第120回▶宇摩ラグビースクール(愛媛県)  

家庭、学校に次ぐ、第3の居場所として
愛媛県四国中央市を本拠地とする宇摩ラグビースクールは、1994年12月に開校されました。三島高校ラグビー部OBが中心となり、「伊予三島ラグビースクール」としてスタートしました。その後、現在の四国中央市(旧・宇摩郡)全体を「ラグビーのまち」にしたいという願いで、1998年に現在のチーム名となりました。現在は幼児から中学生まで42名がラグビーを楽しんでいますが、今年度は新規加入の生徒が増えているようです。どんな教育方針でラグビーを楽しんでいるのでしょう。校長を務める福田幸児さん(53歳)、事務局の西川浩史さん(52歳)にお話を聞きました。(2024年8月取材)


きょうはラグビー面白かったか?
練習の最後はそう問いかけて終わる


村上 福田さんと西川さんのラグビーキャリアを聞かせてください。
福田 私は選手としてのキャリアはありません。20年ほど前に長男がこのラグビースクール(RS)に入ってから保護者コーチとしてスタートして、今、隣にいる西川さんと一緒にやってきました。職場の先輩が宇摩RSの指導員をしていたのがきっかけです。
西川 私は愛媛県立三島高校でラグビーを始めました。大学でも続けて、社会人は三島クラブで42歳までプレーしました。三島クラブの現役の時もRSの手伝いはしていたのですが、長女が小3、次女が小1のときにラグビーをしたいと言いまして、宇摩RSに入ったところから自然にコーチとして関わりをもちました。

村上 宇摩RSは三島高校ラグビー部OBが作られたそうですね。
福田 私も三島高校でしたのでラグビー部の友達も多いのです。RSを立ち上げたときは三島高校ラグビー部を強くしたいという思いがあり、そのための底辺拡大を目指したということのようです。

村上 宇摩郡(現・四国中央市)はラグビーの人気がある地域だったのでしょうか。
福田 ラグビーの部活は人数が多かったと思います。私たちはスクールウォーズ世代ですから。私と西川は一学年違いなのですが、ラグビー人口は多い時期で近隣の市にもラグビー部はありました。

村上 幼児から受け入れているのですね。
福田 一番下の子が3歳で、中学(ジュニア)もあります。小学生とジュニアの練習は分けていますがグラウンドは同じです。幼児から大人の三島クラブまで全部同じ時間に練習することにしています。

村上 高校は三島高校のラグビー部に行くわけですね。どのくらいの割合ですか。
福田 卒業生の7割くらいだと思います。最近はうちの町から他府県の強豪高校に行く子もいます。石見智翠館(島根県)ほかいろいろな高校に行っていて、大学やリーグワンで頑張っている子もいます。この地域からそういうプレーヤーが出てくるのは嬉しいです。


村上 練習は基本的に毎週、水曜、金曜、土曜ということですが、すべて全員参加ですか。
西川 水曜と土曜日だけが全学年で、金曜日は高学年(5年、6年)のみになっています。金曜日はグラウンドに中学生もおりますので、試合前は中学生に練習相手になってもらうこともあります。通常は市営の伊予三島運動公園のグラウンドを押さえているのですが、シーズンによっては芝の養成で使えないこともあります。近隣のグランドをぐるぐる回ったりもします。うちの町は小さい町ですが、ラグビーのポールが立つグラウンドが6面あります。2017年に愛媛県の国体があって、少年の部をうちの町でやったのですが、その時にゴールポストを立ててもらいました。恵まれていると思いますね。

村上 どんな方針で指導されていますか。
福田 ラグビーが楽しいかどうかを大事にしています。練習後、きょうはラグビー面白かったか?と問いかけて終わるようにしています。好きでなくては続かないだろうし、好きという気持ちを作ってあげられたらと思っています。

