第14回ヒーローズカップ特別インタビュー

山田章仁 AKIHITO YAMADA
バイスコミッショナー就任インタビュー

 


「現役選手のうちに、みんなに会って伝えたい!」
 

 

ラグビーワールドカップ2015で世界を驚かせた日本代表の一員であり、日本が世界に誇るバックスプレーヤーの一人である山田章仁選手が、第14回を迎えるヒーローズカップのバイスコミッショナーに就任しました。36歳になった今も現役選手として走り続ける山田選手は、この春もアメリカのプロラグビーリーグ「メジャーリーグラグビー」(MLR)のシアトル・シーウルブズでプレーし、プロリーグの運営ノウハウなどを学び帰国しました。自身も5歳から福岡県の鞘ヶ谷ラグビースクールでラグビーを始めた山田選手に、バイスコミッショナーとしての意気込みをお伺いしました。
(インタビュアー・村上晃一)
 
 

刺激を受けたメジャーリーグラグビーの運営
出場機会も多く、日本のリーグONEも楽しみ
 

村上: 今回、シアトル・シーウルブズでプレーしたのは、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス(新リーグでは、シャイニングアークス東京ベイ浦安)からの派遣という形だったのですね。
山田: 渡米したのは、日本の新しいリーグ(ジャパンラグビーリーグワン)と、MLRの両方に良いことが起こればいいなという思いもありました。

村上: アメリカのプロリーグのレベルはどうでしたか。
山田: 日本の皆さんは、アメリカのラグビーのレベルは低いと思いがちですが、コンタクトレベルは日本より激しくて強いと思います。日本のほうが優秀なコーチがたくさんいるかもしれませんが、MLRも十分に楽しいリーグだと思います。

村上: 海外選手の割合はどうですか。
山田: オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの選手も多く、日本のトップリーグと変わりません。僕は外国人枠でプレーしたが、これまでのラグビー人生ではあまり経験しなかったことで不思議な感覚でした。外国人選手枠は9枠だったと思いますが、外国人枠を使わないとローカル枠が増えるなど、シーズン中に変動することがあって面白いと思いましたね。

村上: 日本では2022年1月から新リーグ(ジャパンラグビーリーグワン)が始まります。リーグの運営という意味ではMLRはどうでしたか。
山田: ドラフト制度が採用されていたり、シーズン中でもトレードがあったりで、スピード感を持って新しいことに取り組んでいますね。

村上: 日本のように企業のチームが主体ではなく、独立したプロクラブなのですね。
山田: そうです。プロクラブだからスピード感があります。ただ、チームのオーナーとも話す機会がありましたが、アメリカでのラグビーが、バスケットボールやアメリカンフットボールのようなプロになるのは現状難しいので、日本のように、企業に所属しながらプレーする選手とプロ選手が混在するようなハイブリットな形が理想ではないかと話していました。

村上: ホームゲームは、チームの選手たちで盛り上げるのですか。
山田: そうです。僕も最後のホームゲームでやらせてもらいました。くら寿司の全米のマネージャーが僕の高校の同期だったので、協力してもらってクーポン券を座席に貼り、ラッキーシートを作りました。こうしたことも、発案すればすぐにできるというスピード感があります。DJがスタジアムを盛り上げ、ホームとアウェイの雰囲気がすごくわかりやすく、ブーイングもあって、お客さんも楽しそうです。

村上: プレーヤーとしての幅は広がりましたか。
山田: トレーニングを変えたり、体を絞ったり、いろいろなことをしましたが、コンスタントに試合に出ることができて調子はいいです。日本の新リーグでのプレーも楽しみです。
 
 

昔から見ていたヒーローズカップ
全国の小学生が切磋琢磨する場で勉強したい

 
村上: 今回、ヒーローズカップのバイスコミッショナーを引き受けた理由を聞かせてください。
山田: 昔からヒーローズカップは見ていました。全国のちびっこが切磋琢磨する場で僕も勉強させてもらいたいと思いました。現在、僕はオンラインで独自の『グローカルラグビースクール』を始めようとしています。日本代表選手ではなくても、トップリーガーは地元ではスーパースターですし、コロナ禍でなかなか地元に帰れないなか、オンラインで子どもたちとコミュニケーションがとれるような仕組みです。小学生を対象にしているのですが、僕の出身の鞘ヶ谷ラグビースクールの子どもたちをモニターにして、卒業生のトップリーガーとコミュニケーションをとっています。これは、ヒーローズカップのバイスコミッショナー就任ともつながるのですが、こうしたことを現役選手のうちにやりたいのです。引退した選手の言葉より、20歳代くらいの若い選手の言葉が子どもたちには響くと思うんです。僕でも遅いくらいです。現役の間にやることが大事だという、選手たちへのメッセージでもあります。

