第37回▶中学生にプレーの機会を作り、広島のラグビー人口拡大に貢献
ラグネット第37回目は、広島市で活動する広島ラガー・ジュニアラグビースクールをご紹介します。日本ラグビーの課題である中学生世代のプレー機会創出のため、2013年より本格的にスタート。ここで育った選手たちが今や関東、関西の大学に進み始めています。その指導法もユニークで、ノンウエイトトレーニングやパスとキャッチのスキルを重視した練習など、子どもたちの将来を見据えた取り組みが多数あります。今回は、チームの代表を務める内田雅志さん(47歳)にお話を伺いました。
小学生高学年のアカデミーもスタート
未経験者もラグビーを楽しむ
村上 内田さんがラグビーを始めたのはいつですか。
内田 私は徳島県出身ですが、中学まではラグビーを知りませんでした。進路について悩んでいたとき、担任の先生が「ラグビーをしてみたら?」と言ってくれたんです。中学3年生の時点で、身長180㎝、体重85㎏ありました。家から近かった城東高校に行って、1年目は身体づくりを一生懸命やって、2年生からはレギュラーになることができました。ポジションはNO8でした。
村上 京都産業大学に進学したのは、なぜですか。
内田 京産大のラグビー部が年に一回試合で徳島県に来ていました。そのときの合同練習会に参加させてもらって、当時の大西健監督に「受験してみないか」と声をかけていただきました。大学卒業後、マツダに入社してラグビー部で10年プレーしました。いろんなポジションを経験しましたが、25歳くらいでHOに転向しました。
村上 このラグビースクールに関わった経緯を教えてください。
内田 引退した翌年、幼稚園の息子が「ラグビーがやりたい」と言い始めて、安芸府中ラグビースクールに入りました。私も6年ほどコーチをしました。高学年コーチとして、関西ミニジャンボリー大会、ヒーローズカップなどに引率して行ったのですが、関西のラグビースクールは、小学生・中学生一貫のところが多いことに気づきました。広島には小・中一貫のスクールがわずかだったのです。小学生の競技人口を調べてみると、広島県内で350人くらいでしたが、中学は30人ほどでした。高校は競技人口が多いので、中学がボトルネックになっていることを実感し、ミニラグビーの指導者に声をかけて、中学生の受け皿を作ろうという話をしました。既存のスクールに中学生の部を作ると、他のスクールから入りにくいでしょうから、中学生だけのスクールを立ち上げることにしました。そのとき、広島ラガー倶楽部という大人のチームが活動を終えるということで、名前を引き継いでほしいと言われまして、「広島ラガー・ジュニアラグビースクール」としました。エンブレムの紅葉も引き継いでいます。
村上 2013年に本格的に活動を開始し、現在、41名の生徒数ということですね。
内田 今年から小学生の5、6年生のアカデミーを作りました。41名のうち5名は小学生です。年末にラグビー体験会を開催したとき、参加してくれた小学生が「また来てもいいですか」
と連絡をくれました。それがきっかけでした。小学校のスクールは週1回の練習がほとんどです。練習機会がほしいのだろうと思い、アカデミーを作ることにしました。活動は4月から始めたばかりですが、未経験者も2名来てくれています。
村上 中学生のスクールを作ったことで、ラグビー普及にはつながりましたか。
内田 もともと中学生がプレーできたのは、2つのスクールだったのですが、そこに我々が加わったことで活性化し、広島の中学の競技人口が3倍になりました。
基礎スキル、コミュニケーション能力を重視
試合中、コーチが声を出さないことを徹底
村上 指導の特徴のひとつである「ノンウエイトトレーニング」とは、バーベルなど器具を使わないということですね。
内田 完全な自重トレーニングです。たとえば、肩の三角筋を鍛えるトレーニングは、普通はダンベルを持ってやりますよね。そうではなく、腕をゆっくり上げ下げすることでインナーマッスルを意識して鍛えるのです。私は現役時代肩の脱臼のクセがあって苦しんでいたのですが、広島でノンウエイトトレーニングを教えているトレーナーの保科先生に出会いました。しばらく器具を使わずにトレーニングし、半年後にベンチプレスをしたら、以前は150㎏しか上がらなかったのが180㎏上がりました。体の筋肉はくまなく鍛えたほうが全部の筋肉が活動するし、発揮する力も関節の安定性も高まるということで私も怪我をしなくなりました。そんな経験があり、私もトレーナーの資格を取りました。現在、生徒にはノンウエイトトレーニングを指導しています。子どもたちはフィジカルも強くなったし、怪我をしにくくなりました。
村上 パス、キャッチのスキルを重視するのはなぜですか。
内田 チームがスタートした1年目の途中から早稲田大学ラグビー部OBの瀧口謙コーチが入ってくれました。当時コーチが7、8人いたのですが、高校、大学、社会人でプレーするベースを作るべきなのではないかとうことで、何度も話し合って指導マニュアルを作りました。その時にランニングラグビーをやらせたいという方針が固まって、瀧口コーチがメインで基礎スキルを教えています。中学生はまだ体ができていないので、体を大きくして近場で当たってばかりでは体に良くないと考えています。それに、ラグビーの面白いところって、ぎりぎりのパスが通って、きれいに抜けていくようなところだと思うんです。
