第9回▼「エンジョイ」とは、「あそぶ」ではなく「楽しむ」こと。
小学生、中学生のチームの多くは「ラグビースクール」と名付けられていますが、今回ご紹介するのは、兵庫県の西宮ラグビー少年団です。1975年創立の歴史を誇り、毎週土曜、日曜の午前中(第4日曜日は休み)、武庫川の河川敷で練習し、月一回程度は遠征して交流戦も開催。現在は団員98名(女子選手6名)、コーチ45名で元気に活動しています。なぜ少年団なのか、どんな活動をしているのか。今回は団長の大谷賢司さん(57歳)にお話を伺いました。
自分の子供と一緒にラグビーをすることで
細部に気付き、コミュニケーションがとれる
村上 大谷さんが、このスクールに関わるようになった経緯を教えてください。
大谷 私はラグビー未経験者なんです。やんちゃ坊主の息子が2人おりまして、ある時、住んでいるマンションの部屋の窓を割ってしまったんです。そのとき、修理に来てくださった方がたまたま西宮ラグビー少年団のコーチで、「こんなに元気な子たちならラグビーをさせたらどうですか?と熱心に誘ってくれました。長男が幼稚園の年長で次男が年少のときに、この少年団に入ることになったのですが、私のほうがすっかりラグビーにハマってしまったんです。
村上 コーチも務めることになるのですね。
大谷 毎回、送り迎えしているうちに、「大谷さん、熱心だからコーチをやってみませんか」と言われまして、ラグビーの経験がないので最初は辞退したのですが、「未経験でもコーチされている方がいますよ。子供と一緒に楽しんでください」ということで、やってみることにしました。それが23年前のことで、息子が卒業しても私は居残っているというわけです(笑)。
村上 チーム創立は1975年とのことですね。
大谷 吉岡忠廣さんという方が初代の団長です。もともとは西宮のスポーツ少年団で空手の指導をされていました。吉岡さんはラグビーの経験者でもあったので、ラグビーも教えようということになり、その後、ラグビーがメインの少年団になったようです。
村上 団員数は時代とともに変化しているのですか。
大谷 西宮市には私どもも含めて3チームのラグビースクールがあります。そういうこともあって、昔から団員数は少なめです。幼稚園から中学3年生まで、平均して70名前後でしたね。中学生になると12人制になりますが、人数が足りなくて、合同チームを組んでいました。それでは子供たちにも良くないし、2年前に西宮甲東ジュニアラグビースクールさんと中学部だけは一緒にやろうということになって、西宮ジュニアラグビークラブを立ち上げました。西宮ラグビー少年団は小学6年までになります。
村上 アンケートでは団員数が95名になっていました。それは小学6年生までということなのですね。
大谷 そうです。さきほど、部員は70名前後だったと言いましたが、2019年のラグビーワールドカップで日本代表が活躍したこともあって、一気に子供が35名増えました。幼稚園から小学生まで95名になり、実は先日の日曜日(2021年2月14日)に3名新しく入団して98名になりました。体験会は年に数回やっています。見学は原則として常時OKです。
村上 卒業生が自分の子供を連れて帰ってくることもありますか。
大谷 現在、副団長を務める岩木隆憲コーチ(6年生担当)、2年生担当の今森大知コーチは、そういった親になりますね。岩木コーチは江の川高校(現・石見智翠館)、今森コーチは同志社香里、同志社大学、大阪ガスでプレーしました。
村上 多くのラグビースクールでは、保護者コーチは自分の子供の学年は教えられないという決まりがありますが、西宮ラグビー少年団は逆に子供の学年を指導できるのですね。
大谷 僕がそうなのですが、子供と一緒にラグビーを楽しんだことでコミュニケーションが取れるようになり、今でも「親父、一杯行こう」と誘ってくれたりします。ずっと見ていても、自分の子供だからって親がえこひいきすることもありません。自分の子供がいると細かいことに気付くし、そのほうがメリットはあるのではないかという考えで我々はやっています。コーチ同士で真剣に議論もしますし、このスタイルを続けて行こうと思っています。
月一回のコーチ会議で
真剣に議論し、練習の工夫をする
村上 チームのモットーが、「エンジョイラグビー」。エンジョイとは、「あそぶ」ではなく、「楽しむ」という意味だというとらえ方なのですね。
大谷 そうです。真剣になって時間も忘れるくらい夢中になる。終わった後、楽しんだねぇという感覚になるのがエンジョイだととらえています。ラグビーを時間も忘れるくらい一生懸命やろうということです。
村上 練習はハードなのですか。
大谷 ハードな場合もあるし、遊びの要素を取り入れることもあります。去年から試みているのが、カテゴリー練習です。兵庫県では、ミニラグビーは学年単位でやっていますが、学年の中でも個々のレベル差がありますので、学年に関係なく、土曜日は、各個人のスキルに合った練習をして、日曜日は通常の学年に戻って練習する。そんな工夫もしています。
村上 そういう工夫は、コーチの方で話し合って決めているのですか。
