【インタビュー】第117回▶調布ラグビークラブ(東京都) 

叱ることはするが怒らない。選手の自主性を重視
東京都調布市で活動する調布ラグビークラブは、2015年に発足した比較的新しいスクールです。2019年のラグビーワールドカップが日本に来ることになり、調布市でもラグビーを盛り上げようと立ち上げられました。活動は毎週土曜日、幼児から小学6年生まで約80名が楽しく楕円球を追いかけています。保護者の練習参加も自由。自分で考えて行動する人間を育てようと、さまざまなことを子どもたちが考えながら活動しています。どんなスクールなのか、チームを設立して代表を務める瀧柳伸央さん(46歳)にお話を伺いました。(2024年4月取材)


RWC2019を機にラグビーを盛り上げる
野球のサッカーの町で始まった挑戦

村上 ラグビーとの出会いを聞かせてください。
瀧柳 私は野球少年だったのですが、体が比較的大きくて、親戚に「ラグビーをやってみたら」と言われたのがきっかけです。東京の日大二中(日本大学第二中学)に入学し、ラグビー部があったので入部しました。始めてみると楽しくて、中高一貫校でたくさんの思い出を作ることができました。日本大学に進学しましたが、大学では続けず、くるみクラブというチームでプレーしました。歴史あるクラブだったので人脈は広がりました。

村上 調布ラグビークラブを立ち上げられた経緯を聞かせていただけますか。
瀧柳 2019年に日本でラグビーワールドカップ(RWC)が開催されましたよね。調布は2002年の日韓共催のサッカーワールドカップで、サウジアラビアのキャンプ地になりました。私は地元で造園業を営んでいますので、地元の仲間と一緒にRWCのキャンプ地としてどこかの国を誘致する活動を始めました。しかし、それはなかなか難しいことに気づきました。どうしたものかと思っていたところで、新国立競技場がRWCの開会式に間に合わなくなり、味の素スタジアム(東京スタジアム)で開幕戦をやることに決まりました。ところが、調布は野球とサッカーの町なのです。ラグビーチームは、神代中学校にラグビー部があるだけでした。ないのであれば、子どもたちを集めてラグビーを教えるところから機運を高めようと考えたのです。

村上 それはいつのことですか。
瀧柳 2015年の6月です。たまたま教育委員会や調布市にくるみクラブの先輩がいて助言をいただきました。グラウンドを確保し、近所の子どもたちを誘い、フェイスブックやホームページも立ち上げました。その秋のRWCイングランド大会で日本代表が南アフリカを破り、ホームページの検索は増えました。最初はタグラグビーチームから立ち上げたのですが、徐々に人も増え、RWC日本大会も終わったところで、ミニラグビーも始めてみようということになりました。

村上 モットーは「叱るが怒らない」とあります。
瀧柳 最初に集まったコーチ陣で話し合いました。基本的には、怒鳴らないで子どもたちに考えさせてラグビーをしようということになりました。ただし、叱ることはする。「集合」と言われているのに集合しない。チームで作った決まりを守らず、だらだらと動いている。こういうときは叱ります。

村上 こうした考えは、日本のスポーツ界の現状を憂いてのことですか。
瀧柳 そうです。監督、コーチの目を気にしながらプレーするのではなく、のびのびと自分で考えてプレーした方が子どもたちも伸びると思うのです。社会に出ても、自分で考えて行動しない人はダメですし、子どものときから、自分で考えることができる人間を育てようと決めました。

村上 段階的に指導されているようですね。
瀧柳 低学年はボール遊びの延長です。細かいことは指導せず、まずはラグビーボールに慣れ親しんでどうやって遊ぶかを教えます。3、4年生は基礎的な動きを教え、考える力がついてきた5、6年生には戦術的なことも教えています


ボールをもって走る楽しさを重視
アットホームなチームを目指す


村上 プレースタイルは「展開ラグビー」なのですね。
瀧柳 私がミニラグビーに携わって感じたことは、体の大きな子を突っ込ませて点を取るスタイルへの疑問です。たしかに手っ取り早いのですが、コンタクトプレーは中学生、高校生になって覚えればよいと思うのです。技術は幼いころからやっておかないと身に付かないものがありますので、それを優先して教えるべきだと思います。コンタクト重視より、ボールをパスして走りまわることを重視しています。

