【インタビュー】第24回▶生駒少年ラグビークラブ(奈良県)

第24回▶ラグビーで「お・も・い・っ・き・り」からだを動かそう!

ラグネット第24回目にご紹介するのは、奈良県生駒市で活動する「生駒少年ラグビークラブ」です。創立は1975年。日本代表の名ウイングで、アジア人で初めて世界のラグビーを統括するワールドラグビーの殿堂入りをした坂田好弘さんの一声がきっかけだったそうです。花園ラグビー場に近く、コーチには近鉄ライナーズでプレーしたレジェンド佐藤幹夫さんも名を連ねます。今回は、副会長の小屋迫眞一さん(64歳)にお話を伺いました。


勝つためのラグビーは教えず、

子どもたちの自由なプレーをほめる


村上 小屋迫さんは、いつからラグビーに関わり始めたのですか。

小屋迫 私は熊本で生まれて、熊本高校でラグビーを始めました。大学は慶應義塾大学で、理工学部のラグビー部に所属していました。

村上 慶應の理工学部のラグビー部といえば宇宙飛行士の星出彰彦さんも出身ですね。

小屋迫 そうです。星出さんは僕の後輩になります。そんな縁もあって、2015年の私たちクラブの40周年記念イベントのときは、生駒市市民ホールで講演会をしていただきました。

村上 大学卒業後はラグビーを続けられたのですか。

小屋迫 商社の丸紅に入社して、そこでもラグビー部に入りました。先輩には日本代表ウイングの藤原優さんがいて丸紅が一番強い時でした。商社なので海外勤務もあり、本格的にラグビーをしたのは短かったですね。

村上 生駒少年ラグビークラブとの関りはいつからですか。

小屋迫 大阪を中心に仕事をするようになったときに生駒に居を構えました。それで生駒が気に入りましてね。1995年くらいに息子が幼稚園に通い始めたときに、生駒少年ラグビークラブに入ったわけです。その後、インドネシア、広島で6年ほど仕事して離れていましたが、2004年に生駒に戻ってきました。

村上 このクラブの創立には、近鉄、日本代表で活躍された元関西ラグビー協会会長の坂田好弘さんが関わっていらっしゃるようですね。

小屋迫 発起人ですね。生駒という土地柄、近鉄ラグビー部の関係者がたくさん住んでいます。坂田さんが「生駒に少年ラグビー同好会を作りませんか」とおっしゃったそうで、当時、近鉄のラグビー部長だった田代和さん(後の近畿鉄道社長)が初代の会長になってくださって始まりました。

村上 それから46年。指導上、大切にされているのはどんなことですか。

小屋迫 現在の三宅秀和会長が口を酸っぱくして言うのは、「教えすぎないようにしよう」ということです。勝つためのラグビーは中学、高校で教われば良い。本人がラグビーを好きになり、ラグビーにのめりこんでいって、しっかりした指導者につけば学ぶことができます。いまはできるだけ多くの子どもたちがラグビーを続けてくれるように、ラグビーを好きになってもらうように、自由にプレーしてもらいたいと思っています。コーチがラグビーを上達させよう、勝たせようとすると、どうしても指導する言葉がきつくなります。それが子どもたちを傷つけることもあるのです。基本的には子どもたちの良いプレーをほめることを中心にしています。それがうちのクラブの特徴だと思います。

村上 それは大会などに出てもそうなのですか。

小屋迫 勝つためのプレーは教えないようにしています。型にはめてプレーすれば勝てるかもしれません。しかし、それで良いのかという疑問はいつも持っています。試合に関しても、その日参加した子どもたち全員が出られるようにして、勝利は二の次という考え方です。


コーチも費用を負担して、

みんなでクラブを支えるシステム


村上 部員数は、いまどれくらいいるのですか。

小屋迫 幼稚園から中学生まで選手登録しているのが193名で、そのうち女子が19名です。最近増えていますよ。この他、コーチが86名いまして、常時40名は来てくれます。保護者が中心ですが、自分の子どもが卒業しても、そのまま指導員として残る人が多いです。

村上 増えたのは2019年のラグビーワールドカップ以降ですか。

小屋迫 そうです。20数年前は200名くらい部員がいましたが、5年ほど前は120名くらいまで落ち込みました。それが2019年以降急激に増えています。嬉しい悲鳴です。

村上 眞野泰地選手(東海大仰星→東海大学→東芝ブレイブルーパス)ほか、活躍されている卒業生も多いですね。練習に来てくれることはありますか。

小屋迫 来てくれますよ。眞野君は今年の1月に来てくれました。我々の最大の目標は、OBになっても戻ってきてくれるクラブにすることです。できれば子どもを連れて戻ってきてほしい。実際にそういう人が多いです。

村上 一年間のなかでさまざまな行事があるようですが、子どもたちが一番楽しみにしているのは、どのイベントですか。

小屋迫 秋に開催する生駒登山でしょうね。登山して、バーベキュー大会をするんです。合宿は楽しい面もありますが、練習がきついところもありますから(笑)。実はいまから20年ほど前までは、3年ごとにタイの小学校と交流戦をしていました。部員数の減少で続けられなくなったのですが、部員数が戻ってきたので、これを復活させたいというのが我々の願いとなっています。