村上 チャンピオンシップで勝利を目指すところと、面白く楽しませるところのバランスは難しいでしょうね。
福田 一時期、コーチ陣のなかでも葛藤がありました。勝ちを急ぎすぎて離れていく子どもたちが増えた時期もありました。もちろん、コンペティションとして勝利を目指すのはもちろんですが、子どもたちに主体性を持ってもらいたいため、「どんなチームになりたい?」と問いかけながら、みんなで方針を固めています。ヒーローズカップ(小学5、6年生の全国大会)に出たいという声が出れば、ひとつにまとまって目指すようにしています。
西川 学年によって温度差があり、勝ちたい気持ちがより強いときもあります。もっと練習をしたいという声が子どもたちから出たときは、できる限りそれに応えようということで練習を週4回にすることもあります。


四国中央市ラグビースクール祭には
コベルコ神戸スティーラーズの選手も参加


村上 四国中央市は野球、サッカーが盛んなようですが、RSに来る子はどんなタイプの子が多いですか。
福田 千差万別ですね。運動能力の高い子もいれば、まったく運動をしたことがない子もいます。うちの長男は四国中央市で一番走るのが遅い子どもでしたが(笑)、それでも最後には全国高校大会に出場しました。みんなに育ててもらったという感じです。保護者が口コミで、子どもを連れてくることが多いですね。

村上 ラグビーを始めたことで大きく成長した卒業生はいますか。
福田 横浜キヤノンイーグルスに三好優作という選手がいます。三好君は小学校の時はよく泣いていました。試合で負けて泣いて、練習が上手くいかなくて泣いて。でも負けん気は強い子だったから、上手くなるだろうと思っていました。出身で言えば、今注目しているのは関西学院大のCTB松本壮馬ですね。
西川 松本君は能力が高かったです。あの世代が初めてヒーローズカップの関西大会に進出しました。四国大会で3位になって滑り込みのような感じでしたが、ヒーローズカップに向けて練習しはじめたとき、ディフェンスラインの立ち位置すらわからない状態で、本当によく勝てたなと(笑)。みんな、自由にやっていましたからね。

村上 宇摩RSの子どもたちの特色はありますか。
福田 優しい子が多くて、あまりガツガツしていないですね。地域性かもしれませんが、特にここ何年かは高学年が低学年の子の面倒をよくみてくれます。練習の体験に来た子も優しく引きこんでいきます。うちの町ではない場所からも連れてこられる保護者の方がいますが、理由を聞くと、このチームがすごく雰囲気が良かったのと言ってくれます。

村上 子どもたちが一年で一番楽しみにしているイベントはありますか。
福田 「四国少年ラグビースクール祭」を毎年6月に開催しています。今年は10スクール、500名ほどが集いました。コベルコ神戸スティーラーズの選手に毎年来ていただき、指導を受けてから交流試合をしています。今年は渡邉隆之選手、福西隼杜選手、橋本皓選手、井関信介選手、船曳涼太選手が来てくれました。

村上 どうして神戸スティーラーズとつながりがあるのですか。
西川 1994年5月に伊予三島市制40周年記念試合として、その年の日本選手権で戦った神戸製鋼と明治大学が来てくれたことがあります。いつも私たちが練習しているグラウンドで試合をしました。その半年後に宇摩RSも立ち上げられました。 その後も2001年には、四国少年ラグビースクール祭の会場である「スカイフィールド富郷」の杮落としとして神戸製鋼とニュージーランド・カンタベリー大との試合も行いました。

村上 ラグビーを盛り上げたいという機運が高まった時期なのですね。いま生徒数は42名ということですが、最近、増えているようですね。
福田 今年の4月に幼児だった子が全員小学1年生になったのですが、これで幼児がいなくなると話していたら、なぜか4月になったら10人くらい幼児が入ってきました。その後も数名増えています。この町も少子化という問題はあって、他の競技と奪い合いになりますが、うちのスクールは他の競技をしながらでも良いというスタンスで、子どもに様々なスポーツを体験する機会を提供することも大切と考えているところもいいのかもしれません。

