【インタビュー】第51回▶茅ヶ崎ラグビースクール(神奈川県)

第51回▶生徒、父母、コーチ、全員が幸せになるラグビーを目指す
第51回目のラグネットは、神奈川県の湘南地区で活動する茅ヶ崎ラグビースクールです。1994年創立で、2021年3月に一般社団法人化。「強い心、強い身体を育てよう」、「礼儀正しくしよう」、「生徒、父母、コーチ、全員が幸せになるラグビーを目指す」を校訓に、オープンでフレンドリーなスクール運営を続けています。今回は、6年生のヘッドコーチ冨澤浩明さん(46歳)にお話を伺いました。冨澤さんは、関東学院大学、NECグリーンロケッツでプレーしたSHで、引退後、茅ヶ崎ラグビースクールのコーチとして子どもたちの育成に情熱を傾けています。

勝負にこだわった3年前の指導から
会話する指導に変化して互いの理解が深まった
村上 このラグビースクールに関わるようになった経緯を教えてください。
冨澤 2003年に現役を引退し、妻の実家がある平塚に引っ越してきました。NECグリーンロケッツのOBの時崎さんが茅ヶ崎ラグビースクール(RS)でコーチをされていて、誘ってくれました。2004年からコーチをしていたのですが、2007年に長男・凛太朗が生まれたので、3歳になったときに茅ヶ崎RSに入れました。そこからはお父さんコーチです。自分の子どもをコーチするとガミガミ言ってしまうので、違う学年のコーチを続けています。息子は中学3年になりました。
村上 中学の部は別にしているようですね。
冨澤 母体は同じですが、昨年、海老名RSと茅ヶ崎RSの中学の部が一緒になりました。それが、湘央RSです。

村上 茅ヶ崎RSは、今年の3月に一般社団法人になったそうですね。
冨澤 法人化することで収支なども明確に管理できますし、信用もできます。運営側は大変そうですけどね(笑)。

村上 1994年に創部されたときのことは聞いていますか。
冨澤 当時、平塚RS、茅ヶ崎RSがあって、お互いに小さな団体だったので、茅ヶ崎RSとして一つになったそうです。その後、平塚の名前は消えていたのですが、3年前に平塚市RSが立ち上げられました。

村上 冨澤さんはいま6年生のヘッドコーチですが、目標とするのはヒーローズカップになりますか。
冨澤 実は3年前と去年も6年生のヘッドコーチでした。3度目の6年生の指導になるのですが、何を目標にしているかといえば、中学でもラグビーを続けてもらうことです。3年前に6年生を見たときは、ヒーローズカップで優勝を目指すなど結果を重視してしまったところがあります。毎週、土、日曜は練習して、メンバー選考も勝つことを優先して絞りました。コーチングもすべて私が提示する一方的なものでした。そんな中でラグビーを続けなくなった子もいました。保護者の方から厳しい言葉もいただきました。選手たちにどう思ってほしいかをよく考え、ラグビーが楽しくて仕方がなくて、中学に行ってもやりたいということなのではないかと思うようになりました。今の練習は、選手に問いかけるようになりました。今の練習どうだった? 次はどうしたい? 会話するようになって、子どもたちのことを理解できるようになったし、子どもたちも僕のことが分かってきたと思います。

村上 双方向のコミュニケーションが密になると、チーム力も上がるのではないですか。
冨澤 子ども同士の仲も良くなりましたね。以前は、AチームとBチームで気持ちが離れているところもあったと思いますが、いまはみんなで一緒に楽しくやっています。

村上 どんな指導方針で教えているのですか。
冨澤 「強い心、強い身体を育てよう」、「礼儀正しくしよう」、「生徒、父母、コーチ、全員が幸せになるラグビーを目指す」。この3つのことを大事にすることです。生徒数が増え、以前に比べて学年間の連携が希薄になっているところがあったので、全員が幸せになるラグビーを目指すという原点に立ち返ろうとしています。


ラグビースクールが子どもたちに
エナジーや元気を与える場でありたい

村上 現在、生徒数が157名ということですが、これは最近増えたのですか。
冨澤 2019年のラグビーワールドカップが終わって、特に幼児と小学生の低学年が増えました。コロナで活動が休止になって少し減ったのですが、ラグビー人気は衰えていなくて、また徐々に伸びています。