村上 他のクラブとの交流はよくされていますか。

小屋迫 よく交流するのは、キッズラグビーとりみというクラブですが、例年4月に生駒ラグビー交流会を開催していまして、とりみ、桜井少年ラグビースクール、京都のプログレや、枚方ラグビースクールなど数多くのスクールに来てもらっていましたが、最近の悩みは駐車場不足です。周囲に駐車場が少なく、たくさんのチームを呼べないのです。練習も同じで、小学校のグラウンドだと停めるスペースも少ないですから、2部制にして時間を分けるなど工夫しています。

村上 運営は保護者の方も参加されるのですか。

小屋迫 学年単位で一つの組織ができているところがありまして、学年単位でいろんな企画も出てきます。それを私も含めた運営委員が調整していくスタイルです。毎年、会報誌も作っていますので、それを保護者の皆さんに分担してやってもらっています。合宿やバーベキュー大会なども保護者の皆さんのサポートで成立しています。費用は分担です。イベントのときはコーチも費用を負担してクラブを支えています。

村上 みんなで試合を見に行くことはあるのですか。

小屋迫 もちろん、あります。2019年のラグビーワールドカップの直前にトンガ代表チームとの交流もしました。本当は生駒でイベントをしていただく予定でしたが、台風で交通機関がストップしたため、少人数でトンガ代表のホテルに行きました。交流していただいたお礼に、トンガの国歌を歌った動画を送り、西陣織で作ったシューズケースをプレゼントもしました。

村上 ラグビーというスポーツは子どもたちにどんな影響を与えていますか。

小屋迫 私は低学年を中心に教えています。小学1年生、2年生は成長段階がばらばらで、ずっと土いじりをしている子もいるし、コーチの言葉にそっぽを向いて逃げ出す子もいます。そんな子たちが徐々に自覚を持ち、チームのためのプレーし、仲間を助け始める。これを目の当たりにするときほど嬉しいことはありません。ラグビーはさまざまなポジションがあって、それぞれに違う役割を持っている。一人一人がパートの責任を持ち、勇気をもって前に出ないと相手を止めることができない。そんなラグビーの本質的な部分が子どもたちにいい影響を与えると思います。

村上 コロナ禍で生駒市でも感染拡大緊急警報が発令されたということで活動を休止されたようですが、6月から活動を再開されたようですね。

小屋迫 協議を重ねた結果、再開を決めました。感染のリスクがなくなったわけではないので当面は自由参加としています。

村上 今後、どんなクラブにしていきたいという思いがありますか。

小屋迫 これまで話してきた通りですね。もっと勝てるチームにしたいという声もあって話し合ったこともありますが、今のクラブは保護者の皆さんにも「教えすぎない」ということを話していますし、現体制ではこの方針で続けて行こうと思っています。



ラグビーキッズ

ラグビーネットワークインフォメーション(ラグネット)

アンケート


1、ラグビースクールの名前

 生駒少年ラグビークラブ

 「子どもたちが主役だが、このクラブに携わる人、全てがラグビーを通して、ふれあい、友好を深め、楽しめるヨーロッパ型のクラブを目指したい」としてあえてスクールとはせず、クラブと名付けられた。

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等   

 

 エンブレム:生駒市の市章 「樫の葉」。生駒の山を象徴するグリーンを子供達の団結カラーとした。

 ジャージ :全日本のユニフォームを、子供用にデザインしたものである。子供達の心身共に健康な潔癖さを白で、また激しい闘志・情熱を赤で表している。但し、赤色は細い。大きくなったら、太い白赤縞のジャージを着てほしいとのひそかな願いが込められている。

3、代表者   

 会長 三宅 秀和

 住所:生駒市東生駒・・・・・・・・・・、

 連絡先:HP:090-1152-5956

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先

 体験希望者は、HPから申込みをお願いします HP:ikoma@ikoma-jrfc.com

5、活動場所・練習場所

 生駒市桜ケ丘小学校、東小学校(土)、

 生駒市高山スポーツセンター(人工芝)、

 平群町総合スポーツセンター(土)

6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等

 日曜日 10時~12時、

 ただし、現在は、密集を避けるため9時~12時15分2部制

 小学校の休み期間(春休み、夏休み、冬休み)は、クラブも休み。

 主な行事 4月  生駒ラグビー交流会

      8月  サマーキャンプ、夏合宿、

      10月  生駒登山

      12月  クリスマス会

      3月  卒業式

7、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの

 年会費6,000円、対外交流費4,000円の計10,000円。但し、中途入会の場合は減額。

 また、兄弟で入会の場合、一人分の対外交流費は免除。ラグビージャージ、靴等は自己負担だが、その他の費用はクラブが負担。

 ただし、遠征時の交通費等は自己負担。

8、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等

 2021年  少年クラブ員 168

 内女子選手15名  コーチ75

9、モットー・大事にしている事・理念

 「ラグビーを大好きになってもらいたい。」当クラブが一番大事にしている点です。

クラブへの入部は、生涯を通じてラグビーを楽しむための大事な入口です。ラグビーの楽しさをクラブで知り、クラブを卒業してもラグビーを継続したいと思うラグビー好きな子供になってほしい。それが、クラブの目標でもあります。