村上 練習中に子どもたちに考えてもらうような時間もとっているのですか。
瀧柳 時間をとって考えてもらい、質問を投げかけることもあります。どうしていま抜けなかったのだろう?と低学年でも課題を与えて考えてもらうことはありますね。

村上 考えて実践できた例はありますか。
瀧柳 2年前にミニラグビーチームを作って試合を重ねました。勝てなかったとき、どうして勝てなかったか、子どもたちに考えてもらうようにしました。そのなかで子どもたちは自分たちでそれぞれの選手の特徴をつかみ、一番足の速い子にボールを回せばトライがとれると話し合って実践していました。これが目指しているチームのかたちなので嬉しかったですね。

村上 調布でラグビーを盛り上げていこうと始められた活動だと思います。それを感じることはできましたか。
瀧柳 2019年のRWC日本大会で認知度は高まったと思います。2023年のRWCフランス大会のときには、調布でパブリックビューイングをして私たちもお手伝いしました。開始時間の1時間以上前から行列ができていて、ラグビーが知られるようになったと実感しました。子どもたちも一緒にRWCを見ました。

村上 子どもたちは刺激を受けていましたか。
瀧柳 海外の選手の名前はよく出るようになりましたね。となりの府中市に東芝ブレイブルーパス東京、東京サントリーサンゴリアスがあります。ブレイブルーパスの主催する大会に参加することもあるので、有名選手からサインがもらえたと喜んでいます。

村上 ターゲットを絞っている大会はありますか。
瀧柳 タグラグビーチームは全国大会がありますので、そこを目指しています。ミニラグビーチームには目標の大会がないのです。まだ人数と実力が至らず、ヒーローズカップ(小学5、6年生の全国大会)には出たことがありません。菅平高原で開催されたヒーローズの交流試合には出場しました。

村上 2022年9月に初めて開催された交流大会ですね。全国のチームと交流するのは刺激的な経験だったでしょうね。
瀧柳 あれは良い経験でした。参加した選手のなかに受験を控える6年生がいたのですが、大会後、受験を辞めて神代中学校に行ってラグビーがしたいと、お父さんに話していました。すごく楽しかったみたいで、今も中学の部活で続けています。

村上 保護者の皆さんはどのように関わっていますか。
瀧柳 希望者は練習に参加していただいています。道具の運搬など手伝っていただくことはありますが、特に決まった役割はありません。保護者会は年に一度開催し、年間スケジュール、指導方針など説明し、キャプテンの発表など行っています。

村上 キャプテンはどんな決め方をするのですか。
瀧柳 タグとミニで1名ずつ決めます。練習風景を見ながらスタッフで話し合って決めています。キャプテンになると成長しますね。練習前にキャプテンがみんなの前で話すのですが、4月と最後の3月では話す内容が違います。3月に一年間ラグビーが楽しくできたとコーチ陣に感謝の気持ちを話してくれたときは、あまり話さない子だったので感動しました。

村上 ラグビーが子どもたちに与える影響については、どう感じますか。
瀧柳 チームプレーなので仲良くなりますよ。学校はバラバラなのに、ここまで仲良くなるのかと感心します。怪我をした子がしばらく休んだ後、久しぶりにお母さんと一緒にグラウンドに帰ってきたことがありました。そのとき練習していた子どもたちが一斉に練習を止めて、その子のところに集まったのですが、その様子を見ていて、改めて子どもたちの仲の良さを感じました。

村上 今後、どんなチームにしていきたいですか。
瀧柳 ラグビーの面白さをもっと広めていきたいというのが一番の目標です。あとは、このチームを卒業しても遊びに来てくれるようなアットホームなチームにしたいです。部活の地域移行の問題もあって、ラグビーをする機会がなくなってしまった子たちも受け入れられるようにしたいですね。ラグビーだけではなく、地域の皆さんが交流できる場にできたらいいと思っています。



ラグビースクールインタビューアンケート

1、 ラグビースクールの名前
 調布ラグビークラブ 

2、 シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
 カラー水色



3、 代表者名
 瀧柳 伸央

4、 住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 体験、入部希望者はホームページから調布ラグビークラブ (chofurugby.club)

