第47回▶香川県の中学生にラグビーをする機会を作る!
ラグネット第47回で紹介するのは、香川ジュニアラグビースクールです。香川県はラグビー人口が少なく、学校でラグビーをしているチームもわずかです。その中で香川県立高松北中学、高校のラグビー部はこの地域のラグビーを引っ張る存在です。このスクールも香川県内の中学生がラグビーをする機会を作るために創設されました。どんな活動をしているのでしょう。今回は、高松北中学ラグビー部顧問で、スクールの代表を務める山田友幸さん(33歳)にお話を伺いました。
部活とスクールが一体となった「ほぼ部活」
セカンドスポーツでラグビーを選ぶ中学生も
村上 山田さんのラグビー歴を教えてください。
山田 私は東大阪市立枚岡中学出身で、中学からラグビーを始めました。大阪府立八尾高校、香川大学とラグビーを続けました。香川県の水が合ったこともあって、香川県で社会科の教員になりました。その後もレフリーとしてラグビーとはつながっていたのですが、指導はしていませんでした。4年前に香川県立高松北中学に赴任して、ラグビー部の顧問になりました。
村上 どのようにこのスクールに関わることになったのですか。
山田 私が赴任した時には香川ジュニアはスタートしていました。このチームは高松北中学が母体になっていて、今では、高松北中学の生徒と他校の生徒が一緒に部活動のような形で練習しています。高松北中学の生徒にとっては部活なのですが、他校から参加している生徒は学外活動という形です。
村上 山田さんが顧問になってから一緒に練習するようになったのですか。
山田 当時は香川ジュニアだけに入っている生徒がいない状況でした。香川で中学生がラグビーをする機会をつくり、競技人口を増やすために私が顧問になってからは、高松北中学以外の生徒も受け入れる形で運営し、それが広がってきました。
村上 試合はどのように行っているのですか。
山田 中学として単独チームで試合をすることはなく、香川ジュニアとして出ています。
村上 香川県の中学ラグビーの現状を教えていただけますか。
山田 中学校でラグビー部があるのは本校一校です。スクールとして中学生がプレーできるのは、香川ジュニアと、さぬきラグビースクールです。ということで、この2チーム合同で香川県代表として四国大会などに出場することが多いです。香川県の中学生のラグビー人口はこの2チームで22名です。
村上 競技人口の多いスポーツは何ですか。
山田 野球、サッカーですね。この2つは全中学に部活動があります。バドミントン、卓球、テニスの人口も増えている気がします。私は東大阪市にいたので、この状況は驚きました。私が卒業した枚岡中学には、サッカー部はなかったけれどラグビー部はありましたからね。
村上 小学生のラグビーはどうですか。
山田 さぬきラグビースクールの小学生の部と、高松少年団というチームしかないですね。あと、香川ジュニアの小学生の部で高松北ヤングラガーズというチームも作りました。土曜日に関しては、小学生と中学生が入り交じって練習しています。中学生はウィークデーの夕方も練習します。ただ、中学、高校にラグビーをする場が少ないので、辞めてしまう子も多いです。それがもったいないので、ラグビースクールに行って香川ジュニアのことを広報するようになりました。香川ジュニアとしての活動は盛り上がりを見せていますし、ラグビーをセカンドスポーツとして選ぶ子も増えています。
村上 セカンドスポーツとはどういうことですか。
山田 普段は水泳をしているけど、水泳の無い曜日はラグビーをする子や、自分の所属中学で野球部だけれど、ラグビーも続けたいということで香川ジュニアに来る子もいます。
子どもたちが成長を実感する指導方針
トレーニングの一環で相撲大会にも出場
村上 指導のポリシーはありますか。
山田 子どもたちが成長を実感できる指導を心がけています。子どもたちにも話しているのですが、自主性を大事にしています。なんのためにラグビーをしているのか、自分たちでゴールを確認して、そのためにはどんな練習が必要なのかメニューも考える。そして、成長できたことを実感させていくというスタイルです。
村上 どんな練習が多いのですか。
山田 人数が少ないこともあるので、基礎練習が多いです。子どもたちもラグビーを楽しみたいので、ポートボールのラグビーバージョンを作ったり、ラグビーで鬼ごっこをしたり、自分たちで工夫して楽しんでいます。基礎体力的なこともしますが、うちは半分部活動ですので、学校の施設が使えます。校舎の階段を走ったり、高校のトレーニング器具を使わせてもらったり、ウォーミングアップ、ハンドリングなどの基礎、そこから発展させた練習、コンタクトの基礎、コンタクトフィットネスみたいな感じで大枠の流れはありますので、その中で子どもたちが自分たちで考えています。
村上 目標にしている大会はありますか。
山田 全国ジュニア大会ですね。四国大会を突破して、中国・四国大会で勝って全国へ行くのが目標です。最近は人数が少ないこともあって、香川・高知選抜で出ています。ですから、四国は3チームでの争いです。昨年度はコロナ禍で大会が中止になったのですが、同等の大会をしようということで、試合をしたところ、香川・高知選抜が優勝しました。