村上 お2人はなぜRSの指導を続けているのですか。
西川 ラグビーが好きなのだと思います。子どもたちとずっと一緒にラグビーをやっていると急にできるようになる時があります。その瞬間に立ち会えるのもすごく嬉しいです。
福田 同じ気持ちですし、関わった子どもたちの成長を見るのがすごく楽しいです。ラグビーをずっと続けてもらうことが一番ですが、ラグビーを頑張っている子、ラグビーを離れ他競技で頑張る子、関わった子全員がわが子のようなものです。

村上 チームとしての目標を聞かせてください。
福田 この町でまいたラグビーの種をラグビーファミリーとして大きな森にしていきたいです。宇摩RSは、卒業生にはスクールを離れても戻ってこられる場所として。そして現役の生徒のために学校と家庭ではない第3の場所として、子どもたちのためにあり続けたいと思います。今の子どもたちは私たちには分からないストレスを抱えています。ラグビーという世界を一つ作ってあげることで、息抜きになったらいいと思っています。



ラグビースクール アンケート

1、ラグビースクールの名前
 宇摩ラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等


3、
代表者
 校長 福田 幸児(ふくだ こうじ)

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 〒799-0401 愛媛県四国中央市村松町540-6 宇摩ラグビースクール 事務局 西川 浩史
 TEL 090-1002-5489 https://umasc.net/urs/form.html

5、活動場所・練習場所
 愛媛県四国中央市 伊予三島運動公園多目的グラウンド、スカイフィールド富郷 等

6、練習場所
 天然芝(5月~7月の芝生養生期間は小中学校の運動場など、土のグラウンドで活動)

7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 年間とおして毎週 水・金曜日:19:30~21:00 土曜日:9:30~11:30
 https://umasc.net/urs/activity/r02.html

8、入会費・会費・用具費用等 活動に必要なもの
 入会金なし 小学生 月会費1,000円 ユニフォームレンタル料(年間2,000円)
 幼児 保険料年間1,000円のみ
 https://umasc.net/urs/admission.html

9、生徒人数・女子生徒の構成比率】
 ( )内は女子生徒、最下段の率は女子比率

コロナ禍により、R3年度以降減少が続いていたが、今年度は幼児を中心に新規加入の生徒が増加傾向にある。

【外国人対応】
特にしていないが、海外からの一時帰国で短期間のみ加入生徒が2名在籍(日本語可)

10、コーチ人数・経歴等
 校長1名、事務局1名
 高学年(5,6年生)5名、中学年(3,4年生)2名、低学年・幼児(1,2年生)4名
 60歳代:2名、50歳代:2名、30歳代:7名
 ※30歳代以下はほとんどが宇摩RS→三島高校→三島クラブ(大学卒業後)

11、モットー・大事にしていること・理念
 中学、高校でもラグビーを続けてもらうことを最重要と考え、試合結果に固執しない。
 近年、環境の変化からストレスを抱える子どもが増えており、家庭、学校に次ぐのびのびと楽しめる”第3の居場所”となるよう活動している。

12、特徴・他のスクールとの違い
 宇摩ラグビースクールは愛媛県の東端にある四国中央市で活動しており、50km圏内に他のスクールはない地理的環境にある。
 四国中央市には幼児と小学生の「宇摩ラグビースクール」、中学生の「宇摩ジュニアラグビースクール」、「三島高校ラグビー部」、社会人クラブの「三島クラブ」があり、スクールからクラブまで同じチームでラグビーをする生徒が多く、スクールの保護者には三島高校OBラグビー部出身者が多いなど、他のスクールよりもチームワークが非常に良いという特徴がある。
 また、主な練習場所としている伊予三島運動公園は四国中央市協会で一括予約し、スクール、ジュニア、高校、クラブが同じグラウンドで同じ時間に練習している。

