【インタビュー】ブラックロック・ジャパン株式会社代表取締役社長CEO有田浩之 〜その2~

ラグビーはボールを前に投げられないからこそ、
仲間へのリスペクトが強くなる

 
村上 ラグビーという競技をしたことが、社会に出てから役に立っていることはありますか。
有田 言い古された言葉かもしれませんが、「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」という精神ですね。加えて、一橋大学はオーナー・イズ・イコール(The Honour is Equal)という言葉を大切にしています。トライをした選手だけが偉いのではないということです。控え選手も含めて、みんかのおかげでトライが取れているという気持ちでみんながラグビーをしていることが素晴らしいと思います。
 
村上 それは一橋大学に伝わっている言葉なのですね。
有田 試合が終わると、相手に敬意を払ってエールの交換をしますよね。そのとき、最後に、「オーナー・イズ・イコール」と言うようにしています。代々伝わっているものですが、たしかにその通りだと思うのです。強い大学でも、大学選手権で負けたとき、真っ先に行くのは試合に出ていない選手たちのところですよね。試合の登録メンバーは23名ですが、メンバーに入れなかった部員が100名以上いるのです。そこに行って最敬礼する姿は感動しますね。その人たちにしかわからないことがあって、もしかしたら怪我でチャンスを失った選手もいるかもしれない。マネージャー、分析、トレーナーなどいろいろな役割を果たしてきた人たちすべての「栄誉」だということです。
 
村上 帝京大学で日本一になったキャプテンでも、試合後のインタビューなどで試合に出られなかった選手に感謝の気持ちを伝えていますよね。
有田 それは本当の気持ちだと思います。ラグビーはボールを前に投げられないですよね。後ろから来る味方にパスをしてつないでいくスポーツなので、他のメンバーに対するリスペクトは強くなると思います。
 
村上 それは仕事にも当てはまりますか。
有田 当てはまります。仕事上も大事にしたい精神です。これはラグビーをしている子供たちに言いたいのですが、ひとつだけラグビーでの個人プレーがあって、それはタックルだと思います。する瞬間、される瞬間は一対一です。目の前の相手を倒す、仰向けに倒してやろうという気概を持ち、そこに磨きをかけなくてはいけない。社会に出ても、自分の実力を上げないと、どうにもならないのです。周りが助けてくれるから良いのだという考えの人は、ラグビーをしている人にはないと思います。そういうところが社会にも通じるところなのでしょう。


村上 最近のラグビーはご覧になっていますか。
有田 実は息子がラグビーをしています。高校の頃はラグビー部ではなかったのですが、進路相談のときに大学でラグビーをやりたいと言いはじめて、しかも慶応に行きたいと言うのです。未経験者がいきなり練習が厳しいと言われる大学に行くという。驚きました。試験に合格して、3月に体操服でグラウンドに行って、ラグビー部に入りたいと言ったら、「ここは体育会です」と言われたらしいです(笑)。でも、いまはプロップでやっています。ラグビーの仲間たちとやっているだけで嬉しいです。
 
村上 お父さんの影響ですね。
有田 「そうじゃない」と言うのです。2019年のラグビーワールドカップの時に数試合、チケットをとって観戦して、それでラグビーをやりたくなったようです。
 
村上 ラグビーワールドカップは観戦されましたか。
有田 見ていますよ。昨年のラグビーワールドカップでは日本代表対イングランド代表の試合をニースまで見に行きました。リーグワンの理事長の玉塚元一さん、専務理事の東海林一さんなど、友人知人がいまリーグワンの運営などに携わっていますので興味は持っています。
 
村上 現在の仕事のこともお伺いしたいのですが。
有田 1999年に日本興業銀行を退社しまして、ニューヨークのブラックロックに入社しました。当時はまだ小さい会社でしたが、運用会社に身を転じたということです。興銀のなかでも外国債券の運用をしていましたので、扱うマーケットは同じブラックロックという会社を知りました。ブラックロックのやっているのはお客様のためにやる運用です。日本ではこちらのほうがこれから重要になってくる思い転職しました。もう25年になります。
 
村上 いま日本で取り組まれていることはあるのですか。
有田 日本の年金や金融機関のお客様の資金をお預かりして、海外の運用資産に投資するということをやってきました。しかし、ここ2、3年は逆のパターンも出てきて、グローバルなお客様の資金を日本の株、債券、インフラストラクチャーといったものに投資する機会も増えてきました。ようやく車の両輪が揃いつつあります。国の赤字も増えていますし、グローバルの資金を日本へというのは必要なことだと思っています。
 
村上 会社のリーダーとして意識されていることはありますか。
有田 社会のために、ということです。ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワンにもつながるのですが、自分たちが成長してきた環境を次の世代に残すことが我々世代にとって大切なことだと思います。我々がラグビーをやれたように、次の世代も部活、勉強、音楽鑑賞などを長く楽しめるような環境を作っていくにはどうしたらいいのか。運用会社を通じでやっていきたいと思っています。
 
村上 そんな思いを社員の皆さんにも伝えているのですね。
有田 この大都会、東京がどのようにできあがったのかを考えると、戦後の焼け野原から立ち上がり、作り上げた先代たちがいて、その恩恵で自分たちが人間らしい生活ができているわけです。その環境をどのように次の世代に残していけるのかを考えていきたいですよね。日本の資金を海外で運用することもそれに役立ちますし、日本の資金を日本でまわるようにすること、新しい産業を興すこともそうです。ここに力を入れていきたいと思います。
 
村上 今後の目標を聞かせてください。
有田 これまで話した通り、どうやって今の環境を次の世代に残すかということを運用会社でやりたいと思っていて、そのプラットホームとしてブラックロックは秀でていると思うので、ここでできることはやっておきたいです。プライベートでは、2035年のラグビーワールドカップを日本で開催して、それで日本中が盛り上がってくれたら、こんなに幸せなことはありません。そして、ラグビーをするすそ野を広げていきたいと思います。
 
村上 子供がラグビーをする良さとはなんでしょうか。
有田 痛いことを我慢できるようになります。ラグビーは痛いのです。お子さんはそれを我慢してやっている。だから保護者の方々も、お子さんがラグビーから帰ってきたら「痛かったね」と抱きしめてあげればいい。体の接触があるので、子供たちはそのたびに痛いのです。痛いことを我慢してチームのために頑張る。それを子供の頃に経験できる。非常に良いスポーツだと思います。ラグビーをしていると、良いことがたくさんあります。いまラグビーをしているお子さんは、ぜひ、続けていただきたいですね。


~END

有田浩之
ブラックロック・ジャパン株式会社 代表取締役社長CEO 
 
一橋大学 経済学部卒業
1987年 日本興業銀行入行
外国為替部を経て、スイス興銀投資銀行部門、東京及びNYの国際資金部勤務
1999年 ブラックロック NY本社 入社
2001年よりブラックロックの日本市場におけるビジネス全般を統括
社外では、2010年 一般社団法人 日本証券投資顧問業協会副会長
2016年 金融庁 金融審議会「市場ワーキング・グループ」委員
2017年6月より一般社団法人 投資信託協会 理事
2023年 金融庁 金融審議会「資産運用に関するタスクフォース」メンバー

関連記事