【インタビュー】第4回▼エリートラグビーアカデミー

トップレベルのスキルを見ることが子供たちの目を輝かせる

 今回のデミネットでご紹介するのは、茨城県水戸市で2021年に活動をスタートさせた「エリートラグビーアカデミー」です。代表を務めるのは、茨城県出身で、清真学園、同志社大学、NTTコミュニケーションズ、日野自動車などでスタンドオフとして活躍した君島良夫さん(37歳)です。現在は、オーストラリアでキックスキルを学び、プロのキッキングコーチとしても活動していますが、このアカデミーでは、さまざまなスペシャリストのコーチを集めて、子供たちにラグビーに必要な基礎的技術を指導しています。子供たちは、とても楽しそうに練習に取り組んでいるようですよ。どんなアカデミーなのか、君島さんにお話を伺いました。
 

個人スキルを伸ばすことに主眼
子供たちの自己肯定感、自己効力感を養う
 

村上 このアカデミーを立ち上げた経緯を教えてください。
君島 2019年のラグビーワールドカップ(RWC)の開催中に茨城国体が行われていました。ラグビー競技も強化に力を入れ、茨城の少年チームについても、茨城出身の元プロ選手などコーチングスタッフを揃えていました。茨城県立太田第一高校の廣瀬慎也先生がヘッドコーチを務め、清真学園出身の僕もキックのエリアマネージメントのコーチングをしました。辻高志さん(茗渓学園→早大→NEC)、猪瀬佑太さん(常総学院→大体大→NEC)、高野貴司さん(茗渓学園→早大→サントリー)といった同世代の元トップリーガーも集い、2018年から強化にあたりました。みんなでディスカッションする中で、国体で勝つことと並行して、茨城でラグビー人口を増やさなくてはいけないという話になりました。
 
村上 君島さんが代表を務めているのですね。
君島 僕の会社で運営しています。地元貢献したいと思っていたので、良いタイミングでした。しかし、アカデミーでの僕の立場はスキルコーチで、ヘッドコーチの廣瀬慎也さんと、スキルコーチの猪瀬佑太さんの尽力があったからこそ立ち上げられたエリートラグビーアカデミーだと思います。廣瀬さんは茨城県のラグビー事情に詳しく、アカデミーを立ち上げるにあたって、水戸市の私立水城高校の人工芝の広大なグラウンドをお借りできることになりました。グラウンドが使えるようになり、準備が加速しました。廣瀬さんは学校の教職員ですし、スキルコーチの猪瀬佑太さんもNECの社員ですから、週に一度のボランティアコーチとして携わっていただいています。
 
村上 アカデミーの練習は、毎週金曜日19:00~21:00とのことですが、どんな子たちが来ているのですか。
君島 グラウンドは水戸駅のすぐ近くです。そこに学校終わりに通えて、ラグビースクール(RS)に所属している子たちです。週末はRSの練習がありますから、そこで活躍するために週に一回水戸に集まってプロコーチに教えてもらおう!という声のかけ方でRSに声をかけています。学年は小学4年生から中学3年生までです。
 
村上 練習はどんな内容なのですか。
君島 個人スキルを伸ばすことに主眼を置いています。ラグビーが楽しくなり、次のカテゴリーや、大人になってからも続けてもらいたいので、雰囲気はのんびりしています。最後の30分間は自主練の時間にしていますが、勝手にボールを持って走り回る子もいるし、「キック教えてください!」って僕のところに来る子もいて、「ラグビーボールでサッカーやろうぜ!」と言っている子もいます。そんな感じで良しとしています。廣瀬ヘッドコーチが全体的なこと、猪瀬さんが体の使い方、僕がキックを教えていますが、それ以外にも、タッチラグビー日本代表の奈良秀明さんが来てステップを教えてくれたり、いろんなゲストコーチに来てもらってラグビーボールで遊んでいるようなイメージで活動しています。
 
村上 運営の課題はありますか。
君島 まだ始めて3カ月ほどですが、今後は、いかにこのアカデミーを茨城の皆さんに知ってもらうかが大事です。廣瀬さん、猪瀬さんはそれぞれのお子さんがRSに通っているので、アカデミーの良さを伝えてもらっています。先日は近隣の県から参加者を募り、ラグビースキルを持って帰ってもらうイベントを開催しました。群馬、埼玉、東京などから参加がありました。クボタスピアーズの岸岡智樹選手に来てもらってボール遊びをして、キャッチ&パスの練習などしました。そういうイベントをどんどん開催していきたいです。
 
村上 活動理念として、子供たちの自己肯定感、自己効力感を養うとありますが、具体的にはどういうことですか。
君島 僕は高校からラグビーをして、時代的に「そのプレーはダメ」という否定的な指導を受けることがありました。そのプレーが良くなかったのは自分が一番わかっています。それを否定されると、次のプレーへの意欲が薄れます。いま、コーチ陣で話し合っているのは、良いところを褒めて、次はここを直そうという伝え方をしようということです。上手い下手の前に、上手くいった、楽しかったということを、メインにしていこうというコンセプトです。

