【インタビュー】第22回▼松江ラグビースクール(島根県)

第22回 ラグビーはみんなで楽しくやるのが一番面白い!

22回目のラグネットは、島根県松江市で活動する「松江ラグビースクール」です。1998年創部の比較的新しいスクールで、ラグビー人口の少ない島根県で、コンタクトのある本格的なラグビーをするチームは現在のところここだけです。そのため県外に遠征して試合を行うなど、苦労は絶えませんが、子どもたちは天然芝の広いグラウンドで楽しくラグビーに親しんでいます。その様子を、監督を務める堀谷猛さん(40歳)に伺いました。


楽しむことは、ふざけることではない。

誰もが楽しい気持ちになるのが大切


村上 堀谷さんがラグビーを始めた経緯を聞かせてください。

堀谷 僕は松江高専(松江工業高等専門学校)でラグビーを始めました。ラグビー部に入っていた同級生に誘われて、やってみたら面白くて今にいたります。ポジションはフッカーでした。卒業後も地元のクラブチーム(松江クラブ)でプレーし、就職した会社の上司が現在の松江ラグビースクールの岡登勇(おか・のりお)代表で、手伝ってくれないかと誘われました。2000年あたりから関わるようになり、2013年からは職場の配属が変わって参加しやすくなったので、毎週行くようになりました。

村上 松江高専でラグビーを始めたとき、ラグビーのどんなところに魅力を感じたのですか。

堀谷 最初に出た試合で大きな選手に弾き飛ばされたりしたのですが、それでもみんなで一つのことを達成するところに魅力を感じました。チームメイトにも恵まれて、この仲間でやっていきたいなと思いました。それが今も続けている要因です。卒業したとき、社会人ではもういいかな、と思ったのですが、それでも友人に誘われてクラブでプレーすると楽しいんです。みんなでプレーする楽しさを子どもたちにも分かってほしくて、ラグビースクールのお手伝いをしています。

村上 最初に松江ラグビースクールに来た時の印象を聞かせてください。

堀谷 人数も少なくて校庭の隅っこで遊んでいるように感じました。こんなボールを使うスポーツがあるんだよって、子どもたちに紹介しているようでしたね。

村上 メンバーは増えていったのですか。

堀谷 増えたり減ったりして、すごく少なくなったときは、子ども4人にコーチが6人という時期もありました。いろんなところに声をかけて参加してもらうようにしました。少しずつ増え始めたとき、2015年のラグビーワールドカップがあって、今の中学3年生の子たちが一挙に入ってきました。10人以上増えましたね。その子たちは今もやっていますし、その子たちが兄弟や友達を呼んできた。2015年大会の影響は大きかったです。

村上 いまの中学生は「島根ジュニアラグビークラブでプレーしているのですね。

堀谷 そうです。島根県は中学にラグビー部がないんですよ。実は島根ジュニアは以前からあったのですが、メンバーがいなくなって休止状態でした。中学でもラグビーを続けたい子が多かったので復活させました。松江ラグビースクールとは、兄弟チームのような関係で、一緒のグラウンドで練習することもあるのですが、現在は、コロナ禍でできるだけ大人数が集まらないようにしているので分けています。

村上 指導の際に特に意識されていることはありますか。

堀谷 ラグビーを通して、子どもたちに良い大人になってほしいと思っています。みんなで協力して準備し、片づけをする。そういうことを大事にしています。ラグビーができることに感謝もしてほしい。ラグビーは一人ではできません。仲間や保護者のみなさん、コーチがいて、相手チームがあるからできるのです。ラグビーはみんなで楽しくやるのが一番おもしろい。「エンジョイ ラグビー」を掲げています。ただ、低学年の子どもたちによく言っているのは、「楽しいというのは、「ふざけることではないということです。ふざけるのは自分だけが楽しくて、他人を嫌な気持ちにさせる場合があります。自分だけではなく周りの仲間、見ている人たちもみんなが楽しい気持ちになるのが、楽しむということだよ、と話しています。

村上 グラウンドの確保は大変ですか。

堀谷 比較的おさえやすいですね。松江市鹿島総合体育館多目的グラウンドと、安来市中海ふれあい公園西エリア芝生広場は天然芝です。安来市のほうは車で40分ほどかかりますが、広いので他のスポーツをしていても、まったく問題ないですね。


勝つことにはこだわらないが、

勝つための方法は指導する


村上 保護者アンケートのところに、松江ラグビースクールの良い点として、「勝利至上主義ではないが、勝つために何が必要かも指導がある」と書いてありますね。

堀谷 みんなで試合に出て、みんなで応援しようという考え方を持っています。しかし、勝つことで子どもたちも保護者の皆さんもやる気になるところがある。トライ取るためにどうするか、試合でいいプレーをするためにどうするかということは教えます。勝てなくても、そこに向かって努力したのだということは感じてほしいのです。

村上 試合をするには遠征をしなくてはいけないのですね。

堀谷 島根県内には、タグラグビーをやっているスクールはあるのですが、コンタクトありのラグビーをしているスクールはほぼゼロです。試合をしようとすると、一番近いところで岡山県の津山ラグビースクールがあります。車で1時間半くらいかかりますね。