村上: 山田選手も5歳からラグビースクールでラグビーを始めています。子どもの頃からやったことで良かった面はありますか。
山田: 将来につながる仲間ができたことが大きいです。ヒーローズカップの良いところでもあるのですが、全国のみんなと試合をしますよね。全国各地からやってきた良い選手を見て、刺激にして成長し、たくさんの友達を作ってほしいです。

村上: 鞘ヶ谷ラグビースクールのときも、他県との交流はあったのですか。
山田: 大分や長崎に遠征しました。大学生になってホームステイした家の選手に会ったりして、あのカレーは美味しかったなんて話すわけですよ。スクール時代の経験は今も鮮明に覚えています。都道府県内の大会や、ひとつのラグビースクールの中での経験も貴重ですが、複数のチームが一堂に介する大会は数少ないし、サポートしたいと思います。

村上: 山田選手の子どもの頃と比べて、今の子どもたちに違いはありますか。
山田: 今は海外のラグビーなど映像がたくさん見られるので、ラグビーに詳しいですね。僕の甥っ子が京都でラグビーをしているのですが、教えるとすぐにできるようになります。上手いですよ。

村上: 子どもの頃にやっておいたほうがいいことはありますか。
山田: 子どものときは、いろんなスポーツをしたほうがいいです。僕が唯一後悔しているのは、子どもの頃にラグビーしかしなかったことですね。アメリカでは子ども時代に、サッカー、野球、バスケットボールなどいろんなスポーツを経験する場があります。日本もそういう環境になってほしいと思います。まだまだ日本は一つのスポーツに打ち込むことが良しとされるところがありますよね。一つのスポーツが選手を抱え込むのではなく、優秀なアスリートはいろんなスポーツをするべきです。ラグビースクールの練習の後に、サッカーの試合に行ってもいい。そういう空気づくりが日本のスポーツ界には必要だと思いますね。他のスポーツの経験はラグビーにも生きると思います。

村上: ヒーローズカップの実行委員長は大野均さん、副実行委員長は菊谷崇さんと、日本代表で一緒にプレーした仲間ですね。
山田: 昔、一緒に戦った仲間も、チームが違って引退すれば交流がなくなってしまう。今回お2人と一緒に大会に関わることができるいうことは嬉しいし、ヒーローズカップに感謝しています。

村上: 新リーグに向けて、シャイニングアークス東京ベイ浦安での練習でこれから忙しくなりますね。
山田: チームの練習もあるので、ヒーローズカップの各試合に行くことは、なかなかできないのですが、時間がある時はできるだけ現場に行って、子どもたちに会いたいと思っています。

村上: 最後に、ヒーローズカップに出場するチームにメッセージをお願いします。
山田: まずは全国各地のラグビー仲間と試合をすることを楽しんでください。他のチームを見ていて、良いと思ったプレーは真似し、その選手に話しかけてみたり、勇気をもってコミュニケーションをとって、新しい友達との時間を楽しんでほしいです。

 
 
PROFILE
やまだ・あきひと◎1985年7月26日、北九州市生まれ(36歳)。
身長:182㎝、体重:88㎏。ポジション:WTB。
競技歴:鞘ヶ谷ラグビースクール(5歳~)→小倉高校→慶應義塾大学→ホンダヒート(2008-2009)→パナソニックワイルドナイツ(2010-2018)→NTTコミュニケーションズシャイニングアークス(2019~)。
プロクラブ歴:フォース(オーストラリア、2015年)、リヨン(フランス、2019年)、シアトル・シーウルブズ(アメリカ、2021年)。サンウルブズ(日本、2016年、2018年、2019年)。
日本代表:キャップ25(ラグビーワールドカップ2015出場)。
ジャパンラグビートップリーグ2013-2014、2014-2015、2年連続プレーオフMVP受賞

グローカルラグビースクール ホームページはこちら☞ https://glocalrugbyschool.com


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