松戸少年ラグビースクール（RS）は、千葉県松戸市内を中心に活動しています。1976年に創部され、現在は幼児から中学生まで約130名の生徒がラグビーを楽しんでいます。そのうち1割程度は女子選手で、卒業生には、女子セブンズ日本代表の大黒田裕芽選手、横尾千里選手がいます。教育方針は、幼少期から思春期にいたる多感な時期にラグビーを通しての人間性の育成に重きを置くこと。どんなスクールなのか、2022年4月から運営委員長を務める今井清仁さん（44歳）にお話を伺いました。（2022年10月取材）
ラグビーのみにこだわるのではなく、
コミュニティーに属していることを大切に考える
村上 今井さんのラグビーキャリアから聞かせてください。
今井 私は千葉県の柏高校で3年間ラグビーをプレーしていました。父がラグビー好きで、子どものころから早明戦の観戦などで国立競技場に連れて行ってもらいました。ラグビーが身近だったので、部活に入るならラグビーという感覚でした。身長が182㎝あるので、ポジションは自動的にロックでした。3年生の時に膝を怪我してしまって、プレーするのは高校で区切りをつけましたが、早稲田大学に進学したこともあって大学ラグビーを中心に観戦はしていました。
村上 松戸少年RSとはどのように出会ったのですか。
今井 会社の転勤で松戸市に住むことになり、地域に根付いたコミュニティーに参加したいという思いもあって、RSを探しました。私は娘2人と息子がいるのですが、9年前、2番目の娘が年中のときにRSに連れて行ってそのまま入会しました。
村上 その頃の松戸少年RSの規模はどれくらいでしたか。
今井 生徒数は80から90名くらいでした。その後、2015年、2019年のラグビーワールドカップを経て増えていきましたね。
村上 1976年創部ですから歴史がありますね。
今井 私は創部当時の様子は分からないのですが、三世代で活動に参加されている方もいます。
村上 愛称がコアラベアーズなのはなぜですか。
今井 松戸市がオーストラリアのメルボルンの近くにあるホワイトホース市と姉妹都市で、オーストラリアとの結びつきから来ていると思います。
村上 指導理念に「子どもたちの心身育成、仲間づくり、相互信頼の醸成に努めていく」とありますね。
今井 スクールと名付けられているように学校ですから、ラグビーの技術だけではなく、挨拶や、元気に声を出すことなどを大切にしています。仲間同士の絆、保護者と子の絆など、このスクールを通して人間関係を学ぶことも意識しています。ラグビーだけにこだわらず、このコミュニティーに属していることを大事にしてもらいたいのです。
村上 今井さんの役職である運営委員長というのはどんな立場なのですか。
今井 松戸少年RSには組織を統括する運営委員会と、子どもたちに指導する指導部があります。運営委員は練習場所の確保、試合を組む、各協会とのやり取り、入退会の管理、イベント、備品手配をするなど、組織活動をサポートしています。私も以前はコーチ、レフリーをしていたのですが、2022年の春から運営委員長になりました。
ラグビーを知らない保護者の皆さんも仲間に
ファンを増やしてラグビーのすそ野を広げたい
村上 コーチをする方々はなんらかの資格は取るようですね。
今井 保護者の皆さんがコーチになる場合が多いのですが、コーチになっていただく方は傷害保険に加入し、日本ラグビー協会のスタートコーチの資格をとってもらっています。C級、B級と取得される方もいらっしゃいます。
村上 日本協会A級レフリーもいらっしゃるそうですね。
今井 関谷惇大（せきや としまさ）さんがいます。チームのレフリーではなく、父兄としていらっしゃっているので、いろいろアドバイスをいただいています。時間が合うときに小学生の試合でレフリーをしてもらうこともあって、関谷さんを知っている他スクールの保護者の方には「贅沢な試合ですねぇ」なんて言われますね。
村上 コーチにはどんな方がいらっしゃいますか。
今井 現在の指導部長は、國學院久我山、日本大学のOBで久我山の時は高校日本代表に選ばれた涌井潤さんです。
村上 試合には全選手を出す方針なのですか。
今井 各年代のコーチに任せて強制はしていませんが、スクール全体の考え方として試合登録をした子は全員出場させたいと考えています。
村上 ターゲットにしている大会はありますか。
今井 千葉県ではNECカップという大会が昔からあり、スクールとしてはこれを最大の目標にしてます。小学生の１年から6年まで学年ごとに優勝を決めるチャンピオンシップです。
