【インタビュー】第63回▶姶良ラグビーフットボールクラブ(鹿児島県)

指導者自ら一緒に練習に取り組み、ラグビーの楽しさを伝える
 
ラグネット第63回は、鹿児島県姶良(あいら)市で活動する姶良ラグビーフットボールクラブをご紹介します。2011年に設立された比較的新しいスクールですが、ラグビースクールと名付けていないのは、いずれ幅広い年齢層が楽しむクラブにする夢があるからです。姶良市は鹿児島県中央部に位置する人口約7万7000人の市。桜島を望む錦江湾(鹿児島湾)に面していて、イルカを見ることもできるため、チームの胸のエンブレムはイルカ、ユニフォームは海のブルーです。どんなクラブなのでしょう。代表を務める豊留亮士(とよどめ・りょうじ)さん(33歳)にお話を伺いました。
 

言葉だけでは伝わらない
やって見せ、やらせてみて、説明する

 
村上 豊留さんは、いつラグビーと出会ったのですか。
豊留 中学のときは剣道をしていて、高校では球技をしようと思っていました。ハンドボールかラグビーと考えていたのですが、県立加治木高校に入学後、ラグビー部の顧問の先生に「放課後、来い」と呼ばれたんです。兄と姉が同じ高校だったので、先生もよく知っていたもので。行ってみたら、そのままの流れでラグビー部に入ることになりました。この出会いが私の人生を変えました。チームで助け合うことなど、私の人格を形成してくれたのはラグビーだと思っています。
 
村上 豊留さん自身には、どんな変化があったのですか。
豊留 学んだのは物事を見る視点です。人はどうしても物事を一つの方向から見がちですが、ラグビーは相手の陣形や味方がどこにいるかなど、いろんな角度から見ないとプレーできません。俯瞰する視点が得られたのはラグビーのおかげだと思っています。
 
村上 その顧問の先生が姶良ラグビーフットボールクラブ(RFC)を作ったのですか。
豊留 いえ、高校2年生になったときに、鹿屋体育大学出身の冨岡剛という先生が赴任されてラグビーも教えていただいたのですが、その冨岡先生が姶良RFCを創設されました。
 
村上 高校卒業後は、ラグビーとはどのように関わったのですか。
豊留 県外の大学に進学しましたが、その大学のラグビー部が部員不足だったためラグビーは続けず、姶良市役所に就職することになって地元に戻ってきました。ちょうどそのとき、冨岡先生が2人のお子さんと一緒に姶良RFC立ち上げました。私もラグビーがしたかったのですが、当初は仕事に慣れないといけなかったので、1年ほどして先生にご連絡しました。そこからコーチとしてお手伝いすることになりました。なぜ、ラグビースクールではなく、RFCなのかといえば、冨岡先生の目標は、小学生にラグビーを教えるだけではなく、幅広い年齢層が生涯を通じてラグビーを楽しむ、地域密着型のクラブだからです。
 
村上 部員はどのように集めていますか。
豊留 小学校にチラシを配って、体験会の告知をします。体験会に来てもらってから入会していただいています。2019年のラグビーワールドカップ後は参加者が増えました。地方のラグビースクールにとっては、5人、6人と入ってくれることがすごいことなのですが、部員確保は鹿児島県のどのスクールにとっても課題です。
 
村上 鹿児島県内にラグビー部がある中学校はありますか。
豊留 2校ですね。中高一貫校のラ・サールと玉龍です。あとは我々のようなクラブで中学部を持っているところです。中学で他競技の部活をしながら、クラブでラグビーをする子はいます。姶良RFCも2016年に中学部を立ち上げましたが、小学校を卒業して中学部でも続けるのは、1人、2人と少ないですね。
 
村上 指導方針を聞かせてください。
豊留 私が高校生の時、冨岡先生は高校生と一緒に練習してくれました。スピードもパワーもすごくて、この人にはかなわないと思ったものです。それを見てきたので、子どもたちに指示だけするのではなく、コーチも体を動かして取り組むことを大事にしています。また、私も25歳の頃から指導に携わって思うのは、選手だった人は子どもがなぜできないかがわからないんです。たとえば、子どもに「低く当たれ」、「肩から行け」、「バインドしろ」と言います。経験者にとっては、その言葉はいろんな動作をひっくるめて言っていますよね。子どもたちには言葉通りにしかわかりません。まず、やって見せて、やらせてみて、どこが違うか説明して初めてわかってくれます。学年が変われば言葉も変わります。習熟度に合わせて指導するのが難しいところです。
 
 
行きたいときに参加して楽しむ
ラグビーを身近で気軽なスポーツに

 
村上 年間で目標にしている大会などありますか。
豊留 一番の目標は、3月に神薗杯です。鹿児島県内の小学6年生の最後の大会になりますので、そこを目指していますね。あとは、11月にトライドリームカップがあり、9月に県予選があります。他県からいろんなチームが来て試合をする機会があるという意味ではここも目標です。
 
村上 子どもたちに、ラグビー以外の各自の活動を優先してもらっているということですね。
豊留 クラブの目標としてラグビーの普及があります。オーストラリア、ニュージーランドでは、我々日本人がドッジボールや手打ち野球をするような感覚で子どもたちがラグビーをしている。日本でもラグビーが身近にあってほしいという思いです。私よりも上の世代の人たちは、習い事やスポーツは、休んではいけないと思っていますよね。休むと後ろめたさがある。そうではなく、気軽にラグビーをしてほしいんです。入会されるときには、今のような話を説明した上で、「ご家庭の行事、弟、妹の保育園の行事、自治会活動があるときは、そちらを優先してください、来られるときにラグビーを楽しんでいただければ良いですよ」と話しています。ラグビーが楽しくなれば、子どもの中で優先順位が変わってくると思うんです。自ら行きたくなるチーム作りをすることを心掛けています。
 