 

現代ラグビーでは、小さなキックが大切
動きながらのキックは現在の日本代表の武器

 
 
村上 君島さんは、キッキングコーチとしてどんなことを教えていますか。
君島 キッキングコーチと聞くと、ゴールキックのイメージがあると思いますが、僕が教えたいのは、走りながら、手でのパスと同じようにできるキックです。試合中のプレーの選択肢は、「ボールをもって走る」、「ボールを持ってパスする」、「ボールを持ってキックする」、この3つです。だから、ゲームの中にキックを入れていく感じの練習です。子供たちは楽しさが大事ですので、とにかくたくさんボールを蹴ったり、たくさんボールをキャッチしたり小さな成功体験を積んでもらうようにしています。最初は止まった状態からスタートし、歩きながら、ジョギングしながら、ダッシュしながら、段階的に練習します。最終的にはゲーム形式にして、かわしながら蹴るようなこともして、キックでパスしながらゴールまで行くゲームもします。
 
村上 キッキングコーチになろうとしたのはなぜですか。
君島 NTTコムを辞めてオーストラリアに行き、シドニーのランドウィッククラブに入りました。そこにキッキングコーチがいて、パントキックのいろんなドリルを教えてもらったんです。もう30歳を過ぎていましたが、「これ、もっと早く知りたかった」と思いました。すごく楽しかったのです。
 
村上 現代ラグビーでキックの重要性は高まっているということですね。

君島 最近は小さいキックがすごく大事です。2019年RWCの日本代表も田村、ラファエレらが小さなキックを使ってチャンスを作っていましたよね。それが今の日本代表の武器でもあると思います。そういうキックは、きちんとポイントを押さえれば実は難しくありません。パスと同じようにつかえるキックを練習していくのが重要なんじゃないかと思います。
 
村上 奈良秀明さんのステップ、猪瀬佑太さんのボディーコントロールも、同じような感じでやるのですか。

君島 奈良さんはいま日本中で引っ張りだこのコーチです。奈良さんは人柄も良く、自己肯定感を子供たちに与えてくれます。奈良さんのステップは僕でもかっこいいと思うし、子供たちの目は輝いています。体の大きな選手はステップを使わずにまっすぐ走るように言われることが多いと思いますが、FWもBKもポジションに関係なく、みんながステップを使えると、攻撃の幅も広がるし、すごく良いですよ。猪瀬さんは、面白いキャラクターで、動物の物まねをしながら体の使い方を教えることもあり、「ゴリラみたい!」とか言われていますね。みんなの心をつかんでいます。
 
村上 この世代の子供たちに必要なことは何だと思いますか。
君島 本物を見るというか、高いレベルに触れることが大事でしょうね。岸岡智樹選手が来て、ものすごい速いパスを投げ、ものすごく長い距離のキックを正確に蹴るのを見ると、子供たちは感心して、口が開いちゃってます。それで、「僕もやりたい」、「私もやりたい」となる。それが今も昔も変わらず、一番の薬だと思います。だから、そういう人をどんどん呼びたいと思います。
 
村上 アカデミー生は随時募集しているのですか。
君島 いつでも受け付けています。体験は2回までは無料で、3回目からは入会費、参加費が必要になります。入会すると名前入りの練習着がもらえます。今後は、茨城県内にあと1つか2つアカデミーを増やしたいと思っています。





ラグビーキッズ

ラグビーアカデミーネットワークインフォメーション

アンケート

 

1、Elite Rugby Academy(エリートラグビーアカデミー)

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム



3、代表 :君島良夫

4、事務局 elite.rugby.academy2021@gmail.com

5、活動場所・練習場所 : 茨城県水戸市私立水城高校グラウンド

6、練習場所: 人工芝

7、活動時間 毎週金曜日 19:00-21:00

8、入会費 5,000円 参加費 1,500/1回 

9、会員 40名

10、ヘッドコーチ 廣瀬慎也
  スキルコーチ 猪瀬佑太
  キックコーチ 君島良夫
  ステップコーチ 奈良秀明
  S&Cコーチ 知念莉子
  アシスタントコーチ 他4名

11、活動理念 : ラグビースキルはもちろんのこと、本アカデミーでは子供たちの自己肯定感・自己効力感を養い、人間形成の場として指導していきます。ラグビーを通じて、「協調性」「リーダーシップ」「コミュニケーション能力」を育成していきます。

12、特徴 : 他のアカデミーとの違い スキルに特化したコーチを週替わりで配置して、ラグビーに必要な基礎な技術を専門的に指導します。メンバー選考やレギュラー争いもないので、個人スキルのレベルアップと何よりも楽しさに特化して活動しています。



関連記事