村上 学年は分けて練習しているのですか。
冨澤 幼児と小学1、2年生の子はミルキーと名付け、3から6年生はミニとして、カテゴリー分けしています。小さな子ほど一年の差が大きいので、幼稚園の年中、年長、1年生、2年生で分かれています。ミニも学年ごとに分かれています。

村上 スクールに来たことで変わった子どもはいますか。
冨澤 去年の6年生で、スクールの中でリーダーシップを発揮している子がいて、彼はいまも中学でラグビーを続けています。練習に来ているときは、まったくわからなかったのですが、学校に行くのが嫌になってしまったときがあって、保護者の方から聞いて初めて知りました。本人に聞いてみたら、「学校がいろいろあって嫌だけど、ラグビースクールは楽しいし、続けたい」と話していました。学校では自己表現できない子でも、スクールを自分を包み隠さず表現できる場として認識してくれているのだと思います。そんなふうに、スクールが子どもたちにエナジーや元気を与える場であったら嬉しいですね。

村上 息子さんはたくましくなりましたか。
冨澤 中学の部活と、湘央ラグビースクールの活動を両方やっています。本当に楽しそうです。ラグビーも楽しいようですが、練習が終わった後にみんなでファミレス行ったり、コンビニ寄ったりして、おしゃべりするのも楽しいようです。仲間といることが楽しいのですね。

村上 6年生からどれくらいの子が、湘央ラグビースクールに入るのですか。
冨澤 現在、6年生は21人います。僕の目標が是が非でも中学でラグビーを続けてくれることですが、まだわかりませんが、ほぼ全員がラグビー続けてくれると思います。

村上 保護者の方のアンケートで、茅ヶ崎RSについて「オープンでフレンドリーな雰囲気」という評価がありました。
冨澤 雰囲気はすごく良いスクールです。コーチがガミガミ怒鳴る光景はゼロです。子どもたちに考えさせるような、オープンクエスチョンをするコーチも増えていて、子どもたちが自分で考えることができるので、それが楽しいようです。僕が一番誇りに思っているのは、試合で得点をとられたときに、コーチや保護者がかける言葉が、「次がんばろう」というような励ましなのです。0-100で負けたとしても、ひとつでも良いプレーがあればほめる。ミスに対しても「ドンマイ」と励ましあう文化があります。ここは、茅ヶ崎RSが誇れるところです。

村上 砂浜でビーチラグビー大会をするようですね。
冨澤 茅ヶ崎のビーチで、5人対5人の本気のラグビーをします。下が砂で、倒れてもいたくないし、走ってもスピード感が出ないので、コンタクトの練習にも向いています。ビーチラグビーが終わったあとは、地引網を引いて、バーベキューをしてと、海ならではの楽しみもあります。

村上 今後、どんなラグビースクールにしていきたいですか。
冨澤 校訓のように、かかわる人すべてが幸せであること。生涯ラグビーを続けたい思いを育てられる場にしたいです。我々はラグビー指導員という立場ですが、ラグビー憲章をグラウンドで実践し、人間性を育てるという重要なミッションがあることを忘れないようにしたいと思います。子どもたちが卒業した後に、茅ヶ崎RSで学んだことは、ラグビーだけではなくて、将来に役立つことだった、茅ヶ崎RSがあったおかげだね、と言ってもらえるような、それを保護者の皆さんにもわかってもらえるような場でありたいです。

村上 ボランティアでかかわって、なぜそこまで情熱を注げるのですか。
冨澤 関わる人たちは、みんな子どもの人間的な成長を考えています。そこに感動します。こちらがヒントを与えて、子どもたちが楽しみながら問題を解決していく。それが垣間見えた瞬間、元気をもらえるんですよ。




ラグビーキッズ
ラグビーネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート


1、ラグビースクールの名前
 茅ヶ崎ラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等


3、代表者
 赤阪 忠行

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 https://chigasakirs.net/ 担当:照井