村上 コミュニケーションも重視しているようですね。
内田 子どもたちに考えてもらって、自分たちで何がしたいかを言わせるようにしています。そのためには定期的な意思疎通が必要なので、コロナ禍ではZOOMを使って個人面談をしています。
村上 練習を「自由参加」にしているのは、なぜですか。
内田 練習に参加しなければいけないという空気を作りたくないからです。習い事や、部活と並行していると、来る日は限られます。それでも継続できるように、練習機会を増やしました。以前は週3回練習していましたが、ZOOMもあるので、週6回、参加チャンスを作っています。ZOOMの練習では、ノンウエイトトレーニングを指導しています。
村上 他に指導の上で特徴はありますか。
内田 試合中、コーチが一言も発しないように徹底しています。1年目は熱くなって言ってしまうこともあったのですが、指導マニュアルを作る過程で言わないようにしようということになり、以降8年間、いっさいしゃべっていません。ハーフタイムにアドバイスするくらいですね。
村上 指示をしないことで、子どもたちに変化はありましたか。
内田 コーチの顔色をうかがうことがなくなりました。試合中でも、自分たちで時間を見つけて打ち合わせをしています。それが増えましたので、正解だったと思っています。
村上 ラグビー以外のイベント参加で、府中町綱引き大会というのが気になりました。
内田 ラグビーだけをしていても面白くないのではないかと思いまして、いろんな刺激を与えたくて、地域の綱引き大会に参加したり、登山をしたり、ラグビー以外のところも増やしていこうとしています。
村上 中学生世代に大事なことは何だと感じますか。
内田 まずは体作りが大事ですね。そして、成功体験をどれだけ積ませてあげられるかでしょう。精神的に急速に成長する時期だと思いますので、ひたすら苦しい練習に耐えるということではなく、個々の目標を聞き、達成できるたびに褒める。3年間の中でそれをどれだけ繰り返せるか。これを繰り返すと、子どもたちの急激な成長を見ることができますよ。
村上 その成長を見るのがコーチの皆さんのモチベーションなのでしょうね。
内田 将来的にはニュージーランドのクラブのように、クラブハウス、専用グラウンドを持ち、年齢層の幅も広げたいと思っています。一期生がいま大学の3年生なので、あと2、3年したらOBが帰ってきます。社会人のチームを作ることができるし、活動を広げていくチャンスができると思っています。
ラグビーキッズ
ラグビーネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート
1、ラグビースクールの名前
広島ラガー・ジュニアラグビースクール
2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
3、代表者
内田 雅志
4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
内田 雅志
住所:広島県広島市東区中山新町2丁目12-27
Tel:090-2292-9599
Mail:uti777-mazda-rugby-ho@docomo.ne.jp
■ブログhttps://ameblo.jp/utiniku/
■インスタグラム
https://www.instagram.com/invites/contact/?i=9syr4ewi21y9&utm_content=npxhj5s
https://ja-jp.facebook.com/hiroragajr/
5、活動場所・練習場所
広島市と安芸郡府中町を拠点として活動しています。
・府中町立府中小学校グラウンド ※土グラウンド
・マツダトレーニングセンター鯛尾グラウンド ※天然芝
・太田川河川敷グラウンド(アストラムライン不動院駅横) ※天然芝
6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
<グラウンド練習>
水曜日、金曜日19:30-21:00 府中町立府中小学校グラウンド
土曜日、日曜日 9:00-12:00 マツダトレーニングセンター鯛尾グラウンド
※7月以降は太田川河川敷グラウンドと併用予定
<webトレーニング> ※zoom利用
火曜日、土曜日19:30-21:00
※5/15以降はコロナ対応のため週4回のwebトレーニングのみ実施中。
7、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
入会費:2,000円
月会費:3,000円
用具費用:30,000円程度
(試合スタイル、スパイク、ヘッドキャップ、ヤッケ、トレーニングチューブ等)
8、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
生徒人数:41名
┠中学生:36名
┗小学生: 5名(2021年より高学年を対象としたアカデミー制度開始)
※女子は中学3年生1名のみです。
※現在外国人生徒は在籍していませんが、入校大募集です!
