【インタビュー】第36回▶川内少年ラグビースクール(鹿児島県)

第36回▶川内少年ラグビースクール

まずは「あいさつ」から。5つの約束でラグビーを楽しむ

ラグネット第35回目は、鹿児島県北西に位置する薩摩川内(さつませんだい)市で活動する川内少年ラグビースクールをご紹介します。1981年4月、九州電力川内原子力発電所ラグビー部と地元社会人クラブの川内ラグビークラブ有志により設立され、以来40年北薩地域唯一のラグビースクールとして活動しています。生徒数は約30名というスクールですが、「あいさつをする」、「自分のことは自分でする」、「自分の失敗を人のせいにしない」、「苦しくても我慢をする」、「自分を犠牲にしても弱い人をかばう」という5つの約束を胸にラグビーを楽しんでいます。今回は、代表を務める城之下剛(じょうのした・たけし)さん(49歳)にお話を伺いました。


ラグビーコート2面がとれるグラウンドで

幼稚園生から80歳までが一緒に練習


村上 城之下さんは、いつからラグビーを始めたのですか。

城之下 中学までは陸上競技の長距離をやっていまして、高校に進学しても続けようと思っていたのですが、進学した川内高校があまり長距離に力を入れていなかったんです。悩んでいたところ、クラスメートがラグビー部に入って、「見に来ないか」と誘われました。すると、同じ中学の先輩が多くて、引っ張り込まれました(笑)。

村上 鹿児島の北薩(ほくさつ)地域というのは、ラグビーは盛んですか。

 私がラグビーをしていた頃は、川内市(現・薩摩川内市)にラグビー部のある高校が3校ありました。現在は川内高校だけですが、近隣の高校でも薩摩中央高校(旧・宮之城高校)は花園に4回出場しています。ラグビーは盛んな地域だと思います。

村上 川内高校を卒業後は、プレーされたのですか。

 地元の大学に進学しましたが、ラグビー部には所属せず、社会人チームの川内ラグビークラブに入りました。ポジションは、WTBでした。その後、東京に転勤になり、私の息子が小学2年生のとき(2010年)から東京の府中ジュニアラグビースクールでラグビーを始めました。8歳~10歳までお世話になりました。その後、鹿児島に戻って、川内少年ラグビースクールに入ったというわけです。息子が小学校を卒業するときに、正式にコーチとしてやりませんかというお誘いを受けまして、本格的にコーチになりました。

村上 こちらは、小学生のチームなのですか。

 小学生のチームなのですが、卒業した中学生も練習生という形で参加しています。幼稚園生も2人います。

村上 生徒数30名ですが増減はありますか。

 これでも増えたんですよ。2019年のラグビーワールドカップ以降ですが。それ以前は一桁でした。2019年でラグビーに興味を持ち、入ってくれた子どもの親御さんが口コミで広めてくれて少しずつ増えました。低学年、中学年、高学年と単独で試合に出られるまでになりました。その前は、他のスクールに入れてもらって試合をしていました。

村上 1981年創部の経緯を教えていただけますか。

 九州電力のラグビー部はかつて全国社会人大会で優勝するような強いチームでした。そのときのメンバーの方が川内に赴任されて、社会貢献をしたいということで地元の川内ラグビークラブとともにラグビースクールを作る機運が高まったと聞いています。

村上 川内クラブとも一緒に練習されているのですか。

 ラグビーコートが2面とれる大きなグラウンドなので、クラブチームが練習しているかたわらでチビッ子が練習している環境です。私も川内クラブのOBですし、子どもができたらスクールに入れるという循環が出来上がっています。40歳以上の惑チームが一緒に練習するときもあって、80歳くらいの人から幼稚園生までが同じグラウンドでラグビーをしているという、とてもいい環境です。


武の国の子どもたちはラグビー向き

この地域のラグビーの灯をともし続ける


村上 指導方針の5つの約束=「あいさつをする」、「自分のことは自分でする」、「自分の失敗を人のせいにしない」、「苦しくても我慢をする」、「自分を犠牲にしても弱い人をかばう」はいつからあるのですか。

 前の代表者が約20年前に決めたそうです。当時、市役所の福祉関係の仕事をしていて、福祉を学ぶ教材の中にこの言葉を見つけたようです。これはラグビーをする子どもたちによく合うのではないかということで、スクールの約束事としてきめたようです。この5つの約束を練習終わりに、みんなで唱和しています。

村上 どんな練習が多いのですか。

 かつては人数が少なかったので、走ることとハンドリングの練習しかできませんでした。ようやく高学年、中学年が一緒にコンタクトしたり、技術的な練習もできるようになりました。そういう練習をもっと増やしていきたいと思います。

村上 試合の時は全員を出場させる方針ですか。

 勝ちたいとは思いますが、いるメンバーは全員出します。単独で試合ができるようなって間もないチームですから、強いチームと戦えばコテンパンにやられます。それでも全員出して、なぜ負けたのか、子どもたちと話しあって課題を共有して次に頑張ってみようと、みんなで考えることを大切にしています。

