第11回▼スローガンは「R.E.A.L.」すべてに「本物」を目指す
今回ご紹介するラグビースクールは、滋賀県草津市で活動するThe Ants Rugby Club Shiga(アンツ)です。アンツとは蟻(アリ)のことで、2005年の発足時に名付けられました。その活動内容は、スクールとアカデミーの間くらいに位置し、毎週土曜日の午後、おもに草津市の三ツ池運動公園で毎回約60名が集まって練習しています。他のラグビースクールと掛け持ちで参加している選手もいるようですよ。いったいどんなスクールなのでしょう。GMの上田恭平さん(48歳)にお話を伺いました。
子供の成長を見守る
長い目で見た指導
村上 上田さんがこのスクールを立ち上げられた理由など聞かせてください。
上田 スクールを立ち上げたのは、私が滋賀県立膳所高校に保健体育の教員として勤務していた2005年のことです。入学してくる生徒を勧誘しているだけでは安定的に部員が確保できないので、ラグビースクールを立ち上げ、膳所高校のグラウンドで練習していれば、馴染みができて膳所高校を目指す生徒も増えるのではないか、そんな下地を作りたいと考えました。
村上 上田さんは膳所高校ラグビー部の監督として、2002年の第82回全国高校大会に出場されていますね。
上田 その後、部員が少なくなった時期があり、手伝ってくれる人もいまして、アンツを立ち上げました。細々と続けてきたのですが、いつのまにか、15年が経過しました。
村上 アンツ、つまり蟻ですね。このチーム名にしたのはなぜですか。
上田 一人一人は小さいけど、群がって戦えばなんとかなる。蟻は、一匹ずつは小さなものを運んでいるけれど、大きな蟻塚を作る。小さなことからコツコツやっていこうという、そんな思いを込めました。
村上 当初の膳所高校のグラウンドから、いまは草津市の三ツ池運動公園に場所を移していますね。
上田 滋賀県には、ガールズラグビーアカデミー「BREEZE」(ブリーズ)というチームがあります。私は2013年の立ち上げから関り、今もアドバイザーとして裏方でやっているのですが、そのブリーズとグラウンドをシェアしながら練習しています。
村上 アンツは、どんな練習をするのですか。
上田 全員が均等に試合を楽しめるようにするのがベースにある考え方です。優勝を争うようなチャンピオンシップには出場していません。交流試合などはやりますし、練習の中でもゲーム形式はよく取り入れています。ただし、細かな指摘はしません。ボールを持ったら一人で斜めに走っていく選手もいますが、いつか気付いてパスするだろうという感じで見ています。他にはこんな選択肢もある、というアドバイスをする程度で長い目で見る指導です。チャンピオンシップに出ると、どうしても短期的に勝てるチームを作りたくなりますが、それがなければ子供の成長を待つことができます。段階を踏んで成長していこうという考えはコーチ陣で共有できていると思います。
村上 どんなチームと交流しているのですか。
上田 草津市のラグビースクールや、京都八幡ラグビースクール、京都プログレRFC、KIWI’Sなど、京都のチームも多いですね。行ったり来たりして交流しています。
村上 スローガンの「R.E.A.L」(リアル)が、とてもかっこいいです。どんな話し合いで決めたのですか。
上田 かっこいいスローガンにしたくて(笑)。ラグビーをする中でRESPECT(リスペクト=尊敬する)は大事ですよね。楽しむことも大事なのでENJOY(エンジョイ=楽しむ)、成長したいからACHIEVE(アチーブ=成長する)、いろいろな人とつながりたいという意味で、LINK UP(リンクアップ=結ぶつく)。これを並べるとREALになる。すべてあれば「本物」になるというイメージです。
村上 最初にリスペクトがあるのが良いですね。
上田 試合中に選手にあまり声をかけないことも、選手を尊重することですし、コーチ間では、相手チームのダメな部分を指摘しないようにしています。相手の良い部分を見つけて、見習おうとするほうが成長できる。そういう意味でもリスペクトは大事だと思います。
細かなテクニックは、
幼いうちに身に着ける
村上 身体づくりの面で、何か工夫していることはありますか。
上田 リズム・トレーニングを定期的に取り入れています。曲に合わせてリズムをとったりするので、小さな子供達も楽しそうにやっていますよ。
村上 生徒はコーチのことをどのように呼びますか。
上田 コーチとは呼ばせずに、大人と同じように「さん」を付けますね。人と人として接するようにしているのです。子供たちのことは下の名前で呼ぶようにしています。
村上 生徒数はどれくらいなのですか。
上田 年少から中学3年生までで約100名です。ただし、毎回、練習に来るのは60名から70名です。アンツは、1回ごとの練習会を毎週開催しているスタイルです。アンツで選手登録して毎週来る子もいるし、他のチームで登録して、アンツには月に一回来る子もいます。
村上 だから活動が土曜日なのですね。アンツの練習の翌日は他のチームの試合に出ている子もいるということですね。アカデミーのようでもあります。
上田 他のチームと競合しないように考えて行ったら、ここに落ち着きました。他のスクールとの掛け持ちをする子は次第に増えています。
村上 スキルの練習は細かくするのですか。
上田 テクニック的なことは小さなうちにやろうとしています。厳しく教えることはありませんが、いろいろなテクニックを紹介し、シチュエーションによって使ったらよいスキルなどの練習はします。そうした練習も遊びの要素は入れるようにしています。
村上 コーチ陣は保護者の方が多いのですか。
上田 いえ、少ないです。約20名の指導員を各学年に配置し、学年をまたぐフリーの人も置いて、統括するヘッドコーチがいます。女性コーチも増やそうとしています。保護者のコーチはいま6名で、小さな子供たちの指導をお願いしています。
村上 他のラグビースクールでは保護者の方々が運営にも関わっていることが多いのですが。
上田 運営には保護者の方は入っていません。練習の準備や後片付けも我々スタッフでやっています。保護者の方にそういった負担はかけない代わりに、一回の練習に1,000円の会費をいただいています。
村上 選手によって練習に来る回数にバラツキがありますものね。2019年のラグビーワールドカップの後、部員は増えましたか。