9、コーチ人数、氏名、経歴等
<コーチ紹介> ※役割/氏名/競技歴・経歴の順に記載
遠方にお住いの方も含め合計19名が在籍。
平均6~7名/回のコーチで指導に当たっております。
校長 池水 直之 九州大学→マツダ
代表/監督 内田 雅志 城東高校→京都産業大学→マツダ
副代表 高岡 邦彦 チームレフリー(関西協会公認B級)
トレーナー 保科 壽直 日本スポーツコーチ&トレーナー協会副理事長
アドバイザー 中澤 亮 東京大学→駒場WMM(東京都在住)
アドバイザー 綿貫 久 広島ラガー俱楽部(モンゴル在住)
FWコーチ 秋月 英二 熊本工業高校→日立
FWコーチ 菅 正道 東福岡高校→九州産業大学→マツダ
FWコーチ 吉田 大輔 広島県立工業高校→明治大学→マツダ
チームレフリー(広島県協会公認C級)
FWコーチ 早川 弘治 静岡聖光学院→東北大学→NSラガー
NPO法人スクラム釜石 理事
※チームアドバイザー兼務
FWコーチ 向井 敏 美鈴が丘高校
チームレフリー(広島県協会公認C級)
FWコーチ 青木 洋 明善高校→京都産業大学(大阪府在住)
FWコーチ 前田 晃伸 早稲田実業高校→早稲田大学GW
BKコーチ 瀧口 謙 早稲田実業高校→早稲田大学
BKコーチ 丸山 長広 成蹊大学→広島ラガー俱楽部
BKコーチ 菊本 寛治
BKコーチ 小川 雅弘 城東高校→徳島大学
サポート 戸田 匡哉
10、モットー・大事にしている事・理念
・ラグビー精神を正しく伝え、子供達の人格形成に寄与する。
・成長過程にある中学生へ適切なトレーニング/ケア指導を行い、基礎体力の向上による怪我の防止及び競技力向上を狙う。
・一人でも多くの子供達にラグビーの楽しさを伝え、日本ラグビー界の発展に貢献する。
11、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
特徴1:怪我や故障の無い強い身体づくり
ノンウエイトトレーニングをベースに、身体づくりに積極的に取り組んでいます。
また、父兄、選手に正しい知識を得てもらえるように、身体づくり、
栄養、睡眠、ケア等の講習会も定期的に実施しております。
※地域の方へのトレーニング指導も2015年より継続中。
特徴2:パス/キャッチのスキル重視
「積極的にボールを動かし、選手全員が連動してグラウンドを全力で駆け抜ける」躍動感溢れるプレーで選手、観客全員でゲームを楽しんでもらえるように特にパス、キャッチの基礎スキルに練習のウエイトを置いています。
特徴3:コミュニケーション重視
グラウンド内外での選手とのコミュニケーションを重視しています。
zoomアプリ等を利用し定期的に個人面談/グループトークを行い、
目標設定/実行/確認・振り返り/再実行のPDCAプロセスを回すようにしています。
回を重ねる毎に選手の自己表現が活発になり、またコーチ間での意思疎通も実現出来ており、非常に有用な取り組みだと感じています。
特徴4:練習の自由参加
学校のクラブ活動、塾、習い事等との両立を行えるよう、練習機会を多めに設定し(合計6回)、基本的に自由参加の形で運用しています。
12、歴史・活動実績
ミニラグビー高学年コーチとして8年間指導に携わり広域開催の大会(関西ミニラグビージャンボリー大会、ヒーローズカップ等)に参加させて頂く中で、他地域は広島県と比較した場合に競技人口、チーム数ともに多く非常に活発に活動されていることを知り、一方で県内に目を向けたところ、カテゴリ別競技人口ではジュニア世代がボトルネック状態となっていることに気付きました。半数以上の選手が、小学校卒業後にラグビーから離れていたのです。これらを知り、県内ジュニア世代の競技人口増・活性化を実現すべく有志と協働でジュニアチーム立ち上げに向けた準備を進めていました。
同時期に、広島県で一番最初に誕生した社会人クラブチーム「広島ラガー倶楽部」(1932年創部)が活動を休止することとなったためチーム名を引き継いで欲しいとお話を頂戴しこれを快諾。「広島ラガー・ジュニアラグビースクールとして2012年に協会登録しました。
翌2013年より本格活動を開始し、今年で9年目を迎えます。特に開始後数年間は選手人数が少ない時期もありましたが、2019年以降は40前後の選手規模を維持しながら活動が行えております。
13、OB・輩出トップリーガー
OBトップリーガーはまだいません。