村上 全体の競技人口を増やすためにどんな活動をしていますか。
山田 Facebookで発信することと、近隣の小学校に案内のチラシを配ったりもします。あとは、小学校のタグラグビー大会があるので、そちらに中学生と一緒に教えに行っています。
村上 香川県出身の有名選手はいますか。
山田 一人いますよ。日野レッドドルフィンズの片岡将選手(高松北高校→関西学院大)です。私も同い年ということもあって親交があり、香川ジュニアにも教えに来てくれたこともありますし、マスクやラグビー用品を送ってくださって、さまざまな形で支援していただいています。
村上 香川ジュニアのチームの雰囲気はどうですか。
山田 明るいし、なにより優しいです。高松北中学は受験で入学してきます。ある意味均一化されているところがあります。しかし、香川ジュニアには、週に一度しか来られない子もいるし、なかには2週間に一度しか来ない子もいます。理解力、体力、ラグビーの技術も個人差があります。幅広いタイプの子がいるということを子どもたちが受け入れ、仲間として活動していこうとしてくれています。いろんなタイプの子が協力してチームを作るのがラグビーの素晴らしさだということは常に伝えています。
村上 香川県の相撲大会にも出場するようですね。
山田 トレーニングの一環なのですが、相撲の立ち合いで強く当たって足をかいて前に出るのが、ラグビーのコンタクト練習になりますよね。私が相撲を好きだということもあります(笑)。実際に私が赴任してきたときに、高松の相撲大会に出てみたら、団体戦、個人戦で優勝しました。香川ジュニアは中学校体育連盟の活動ではないので中学校の大会には出場できません。子どもたちが、みんなに認知された大会で頑張るという機会を与えてあげたくて相撲を続けています。期間限定の相撲部ですね。いつもは6月にトレーニングをスタートし、7月に地区大会があって、勝ち抜けば8月の全国大会があります。実は香川県では相撲人口がラグビー以上に少なく、相撲部ではない生徒が時期限定で出てくるのがほとんどなんです。
村上 今後の目標を聞かせてください。
山田 一番の目標は、香川県の中でラグビーをメジャーにして、文化にしていくことです。そして、子どもたちがラグビーを好きになってくれて、ラグビーを続け、指導者になって戻ってくるような好循環を作っていきたいです。文化になり、母数が増えることが香川のラグビーをより強くすると思います。現在は47都道府県でも最弱かもしれない県が花園に出て1勝、2勝と積み重ねられるように強化につなげていきたいですね。
ラグビーキッズ
ラグビーネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート
1、ラグビースクールの名前
香川ジュニアラグビースクール
2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
3、代表者
山田 友幸
4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
住所:香川県高松市牟礼町牟礼1583-1(香川県立高松北中学校)
連絡先:kagawajr.rugbyschool@gmail.com
担当者:山田 友幸
入校希望及び問い合わせ:kagawajr.rugbyschool@gmail.com(ご連絡いただければ個別に電話番号などご都合の良い連絡方法で対応します)
5、活動場所・練習場所
活動場所:香川県立高松北中学校・高等学校西グラウンド北側
6、練習場所は天然芝、人工芝、土等
残念ながら土です
機会を作って天然芝や人工芝での活動もしています(月1~3回)
7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
活動時間:火~金16:30~18:00、土(日)8:30~10:30
基本的に日・月がOFFですが大会や学校行事に合わせて変更があります。
年間スケジュール(コロナ禍でない通常であれば)
○5月 四国中央市長杯、香川ジュニア近県交流大会、関西大会四国予選
○6月 関西大会中四国順位決定戦、太陽生命カップ
○7月 関西大会、
○9月 中四国ジュニア大会
○10月 全国ジュニア大会四国予選
○11月 全国ジュニア大会中四国代表決定戦
○12月 徳島育ちセブンス交流大会
○2月 四国中学生7人制ラグビー大会
○3月 卒業試合
8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
年度当初にスポーツ安全保険代(800円)と協会登録費(1500円)を集金します。
保護者会計として交通費等を保護者に集金(約2000円/月)してもらっています。
あとはラグビーに必要なヘッドキャップやマウスピースなどですが、何よりも気持ちが必要ですね(笑)
9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
現在17名(現時点で女子選手はいませんが随時受け付けます。国籍問いません!)