村上 2019年は中国電力レッドレグリオンズのラグビー教室にも参加されたようですね。

堀谷 松江市に来てくださって、ラグビー教室を開催していただきました。トップレベルの選手に触れる機会がないのでありがたかったです。小さな子たちは大きな選手の腕にぶら下がったり、上に乗ってみたり、楽しそうでした。

村上 みんなで試合を見に行くこともあるのですか。

堀谷 東大阪市花園ラグビー場に参加者を募って観戦に行ったことがあります。2013年に日本代表がウェールズ代表と戦いましたよね。満員でした。私も代表戦は初観戦で、子どもたちそっちのけで楽しみました(笑)。そのとき、子どもたちが楽しそうだったので、2015年のラグビーワールドカップ後の花園でのトップリーグも見に行ったんですよ。東芝ブレイブルーパスとヤマハ発動機ジュビロの試合で、リーチと五郎丸の対決でした。その時は、お母さんたちがたくさん来てくれました。現場に行くと、各チームのブースなどで試合に出ていない選手と触れ合うことができますよね。子どもたちにすれば、テレビで見ていた選手が目の前にいるので嬉しいんですよ。大阪、広島などに試合を見に行くのは、子どもたちにとって遠足みたいなものです。いまはコロナ禍で動けないのですが、少しでも早くそういう経験をさせてあげたいです。

村上 島根ジュニアでやっている中学生は、ラグビーを続けようと思っているのですか。

堀谷 2015年に松江ラグビースクールに入ってきてくれた子供たちが中学3年生になりましたので、これからどうしていくのかなというところです。石見智翠館高校のラグビー部は中学生を指導してくれることもあります。島根ジュニアから石見智翠館という道筋ができれば、子どもたちがそういう進路もあるとイメージできるようになると思いますね。

村上 今後、どんな活動をしていきたいですか。

堀谷 トップリーガーを出すとか、大会で優勝をするということよりも、まずは島根県にラグビーを根付かせて、ラグビーというスポーツを知る子どもたちが増えてくれたらいいと思っています。

村上 ラグビー普及のために体験教室などは行っているのですか。

堀谷 岡校長とコーチで、幼稚園に行ってラグビー教室をやりました。好評だったようなので、今後もやっていくと思います。また、日本ラグビー協会がどのチームでも使えるラグビースクールへの招待状を作ってくれました。申し込んで、送ってもらいました。いま、これを配っています。

村上 部員は随時受け付けているのですか。

堀谷 はい、いつでも受け付けています。直接、見学に来ていただいても大丈夫ですよ。



ラグビーキッズ

ラグビーネットワークインフォメーション(ラグネット)

アンケート

1、ラグビースクールの名前

 松江ラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等


 練習・練習試合 ヒーローズカップ等で使用

3、代表者

 代表者 岡 登勇(Oka Norio) 監督 堀谷 猛(Horitani Takeru)

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先

 堀谷 猛 

 スクールホームページ(入校案内等あり)

 https://matsue-rugby-school.jimdofree.com

 スクールfacebookもあります。

5、活動場所・練習場所

 松江市鹿島総合体育館多目的グラウンド(島根県松江市鹿島町佐陀本郷76)

 安来市中海ふれあい公園西エリア芝生広場(島根県安来市穂日島町143)

 他、松江市内体育館(雨天時)など

6、練習場所は天然芝、人工芝、土等

 上記グラウンドは天然芝

7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等

 原則毎週土曜日 AM9:30~11:30

 その他、試合開催に応じて実施。

 詳細はホームページに年間スケジュールを記載

8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの

 会費 1,000円/月 遠征費・合宿費はその都度別途集金

 練習着は上下5,500円(税込) 

 その他ストッキング、ヘッドキャップ、ショルダーガード等は、個人で購入していただいております。

 ※スクールで紹介、代理購入も実施

9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等

 スクール構成は未就学児(年中・年長)~小学6年生

 生徒人数 35名(内、女子生徒 8名)4月末現在

  RWC2015の後、RWC2019の後はかなり増えました。

 2015をきっかけにラグビーを始めた子たちが、現在中学生になり一昨年から島根

 ジュニアラグビークラブが始動しました。(正式には再始動ですが)

10、コーチ人数、指名、経歴等

 コーチ数 14名 ほとんどが学生時代にラグビー部に在籍。一部は現在もクラブ

 チームでプレーしている。

11、モットー・大事にしている事・理念

 チームの目的「ラグビーの普及と競技を通しての人間育成」

 スローガン「Enjoy Rugby」(みんなで楽しくやりましょう)

12、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い

 試合には全員出場します。

13、歴史・活動実績

 1998年創部 中国地方で開催の各種大会に参加

 サントリーカップ タグラグビー大会島根県大会 参加

 2017年度 ヒーローズカップ初参加

 2019年度 ヒーローズカップ関西大会へ初出場

 (津山ラグビースクール合同)