大学でプレーを続けているOBが増えてきておりますので、今後をとても楽しみにしています。(一期生が大学3年生)
<OBの所属する大学>
・関西学院大学
・立正大学
・鳥取大学
・静岡大学
・早稲田大学
・日本大学
・東洋大学
・筑波大学
14、指導方針・教育方針
・選手の自主性を尊重することを大切にし、上下関係は設けず積極的にコミュニケーションを図れる空気を醸成する。
・日々の練習の中で、小さな成功体験を可能な限り積み重ねていけるようメニュー構成/強度を変化させることを大切にしている。
・アクティブラーニングのスタイルを大切にしている。
(チームトーク等、選手達で考え議論する機会を積極的に取り入れている)
・子供たちの特性、精神的/身体的成長状態を見極め、それぞれに見合った形で指導を行う。
・FW/BK分け隔てなく、パス等の基礎スキルの向上を図り、ポジション変更も多頻度実施することで、中学3年間で出来るだけ多くのポジションを経験させている。
・ラグビー以外も含め地域イベント、各種講習会への参加等を通じて選手/保護者
の視野を広げるとともに、人との繋がりを作ることを大切に考えている。
15、合宿・場所・期間・参加年齢等
平常時、合宿は春/夏の2回実施しています。
春:広島県内(1泊2日)
夏:兵庫県三田市(三田RSさんと合同合宿)
16、ラグビー以外の行事
・広ラガWorkshop活動
4~5人のグループに分け活動実績/目標等についてのグループトーク/発表
・地域貢献活動
府中町の中高齢者向けストレッチ&ノンウエイトトレーニング指導
(2回/月の指導会を2015年より開始、現在も継続中)
・普及育成活動
産官学協働体制での大規模ラグビー教室(2015年より計4回)を企画/主催。
・府中町綱引き大会への定期参加
17、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
掛け持ちは可能、スクール生の8割以上が部活、習い事等と両立しています。
18、保護者の活動への参加・サポート
保護者会は設けておりません。役職/役割を決めれば組織運営はスムーズに進みやすいですが、その反面、時間的な拘束、各種負担が保護者に発生します。
自然な形で子供達の活動を応援していただけるように、設立当初よりこの方針で運営しています。結果的に、多数の保護者より能動的な活動サポートを頂戴出来ております。
19、どんなスクールを目指すか(将来像)
子供達が大きくなり過去を振り返ったとき、「自らの原点だった」と感じてもらえるスクールにしたいです。
また、卒業後の将来の期間でスクールコーチ、もしくは保護者として帰ってきたいと思ってもらえるようになりたいとも思っています。
広島県の至る所(競技場、公園、広場など)で多くの子供達がラグビーボールを持ち笑顔で走っている、そのような未来を実現させたいと考えています。
20、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
何事にも立ち向かう勇気、継続努力することの大切さ、自己犠牲の精神、For the
teamの精神、他を思いやる気持ち等、人間力を磨き続け、将来世界に羽ばたき、世
界の各方面をリードしていく人材になって欲しいと考えています。
21、プレースタイル
・「高速ラグビー」をスローガンに、展開ラグビーをベースとした変幻自在のアタックでグラウンドを駆け回る。
・声を出し合い仲間を鼓舞し続ける。(お祭りラグビー)
22、交流する他のラグビースクール
※定期交流のある他県のチームのみ紹介
・徳島ラグビースクール
・三田ラグビースクール
・帆柱ヤングラガーズ
・山口ジュニアラガーズ
・北九州ヤングウエーブ
22、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
マツダスカイアクティブズ広島
マツダスカイアクティブズ広島ではアカデミー組織運営を2021年4月から開始。
普及育成活動の一環として、コーチングサポート、グラウンド提供など行って頂いております。
今後、他トップチーム団体とのシニア&ジュニア交流などを実現するため計画も策定している段階です。
23、自由欄(付け加える事があれば)
情熱溢れるコーチ達と一緒に、是非ラグビーを楽しみましょう!
初心者、経験者共に大歓迎です!