【インタビュー】社会で活躍するラガーマン 慈恵医大病院 医師 宿澤孝太〜その3〜



父が亡くなってラグビーを観なくなった母が

スコットランド戦には行ってみたいと言った


村上 2019年のRWC日本大会では選手の試合中の負傷などをジャッジするマッチデードクターを務めましたね。

宿澤 2015年のRWCからHIA(Head Injury Assessment、脳震盪のチェック)が導入されました。2015年大会後、親しい先生から声をかけていただき、4年間準備してRWCに臨みました。日本大会では30名ほどのマッチデードクターがいました。ほとんど日本人ですが、日本代表戦だけはHIAのジャッジを日本人医師がするとフェアではないということで、外国人ドクターが担当していました。

村上 ドクターの件とは別でもかまいませんが、日本大会で感動したことはありますか。

宿澤 個人的なことですが、父が亡くなって以降、母がラグビーの試合を見に行かなくなっていました。それが私は悲しかったのですが、RWCが日本で開催されることになると、「日本での開催だし、スコットランド戦もあるし、見に行こうかな」と言ってくれたのです。非常に嬉しかったです。それで、日本代表対スコットランド代表の試合を家族全員で観戦しました。みんな日本代表のジャージーを着て、絶叫しました(笑)。翌日、着用したジャージーを持って父のお墓参りに行きました。家族にとって大きな出来事でしたし、日本代表には感謝しています。

村上 相手がスコットランドというのが良いですよね。お父さんが監督をしていた日本代表が、伝統国相手に初勝利をあげたのもスコットランドです。

宿澤 そうなんです。何か縁がありますよね。次はイングランドですかね(笑)。

村上 イングランド代表は、1971年に秩父宮ラグビー場で日本代表が3-6と大接戦を繰り広げました。2023年のRWCでは同じプールに入りましたが、ここで勝ったら凄いですね。

宿澤 そういった期待を抱かせる日本代表になりましたよね。2019年大会を見てファンになった方も期待していると思いますし、頑張ってほしいです。

村上 お母様はその後もラグビー観戦には行ってらっしゃるのですか。

宿澤 早稲田中心ですけれど、行っていますね。私も縁あって早稲田大学の医療工学の研究室に大学院生で在籍したことがあります。なので、家は早稲田カラー一色です。

村上 長らくラグビーに関わっていらっしゃいますが、ラグビーというスポーツの魅力を改めて教えてください。

宿澤 ラグビーだけが良いスポーツだとは思わないし、いろんなスポーツにそれぞれ良いところがあると思っています。ラグビーの良さは、チームプレーによる団結力、常に自分たちで判断しながら80分間戦うという決断力を学ぶことができます。体が小さくても大きい人にぶつかっていかなくてはいけない。そんな恐怖心を、勇気をもって克服するという過程もあり、子供がやるには良いスポーツだと思いますね。

村上 今後の目標を聞かせてください。

宿澤 マッチデードクターとしての資格をとった方々と一緒に、スポーツ現場における応急処置を普及する活動をしています。初期対応で間違った処置をしてしまうと治せるものが治せなくなります。後遺症なく現場復帰するためには初期対応が一番大事なのです。応急処置については、ラグビーは他のスポーツよりも進んでいます。これを他のスポーツ団体にも普及していきたいのです。医師としては、目の前の困っている患者さんに対して、自分にできる医療を提供したい。粛々と研鑽を積みながら医療をしていくことが自分の中のポリシーです。



【プロフィール】

東京慈恵会医科大学付属病院医師 

2019年ラグビーワールドカップ・マッチ・デー・ドクター 

慈恵医大ラグビー部監督 

元日本代表宿澤広朗監督長男


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