【インタビュー】第109回▶春日井ラグビースクール(愛知県)

思いやりの心を育て、友情の輪を広げる
愛知県の春日井市で活動する春日井ラグビースクールは、1986年に設立された伝統あるスクールです。心と身体をたくましく育て、ルールや時間を守る重要性を教えつつ、ラグビーの楽しさを伝えようとしています。試合もできるだけ全員が出場して均等にラグビーを楽しめるように考えられていますが、2022年度の第15回ヒーローズカップの決勝大会には、コミッショナー推薦枠で出場しました。東海北陸大会に出場し、出場権を逃したものの、本大会でも優勝を争える実力があると認められたからです。どんなチームなのでしょう。校長を務める丹羽康仁さん(68歳)にお話を伺いました。(2023年1月取材)
 


練習後、子どもたちだけで話し合う
教えられたことを印象付けるために

 
村上 全員を試合に出す方針がありながら、ヒーローズカップ決勝大会にコミッショナー推薦枠で出場されましたね。
丹羽 今年の6年生は全員のスキルが高かったと思います。スキルが劣るから個々に教え方を変えるということはせず、全員同じ練習をする中でできない子が、できる子に追いつこうとする姿勢も良かったです。この学年について、そのやり方が合っていて成長につながったと思います。
 
村上 丹羽さんのラグビーキャリアを教えていただけますか。
丹羽 私は中学1年生(名古屋市立大曽根中学)から始めました。最初は卓球部に入部しましたが、隣に住んでいた一学年上のお兄さんに誘われました。面白そうだったので入部したら、チームの雰囲気がすごく良くて続けることになりました。県立春日井高校でもラグビーを続けて、大学では学校のクラブには入らず、社会人の名古屋クラブでプレーしました。
 
村上 ラグビーのどんなところが好きでしたか。
丹羽 中学の頃からチームの仲間意識に居心地の良さを感じました。それで高校でもラグビー部に入ろうと思ったのです。中学、高校とも強いチームではなかったのですが、続けることができました。
 
村上 春日井ラグビースクール(RS)に関わるようになったのは、いつ頃のことですか。
丹羽 45歳くらいでした。僕が中学の頃、ラグビー部顧問だった西川先生が春日井RSの校長を務めていらっしゃいました。私の友人が「自分の子どもがRSに行っている」と言ってたので、のぞきに行ったら西川先生にお会いしました。そのとき「手伝いに来いよ」と声をかけてもらいました。以降、ずっと関わることになりました。
 
村上 春日井RSは1986年に創立されたとのことですが、どういう経緯で始まったかはご存じですか。
丹羽 西川先生が中心になり、ラグビーというスポーツを若い世代に体験させたいと思った方々が集って立ち上げたそうです。春日井RSができる前から、愛知県内にはいくつかのスクールが活動していましたので、そういったチームを参考に子どもたちを集め、最初は10名くらいで始めたそうです。
 
村上 現在、約140名の生徒数とのことですが、増減はありましたか。
丹羽 2019年のラグビーワールドカップで倍近く増えました。それまでは80名ほどでしたから。うちは幼児から入れるのですが、幼児でひとくくりと、小学生は学年ごと、中学は3学年まとまって練習しています。コーチは各学年に一人はラグビー経験者がおりまして、それをお父さん、お母さんにサポートしていただいている形です。
 
村上 保護者の皆さんに当番制などありますか。
丹羽 ありませんが、各学年に代表になる方を一人選んでいただいて連絡を回してもらっています。そのほか、保護者の皆さんには行事などでお手伝いしていただいています。
 
村上 卒業生ではリーグワンのコベルコ神戸スティーラーズの井関信介選手がいますね。
丹羽 彼が卒業生で最初にトップリーガーになったと思います。他にも数名トップレベルの社会人でプレーしています。井関選手は身体が小さかったのですが足が速かったのが印象的でした。高校、大学、トップリーグで活躍されて、今ではスクール生達の目標とする選手です。
 
村上 長らく指導されていて、印象的な生徒はいましたか。
丹羽 幼いころからやんちゃな子がいて、小学3、4年生になってもなかなか言うことを聞いてくれませんでした。ところが、小学6年生の時に彼をキャプテンにしたら、雰囲気が変わって、卒業するときにはみんなの前でしっかり感謝の言葉を述べて感動したことがあります。その子は中学で野球を始めて、甲子園に出場しました。他にもいろいろな子がいますが、みんな6年生になると人前で話ができるようになる。それが成長を感じるときですね。
 
村上 みんなの前で話す訓練はするのですか。
丹羽 練習後、反省会のようなことを子どもだけでやらせています。コーチは黙って聞いているだけで、子どもたちが練習でできたこと、できなかったことを話しています。コーチが教えるだけではなく、子どもたちが話し合うことでその日教えてもらったことが印象に残ると思うのです。そういう積み重ねで、人前で話ができて、人の話が聞ける子どもたちになっていくのではないかと思います。
 

