【インタビュー】第106回▶鎌倉ラグビースクール(神奈川県)

「ラグビーを通じて選手の生きる力を育む」
神奈川県鎌倉市が本拠地の一般社団法人鎌倉ラグビースクールは、1975年に設立されました。鎌倉市深沢多目的グラウンドをメインに活動し、現在の生徒数は約260名。2023年1月28日、29日に横浜で行われた第15回ヒーローズカップ(小学5、6年生の全国大会)の決勝大会では決勝戦に駒を進め、豊田ラグビースクールと同点優勝を飾りました。今回、お話を聞いた小学6年生のヘッドコーチ石川安彦さんは、山梨県の日川高校、早稲田大学、東芝府中(東芝ブレイブルーパス東京)、三洋電機ワイルドナイツ(埼玉パナソニックワイルドナイツ)などでプレーした選手で、で明治学院大学ラグビー部ではヘッドコーチも務めました。どんなチームなのでしょう。(2023年1月取材)


他学年との交流の機会を増やしたことで
中学でも続ける生徒が増加した


村上 石川さんは、いつ頃から鎌倉ラグビースクール(RS)に関わり始めたのですか。
石川 息子が小学1年生ですから7年前ですね。当初は保護者として見学しているだけでした。指導員をしてほしいと声をかけていただいたのですが、明治学院大学のヘッドコーチをしていたこともあってお断りしていました。少しずつお手伝いから始めて今に至ります。

村上 息子さんにラグビーをやらせたのは石川さんですか。
石川 2015年のラグビーワールドカップ(RWC)のとき、家族で仙台に住んでいまして、幼稚園の年長だった息子がテレビでRWCを見て「僕もラグビーをやりたい」と言い出しました。それで仙台ラグビースクールに入ることになりました。明治学院大学のコーチになるタイミングで、家族で鎌倉に引っ越してきました。

村上 それで鎌倉RSに入ったのですね。
石川 練習を見に行ってみると、アットホームな雰囲気でした。引っ越してチームが変わる息子には、このほうが合うと思ったんです。目標の大会に向かって強化するというよりは、毎回の練習を楽しんでいるような雰囲気でした。

村上 しかし、2022年度のヒーローズカップでは見事優勝を飾りましたね。
石川 ありがとうございます。みんなで考えた目標を達成できてとても嬉しいです。何よりも選手たちの喜んだ姿を見れたことが最高でした。以前はヒーローズカップ優勝を目標として掲げていなかったのですが、子どもたちや保護者のみなさんと相談してみると、「目標を持ちたい」ということでした。ひとつの目標として、ヒーローズカップで優勝するということを掲げました。ちょうど一年ほど前です。

村上 そこから一年で優勝というのは素晴らしい成果ですね。
石川 子どもたちはラグビーが大好きで、本当によく頑張ったと思います。6年生は34名います。ファーストステージ(関東大会)では、体調不良や受験で抜けた選手以外は全員がプレーしました。セカンドステージは全員が出場したわけではありませんが、できる限りたくさんの選手に出場してもらいたいと考えてメンバーを編成しています。

村上 子どもたちと話すのはグラウンドですか。
石川 グラウンドのときもあるし、鎌倉市の施設を借りてミーティングをすることもあります。いまの6年生は自分の意見をしっかり言える子が多いのですが、出られない選手がいてもかまわないと言っています。その代わり、神奈川県内で年度末のファイナルカップという大会があるので、出られなかった選手はそこを目指そうという話をしています。

村上 生徒数も増えているようですね。
石川 7年前は今の6年生の代も10名ほどでした。受験などで辞める選手もいましたが、2019年のRWC日本大会の影響が大きくて、体験希望者が増えて、小学校の途中からでも入ってくるようになって各学年で増えました。

村上 中学部に上がる子はどれくらいいますか。
石川 数年前はほとんど中学部に上がらなくて、試合ができないので他のRSに移る子が多かったのですが、最近は残ります。私学を受験してその中学のラグビー部に入部する子もいますが、たいていラグビーを続けます。

村上 高校、大学でも続けている子は多いのですか。
石川 多いです。第102回全国高校大会に出場した國學院栃木のプロップ木村陽太選手は、高校日本代表候補でもあります。他にも茗溪学園、流経大付柏、目黒学院、東海大相模、京都成章、東福岡などに卒業生が進学しています。大学、社会人でいえば、トヨタヴェルブリッツに入った田村魁世選手や、ちょっと年上になりますが、日下太平選手(コベルコ神戸スティーラーズ)が卒業生ですね。

村上 多くの生徒が続けるようになった要因は何かありますか。
石川 コーチの一体感が出てきたことが大きいかもしれません。かつては各学年のコーチがそれぞれの考えで指導していて、学年をまたぐ交流がなかったのです。中学部は3学年で一緒に練習しますから、知らない人たちと一緒になるのが嫌な子もいます。そこを見直し、他学年と合同練習をして、少しずつ交流を深めました。そうすることで憧れの先輩ができるなど目標ができて、多くの生徒が中学でも続けるようになったと思います。