14、指導方針・教育方針


 幼年部、低学年、中学年、高学年で活動

 女子部の創設も検討中 別途チーム方針等を添付いたします。

15、合宿・場所・期間・参加年齢等

 例年6月上旬に土日を利用して実施(2021は6/5,6)

 島根県立青少年の家「サン・レイク」が会場(出雲市小境町1991-2)

 参加は全スクール生対象

 近年は他県スクールを招き合同合宿も実施していたが、2020、2021は単独実施

16、ラグビー以外の行事 

 県内他スクール、高校チームとトップリーグ観戦(バス・広島、大阪)

 年度末修了式として、食事会・ボウリング大会の開催も過去あり。

 保護者様有志でイベント開催をしたこともある。

17、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか

 可能です。

18、保護者の活動への参加・サポート

 選手送迎、準備、片付け等にご協力いただいております。

 また、「お父さんコーチ」等で練習にご協力いただくこともあります。

19、どんなスクールを目指すか(将来像)

 思いやり、協力、努力、規律を尊重し、勝利を目指すが、勝利至上主義ではない。

 別途活動方針をご参照いただきたい。

20、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)

 いかなる状態でも状況判断に優れた大人になってほしいと思います。

 人生は様々な選択の繰り返しだと思うので、考えて良い判断ができるように。

21、プレースタイル

 感謝の気持ちを持ったプレー・活動をすること。

22、交流する他のラグビースクール

 県内他スクール(出雲スクール 江津スクール)

 県外スクール

 米子スクール(鳥取) 

 津山スクール(岡山)

 美作スクール(岡山)

 尾道スクール(広島)

 は比較的交流が多いです。

 その他、中国地方のスクールとは交流があります。

 ※2020年4月以降は感染拡大防止のため、ほとんどできていません。

23、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)

 島根ジュニアラグビークラブ(中学生) 本スクールOBが多数所属

 年間を通じてということではありませんが、時々県内高校、高専ラグビー部にご協力いただくことがあります。

 中国電力ラグビー部様のラグビー教室を2019年は開催していただきました。

 2020年は中止、2021年は7月に計画あり。

24、自由欄(付け加える事があれば)

 島根県は人口も少なく、またラグビーがあまり盛んではない地域です。

 そのため県内のラグビースクールも少なく、コンタクトを行うラグビースクールは当スクールのみです。(他はタグラグビーを主として行っている)

 そのため小学生同士の試合を行うためには、どうしても県外に出る、或いは県外から来ていただくということが必要になるが、新型コロナウイルス感染症の影響下にある今の状況においては、越県した活動が制限を受け試合経験を積むことが出来なくなっている。

 練習の成果を試す場が奪われている。

 例外的に昨年度はヒーローズカップのみ参加できたが(時期的に感染拡大が小さかった。)、ほぼぶっつけ本番での参加だった。(年度最初の試合が大一番)

 もちろん苦しいのは私たちだけではなく、優先すべきは感染拡大の防止であるとの理解はできるが、隣県では県内での交流戦が出来るなどの状況を考えれば、住んでいる地域によって差ができてしまっていることに、悔しさとやるせなさを感じています。

 元々試合をするのに苦労するところ(県外に行くこと)に加えてのことなので、ダメージは大きいです。

 そんな状況でも参加してくれている子供たちのために指導者一同、いろいろ工夫と努力で頑張っています。

 また、地方の田舎町ですから、なかなかトップリーグなどの観戦機会を設けることができないことも悩みどころではあります。

 保護者様によほど興味がないとなかなか遠方の大都市まで各御家庭で観戦には行かないようです。

 そうさせるのも普及を目的としているスクールの役目とも思いますが、もう少し身近なところで、集客はあまり見込めませんが、開催、興行があるとうれしいなと思います。



保護者へのアンケート

1、このスクールを選んだ理由

 ここが唯一の地元のラグビースクールだから。

 また私が指導者として参加しているから。

2、このスクールの良い点

 勝利至上主義ではないところ。しかしながら勝つためには何が必要かも指導があるところ。

3、スクールに改善して欲しい所

 ほぼ改善されましたが、以前は時間にルーズなところがありました。(終了時間とか) 

 現在は受け付け作業や片付け作業など保護者様の協力をいただけるようになったので、ずいぶんと早くなりました。

4、お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか

 通っている小学校や年齢を超えた友達が出来た。

5、お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか

 私以外の家族もラグビーに興味を持つようになり、子供の友達も興味を持つようになったこと。

6、スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けて欲しいですか

 続けてほしい気持ちはありますが、本人が選んだことを尊重したいと思います。

 既に卒業した子がおり、今はプレーをしていませんが、今でもラグビーは好きだと言っています。

7、ご自身もラグビーをしていましたか

 高校生時代からしていました。

8、ご自身もラグビーが好きになりましたか

 もともと好きでした。

9、どんな大人になって欲しいですか

 健康で、社会に生きる人間として間違ったことをしなければそれでよいです。

10、スクールに入れてよかったですか

 間違いなく良かったと思います。



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