大谷 月に一度コーチ会議をしています。熱心なコーチが多く、パワーポイントで練習方法を提案してくれることもありますし、どうやって子供たちを楽しませるか議論しています。
村上 ヒーローズカップのような、チャンピオンシップにはどんな考えを持っていますか。
大谷 通常の交流戦などは全員の選手が試合に出られるように考えています。ただ、兵庫県では11月に県大会がありまして、ここだけは勝利を目指しますので試合に出られない子供もいます。
村上 夏合宿も開催されていますね。
大谷 大阪の河内長野ラグビー少年団、岬ラグビー少年団、富田林ラグビー少年団といった少年団つながりで交流しているのですが、みんなで奈良県の大和高原ボスコヴィラにて2泊3日で実施しています(例年は7月。2020年はコロナ禍で中止)。各チームの若いコーチでチームを作って模範試合をすることもあって、これは盛り上がりますね。
村上 ラグビー以外の行事はどんなものがありますか。
大谷 神戸製鋼コベルコスティーラーズの試合でのエスコートキッズなどに応募して参加したり、運営費をねん出するためのバザーの開催、運動会を兼ねたNRS祭も実施しています。NRSというのは、西宮(N)ラグビー(R)少年団(S)の頭文字です。ラグビーボールを使ったゲーム(かけっこなど)を、「ラグリンピック
と呼んで楽しんでいます。これも、昨年はコロナでできなかったのですけれど。
村上 大谷さんは23年間少年団に関わって、ラグビーというスポーツの良さをどう感じていますか。
大谷 人のために一生懸命頑張ることができるのが、ラグビーの大好きなところです。大げさにいえば人生そのものですよね。そこを理解して取り組んでくれたら、いい人間になるし、いいスポーツマンになるでしょう。そこは伝え続けていきたいです。また、コミュニケーションが必要なスポーツでもあるので、これからの人生に役立つと思います。本当にいいスポーツだとつくづく感じています。
村上 少年団を卒業した後、遊びに来てくれる子もいますか。
大谷 報徳学園、関西学院など地元の高校に進んだ子が来てくれますね。どのチームも年に何回かスクールに戻る日を設けてくれていまして、チームのジャージを着て、カバンを持ってきてくれるので、子供たちは羨望の眼差しを向けていますね。
村上 今後、どんな少年団にしていきたいですか。
大谷 勝ち負けよりも、子供たちがラグビーを好きになる環境をどうやって作るかが第一です。卒業して家族ができたら、子供と一緒に戻ってきて手伝ってくれる。このサイクルがずっと続いて行けばいいなと思います。
ラグビーキッズ
ラグビースクールネットワークインフォメーション
アンケート
1、ラグビースクールの名前
西宮ラグビー少年団
2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
左からエンブレム、通常ジャージ、夏用ジャージ
3、代表者名
大谷賢司
4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
西宮市奥畑6-134-701
岡﨑隆望 090-3627-4088
体験希望者は、HPから申込み
5、活動場所・練習場所
武庫川河川敷 山手幹線・尼崎側/南側
6、練習場所は天然芝、人工芝、土等
河川敷なので天然の雑草ですね。
7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
毎週土曜日、日曜日の午前8時~11時(毎月第4日曜日は練習休み)
月1回程度、兵庫県や大阪府、奈良県へ遠征して交流戦を開催しています。
クリスマス会やNRS祭という運動会等、ラグビー以外の催しにも力を入れています。
※コロナ禍以前の活動です。
8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
月会費は1,000円です。兄弟の場合は月500円になります。
特に活動において親御様にご負担していただくものはありません。
9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
団員数 95名
内女子選手 6名
コーチ人数 45名
10、モットー・大事にしている事・理念
「エンジョイラグビー」をモットーに子供たち、コーチ、育成者が一体となってラグビーというスポーツに時間を忘れるくらい集中することが本当の楽しみ方と考え、コーチ・育成者は全員で子供たちの健やかな育成にかかわっていきます。スローガンにおける「エンジョイ」とは「あそぶ」ということではなく、「楽しむ」の意であることを皆が正しく理解しています。
11、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
目指しているのは次の3点
・団員の交流同学年だけではなく、たくさんの子供達と交流し友情を育む機会を創ります
・スポーツ少年団としてラグビーだけではなく子供が喜び心身ともに鍛錬できる活動を積極的に推進します
・地域貢献練習場近辺の掃除だけではなく運動会やバザーなども活動を通じて、地域に根付く団にします