子どもたちが成長していく段階を
コーチがしっかりサポートする


村上 鎌倉RSの特徴的なことはありますか。
石川 海が近いので夏の時期は砂浜で練習しています。海水浴シーズンは人も多くて練習場所の確保が難しいのですが、少し気温が上がってくれば砂浜でがんがん練習しています。砂浜で練習すると子どもたちの気持ちも開放的になります。地面が柔らかくてタックル練習も怖くない。タックルが劇的に良くなりました。江の島近くの腰越海岸でやることが多いです。軽くボール遊びをして、ほとんど海で遊んでいるときもありますよ。

村上 保護者はどのように関わっていますか。
石川 特に当番制はありません。今は練習の撮影と、怪我などに対応してくださる「看護班」を作って関わっていただいています。看護師の方がいるし、未経験の方にも日本ラグビー協会のセーフティーアシスタントの講習会を受けてもらっています。

村上 7年間のなかで、子どもたちの変化を感じたことはありますか。
石川 それはたくさんあります。RWCの影響で来る子は、どちらかというと保護者に連れられて来ることが多いです。そういう子たちにラグビーを好きになったもらいたくて、工夫しているうちに、今では目標を持って頑張ってくれています。そういう子たちを見ると本当に嬉しいです。また、タックルができない子がいたのですが、個別にタックルの重要性を伝えて、つかむところから始めて徐々に練習していたら、今ではものすごいハードタックラーになりました。

村上 何が変わったのでしょうね。
石川 理由を聞いてみたら、「わからない」と。保護者の方に聞くと、「試合に出たいという気持ちが強くなりました」ということでした。「ラグビーがしたいから早く練習の日が来ないかな」と言っているそうです。それがスイッチだったのかもしれません。

村上 練習の指導では厳しく接するときもありますか。
石川 たとえば、パススキルの練習は精神的なプレッシャーを与えないようにして、指先をリラックスしてキャッチしようと話します。でも、コンタクトの練習では鼻歌を歌ってコンタクト練習しようとしているような選手には厳しく指摘します。軽い気持ちでタックルしたら怪我をすることもありますからね。「ラグビーはそんな甘いスポーツじゃない、帰っていいよ」と言うときもあります。

村上 プレースタイルは、「激しいタックルと、立って繋ぐ」ということですね。
石川 子どもたちの選択肢を広げようというテーマで指導しているからです。立ってボールを繋ぐことによって、オフロードパスもできるし、ぶつかって前進することもできる。強いタックルで倒されたらラックにしてボールを出すこともできますよね。なぜか鎌倉RSは身体が小さいということもあって、失点を防ぐにはディフェンスラインを揃えて前に出るということも必要です。

村上 今後の目標を聞かせてください。
石川 目標を持ち、それに向かって進んでいくことを継続していきたいです。大事なのはプロセスです。結果として目標に届かなくても仕方がない。子どもたちが成長していく段階をコーチがしっかりサポートするという感覚を持ってやれば、楽しく活動できると思います。練習もミーティングも、子どもたちの考えを尊重する。少し方向性が違っていたら、サポートしてあげるという流れができるといいですね。




ラグビースクールインタビューアンケート

1、ラグビースクールの名前 
 鎌倉ラグビースクール

2、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
 笹りんどう

3、代表者名
 木野高男

4、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
 スクールホームページ問い合わせフォーム
 http://kamakura-rugby.com

5、活動場所・練習場所
 鎌倉市深沢多目的グラウンド

6、練習場所は天然芝、人工芝、土等
 天然芝

7、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
 土日13:00-16:00(季節により時間変更あり)

8、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
 幼稚園~小学2年生1,000円
 小学3年~6年生1,500円
 中学生2,000円(月額)

9、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
 260名女子選手12名

10、コーチ人数、指名、経歴等
 コーチ60名

11、モットー・大事にしている事・理念
 「考える力を育む」

12、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
 体が大きい選手は少ないがDF力に自信あり

13、歴史・活動実績
 昨年50周年

14、OB・輩出トップリーガー
 日下太平(神戸製鋼)田村魁世(トヨタ)

15、指導方針・教育方針
 「ラグビーを通じて選手の生きる力を育む」

16、合宿・場所・期間・参加年齢等
 菅平合宿2泊3日3年〜中3
                     
17、ラグビー以外の行事
 BBQ、海水浴

18、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
 他の習い事は可能。30%
                  
19、どんなスクールを目指すか(将来像)
 鎌倉ラグビースクールに入ってよかった、早くラグビーがしたいと思ってもらえる環境づくり

20、生徒にどんな大人になって欲しいか(教育観)
 良き仲間を作り困難を乗り越える

21、プレースタイル
 激しいタックル、立って繋ぐ

22、交流する他のラグビースクール
 神奈川県内のチーム

23、Facebookアドレス
 https://www.facebook.com/kamakura.rugby

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