10、コーチ人数、指名、経歴等
コーチ5名ほどです。北中高のOBがコーチをしてくれます。
11、モットー・大事にしている事・理念
・ラグビーを好きになる
・相手を認め合う
・教え合いとセルフコーチング
・みんなが応援したくなる人・チームになる
12、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
・高松北中学校ラグビー部が母体となり、部活動と同じような感覚で活動できることです。オープンクラブ化とでも言うのでしょうか。私が学校の教員という立場で、部活動と同じように指導をしています。様々な学校から、さまざまな目的を持った子どもたちが集まってラグビーをしています。中には、ラグビーをセカンドスポーツとして取り組んでいる子も何人もいます。週に1回しか来られない子もいますが、みんな暖かく受け入れています。
・試合は現在、県内のさぬきラグビースクールと合同で出場したりしています。
13、歴史・活動実績
高松北中学校ラグビー同好会がラグビー部になり、それが母体となっています。他校の中学生もラグビーをしたいということで香川ジュニアラグビースクールが出来上がったと聞いています。
2020年度 四国地区ジュニアラグビー選抜交流戦大会(全国ジュニア予選の代替大会)優勝
14、OB・輩出トップリーガー
現時点ではいません。将来的に出てきてほしいですね。
15、指導方針・教育方針
基本的にはモットーの欄と同じです。付け加えるなら、自分たちでマネジメントできるようにできるだけ大人が強制することは避けようと心がけています。なので練習メニューや目標は自分たちの話し合いで決めています。意見が滞ったり、何をしていいのか分からなかったりするときにアドバイスをします。
また、当たり前のことは当たり前にすることも大切にしています。身の回りの整理整頓やあいさつ、時間厳守などももちろんですが、学校生活も大切にするように常に伝えています。
16、ラグビー以外の行事
6月は中学校総体に合わせて相撲トレーニングを入れています。体幹や足腰を鍛えるとともにコンタクト強化を目的としています。
夏休み期間中は練習後、学校のプールを使ってトレーニングとクールダウンをします
17、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
他のスポーツとの掛け持ちももちろん可能です。水泳や野球をしながらラグビーをセカンドスポーツにしている子もいます。現在、掛け持ちでしている子が4人います。
18、保護者の活動への参加・サポート
試合や学校外での練習での送迎をお願いしています。保護者会で送迎は協力しながらやっていただいています。
19、どんなスクールを目指すか(将来像)
香川県という場所では中学生がラグビーをすることが非常に限られています。より多くの子どもたちがラグビーというすばらしい競技に触れる機会を与えられる場になってほしいです。
20、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
生徒にはラグビーを好きでい続けてほしいです。将来的に、ラグビーにどんな形でもいいので携わっていってほしいですね。もちろん理想は、香川ジュニアラグビースクールに指導者という立場で戻ってきてほしいです。
21、プレースタイル
基礎を大切にする
22、交流する他のラグビースクール
さぬきラグビースクールさん、土佐塾中学校ラグビー部さん、高知ラグビースクールさん、高松北ヤングラガーズさん、など
23、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
高松北中学校、高松北高校、香川県ラグビーフットボール協会
片岡将選手(日野レッドドルフィンズ)
24、自由欄(付け加える事があれば)
ラグビー後進県の香川県でもラグビーという文化を広めていきたい。そしてラグビーを通して成長していってほしい。Let’s Rugby!
公式Facebook:https://www.facebook.com/KagawaJrRugbySchool