ラグビーをしているときだけではなく、
家でも自分から行動できる子を育てる


村上 練習の組み立てについて、コーチ陣で話し合って決めているのですか。
丹羽 各学年のコーチが定期的に話し合いをしています。どの段階でラン、パス、キック、コンタクト等の必要なスキルを教え、次の学年につなげていくのかという話ですね。学年ごとにコーチ陣が今年はどんなアタック、ディフェンスをするのかを考えています。
 
村上 指導方針には、思いやりの心を育てる、友情の輪を広げるなど書いてありますが、子どもたちに話をすることもあるのですか。
丹羽 先代の校長から言われていたことがあります。「言われてやらないのは三流選手」、「言われてやるのが二流選手」、「一流選手は言われなくても自分で進んで物事ができる人」。これはスクールにいるときだけではなく、朝、自分で起きる子になり、勉強も自分から率先してやろうというのが、昔から校長が子どもたちに伝えていたことです。コロナで朝礼、終礼をやらなくなっていましたが、以前は練習を始める前に全学年を集め、感謝の気持ちを忘れないようにという話をしてから練習を始めていました。
 
村上 子どもたちが一番の目標にしているのは、ヒーローズカップですか。
丹羽 7年前あたりからヒーローズカップに参加することが目標になってきました。愛知県には6年生の県大会もありますが、雨天等で中止になる事もあったため、ヒーローズカップにも参加して、そこで自分たちが練習してきたことを試してみたいという声が出てきて挑戦することにしました。
 
村上 交流会や練習試合などは頻繁に組んでいらっしゃるのですか。
丹羽 月に一回は交流会などに参加しています。愛知県内のRSを中心に岐阜県、長野県のRSともよく交流しています。ヒーローズカップ開催以降、他のスクールもレベルが高くなっていますので、「他のスクールに負けたくない」という意識が子どもたちにはあるようです。
 
村上 ラグビーが子どもたちに与える影響については、どう感じますか。
丹羽 私はラグビーをしてきて、友達を大事にする、大事にされるということが強く印象に残っています。練習は苦しいことが多いのですが、苦しいことに自分で挑戦してみようという意欲が持てる。また、上手くプレーできなくて失敗することもあります。それでも、仲間で励まし合い、助け合う、また失敗をできるだけ少なくしようと努力する。その経験・体験が今後の成長に繋がれば良いと思います。
 
村上 今後のチームとしての目標を聞かせてください。
丹羽 エリート選手を育てることを目的とするスクールにはならないようにしたいです。基本的には子どもたちがラグビーを楽しみ、ラグビーをしたことが誇りになり、自信を持って卒業してもらえるスクールであればいいと思っています。常々、子どもたちに話すのは、ラグビーだけがスポーツではないということです。中学、高校で自分に合うものを見つけて、新しいスポーツに挑戦するのもいいじゃないですか。高校では違う部に入ったけれど、大学ではラグビー部に入りましたという子もいます。そういう話を聞くと、ラグビーを好きでいてくれたのだと嬉しくなりますね。
 


ラグビースクールインタビューアンケート

1、ラグビースクールの名前 
 春日井ラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等   

3、代表者名
 校長 丹羽康仁

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 春日井ラグビースクールHPに問い合わせをお願いしています。
 HPアドレスhttps://kasugai-rs.jimdosite.com

5、活動場所・練習場所
 愛知県春日井市内(スポーレ春日井.大池緑地公園グラウンド)その他市内外近郊

6、練習場所は天然芝、人工芝、土等
 人工芝や土

7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 毎週日曜日 9:00~12:00 月1回ペースで交流会を実施

8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 年会費9,000円(スポーツ保険込み)ユニフォーム、ヘッドギヤ、練習着等は個人購入

9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 スクール生 中学生~幼児 約140名(女子 約20名)

10、コーチ人数、指名、経歴等
 コーチ人数 約40名(ラグビー経験者.未経験者)

11、モットー・大事にしている事・理念
 *思いやりの心を育て、友情の輪を広げる。
 *心と身体をたくましく育てる。
 *ラグビーの楽しさを伝える。
 *ルールや時間を守る重要性を教える。

12、歴史・活動実績
 1986年設立

13、OB・輩出トップリーガー
 トップリーガー*井関信介(コベルコ神戸)

14、指導方針・教育方針
 *ゲームでも教室おいても平等に機会を与え、全員を試合に出場させる。
 *安全に留意して、危険性を排除する。

15、合宿・場所・期間・参加年齢等
  夏休みに小学生(6年生~4年生)は数河合宿1泊2日 中学生は菅平合宿2泊3日

16、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 多数

17、保護者の活動への参加・サポート
 資格(コーチ、レフリー)の講習費はスクールで負担をしております。

18、どんなスクールを目指すか(将来像)
 子供たちが自分で考え、積極的に行動できる生徒を育てる。

19、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 *ラグビーに接して、自信と誇りを持ち、困難に立ち向かえる精神を持つ人物に育ってほしい。
 *ラグビーだけがスポーツではないが、永くラグビーを愛する気持ちを持ってほしい。 

20、交流する他のラグビースクール
 愛知県内のラグビースクール、岐阜県のラグビースクール、長野県のラグビースクール

21、Facebookアドレス
 https://www.facebook.com/春日井ラグビースクール1986-109029118560756/
 kasugai.rs


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