村上 コロナ禍で休止中ながら、千葉県の鴨川での合宿があるそうですね。
今井 小学3年生あたりから希望者を対象に合宿に行きます。もともとは単独でやっていましたが、数年前から東京のすみだラグビースクールさんと合同で行うようになっています。練習だけではなく、海で遊ぶなど懇親がメインです。来年からは再開を検討したいと思いますが、場所も含めて検討中です。
村上 近隣のスクールとの交流はありますか。
今井 松戸市はリーグワンのNECグリーンロケッツ東葛のホストエリアになっています。我孫子RS、柏RS、印西RSがエリア内にあるので、グリーンロケッツを通して交流があります。市川RS、八千代RSとも昭和50年代から対抗戦をしています。また江戸川を挟んだ向かいの三郷市・ふくじゅ草RSさんにはよくグラウンドをお借りしてお世話になっています。
村上 松戸少年RSの特徴がありますか。
今井 どちらかというと大人しめのチームです。あまりガツガツせず、保護者も一緒にラグビーを楽しむ感じのチームですね。みなさん、ボランティアですし、会社でストレスを抱えている人もいるでしょう。スクールの活動くらいはストレスフリーで楽しんでほしいのです。子どもとの交流を楽しみ、親同士で飲みに行くなど、楽しい場を提供したいと考えています。
村上 松戸少年RSに入ると、親も子も楽しめるというイメージですね。
今井 個人的に重視しているのは、ラグビー未経験の親御さんにも楽しんでもらうことです。2019年のラグビーワールドカップを見てきてくださった方は、コーチをやってみませんか？と言っても、「私は、ラグビーは分からないので」と外で見ています。でも、例えばレフリーに挑戦していただいたり、できるだけ参加してもらうようにしています。家族みんなでラグビーを楽しんでほしいのです。私のようにずっとラグビーが好きだった人間は、目の前でラグビーファンが増える様子を見るのが嬉しいし、楽しい。ラグビー全体のすそ野が広がればいいと思っています。
村上 ９年、このスクールに関わって印象的なことはありますか。
今井 幼稚園から中学までやめずに続けている子も多いのですが、劇的に変わる瞬間があるということです。時期については個人差がありますが、練習に身が入らなかった子が急に頑張り始める時がある。うちの小1の息子も協調性がなくて、練習をしません。でも、楽しいらしくて毎回練習に来ます。そういう子をたくさん見てきたので、小学校を卒業する前までにやってくれたらいいなと気長に見ることもできますね。
村上 スクールとしての課題はありますか。
今井 実はいま練習場所の確保に苦労しています。長らく松戸自衛隊のグラウンドを使わせていただいたのですが、改修中で使えなくなり、そのままコロナ禍、そして北朝鮮の問題などもあって管理が厳しくなりました。以前のように借りられず、決まった練習場所が確保できないのが課題ですね。
村上 今井さんはなぜラグビーが好きで、スクールに関わり続けているのですか。
今井 競技性が好きです。ラグビーの競技規則は、ルールではなく、ロー（法律）ですよね。それが時代に合わせて変化します。良いレフリーは笛を吹かないとも言いますよね。選手に声をかけながら反則をさせないようにするのは他競技の審判などとは明らかに違います。ゲームを大切にしている。見ていて一番楽しいスポーツだと思っています。実は私は2019年のラグビーワールドカップの時に会社を辞めました。11試合チケットが買えたとき、18年ほど勤めた会社を辞め、転職先を決めて、ワールドカップ期間は完全にストレスフリーにして、家族も連れて大会を楽しみました。いまはスクールに関わることで、一人でもファンが増えてくれたら嬉しく思っています。
ラグビースクールインタビューアンケート
１、ラグビースクールの名前
松戸少年ラグビースクール
２、シンボル・ユニフォーム・エンブレム等
愛称：コアラベアーズ
３、代表者
今井清仁（2022年4月～ 運営委員長）
４、住所・連絡先・担当者等入校希望者や問合せ先
体験、入会希望⇒ホームページより(http://mjrs.nt/try)
５、活動場所・練習場所
千葉県松戸市内（千駄堀スポーツ広場、松戸市運動公園）、その他市内外近郊
６、練習場所は天然芝、人工芝、土等
天然芝、人工芝が主
７、活動時間、スケジュール、年間スケジュール等
通常練習 毎週日曜日09:00-12:00、その他大会や交流会へ参加
８、入会費・会費・用具費用等、活動に必要なもの
（スクール生）入会費1,000円、年会費12,000円、コーチは別途スポーツ保険加入
ユニフォーム、ヘッドギア、スパイク、練習着等は個人負担