12、歴史・活動実績
創立は1975年と兵庫県下で4番目に創設しました。
13、OB・輩出トップリーガー
現在、キヤノンイーグルスに田畑淩(たばたりょう)が所属しています。
14、合宿・場所・期間・参加年齢等
大和高原ボスコヴィラに1泊2日で小学1年生~6年生を対象に実施しています。河内長野ラグビー少年団様や富田林ラグビー様、岬ラグビー少年団様と合同で行い、スクール間の交流を兼ねて実施して
います。
※2020年はコロナ禍で中止。
15、校歌等
ひたすらにトライする君たちへ(当団創設者 吉岡忠廣が作詞しました)
16、ラグビー以外の行事
バザーや運動会を兼ねたNRS祭やクリスマス会、コベルコスティーラーズ様主催ゲームのフラッグキッズへの参加等
17、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
掛け持ちは可能です。人数まで不明ですが特に低学年には水泳やテニス、バトミントンの掛け持ちの団員
がおります。
18、保護者の活動への参加・サポート
当団の特徴として、ご自身のお子様の学年のコーチをすることができます。他スクールでは親がコーチと
して登録しても別の学年をサポートする、つまり依怙贔屓等を警戒するむきもあるようですが、当団として
は、親として我が子の成長を目の当たりにしながら、自身も子供と一緒に精神的に成長できる機会と考えており、推奨しています。
また、幼稚園児や低学年は、やはり親御様にしっかりと見て頂くことでコーチでは気づき難い変化や癖を
指摘していただいたり、または一緒に考えてもらっています。
19、どんなスクールを目指すか(将来像)
所属する子供達がラグビーを大好きになってもらうのが最大のミッションです。勝ち負けより子供の成長をみんなでサポートする、それは親以外に叱ってもらえる環境が希薄な現代社会では非常に重要です。
そして、いつの日か、子供達が親になって、また自身の子供と一緒に当団でラグビーをする、私たちの
理想の姿です。現在、副団長を務める岩木コーチ(6年生)、今森コーチ(2年生、幼稚園)の両コーチは、そういった親になります。
20、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
当たり前のことを当たり前にできて、誰からもこの人ならと応援してもらえるスポーツマン(社会人)になってほしい。
挨拶が出来る、時間が守れる、正しい言葉使いが出来る、身だしなみを正すなどが出来ると必然とみんなが集まってきてくれる、これは大きな財産だと思います。
21、プレースタイル
勝ち負けよりも、子供達がラグビーを好きになる環境を整備すべく、カテゴリー練習を2019年より導入しました。幼稚園~2年、3~4年、5~6年という風に分け、学年を越えた交流と共に、高いレベルのお兄ちゃんを見て学ぶ機会を作っています。コーチの役割は、基本プレーをしっかり教えてから出来る限り子供達が自分自身で考えてプレーしていくスタイルを重視しています。
22、交流する他のラグビースクール
西宮甲東ジュニアラグビースクール、尼崎ラグビースクール、川西市ラグビースクール、伊丹ラグビースクールをはじめ河内長野ラグビー少年団、やまのべラグビー教室、前栽少年ラグビースクールなど兵庫県以外にも交流しています。
23、交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
兵庫県ラグビーフットボール協会、報徳学園、関西学院、リコージャパンラグビー部や神戸ファストジャイロなど
保護者へのアンケート
育成者代表 堀ひとみ
1、このスクールを選んだ理由
小学1年生の時にお友達から誘われて入団しました。
2、このスクールの良い点
組織として全体の管理がされている。
問題点があると改善するように取り組めている。
3、スクールに改善して欲しい所
学年間がもっとオープンになって欲しい。上下の交流をもっと進めて欲しい。
4、お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか
しんどい練習をがんばることで、我慢を覚えました。
5、お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか
土日に練習があるので、休日にダラダラと過ごすことがなく充実しています。
6、スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けて欲しいですか
本人が希望すれば続けて欲しいですが、無理強いはしません。
7、ご自身もラグビーをしていましたか
ラグビーはしていませんが、タッチフットは少しだけ経験有りです。
8、ご自身もラグビーが好きになりましたか
元々好きでしたが、子供が習うようになり更に好きになりました。
9、どんな大人になって欲しいですか
自分をしっかり持って、思いやりのある大人になって欲しいです。
10、スクールに入れてよかったですか
当団に入団して良かったです。