13、歴史・活動実績
 宇摩ラグビースクールは平成6年12月に「伊予三島ラグビースクール」として開校し、旧伊予三島地域の子どもを中心に活動を開始しましたが、宇摩郡(現四国中央市)全体を『ラグビーのまち』にしたいとの思いから、平成10年に「宇摩ラグビースクール」と改称しました。
 開校にあたっては「三島クラブ」のメンバーが中心となり、「三島高校」、「三島クラブ」を強豪チームにしたいとの熱い想いから、その土壌づくりのための開校でした。
 開校当初のスクール生は三島高校が全国大会に初出場したときの中心選手であり、現在も本スクールの卒業生は三島高校や三島クラブで活躍するとともに、本スクールのコーチを務めている者やその子どもがスクールに在籍するなど、地域一貫型の体制が整備されています。
 これまでの主な戦績としては四国ラグビースクール大会での優勝をはじめ、ヒーローズカップ関西大会や中四国大会にも四国地区代表として5度の出場を果たしています。

14、OB・輩出トップリーガー
 西井利広(宇摩RS→宇摩ジュニア→三島高校※H20卒→大阪体育大学→宗像サニックス→釜石SW→日本製鉄九州八幡
 三好優作(宇摩RS→宇摩ジュニア→松山聖陵高校→明治大学→キャノンイーグルス
 松本壮馬(宇摩RS→宇摩ジュニア→石見智翠館高校→関西学院大学4年生)
 近藤漣汰(宇摩RS→宇摩ジュニア→石見智翠館高校※R6高校ジャパン候補)

15、指導方針・教育方針
 ラグビーが大好きになるような指導(また練習に行きたいと思えるように練習方法を工夫)

16、合宿
 実施なし

17、校歌
 なし

18、ラグビー以外の行事
 四国中央市綱引大会、新春やまじっこマラソン大会、四国中央市小学生駅伝大会 など

19、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 掛け持ち可能 人数は正確には把握していないが、ボクシング、少林寺拳法、スイミング、ミニバスケットなどを掛け持ちで行っている生徒が複数人在籍

20、保護者の活動への参加・サポート
 練習場所までの送迎のみを原則としているが、年に1度の主催公式大会では受付や駐車場整理、会場清掃などをお願いしている。
 保護者にもラグビーの楽しさを実感してもらうことを目的として、タッチラグビーチームを結成し、ラグビー未経験者の保護者同士によりタッチラグビーを楽しめるようにしており、年に1回大会にも参加している。

21、クラブハウス
 なし

22、クラブの目指す将来像
 スクールでラグビーをはじめ、宇摩ジュニア、三島高校の強化につなげるとともに、大学卒業後は三島クラブでプレイしながらスクール生徒とも関わり、結婚して子供ができたら、子供がスクールに入校し、スクールの指導にも携わるというサイクルが出来上がっているため、すでに目指す形に近いものとなっているが、このサイクルの輪を少しでも大きくし、四国中央市のラグビー人口を増やすことを目指す。

23、生徒にどんな大人になってほしいか
 あいさつのしっかりとできるようにとの想いから、練習開始前と終了時のあいさつは全員で大きな声で行うようにしている。
 自分のしたいこと、思っていることを相手にしっかりと伝えることができるようになってほしいとの想いから、練習では声出しを重要視し、コミュニケーション能力の向上を図っている。
 幼児から小学生、中学生、高校生、社会人まで様々な年代により一緒に活動をしているため、同じ年代だけでなく、特に下の年代に対して思いやりの心を持てるような指導を心掛け、上の年代にも自分の意見などを主張できる環境を構築している。

24、プレースタイル
 早いテンポで、ボールをつなぐスタイルを目指すが、その時々のメンバー構成に応じたスタイルにより、
 子どもの個性を伸ばすよう心掛ける。

25、交流する他のラグビースクール
 小松ラグビースクール(愛媛県)、さぬきラグビースクール(香川県)、高知ラグビースクール

26、交流するラグビー団体
 宇摩ジュニアラグビースクール、三島高校、三島クラブ

27、自由欄
 【インスタグラム アドレス】
 https://www.instagram.com/uma_rugby_school


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