに期待しております。

10、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 私たちは可能な限り「試合」が出来る環境作りを目指しています。
 え?なぜって?それは子供たちに「今日何したい?」と聞いたら「試合がしたい」というからです。ジュニア部門においては開校以来、年間100ゲームを消化しています。
 また、保護者会を設置しておらず、保護者は関わる必要がありません。
子供を安心して預けて頂けるチーム作りを行っています。

11、歴史・活動実績
 2009年小学生部門の活動を開始
 2017年ジュニア部門を設立
 2018年ガールズジュニア部門を設立
 2020年タグ部門を設立

12、指導方針・教育方針

 地域が高齢化し、また共働きが増えていくなか、子供たちが置き去りにならないように
 ラグビーを通じたコミュティを作り、多くの子供たちが参加できる方法を模索し、子供たちをはぐくむ。防災訓練や清掃活動などを通じて地域と積極的に関わりながら新しい青少年スポーツチームの形成を指導の軸に置く。
 そのために京都工学院高校ラグビー部、龍谷大学ラグビー部とも多く関わりを持ち
 異年齢交流を図る機会を設け子供たちの夢の一助になればと期待している。

13、合宿・場所・期間・参加年齢等
 ミニ部門は毎年夏に福井県で開催、小1~参加可能となっています。「ラグビーをしない合宿」として2日間親元を離れ海遊び、川遊び、脱走ゲームなどを通じて自然と触れ合い仲間との連携を図る事を目的とした合宿を行っています。
 ジュニア部門はいわゆる「夏合宿」のような形は行わず、大切な試合の前日に「チームとしての団結を図る事を目的とした」宿泊を行う形をとっています。

14、校歌等
 ジュニア部門は部歌あり

15、ラグビー以外の行事
 地域の剪定・清掃活動・防災訓練への参加
 夏合宿・野球大会・バーベキューなど多数

16、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 可能です。

17、保護者の活動への参加・サポート
 一切必要ありません。子供を預けて自由な時間を過ごしてください。

18、どんなスクールを目指すか(将来像)
 さらに地域と連携し、災害時に助ける側に立てるような人材を作りだす事です。

19、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 地域に帰って来て同じように子供たちと関わり、地域活性化のために尽力して欲しいと願っています。

20、プレースタイル
 自由

21、交流する他のラグビースクール
 全国あまたの他チーム

22、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 京都工学院高校ラグビー部・龍谷大学ラグビー


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