上田 倍以上に増えました。いつも20~30人でやっていたのに、今は60~70名ですからね。
村上 上田さんは、子供たちがラグビーをすることによって、どんな良い面があると考えていらっしゃいますか。
上田 たくさん良い面があります。体力的な面で言えば、最近の子供は転ぶ経験がないんです。服を汚すことも、引っ張ったり、押されたりすることもない。アンツに入ったばかりの子で、「あの人が引っ張った!」と言う子がいます。転んで泣く子もいる。そんな子供たちが転んでも泣かずに立ち上がって走り出す。そんな成長を見ることができます。みんな内に秘めた逞しさを持っているのに表に出す機会がない。それを解放する場は大事だと思います。感情を表に出すけど、超えてはいけない一線はある。ラグビーはそういうことを感じやすいスポーツなので、特に小さな子供には良いと思います。
村上 今後の活動の目標はありますか。
上田 ラグビーをやりたい子供たちにはどんどん入ってきてほしいのですが、今のコーチの人数だと常時60名くらいの練習が限界かもしれません。目が行き届かなくなってしまうので、そこは今の課題ですね。中学生のクラブチームも作りたいですね。滋賀県には中学生がプレーするチームが少ないので、社会人のクラブチームに中学生の部も作ってもらって、それをアンツで後押ししたいと考えています。そして、できれば、自前のグラウンドとクラブハウスを持ちたいです。いま探しているところです。
ラグビーキッズ
ラグビースクールネットワークインフォメーション(ラグネット)
アンケート
1、ラグビースクールの名前
The Ants Rugby Club Shiga(アンツ)
2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
3、代表者
GM上田恭平
4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
theants.2005@gmail.com
5、活動場所・練習場所
主に三ツ池運動公園(草津市)
練習場所は天然芝、人工芝、土等
6、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
ほぼ毎週土曜日 14:30-16:30
7、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
協会登録費、1000円/回(その都度払い)、指定のウェアを購入していただきます
8、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
幼児から小学生までが登録しています
女子プレイヤーも多数います
外国人も歓迎です
9、コーチ人数、指名、経歴等
24名のスタッフがおります
コーチ研修を定期的に受けており、資格取得も積極的に行っています
独自に講師を招聘してコーチング研修も実施しています
10、モットー・大事にしている事・理念
スポーツをする際に、勝敗は大切な要素の一つです。しかし、全てではありません。
The Antsはラグビーや他の活動をするにあたり、スローガン「R.E.A.L.」を掲げています。REALとは、「本物の○○になる」・「本物の○○を身につける」ことを願って設定しました。
現在のところクラブの細かな規定や制約は設定していません。それに代わり、クラブの活動の柱となる「R.E.A.L.」のコンセプトを共有することで、クラブの方針(クラブ運営やグラウンドでの指導法等)をご理解いただけると考えているからです。共に成長していけるクラブ作りを進めていきます。
「 R」 Respect・・・尊敬する
チームメイトや対戦相手やレフリーはもちろんのこと、日頃から自分を支えてくれる人達の存在に気付き、尊敬の念を持って接する姿勢を育てたいと考えています。
「 E」 Enjoy・・・楽しむ
ラグビーを楽しもう!勉強を楽しもう!考え方次第で、何でも楽しめるようになります。毎日を充実させる、前向きな姿勢を育てたいと考えています。
「 A」 Achieve・・・到達する・成長する
心身共に成長の大きい時期です。この時期に良い刺激を受けて、大きく成長して欲しいと考えています。また、目の前の困難から目を背けずに向き合い、行動する姿勢を育てたいと考えています。
「 L」 Link up・・・結びつく
仲間を作ろう。その仲間と何かを作り上げ・成し遂げよう。仲間と協力することの大切さや楽しさを身につけさせたいと考えています。また、分け隔てなく誰とでも繋がれる姿勢も育てたいと考えています。
11、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
2021年より「Silent League of Rugby」を始めています。新しい試合のルールで子供も大人も成長する場を作っています。主に交流戦に出場します
12、歴史・活動実績
2005年に設立
13、指導方針・教育方針
保護者の皆様には、このスローガン「R.E.A.L.」を理解していただき、The Antsの活動にご協力をお願いします。
ラグビーを通して、The Antsを通して、お子さまが心身ともに健やかに成長されることを願っています。成長には時間が必要です。成長するタイミングには個人差があります。お子さまの成長を共に見守り、共に感動したいと願っています。
14、合宿・場所・期間・参加年齢等
年に数回実施 夏場は避けています。
15、ラグビー以外の行事
BBQなどのイベントを実施
16、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
クラブチームなので、掛け持ち自体を気にしておりません
ラグビースクールの掛け持ちもオッケーです
協会の登録は他のチームでも、アンツで一緒にトレーニングしたり、交流ゲームに出たりしています
17、保護者の活動への参加・サポート
基本的に一切お手伝いはありません
主催大会での運営のお手伝いをお願いしています(その都度希望者を募る)
低学年クラスのサポートスタッフ(登録制)
18、どんなスクールを目指すか(将来像)
クラブの理念に掲げたとおりです
19、交流する他のラグビースクール
県内外のチームと交流させていただいております