【インタビュー】第33回▶グリーンクラブラグビースクール(神奈川県)

第33回▶卒業後もラグビーを楽しむ礎を築く

33回目のラグネットでご紹介するのは、神奈川県横浜市青葉区で活動するグリーンクラブラグビースクール。その名に冠してある通り、グリーンクラブという大人のクラブチームが母体になっています。1975年に創部され、現在の生徒数は約170名。モートーは「Enjoy」。子どもたちだけではなく、コーチ自身も楽しむことが重要とし、練習後にはコーチ陣のタッチフットが伝統だそうです。今回は、校長の江口禎三さん(61歳)にお話を伺いました。


保護者の当番制などは一切なし

自ら手を上げてくれた人はクラブ員に


村上 江口さんがラグビーを始めたのはいつですか。

江口 私は九州で生まれて、父の仕事の関係で岐阜県に引っ越し、岐阜県の高校に行きましたが、ここまではラグビーはしていません。従兄弟にラグビーをしていた人がいて、ラグビーをやりたいと思っていたので、大阪府立大学に入学してから始めました。いま、ここに1983年の関西大学リーグのメンバー表(小冊子)を持っているのですが、村上さんは大阪体育大学1年生で名前があります。それから平尾誠二さんも同志社大学で、神戸大学医学部ラグビー部で山中伸弥先生の名前もあるんです。私の名前もあるので、村上さんに見せたくて(笑)。

村上 山中先生も載っているとは、すごい(笑)。卒業後に横浜に行かれたのですか。

江口 卒業後は大阪のクラブチームでプレーして、1995年に東京へ転勤になり、横浜に住むことになりました。その頃、小学校に入る長男と、幼稚園の次男がいたので、近所のグリーンクラブラグビースクールに無理やり連れて行ったというわけなんです。

村上 そこからずっと関わっていらっしゃるのですか。

江口 そうです。校長になったのが2011年です。私で7代目の校長になります。スクールの母体となっているグリーンクラブは、昭和30年代に全国高校大会で優勝した保善高校(東京)のメンバーで高橋登さん(故人)が作られました。今は青葉区ですが、当時は緑区だったので、グリーンクラブになったそうです。

村上 緑区だからグリーンクラブなんですね。

江口 そこでプレーしていた人の中で、子どもたちのスクールもやろうということになり、1975年にラグビースクールがスタートしました。

村上 中学の部もあるようですね。

江口 中学の部は、神奈川DAGSとして活動しています。Dは田園ラグビースクール、Aは麻生ラグビースクール、Gがグリーンクラブラグビースクールということで、3つのスクールが一緒になって15年ほど前にスタートしました。現在は、田園の人数が増えたので、麻生とグリーンの2つでやっています。

村上 生徒数が約170名ということですが、増減はありますか。

江口 私が関わり始めたころから10年ほどは100名に満たなかったです。ここ10年で100名を超え、2019年のラグビーワールドカップ後に150名を超えました。週ごとに数名が体験に来られて、ほとんどの方が入会されました。中学のDAGSは別にカウントしていますので、この数字は幼児から小学6年生までになります。

村上 コーチは約60名とのことですが、どういう方が多いのですか。

江口 もっとも多いのは、私のようにラグビー経験者で、自分の子どもを入れた保護者がそのままコーチで残っているパターン、いま子どもが所属していてコーチをやってくれているパターン、大きく分けるとこの2つで、体を動かしたいラグビー経験者が来てくださることもあるし、未経験者もいらっしゃいますよ。

村上 保護者が運営には参加しないのも特徴のようですね。

江口 ボランティアでサポートする当番制などは一切ありません。ただ、自分から手伝いたいと言ってくれる人には、クラブ員になっていただいて、練習のお手伝いなどしてもらっています。


ひとつの成功体験が人生を変える

廣畑光太朗君の伝説のエピソード


村上 指導方針は「ラグビーを楽しむ(Enjoyする)精神を育む」とありますね。どんなことに気を付けて指導されているのですか。

江口 卒業後もラグビーを楽しむ礎を築くことを大切にしています。私は大学からラグビーを始めましたが、ラグビーを通じて人生が豊かになったし、生涯の友といえる友人もできました。私は強い大学チームではなかったけれど、試合後のアフターマッチファンクションの文化はラグビー特有で、違う大学の選手とも仲良くなり、いまでも付き合いがあります。それらは私の財産です。スクールに関わっているのは、ラグビーに対する恩返しのような気持ちもあります。

村上 チャンピオンシップの大会に出るときは、楽しむこととのバランスが難しいと思うのですが。

江口 たしかにチャンピオンシップの考え方は難しいですね。出るか出ないか議論もしましたが、ここ数年はヒーローズカップにも出場しています。全国大会に行ったこともあります。結果を残すことは、その学年のコーチや生徒たちの努力の結果ですから称賛したいです。しかし、私はそこがゴールではないと思っています。各学年コーチの考え方を尊重しつつ、子どもたちが今後もラグビーを続けられる楽しさ、厳しさを伝えてほしいと話しています。校長から、どうすべきかということを細かく言わないのも我々スクールの特徴です。

村上 学年コーチは持ち上がりですか。

江口 決まりは作らず、年度が始まる前にコーチ会議を開いてバランスをとりながらやっています。持ち上がりを希望するコーチは多いですね。私も幼稚園から小学6年生まで持ち上がったことがあります。そんな子どもたちが卒業して帰ってきてくれると本当に嬉しいものですよ。