村上 鹿児島の子どもたちの特徴、気質というのは、あるのでしょうか。

 「武の国ですから、コンタクトスポーツをやれば向いている土壌はあると思います。ラグビーをまったく知らない子でもはまってしまう子は多いです。日本代表の中村亮土選手は鹿児島出身ですが、薩摩隼人の気質を持っていると思いますし、気持ちが強いですよね。

村上 地域で競合するスポーツはありますか。

 ここ薩摩川内市はバスケットボールの町なんです。川内高校はインターハイの常連校です。各小学校にミニバスケットボールのチームがあって、県大会では市内の小学校が決勝で対戦するようなところです。だから、ラグビースクールに来るのは、経験者のお子さんが多いですね。

村上 今後、どんなスクールにしていきたいですか。

 ようやく単独で試合ができるようになったので、一つ一つ段階を踏んで、勝負できるようなチームに持って行きたいのですが、同時に、ラグビーの楽しさやラグビーカルチャーを子どもたちに教えたいです。もちろん、中学、高校でラグビーを続けてくれるように、楽しくラグビーを指導したいと思っています。

村上 城ノ下さんは、ラグビーカルチャーの良いところはどんなところだと思われますか。

 ラグビーには、仲間と助け合うというスピリットがありますよね。それは、進学先や、社会に出たときにも大事です。仲間をまとめるリーダーシップがあれば、大人になってからもいろいろな場面でリーダーを任せられる人材になると思います。たとえラグビーを辞めたとしても、そういう精神が心の中にある大人になってほしいと思っています。

村上 部員募集は随時受け付けていますか。

 通年で受け付けております。いつでも来てください。コロナ禍で休止中のときもありましたが、現在は再開されています。ラグビーカルチャーをこの地域に広げるために、もっと多くの子どもたちに参加してほしいと思っています。今年で40年になるスクールですが、スクールの代表として先輩方から引き継いだバトンを次につなぎ、この地域からラグビーの灯をともし続けるように頑張っていきたいと思います。




ラグビーキッズ

ラグビーネットワークインフォメーション(ラグネット)

アンケート

1、ラグビースクールの名前

 川内(せんだい)少年ラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等

3、代表者

 城之下 剛(じょうのした たけし)

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先

 代表の城之下までご連絡ください。(090-9071-8663)

 ホームページ https://sendairugby.wixsite.com/sendaichibikko

 Facebook 川内少年ラグビースクール @sendaichibikko

5、活動場所・練習場所

 川内川宮里公園グランド

 天然芝

6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等

 日曜日9:30~11:30 ただし夏休み・冬休み・春休みあり。

7、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの

 会費(年額) 小学生6000円 未就学児1000円

8、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等

 30名:小学生28名 未就学児2名(内、女子5名)

9、コーチ人数、指名、経歴等

 コーチ:7名

10、モットー・大事にしている事・理念

 川内少年ラグビースクールの5つの約束

  ・あいさつをする。

  ・自分のことは自分でする。

  ・自分の失敗を人のせいにしない。

  ・苦しくても我慢をする。

  ・自分を犠牲にしても弱い人をかばう。

11、歴史・活動実績

 1981年創部(鹿児島県内屈指の老舗スクールです)

 九州電力川内原子力発電所ラグビー部と地元社会人クラブの川内ラグビークラブ有志により設立され、以来40年北薩地域唯一のラグビースクールとして活動しています。

 最盛期は100名近く部員がいた時代もありましたが、少子化やスポーツの多様化の波で一時はひとけたまで減った時期もあり存続が危ぶまれました。しかし、RWC2019の日本代表の活躍でラグビーへの注目が一気に高まると徐々に入部者が増えはじめ、今年になり高中低学年すべてのカテゴリーで自チーム単独で大会出場ができるまでになりました。

12、OB・輩出トップリーガー

 山下大輔(鹿児島工-明治大卒 元コカ・コーラレッドスパークスPR)

13、指導方針・教育方針

 当スクールでは、5つの約束を練習終了前に全員で唱和し、ラグビーを通じて困難にめげないたくましい少年、少女になるように指導する方針です。

14、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか

 習い事の掛け持ち歓迎です。ラグビーを通じて、一番自分に適したスポーツ・武道を発見して欲しいと考えます。

15、どんなスクールを目指すか(将来像)

 勝ち負けにこだわらずラグビーを楽しめるチームでありたい。

16、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)

 まずは挨拶ができるように。そして、大人になっても5つの約束が実践できる人間であってほしいです。

17、自由欄(付け加える事があれば)

 鹿児島県北地域は元々ラグビーが盛んな地域です。

 薩摩川内市内の高校にはラグビー部がある学校がかつて3校もありましたが、現在は川内高校1校のみです。

 その川内高校も部員不足で近隣校(川内・薩摩中央・大口・出水工)と合同チームを編成し大会出場している厳しい現状です。

 ※薩摩中央(旧宮之城高)、大口高はかつて花園出場歴のある古豪校。

 高校、その先の大学や社会人になってもラグビーを続ける子をひとりでも多く育てたいと思います。北薩地域のラグビーの灯を消さないために、これからもジュニアの育成を頑張って参ります。



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