村上 教育方針として、思いやりのある人格の形成を目指すということですが、具体的にはどんな教育ですか。
豊留 特に時間をとって話すというよりも、練習の中でラグビーが大事にする精神を教えられる場面に直面したとき、話をしています。試合に負けて泣いているときとか、チームメイトとケンカしているときなどですね。
 
村上 プレースタイルは、ダイナミックなものを目指しているのですね。
豊留 ラグビー普及の根底にあるのは、子どもたちが楽しむということですから、子どもたちには試合前に「君たちが楽しいと思った試合は、外から見ていても楽しい。君たちが楽しくないと思った試合は、外から見ていてもつまらない。君たちが楽しかったと思えるのが一番」という話をしています。基本的なことは教え、あとはそれぞれの選手が特徴を生かせるように、コーチがサポートしています。
 
村上 姶良市ならではのレクリエーションなどありますか。
豊留 キャンプをする施設がいくつかあるのですが、夏合宿と称して、みんなで遊びに行っていますね(笑)。練習して、バーベキューして、ひと晩一緒に眠るのですが、一泊するだけで子どもたちの絆は深まります。子どもたちは本当に楽しそうで、コミュニケーションもとれるようになり、その後の練習の雰囲気も変わります。
 
村上 今後の目標を聞かせてください。
豊留 最終的な目標は日本のラグビーを盛り上げることです。そのためには九州のラグビーを盛り上げたい。九州を盛り上げるには、鹿児島のラグビーを盛り上げなくてはいけない。鹿児島は九州の他県に比べてラグビー人口が少ない現状があります。そのすそ野を広げるためにも、小学生のうちにラグビーが楽しいということを知ってもらいたい。ここが原点です。小学部を卒業したらみんな中学部に上がって、部活と並行してラグビーをする。鹿児島県内の高校でラグビーをしてもらって、その後、どんな人生を歩むにしても、ボランティアでもいいから生涯ラグビーに関わってほしい。そういうクラブチームにしたいと思っています。


ラグビーキッズ
ラグビースクールネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート

 
1,ラグビースクールの名前 : 姶良(あいら)ラグビーフットボールクラブ
2,    シンボル・ユニフォーム・エンブレム等

 
  
  
 
3,代表者名 : 豊留 亮士(とよどめ りょうじ)
4,住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先 : 代表 豊留までご連絡ください。
  ℡:090-3606-9775 メール:toyo_ryo0602@yahoo.co.jp
  https://m.facebook.com/airarfcu12/
5,活動場所・練習場所 : 柁城小学校・西元グラウンド・高岡公園・船津公園 など
6,練習場所は天然芝、人工芝、土等 : 練習場所によって土または天然芝
7,活動時間、スケジュール、年間スケジュール等 : 毎週土曜日or日曜日9時~12時 原則週1回の練習
8,入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの : 会費 月1,000円(兄弟姉妹2人目以降半額) 選手登録料・保険料別途 練習着等各自準備
9,生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等 : 小学生26名(うち女子2名) 中学生6名(うち女子1名)
10,コーチ人数、指名、経歴等 : コーチ7名
 11,モットー・大事にしている事・理念 : 指導者が自ら一緒に練習に取り組み、指導に際しては自身が選手になり過ぎないということを大事にしています。
12,特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い : ラグビー以外の各自の活動(地域活動への参加、他の習い事や家族行事等)を優先しながら、ラグビーの楽しさを伝え、自ら積極的にラグビーをしたくなる環境作りに努めています。
13,歴史・活動実績 : 2011年、鹿児島県立加治木高等学校ラグビー部顧問の教諭が創部(当時部員2名で活動)。2014年、創設者の転勤に伴い、教諭の教え子であり、当時コーチをしていた現代表者に活動を引き継ぎ、現在に至る。
14,指導方針・教育方針 : ラグビーを通して強い精神力と体を育て、他人を尊重し、思いやりのある人格の形成を目指す。
15,他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか : 他の習い事との掛け持ちOK。部員の半分程度は何かしら掛け持ちしています。水泳、サッカー、陸上競技、空手、ハンドボール等。
16,保護者の活動への参加・サポート : 大会時の弁当注文や練習道具(タックルバッグ等)の管理をお願いしています。
17,どんなスクールを目指すか(将来像) : 将来的には、小学部でラグビーの楽しさを知り、中学部で基礎基本を習得した後、姶良・伊佐地区内の高校のラグビー部へ進学し、更に自分の力を発展させていくこと、そして大学・社会人になった後も引き続き、楽しみながら余暇活動として、また競技性を追求しながらラグビーと関わっていけるといった、欧米型のクラブを目指しています。
18,生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観) : コンタクトプレーを通して、人の痛みが分かる人間になってほしい。当たり前のことを当たり前と思わず、感謝する気持ちを持つ人間になってほしい。
19,プレースタイル : 個人の得意分野を生かした見ていて楽しいダイナミックなラグビーを目指しています。
20,交流する他のラグビースクール : 鹿児島県伊佐市の伊佐グリーンナイツジュニア
21,交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)  :  鹿児島県立加治木高等学校、加治木工業高等学校



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