村上 何かエピソードはありますか。

江口 いろんなタイプの生徒がいましたが、コーチの同士で話すとよく名前が出るのが、九州電力のラグビー部を昨年度で引退した廣畑光太朗君です。彼は小学校のときにかなり太っていて、何をやっても続かなかったそうです。小学5年生のときに、うちのスクールに入ってきたのですが、走れないし、パスができない、キャッチもできない。この子は辞めてしまうかなとコーチの間で話していました。それでも続けてくれて、6年生の最後の試合で、縦に走って3人くらい吹っ飛ばしてトライしたんです。それまでは、気持ちが弱いところもあって、まっすぐ当たることができなかったんですよ。このトライが成功体験になってラグビーが好きになり、「ラグビーを続けたい」ということで、桐蔭学園中学から桐蔭学園高校に進学して全国高校大会準優勝のメンバーになり、慶應義塾大学でも1年生からレギュラーになりました。一つの試合で人生が変わったのです。彼が象徴的ですが、子どもは自信を持つと変わるという例の一つですね。一方で、地道に努力している子が着実に伸びて行くケースもある。いろいろです。

村上 今後の目標を聞かせてください。

江口 卒業する生徒によく話しているのが、今後もラグビーを続けてほしいし、将来はグラウンドに帰ってきてもらいたいということです。ラグビーを続けていなくても、グリーンで練習した数年間を良き思い出として気軽に帰ってきてもらえるスクールにしたいと思います。ときどき学年の横のつながりが深くて、みんなで帰ってきてくれて、その時のコーチとタッチフットをするようなことがあるんです。それが私にとっては一番幸せな時間です。故郷のように思ってもらえるスクールにできたらいいなと思っています。



ラグビーキッズ

ラグビーネットワークインフォメーション(ラグネット)

アンケート

1、ラグビースクールの名前

 グリーンクラブラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等

3、代表者

 校長:古屋 明弘(ふるや あきひろ)

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先

HP:http://greenclub-yokohama.com/

Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100055486993171

5、活動場所・練習場所

 ホームグランドは日本体育大学健志台グランド(横浜市青葉区)

 (但し、現在は使用不可。鶴間公園グランド(町田市)等で練習実施中。)

6、練習場所は天然芝、人工芝、土等

 日本体育大学健志台グランドは人工芝

7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等

 毎週日曜日8:00~11:00(日体大健志台グランドの場合)

 4月初め開校翌年3月末まで基本毎週日曜日開校(但し8月は夏期休校)

8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの

 入会費:なし、会費:14,000円/年(途中入会の場合、月割りあり)

 用具:運動ができる服装(体験時)、ヘッドキャップ、ユニフォーム(正式入会時)

9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等

 生徒数:170名、女子選手数:10名、外国人対応:可

10、コーチ人数、指名、経歴等

 コーチ人数:50名

11、モットー・大事にしている事・理念

 Enjoyすること

12、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い

 ① 「グリーンクラブ」という、大人のクラブが母体

 ② 保護者の活動への参加(お手伝い)は一切なし

13、歴史・活動実績

 1975年(昭和50年)4月、上記の通り「グリーンクラブ」が母体となり設立

14、OB・輩出トップリーガー

 山下大悟、廣畑光太郎(九州電力・PR、今年度引退)、中村洋平(サニックス/リコー/立教大HC)、白井吾士矛(ヤマハ・CTB)、石田楽人(クボタ・PR)、梶原晃久(日本協会公認A1級レフリー)等

15、指導方針・教育方針

 ① ラグビーを楽しむ(Enjoyする)精神を育む

 ② 基本技術の習得を徹底し、小・中学校卒業後もラグビーを楽しむ礎をつくることとし、目先の試合の勝ち負けに過度にこだわらない

 ③ ラグビーの練習・試合以外でも仲間づくりを積極的に行えるように、各種イベントを開催する

 ④ 中学生は神奈川DAGSラグビースクールとして活動する。

16、合宿・場所・期間・参加年齢等

 菅平高原、佐久山荘、7月末(3泊4日)、小学校2年~6年(1年生の希望者も受け入れ)

17、ラグビー以外の行事

 花見(春季・クラブ行事)、餅つき大会(12月)、全体懇親会(3月)

18、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか

 把握していないが、かなりの生徒が掛け持ちをしているのでは?

19、保護者の活動への参加・サポート

 練習、試合、合宿等の活動の手伝いは一切なし。餅つき大会時のみ5,6年生の保護者にサポートをお願いしている。

20、クラブハウスあれば

 行きつけの店があり、そこが擬似クラブハウスか?

21、どんなスクールを目指すか(将来像)

 今の理念、方針を継続してほしい。

22、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)

 理念、方針を受け継ぐ(ラグビー以外の環境でも)

 又、教育観ではないが、卒業後仲間と一緒にグランドに顔を出してくれ、コーチ

 一緒にタッチフットをしてほしい(これがコーチ(私?)が一番幸せと感じる)

23、交流する他のラグビースクール

 神奈川県下全ラグビースクール、多摩ラグビースクール、杉並ラグビースクール、R&Bラグビースクール(以上東京)、桐生ラグビースクール(群馬)等

24、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)

 大学:日本体育大学、協会:神奈川県ラグビー協会、トップリーグ:リコー、

 キャノン、富士ゼロックス、清水建設(いずれもラグビー祭への招待)




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