９、生徒人数・女子選手の構成比等・外国人対応等
スクール生 幼児～中学部 約130人、女子は1割程度
１０、コーチ人数、指名、経歴等
原則父兄からのボランティアコーチ（任意参加）による指導が主
コーチ数40名程度 スタートコーチ多数、C級数名、B級1名
日本協会A級レフェリー1名 C級レフェリー数名
その他臨時外部コーチ招へいなど
１１、モットー・大事にしている事・理念
子供たちの心身育成、仲間づくり、相互信頼の醸成に努めていく
スポーツを行うことの意義、すばらしさを共有、継続していく
１２、特徴・全員試合出場など他のスクールとの違い
あまりカチッとした差別化はないが、選手全員の底上げするような指導
子供ではないが、未経験の父兄をレフェリーに誘い、父兄本人がルール習得をとおしてラグビーにハマってもらう、すそ野拡大活動
１３、歴史・活動実績
1976年設立、三市対抗戦、房総練成会、NEC杯等へ参加
１４、OB・輩出トップリーガー
トップリーガー：上原哲（キャノン 引退）
セブンズ女子代表：大黒田裕芽、横尾千里（リオオリンピック出場）
１５、指導方針・教育方針
1 教育方針
松戸少年ラグビースクールでは、幼少期から思春期に至る多感な時期にラグビーを通して人間性の育成
(礼儀・理性・忍耐・努力・感謝など)を第一に考えこれを目的とする。
2 指導方針
1.安全を最優先に考え指導する。
2.子供達には、チャンスを平等に与える
3.子供たちの発育レべル(知的・身体含む)を見極め、個に合った指導を行う。
4.全ポジション・全員ラグビーを基本とする
5.指導する際は、必ず子供達の目線に合わせ、理解するまで教えること。
6.子供たちの自主性を阻害するような指導は行わないこと。
(教え過ぎず、回答に導く指導を行う。)
１６、合宿・場所・期間・参加年齢等
合宿 千葉・鴨川で毎夏実施もコロナ以降休止、来年以降検討中
小学生以上対象（2泊3日程度）
１７、校歌等
スクール歌あり
１８、ラグビー以外の行事
バーベキュー大会、年始のマラソン大会参加、ゴルフコンペ（父兄）など
１９、他の習い事との掛け持ちが可能か・何人いるか
多数
２０、保護者の活動への参加・サポート
ボランティアによる任意の参加（コーチ、運営）
コーチやレフェリーの資格、講習費をスクールで負担
医療関係の講習開催
レフェリー委員会によるルール、観戦の魅力の伝達、ママさんラグビー講座
２１、どんなスクールを目指すか（将来像）
三世代のラグビー スクール
(スクールの生徒から親になりコーチとして、やがて孫ができ、
毎週末は三世代でラグビー を楽しむ)
２２、生徒にどんな大人になって欲しいか（教育観）
「品位・情熱・結束・規律・尊重」を身につけて人を大事にする大人
２３、プレースタイル
グラウンドスペースを使う展開ラグビー
２４、交流する他のラグビースクール
柏、あびこ、印西、市川、八千代、ふくじゅそう（三郷）、千葉市、京葉、
常総、ツクバリアンズ、すみだ、江戸川等
それ以外にも適宜交流会、合同練習
２５、交流するラグビー団体（学校・協会・トップリーグ等）
NECグリーンロケッツ（ホストエリアとして）
松戸市ラグビー協会
専修大学松戸高校、小金高校、市立松戸高校など
２６、自由欄（付け加える事があれば）
アンケート内容の変更、追加は、その都度ご連絡頂ければ変更させて頂きます
保護者へのアンケート
１．このスクールを選んだ理由
→あまり教えすぎずに、子供たちが自由にグラウンドで過ごしている所に魅力を感じました。
２．このスクールの良い点
→子供たちが仲が良い！保護者も全員で協力しあって、チームをより良くしています。
３．スクールに改善して欲しい所
→ホームグラウンドの復活（スクールのせいではありません…）
４．お子さんの変化・スクールに入って変わりましたか
→心身ともに逞しくなりました。本当に物事に動じなくなった。
５．お子さんがスクールに入って生活に変化がありましたか
→友達も増えて、週末が来るのが楽しみになりました。
６．スクールを卒業してもラグビーを続けさせますか・続けて欲しいですか
→続けてほしいですが、本人の判断に干渉しすぎないようにしています。
７．ご自身もラグビーをしていましたか
→未経験です。
８．ご自身もラグビーが好きになりましたか
→ラグビーのない生活を考えられなくなりました!
９．どんな大人になって欲しいですか
→自分で考えて自分で判断し行動できる人間です。
１０．スクールに入れてよかったですか
→もちろんです。本当にすばらしい出会いでした！