5、活動場所・練習場所
 ①柳島スポーツ公園、②赤羽根第二青少年広場、③小出暫定スポーツ広場、④辻堂海浜公園
 練習場所は天然芝、人工芝、土等:①人工芝、②天然芝(雑草)、③天然芝(土+雑草)、④人工芝

6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 毎週土曜日午前中、平日ナイターラグビー(毎週火・木を基本とし、年間90回開催。小学4年生以上の自主参加)

7、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 入会費なし、会費:年間12,000円

8、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 生徒数150人、うち女子15名→10%、国籍の情報は未収集ですが、国籍を理由に入校をお断りすることはありません(ハーフと思われる選手3名程度在籍)。

9、コーチ人数、指名、経歴等
 96人(保護者お手伝い頂けるサポートスタッフ含む)

10、モットー・大事にしている事・理念
 スクールの校訓になりますが、「強い心、強い身体を育てよう」、「礼儀正しくしよう」、「生徒、父母、コーチ、全員が幸せになるラグビーを目指す」となります。

11、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 地元の特色を生かした「ビーチラグビー大会」の主催(海なし県のスクールとの交流)

12、歴史・活動実績
 1994年創立、2021年3月一般社団法人化

13、OB・輩出トップリーガー
 上野拳太郎(セコムラガッツ)、王野尚希(釜石シーウェイブス)、慶應義塾體育會蹴球部2020年度主将:相部開哉

14、指導方針・教育方針
合宿・場所・期間・参加年齢等:菅平高原に7月下旬2泊3日、小学3年生から

15、ラグビー以外の行事
 芋ほり、卒業式

16、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 可能

17、保護者の活動への参加・サポート
 各学年の保護者代表の方を中心に、練習やスクール運営のサポートに熱心に取り組んでいただいています。ご自分の子供さん以外のケアも手厚いママやパパも多いです

18、交流する他のラグビースクール
 湘央ラグビースクール(中学生向け、海老名ラグビースクールと昨年度よりジュニア部門のスクールを設立)、県内のラグビースクール

19、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 東海大学SEAGALES

20、自由欄(付け加える事があれば)
 茅ケ崎市ラグビーフットボール協会と共同での普及活動(2019年の幼稚園・小学校・中学校でのラグビー教室開催)



保護者へのアンケート

1、このスクールを選んだ理由

 親としては、スクールのオープンでフレンドリーな雰囲気と、勝ち負けにこだわることよりもラグビーを通じて子どもたちの成長を応援してくださる姿勢がとてもいいなと思いました。でも何より、体験に参加した子ども自身が「楽しいから入りたい!」と言ったのが決め手でした。

2、このスクールの良い点

 ラグビーを楽しむ、ということを大前提に、子どもたちが自分たちで話し合い考えながらプレーすることの大切さを教えてくださる点。

3、スクールに改善して欲しい所
 新規入会する子がRWC後すごく増え、仲間が増えて嬉しい限りですが、その分コーチの皆さんのご負担も増しているのではと思うので、コーチの数ももっと増えるといいですよね・・・。

4、お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか
 毎週の練習で仲間とめいっぱい体を動かすことで、元気で体力のある子に育っていると思います。あと、学校以外での仲間がいることや、学年を越えた子ども間の交流、コーチや父母といったいろいろな大人とのふれあいなどを通じて、本人の視野も広がっている気がします。

5、お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか

 頃から、しっかり食べ、体を動かし、よく寝る、といったことを、自分から心がけるようになっていると思います。

6、スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けて欲しいですか
 本人がラグビーを続ける前提で将来の話をしているので、その気持ちがある限り、続けたらよいと思っています。

7、ご自身もラグビーをしていましたか
 父親は高校時代に少し心得がありました。

8、ご自身もラグビーが好きになりましたか
 はい。息子と一緒にテレビや動画でラグビーの試合を観るのが日々のルーティンになりました。

9、どんな大人になって欲しいですか
 自分のことも周りの人のことも大切にできる大人になってほしいです。

10、スクールに入れてよかったですか
 茅ヶ崎ラグビースクールを見つけた自分を褒めたいくらい(笑)、入れてよかったです。



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