5、 活動場所・練習場所
 調布市内のグランド

6、 練習場所は天然芝、人工芝、土等
 土もしくは雑草交じりの天然芝

7、 活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 毎週土曜日 9時から11時
 日曜等は他チームと交流試合。
 調布市タグラグビー大会の主催
 調布市ラグビー祭

8、 入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 会費1000円/月 チームのTシャツ、ジャージ等は各自専用のサイトから購入

9、 生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 タグラグビー、ミニラグビー合わせて80人、そのうち女子は1割
 外国人はいませんが受け入れは可能です。

10、 コーチ人数、指名、経歴等
 コーチ9人 全員ラグビー経験者 元トップリーガーなどはいません。

11、 モットー・大事にしている事・理念
 叱るが怒らない。多くのことを指導せず、選手同士の対話、考えること、自主性を重んじている。

12、 特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 ラグビーはボールを持って自由に走り回れるスポーツ。体を当てに行くだけではなく、ボールを回し走り回るラグビーを目指しています。

13、 歴史・活動実績
 2015年にタグラグビーチームとしてチームを結成。その後2022年からミニラグビーチームを結成しタグラグビー、ミニラグビー両方活動しています。


14、 OB・輩出トップリーガー
 特になし

15、 指導方針・教育方針
 叱ることはするが怒らない。多くのことを指導せず、選手同士の対話、考えること、自主性を重んじている。

16、 合宿・場所・期間・参加年齢等
 小学3年生以上 ヒーローズカップの菅平の交流試合に合わせて

17、 校歌等
 無し

18、 ラグビー以外の行事
 バーベキュー、クリスマス会

19、 他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 可能 4,5人います。

20、 保護者の活動への参加・サポート
 保護者も練習に参加可能にしています。
 道具の運搬、SNSの投稿は保護者に協力してもらっています。

21、 クラブハウスあれば
 ほしいです。

22、 どんなスクールを目指すか(将来像)
 子供達が自主的に考え行動できるようになるのが理想。そのために多くを語らず導く指導を心がけています。そんな調布ラグビークラブの指導方針に共感してくれる人が増え、ラグビーだけでなく地域のコミュニティの場としてチームの和が広がってほしいと考えています。


23、 生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 ラグビーのプレーを通じて自分で考えて行動する子になってほしい。

24、 プレースタイル
 展開ラグビー

25、 交流する他のラグビースクール
 小金井ラグビースクール、多摩ラグビースクール

26、 交流するラグビー団体(学校・協会・トップリーグ等)
 神代中学校、東芝ブレイブルーパス

27、 Facebookアドレス 
 
調布ラグビークラブ | Facebook

28、 Instagramアドレス 
 
調布ラグビークラブ(@chofurugbyclub) • Instagram写真と動画


保護者へのアンケート

1、 このスクールを選んだ理由
 市のタグラグビー大会のエキシビジョンで体験参加させていただき、息子自身がゲーム自体をとても楽しんだだけでなく、チームのみんなが優しくしてくれたことが嬉しく、またコーチたちも優しくて何をすれば良いか話が分かりやすかったから、このチームに入りたいと決めたので。

2、 このスクールの良い点
 子ども主体で、のびのびと楽しく練習や試合をさせてもらえるところ。コーチ達が熱く優しく楽しく温かいところ。コーチからも、メンバー同士も威圧や無理強いがなくラグビーは楽しい!を心底体感させて頂けるところ。

3、 スクールに改善して欲しい所
 (無回答)

4、 お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか
 何よりもラグビーが大好きになりました。ラグビーをするために、身の回りのことや勉強なども努力できる様になっています。

5、 お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか
 ラグビー中心に回っているようです。体の大きい子がいればラグビーやらないかと誘っています。

6、 スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けて欲しいですか
 チームメイトの多くと同じく、続ける気満々です。

7、 ご自身もラグビーをしていましたか
 いいえ、両親共に未経験です。

8、 ご自身もラグビーが好きになりましたか
 はい!とても。

9、 どんな大人になって欲しいですか
 個性溢れる仲間と共に、互いに高め合い励まし合い、強く、優しく前進する、ラ
グビーを体現したような人。

10、 スクールに入れてよかったですか
 はい!子どもにとって人生の礎となる大切な場です。


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