 子供たちは、成長の過程にあり、体力的・精神的な個人差が大きい段階にあります。子供たちのスポーツの成長曲線は、それぞれで違います。今の時点で、ラグビーがうまい子も下手な子もいます。しかし、大人になった時、子供の時はラグビーが下手だった子が見違えるようなプレーヤーとなることはよくあることです。今は、ラグビーがうまくなくてもラグビーが好きで、ラグビーを続けたいと思うように、すべての子供たちが、それぞれのラグビーの楽しさを実感できるような場を提供できるクラブでありたいと思っています。

 しかし、ラグビーだけではなく、勉学や他のスポーツ、芸術の道を志しても、構わないとも思っています。子供たちには、無限の可能性があります。その可能性にチャレンジする勇気をクラブを通して培ってくれればそれでよいのです。ただ、ラグビーを選択しなかった子供たちが、またラグビーをやりたくなったら、いつでもふらりと戻って来て、仲間に戻れるそのようなクラブにしたいと思っていますし、いつの日にか、自分の子供を連れて戻ってきてくれたらいいと思っています。

10、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い

 「教えすぎない。」これは、現在の会長、三宅の口癖です。近年、ラグビーの大会が増えてきました。当クラブも積極的に大会へ参加しており、どうしても勝敗が気になります。コーチとしては、子供たちの喜ぶ姿を見たいとどうしても勝つための、型にはめ込んだラグビーを教えてしまう傾向があります。しかし、勝つためのラグビーを教えてもらうのは、中学や高校になったら教えてもらえればいい。今の段階では、子供達にできるだけ自由にプレーさせてあげる。自分の判断でラグビーをやり、挑戦し、楽しむことが大事と考えています。ただ、ラグビーの基本であるハンドリングは大事にし、運動機能が最も成長するゴールデンエージにある子供たちには、コーディネーショントレーニングなども積極的に取り入れています、以前、ラグビーマガジンでコーディネーショントレーニングの連載がありましたが、クラブとして取材に協力しました。

11、歴史・活動実績

 昭和49年の歳の瀬も押し迫った某日-ふらっと近鉄不動産本社を訪れた私(津田一巳氏)に、坂田好弘氏(前関西ラグビー協会会長、現在同協会顧問)が、まちかねていたようにこう言った。「生駒に少年ラグビー同好会を作りまへんか。生駒は近鉄のOBも多いし、絶対によろしいぜ」-。

 選手生活を、このシーズンにかける偉大なる”ラグビーの虫”は、現役を退いたあと、選手を育てることに、新しい生き甲斐を求めようと考えついたのだろう。その後も、会うたびにこの話。”何かラグビーで世の中に恩返しを”と思っていた私は、少年ラグビーを真剣に考えるようになった。そして、こんな二人の気持ちに、ハズミをつけてくれたのが、田代和氏(当時近鉄ラグビー部部長、後の近畿鉄道社長、大阪商工会議所会頭)の会長就任の”快諾”であった。最初の問題解決で、会発足の機運は一気に具体化。まず、坂田氏の大学、近鉄を通じての先輩である長谷川雄彦氏(3代目会長)に協力を求め、さらに宮毛理氏や、林辰五郎、甲佐史郎(2代目会長)、北波禎各氏ら、ラグビー同好の士に呼びかけ「同好会だから・・・」と、規約もユニフォームもないまま、コーチ8人、生徒20人が生駒東小に集まってスタートを切った。話が出てから半年後の50年6月8日のことである。

12、OB・輩出トップリーガー

この10年間のトップリーガー。

 サントリサンゴリアス 宮本啓希

 クボタスピアーズ 島本芳樹

 クボタスピアーズ 前川 泰慶

 神戸製鋼スティーラーズ 田中大治郎

 東芝ブレイブルーパス 眞野泰地(現役)

13、合宿・場所・期間・参加年齢等

 生駒市の高山スポーツセンターにて1泊2日の合宿を毎年夏休みに行っています。参加は、2年生以上。

14、ラグビー以外の行事

 合宿以外に、サマーキャンプや生駒登山を行っています。年末には、クリスマス会も行っています。

 また、グランドを借りている桜ケ丘小学校での桜小祭りへの参加、桜ケ丘小学校や東小学校の草刈りの手伝いを行っています。また、生駒市が主催する『生駒ッスル』という市民へのスポーツ普及イベントでミニラグビーの講習会を開いています。

 2015年の設立40周年記念イベントでは、ラグビーボールをもって宇宙へ行き、スクリューパスを実践したというJAXA宇宙飛行士星出彰彦氏(現在、ISS船長として、3回目の宇宙滞在中です。)を招き、生駒市市民ホール「たけまるホール」で記念講演を行っていただきました。




関連記事